赤堀雅秋プロデュース『ボイラーマン』開幕! 

赤堀雅秋の新作公演『ボイラーマン』が、3月7日に東京・本多劇場にて開幕した。(3月20日まで)

時に無様な、時に滑稽な、そんな様をみせる人間たちの機微を独自の観点から描き出し、独特のユーモアを交えながら、あたかも観客が登場人物たちの日常を覗き見しているような不思議な空間へと誘う、劇作家・演出家・俳優であり、近年では映画監督としても高い評価を得ている赤堀雅秋の新作書き下ろし公演となる。

主演は、赤堀と幾度もタッグを組み、その存在感と演技力で赤堀作品を支えてきた日本演劇界に欠かせない俳優・田中哲司(近年作品、ドラマ「ゆりあ先生の赤い系」、「らんまん」、『舞台・エヴァンゲリオン ビヨンド』など)。そして田中との本格的な共演は初となるヒロインには近作の舞台、劇団た組『綿子はもつれる』、ドラマ「大奥」、「うちの弁護士は手がかかる」など多岐に渡り活躍の安達祐実。また、唯一無二の存在感を放つでんでんとは『神の子』に次ぎ赤堀と2度目のタッグを組む。
さらにナイロン100℃、阿佐ヶ谷スパイダースでの活動やNODA・MAPなど数多くの舞台に出演の村岡希美。赤堀作品『鳥の名前』、『パラダイス』、など4度目の出演となる水澤紳吾。そして、赤堀作品初参加になる元乃木坂46樋口日奈、薬丸翔、赤堀作品『蜘蛛巣城』に続き2度目の出演となる井上向日葵とフレッシュなメンバーが揃った。
その待望の赤堀雅秋の新作がいよいよ開幕した。 

《ストーリー》 
冬、夜が更けつつある頃。古いマンションを挟むようにY字になった二股の道があり、左には石段、右には細い路地が続いている。電話ボックス、自動販売機、ごみ集積所、放置自転車。何処にでもある片隅の光景に、一人、喪服の女(安達祐実)が現れた。続いて石段の上からは中年男(田中哲司)。互いをやり過ごした後、残った男は煙草に火をつけ、それをマンションの住人である中年女(村岡希美)が見咎め、糾弾する。体調の悪そうな警官(赤堀雅秋)が現れ、中年女とのやりとりから、この町で連続放火事件が起きていることがわかる。さらには奇矯な言動の老人(でんでん)と、彼を庇護する様子の小柄な女(井上向日葵)、喪服の女のつれの男(水澤紳吾)、マンションに住むキャバクラ勤めの若い女(樋口日奈)と彼女を追い回している様子の若くもない男(薬丸翔)という手近な関係以上には繋がるはずのない9人が、その夜、偶然Y字路の周辺で行き会った。そこに行かねばならない、居なければならない理由はきっと誰にもなかったのに。消防車のサイレンが聞こえてくる。夜空が明るくなるほどの火の手が上がり、町を赤く照らし出す。中年男は甲州街道を見出せるのか。
彷徨う9人は夜の涯てを越え、朝に辿り着けるだろうか。

【コメント】


作・演出・出演:赤堀雅秋 
他者から見たら「いつもと変わらないじゃないか」と笑われるかもしれませんが、今作は自分にとってかなりの挑戦でした。暗中模索で、どこに辿り着くか判然としないままの作劇でしたが、それでもワクワクしながら歩みました。心強いスタッフ・キャストの皆さんの力を借りて、いよいよ開幕します。正直、開幕しても、どこに辿り着くかはいまだにわかりません。だからとても怖いし、同時に楽しみでもあります。是非劇場に目撃しに来て下さい。

田中哲司
心を揺さぶりながら、ミスを恐れずギリギリのラインで攻めの演技を心がけて挑みたいと思います。いっぱいいっぱいで生きている様々な人の人生の一コマが、一晩、狭い街角でほんのひと時交錯する。この素敵な物語りを繊細に丁寧に1ヶ月一緒に頑張った仲間たちと紡いでいきたいです。因みに好きな台詞は『8位の人です』『我々のおでん』です。

