前衛的なギリシャ神話の世界に挑む! 舞台『エウリディケ』和田雅成・水嶋凜インタビュー

水嶋凜 和田雅成

舞台『エウリディケ』が、来年2月に東京・大阪で上演される。

本作は劇作家サラ・ルールの戯曲で、ニューヨークタイムズ誌で「神秘的で素晴らしい前衛的な作品」と紹介されるなど、独特な視点とユニークな筆致で高い評価を得ている。演出は、2017年の『オーランドー』に続きサラ・ルールの戯曲に再び挑む白井晃が手がける。

タイトルロールのエウリディケを演じるのは水嶋凜、その夫で音楽家のオルフェを演じるのは和田雅成。白井演出は初めてとなる二人に、本作へ挑む思いを聞いた「えんぶ12月号」のインタビューをご紹介する。

神話が元になっているけど人間を描いている 

──今回初めてご一緒する白井晃さんに対してどのようなイメージをお持ちでしたか。

水嶋 私は白井さんがご出演された舞台『アンチポデス』(2022年)を見て、優柔不断で言っていることが全部矛盾している役を演じられていたのが印象として残っていました。でもこのお話をいただいてお会いしたら全然印象が違って、感覚をすごく大事にされているけれども、根底には確固たるものを持っていらっしゃる方なんだな、と思いました。

和田 僕は白井さんの演出作品をいくつか拝見しているのですが、初めて見たときから「うわぁ、演出すごすぎる!」ととても興味をひかれました。こんな演出をされる白井さんはどんな方なのかな、と思いながらお会いしたら、物腰が柔らかくて人に寄り添ってくださる方で、作品の印象ともまた違いましたね。

──今作はギリシャ神話が元になったお話です。今作に挑まれる今のお気持ちは。

水嶋 大昔のお話なのに、共感できるところが多いことにちょっと驚きました。私自身はエウリディケほど感情の起伏は激しくはないのですが…(笑)。難しいと感じる部分がありつつも、結局のところ根はシンプルというか、今を生きる自分に近いところも感じるし、ある意味自分の中にある感情をちゃんと引き出せたらいいなと思いました。

和田 神話が元になっているけど人間を描いているよな、と感じました。オルフェの場合、自分の芸術に対する思いに固執しているところもあって、そういう考えを曲げないところとかは共感できる部分も多いけれど、脚本を読んだだけではわからないところもあって、もっと理解を深めていかないとな、と思っています。

今回の劇中歌はミュージカルと全然違う

──オルフェは死者の国からの帰り道で「振り返ってはいけない」と言われますが、もし自分だったら振り返らずにいられる自信はありますか。

和田 エウリディケとオルフェを描いた作品はたくさんありますが、作品によってそこの描き方が違って、「振り返らなければ会える」と明言されていないものもあるんですよ。だからオルフェは、エウリディケが本当にいるのかどうか不安になって振り返ってしまうんじゃないかな。「振り返らなければ会える」とはっきり言われていたら振り返らないですけど、そうじゃなかったら不安になると思いますよ。愛していたからこそ不安になって振り返っちゃう、というのもあると思います。

水嶋 もしかしたら二人は一緒にいた時間がそんなに長くなくて、短期間でグッと好きになってまだアツアツの状態だから、いろんなところが未熟なのかもしれないですね。

和田 確かにそうかも。

──今回、お二人とも歌うシーンがあるとうかがいました。

和田 具体的なことはまだこれからですが、何曲かあるみたいですね。それはもう凜ちゃんにおんぶにだっこで(笑)。しかも英語詞なんですよね。

水嶋 ……頑張ります(笑)。

和田 もう、頑張りますとしか言えないです(笑)。お客様もビックリするかもしれないですね、「え、いきなり歌い出した」って(笑)。

──ストレートプレイの中で歌を歌う場合、ミュージカルや音楽劇ともまた勝手が違うのかな、という気がしますがいかがでしょう。

和田 僕はあまり「歌」だと思ってやらないかもしれないです。そのときオルフェが感じた思いとしてのセリフの一部のような感覚で、もちろん歌のうまさも大事ですけど、僕の場合は「うまい」じゃなくて「思い」だ、と思いながらやっていて、今回はとくに、歌うというよりは、語る方がいいのかなと思っています。

