【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第145回「学校をリノベした稽古場」
私は今、7月22日(土)〜30日(日)にサンシャイン劇場にて上演されますNAPPOS PRODUCE「嵐になるまで待って」の稽古中です。キャラメルボックスさんが30年に渡って何度も上演してきた代表作の一つでして、完成度も高く愛され続けてきた作品です。そんな名作に初参加する私としましては、これまでの上演に負けないようにしっかりと稽古をしている真っ最中です。
さて、そんな演劇を上演するためにはもちろん稽古場が必要です。演劇やバンド、合唱団にとって稽古場確保が大変だという話は以前にも書きましたね。
http://blog.livedoor.jp/nikkann-awane/archives/50858204.html
規模の小さな小劇場演劇に於いては、今でも公民館などの公共施設が稽古場として重宝されています。しかし、その使用権利を獲得するのが大変なんですね。もちろん、きちんと整備された商業スタジオもあるのですが、やはりその使用料は高価だし予約も中々取れません。演劇の稽古場確保ってのはとても大変なのですよ。
しかし、この公民館と商業スタジオの中間のような稽古場があるのです。なんですと! そんなお手頃な施設があるんですか? ええそうなんです。それが「学校をリノベした稽古場」なのです。
東京や大阪などの大都市の都心部ではオフィス化が進んで住宅が減少し、それに少子化も加わった結果、小中学校の統廃合が増えています。要するにいくつかの小中学校がまとめられて一つになってしまい、廃校となった学校があるというコトです。
跡地は取り壊されて商業施設として再開発されたりもするようですが、それとは別に、校舎をそのまま再利用して官民共同の地域振興センターや郷土資料館などに転用される場合もあります。新宿にある吉本興業の東京本部は小学校を再利用したものであるのも有名ですね。地方の場合は校舎を利用した宿泊施設になったり美術館になったりして話題を呼んだのを聞いた方も多いでしょう。
それと同様に、校舎をそのまま再利用して、演劇やダンスなどの稽古場として活用されている例があるという話なんですよ。私が知っているだけでも東京で数カ所、それに大阪や京都にもそんな施設があります。しかも意外と交通の便の良い立地にあるんですよね。私が知らないのを含めればかなりの数があるのかもしれません。
学校の校舎が稽古場に向いている理由はいくつもあります。まず、皆さんもご存じの通り教室というのは意外と広くて手頃なサイズです。そして学校にはそんな手頃なサイズの教室が一杯あるワケですよ。手頃に区切られた個室が一杯あるってワケですよ。
窓も広くて明るいし、天井もそこそこ高い。机や椅子、ホワイトボードなどの備品も潤沢にあります。広い校庭は駐車場にも転用できますし新たに防音のスタジオなどを建てるスペースもあるという至れり尽くせりセリナズナ。
そして何よりも音楽室や体育館があるのがいいよね。音楽室はさらに広くて防音設備や音響設備も整っている。体育館に至っては相当に広くて天井が高い。中劇場以上を想定した舞台の稽古だってできてしまうのです。
どうですか。いかに学校という施設が演劇稽古場として優れているかがお判り頂けましたでしょうか。私としては、こういった廃校を再利用した稽古場がもっと増えれば良いのになと思っております。
とはいってもねえ、統廃合が進んだとはいえ廃校がおいそれとゴロゴロしているワケでもありませんし、自治体の土地ですからそう簡単にはいきません。それぞれの自治体にも様々な思惑があるでしょうし地域住民の皆さまの理解も必要でしょう。
まあもちろん商業施設にした方が儲かるでしょうし地域への貢献度も高いかもしれません。それでも、そういった演劇稽古場が増えたら良いなと思います。そりゃ私が演劇人だからですが、ほら、地域のお祭りの稽古とか、盆踊りの講習会とか、俳句会の会合とか、色々と便利に使えると思うんですけどね。
そんなこんなの演劇稽古場事情。廃校以外にも物流倉庫を改造した稽古場とか、民家の地下室が稽古場として貸し出されているとか、マンションの空き部屋で稽古したことがあるとか、そりゃもう様々な稽古場で稽古してきました。
まあ、演劇の稽古場事情ってのは面白いんですよって話でした。これからも様々な場所で稽古に励んでいきたいと思います。ではまた来月。
今年の10月にオープン予定の扇町ミュージアムキューブ。劇場に加えて稽古場もあるようですよ。
プロフィール
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み
【出演予定】
NAPPOS PRODUCE 『嵐になるまで待って』
2023年7月22日〜30日◎サンシャイン劇場