安達祐実
いよいよ初日です。稽古が始まってから今日まで、ずっと楽しくて、苦しさすらも楽しくて、初日を迎えられたことをとても嬉しく思っています! 私にとってボイラーマンは、ひこうき雲みたいな存在。あ、ひこうき雲だって薄ぼんやり眺めるけど、触ることも留めることも出来ない。作品の中の登場人物達は、みんな生きていて、はち切れそうになりながらもちゃんとそこに居る。愛おしいです。心をパンパンにして、劇場でお待ちしてします。

でんでん
赤堀作品に参加すると、鍛えられます。それがどこの方向に鍛えられてるのかはわからないけど。開幕の心境としては、食欲が失せ、気力もなえ、不安のカタマリです。線が細いのです。とても小学生が遠足を待っているような気持ちではなく、はっきりいって戦場にむかうような感覚です。本当に肚が座るのは、出番直前ですので、力をいれて、リキまずに(エネルギッシュに)臨みたいと思っています。「なんか久しぶりに楽しいなあ」ってセリフがあるのですが、はやくそのような気持ちになりたいなぁです。

村岡希美
稽古を終えた今、本多劇場の今回のこのセットのなかでボイラーマンの世界に浸ることがとにかく楽しみです。登場人物1人1人の心の奥底が静かに、そして時に激しく揺さぶられ、その振動がお互いに連鎖しながら紡がれてゆく作品です。初日の緊張感はもちろんあると思いますがその静かな振動の連鎖に敏感に、そして丁寧に向き合ってゆきたいです。稽古場では皆さんそれぞれの繊細な表情の変化に釘付けでした。劇場空間の中で日々お客様と共にじっくりとこの世界観を味わいつくしたいです。

水澤紳吾
舞台ならではの緊張感にヒリヒリしております。目の前の相手、状況をしっかり感じて生々しく立てているようにしたいです。なかなかうまく生きていけない人達の、ダメで、不格好で、切実で、懸命な姿は、おかしく、もの悲しいです。赤堀さんの作品に出てくる人物に、私は共感することが多く、ですので、必死でやって、なんとか何か心に残るものを捻出できればと思います。よろしくお願いいたします。

樋口日奈
自分が抱くイメージを「逸脱すること」、新鮮な気持ちで舞台の上に立ち「実存すること」を大切に毎公演臨みたいです。今回始めて赤堀さんの作品に参加させて頂きます。赤堀さんの描く世界に登場する人物は、なぜだかわからないけど、どこか愛おしく思える瞬間があると、お稽古場で皆さんのお芝居を拝見しながら感じておりました。私が演じる”若い女”にもそんな瞬間があるのでしょうか…。見に来てくださった皆さまの心に、どのような感覚が残るのか、すぐさま感想を教えていただきたいほどに楽しみです!

薬丸 翔
身が引き締まる思いで、開幕を待ち構えています。まだやらなきゃいけないことが多くあると思っています。自分を疑い、慢心せず、本番になったら色んなものを脱ぎ捨てられる柔軟さを持って本番に臨みたいと思っています。誰か特定の人が「ボイラーマン」なのだと思っていましたが、「誰か」がではなく、「誰しも」がボイラーマンなのではないかと今はそう思っています。生きる希望とかそういうものではなく、それでも生きていくという決意を感じる作品なのだと個人的には思っています。

井上向日葵
この作品をお客さんの前で演じる時、どのような反応があり、作品の空気がどう変化していくのか全く予想が出来ません。だからこそ日々の違いを新鮮に感じながら楽しんで演じていきたいです!登場人物たちがどこから来てどこに向かっていくのかは、観る人によって応えが変わってくるのではないでしょうか。舞台上の一瞬一瞬を、ただぼんやり眺めてみたり、時には細部に注目してみたり、ぜひいろいろな視点でお楽しみいただけたらと思います。

【公演情報】

⾚堀雅秋プロデュース『ボイラーマン』
作・演出:赤堀雅秋
出演:田中哲司 安達祐実 でんでん 村岡希美 水澤紳吾 樋口日奈 薬丸 翔 井上向日葵 赤堀雅秋(※樋口さんの「樋」は点が二つのしんにょうです)
●3/7〜20◎東京公演 本多劇場 
〈公式サイト〉https://www.comrade.jpn.com/boilerman/
〈公式X〉https://twitter.com/boilerman2024/

【撮影:引地信彦 】

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