水嶋 ミュージカルの場合は、役の感情を歌に乗せるという感じなのですが、今回はミュージカルとは違って、二人が日常の中で歌うような歌、として捉えています。

稽古で行き詰ったときの解決法は

──水嶋さんは今回ストレートプレイへの初挑戦となります。

水嶋 ミュージカルに比べて歌わない分しゃべる量が多くなるので、ストレートプレイというだけで別の緊張感が生まれます。特に今回はセリフ量がものすごく多くて。

和田 エウリディケは多いよね!

水嶋 初めて長いセリフに挑戦するので、一人でしゃべりながらお客様を退屈させずにちゃんと伝えることができるよう頑張りたいと思っています。

──和田さんはこれまで幅広い作品にご出演されてきました。

和田 それだけこの仕事を長くやっている、ということですけど、僕は本当に運が良くて、運だけでここまで来たな、と思います。様々な舞台に出ることで、ファンの方から「世界が広がった」と言っていただけるのはとてもありがたいですね。今作も、ギリシャ神話だったり、初めての白井さん演出だったり、僕自身にとってもこれまでにない世界になるので楽しみです。

──水嶋さんにとって和田さんは舞台俳優として先輩になりますが、今回の作品に挑むにあたり何か聞いておきたいことはありますか。

水嶋 そうですね……やっていく中で行き詰まることが絶対にあると思うんですけど、そういうときは誰に相談しますか?

和田 行き詰まったときは、行き詰まったまま苦悩して、自分で何とかするかも。自分からしか生まれないものって絶対あると思うんだよね。もちろん、演出の白井さんからはどう見えているか、とかを聞きながらにはなるけれども。

水嶋 あまり誰かに意見を求めたりしないんですか?

和田 うん、もちろん聞いた方がいいときもあると思うけど、人に聞くのって最終的に楽じゃない?多分凜ちゃんも、自分でいろいろ苦悩しながら出したものがすごく魅力的になるタイプだと思うんだ。苦しんだ分だけ舞台上で輝けると僕自身も信じているから、自分で苦しんじゃうかも。多分、本番中もまだ悩み続けると思うけど、今回の役的にもそれでいいんだと思う。

水嶋 そうですね、苦しんだ方が絶対いいものが生まれますよね。今回、いっぱいしごかれるのを楽しみにしたいと思います!

水嶋凜 和田雅成

みずしまりん○1999年生まれ、東京都出身。2021年1月テレビ東京『直ちゃんは小学三年生』にて女優デビュー。 22年前期NHK連続テレビ小説『ちむどんどん」に出演、22年9月、ミュージカル『シンデレラストーリー』で初出演にして初主演に抜擢される。また武部聡志プロデュースとなる「予感」でアーティストデビューした。現在、毎週土曜23時30分よりテレビ朝日系にて放送中の土曜ナイトドラマ「泥濘の食卓」に出演中。

わだまさなり○1991年生まれ、大阪府出身。舞台や映像で幅広く活躍中。最近の出演作品は、【舞台】『燕のいる駅-ツバメノイルエキ-』ミュージカル『ヴィンチェンツォ』『ダブル』『刀剣乱舞』シリーズ、『風都探偵 The STAGE』【ドラマ】『その結婚、正気ですか?』『夫婦円満レシピ〜交換しない?一晩だけ〜』『あいつが上手で下手が僕で』シリーズ、など。月刊ザテレビジョン「what about りんりん?!」連載中。

【公演情報】
『エウリディケ』
作:サラ・ルール 
演出:白井 晃
翻訳:小宮山智津子
出演:水嶋凜 和田雅成
櫻井章喜 有川マコト 斉藤悠
崎山つばさ 栗原英雄
演奏:林 正樹(ピアノ) 藤本一馬(ギター)
●2024/2/4〜18◎東京公演 世田谷パブリックシアター
●2024/2/24・25◎大阪公演 梅田芸術劇場  シアター・ドラマシティ
〈公式サイト〉https://eurydice-stage.com/

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