【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.137「しんぱんのしんぱい」

自分のかく汗の量に多少ひき気味な最近というか、マストアイテムの麦わら帽子だけでは足らなくて傘もさしてしまうこの頃なのであります。
 
オリンピックが終わりました。
そしてオリンピックの度に思う。
なぜこうも尽きないのか疑惑の判定問題。
ビデオ判定が随分と増えてきたので、多少は軽減されても良さそうなものなのに、減ったとは感じられなかった。
サッカーのオフサイド判定に至っては、機械さえなければ的な問題が起きていて余計にややこしく感じたものだ。
判定というものがある限り、紛糾が尽きることは永遠にないのかもしれない。
人間界に、判定は向いていないのかもしれない。
つまり、「判定」をする限り、疑惑も紛糾も起こるものなのである。
などとよぎりながら、審判員のことを思ふ。
審判の多くにとっても、オリンピックなどはめちゃくちゃ特別なものに違いなくて、きっとめちゃくちゃ栄誉なことなのだろうし、めちゃくちゃ緊張もすれば、めちゃくちゃ気合いも入っている。
前の晩に酒を飲みすぎるなんてこともしなければ、ベストの心身でのぞめる準備をしているに違いない。
それでも、毎回起こるのだ。自分の一判断で大きな紛糾が。
そういう職業ですからと、とうに覚悟は決めているのだろうけど、そこで食らうものの大きさたるや、想像しきれないものである。
その点では、ビデオや機械が導入されて、助かるようになったところは多いのかもしれない。審判個人に向けられるヒボウチュウショウは、多少は減ったのかもしれない。
ああ、ヒボウチュウショウ。
私だってもちろん、試合見ててプンスカブースカ言うが、そこまででいいじゃないか、一人で言っていればいいじゃないか。本人に発射しちゃっちゃそりゃもう弾丸。
と思うので、独り言を発射できちゃうS N Sに未だに手を出せないのである。
あんな手軽なものが手元にあったら、虫の居所が悪い時につい愚痴っとポチっとしてしまいそうで。自分で自分を審判できないのだから、人の審判なんて私には到底できないと、つくづく思うこの暑夏なのである。

著者プロフィール

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。

【今後の予定】

・彩の国さいたま芸術劇場・音楽劇「死んだかいぞく」
脚本・演出:ノゾエ征爾 原作:下田昌克
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/99619/
7月20日〜7月28日(彩の国さいたま芸術劇場 小ホール)
8月  4日(日)上田公演(サントミューゼ 小ホール)

8月  7日(水)富山公演(オーバード・ホール 中ホール)

8月10日(土)福井公演(ハーモニーホールふくい 小ホール)

8月17日(土)神戸公演(神戸文化ホール 中ホール)

8月21日(水)北九州公演(J:COM 北九州芸術劇場 中劇場)

8月24日(土)・25日(日)岡山公演(岡山芸術創造劇場 ハレノワ 中劇場)

8月31日(土)松本公演(まつもと市民芸術館 小ホール)
 
・モチロンプロデュース「ボクの穴、彼の穴。W」
翻案・脚本・演出:ノゾエ征爾 翻訳:松尾スズキ 
原作:デビッド・カリ、セルジュ・ブロック
9月17日〜9月29日@スパイラルホール(東京)
10月4日〜10月6日@近鉄アート館(大阪)
https://otonakeikaku.net/stage/5055/
 
・世田谷パブリックシアター「ロボット」
潤色・演出:ノゾエ征爾 原作:カレル・チャペック
2024年11月〜12月@シアタートラムほか
https://setagaya-pt.jp/stage/15694/

▼▼前回の連載はこちら▼▼
https://enbutown.com/joho/2024/07/17/nozoe136/

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