舞台『血の婚礼』間もなく開幕! 中山優馬インタビュー

栗山作品は最小限の装備で戦っているような感覚!

演出・栗山民也、主演・中山優馬による舞台『血の婚礼』が、12月7日から東京・IMM THEATERにて幕を開ける。(18日まで。そののち12月28日・29日に兵庫公演あり。)

本作は、スペインを代表する劇作家フェデリコ・ガルシーア・ロルカが実際の事件をもとに執筆した戯曲で、灼熱のスペイン・アンダルシアの地で結婚式を迎えようとしている一組の男女のもとに、花嫁の昔の恋人が現れたことにより繰り広げられる、愛と運命の物語が描かれている。

花嫁のかつての恋人で、抑えきれない熱情を抱えたレオナルド役の中山優馬は、栗山民也演出作品へは2017年のミュージカル『にんじん』、2020年の『ゲルニカ』に続き今回が3回目の出演となる。

「栗山さんの作品に出られることが嬉しい」と語る中山に、本作へ挑む思いを聞いた「えんぶ12月号」のインタビューをご紹介する。

栗山さんとならどんな作品でもやりたい

──まずは本作への出演を決めた理由から教えてください。

栗山さん演出の作品でお話しをいただけたことがすごく嬉しくて、栗山さんとご一緒できるのであれば、どんな題材でもやらせていただきたいと思いました。とても優しくて紳士的な方ですし、僕は栗山さんの稽古場に漂う緊張感がすごく好きなので、一緒にお仕事をしていて刺激的な日々でしたし、栗山さんからいただいたお言葉が、その後にやった作品にも生かされるようなことがたくさんありました。

──栗山さんからいただいたお言葉の中で特に印象に残っているものがあれば教えてください。

『ゲルニカ』のときに「ここでブレイクダンスみたいな感じで動いて」というようなことを言われて、最初のうちは「なんで今、ブレイクダンスっぽい動きをしているんだろう」と思いながらやっていたんですけど(笑)、こういう動きになってしまう状況ってどういうことなんだろう、普通に走り出すのではなくて、意味のわからない足の使い方をするような心理状態になるということはそれだけ大きな衝撃を受けたんだろうな、というところからヒントをもらいながら、栗山さんには見えている最終形態というか、役者にここまで行ってほしいと思われているところにどうたどり着くか、というのが自分の課題でした。

全身全霊でぶつかって生きるしかない役

──戯曲を読んでみて、率直な感想はいかがでしたか。

物語自体はシンプルなので、小細工が全く通用しないというか、技術で何とかできるような作品ではないと思いました。ただただ全身全霊でぶつかって必死に生きるしかない役だという印象で、今まで役者として活動してきた経験を全てまとってステージ上に存在するようなお仕事になるな、と思いました。

──中山さんが演じるレオナルドという役について、どのような人物だと思われますか。

僕はレオナルドがどんどん愛すべきキャラクターに思えてきています。そう思うのは自分が演じる役だからかもしれませんが、でもすごく人間らしくて、強い人間だけど同時にすごく弱い人間だなとも思うし、いまの時代だと難しいかもしれないけれど「全ての常識を無視してやれ」というような衝動というか行動力がかっこいいなと思うところもあります。

──レオナルドがいかに愛おしい一人の人間として見えるか、というのは本作のひとつのポイントかもしれませんね。

そう思います。どのキャラクターも絶対愛されなきゃいけないキャラクターだと思いますし、それぞれに正義があると思うんです。その中でレオナルドの正義というのは賛否の分かれる正義で、レオナルドは結果的に、社会のルールからすれば悪いことをしてしまうのですが、その衝動を持って人間としてちゃんと生きたレオナルドの覚悟とか、葛藤とか、乾きの部分とか、そういうものを自分が表現できれば、愛されるべき人間の感情をレオナルドの中から受け取ってもらえるんじゃないかな、と思います。

──過去に何が起きたのかはっきり書かれていなかったり、想像力を掻き立てられる部分が多い戯曲です。

舞台上に登場した瞬間から「こいつら何かがおかしいぞ」というような違和感みたいなものは、役者の存在感からしか生まれないと思います。詩的な表現が多いので、綺麗なセリフをただしゃべるだけだと空っぽな芝居になってしまう危険性も大いにあると思うので、そこが一番気をつけなければいけない怖いところです。

その人物として生きていく瞬間が楽しい!

──中山さんは本作のような重厚な作品からエンターテインメント作品まで幅広くご出演されています。俳優として目指す地点や、こういうふうになりたいという理想や目標はありますか。

なんでしょうね……お芝居は、自分の理性とは関係ないところで物語が進んでいって、虚構の中だけど本当に心を動かして、その人物として生きていく、という瞬間が楽しいんですよね。だから、もっといろんな人生を歩いてみたい、ということと、信頼される役者になりたい、という思いはありますね。「中山にこの役やらせておけば、ある程度はちゃんとやってくれるだろう」と思われるような役者にはなりたいです。

──今年7月~8月は『Endless SHOCK』に5年ぶりにご出演されました。堂本光一さんからはどのような影響を受けてこられましたか。

光一くんからはやり続けることの大変さと、作品のレベルを保つすごさを学びました。例えば感情が大きく動くようなお芝居の場合は、結末は一緒でもそこにたどり着くまでの過程で、感情の流れが少し違ったりぶつかり合ったり、そういう意味でのハプニングがいろいろ起きるので常に一定したものにはならないんですけど、光一くんの作っているエンタメはずっと高い水準の平均点を叩き出すというか、安定した変わらないものを提供し続けていて、その大変さとすごさをすごく感じました。

──今年はエンタメ作品の舞台出演が続きましたが、本作は方向性が全く違う作品になります。

栗山さんの作品は怖いですよ。舞台をやっていると、大抵はどこかに逃げ道があったりするんですけど、栗山さんの作品はすがるところがない感じがするんです。最小限の装備で戦うというか、無課金で戦っているみたいな感じです(笑)。今回は全員がぶつかり合うお芝居だと思うので、ぶつかり合いの中で誰かが受け止めるのをやめた時点で崩壊すると思うんです。そういう意味では本当にチームプレーですし、その中の個人プレーもすごく大事なので、スリリングな作品だと思います。

──現時点では、怖い気持ちと楽しみな気持ちではどちらが大きいですか。

楽しみが大きいです。やっぱりこういう芝居をやりたくて、自分は役者になりたいと思っていましたから。セリフも決して多くないので、今回はセリフの練習よりもっと大事なものが稽古の中でも見つかると思っています。最終的にどんな芝居になっているのか、自分が一番期待もしているし、びびってもいます。

【プロフィール】
なかやまゆうま○大阪府出身。歌手・俳優。2008年ドラマ「バッテリー」初主演で俳優デビュー。12年10月シングル「Missing Piece」でソロデビューし、同曲が主演ドラマ「Piece」の主題歌となる。15年舞台『ドリアン・グレイの肖像』で初単独主演、16年映画「ホーンテッド・キャンパス」で初主演。最近の舞台作品は、『ダディ』、即興音楽舞踏劇『砂の城』、『星降る夜に出掛けよう』、『大誘拐』~四人で大スペクタクル~、『Endless SHOCK』など。

【公演情報】
『血の婚礼』
作:フェデリコ・ガルシーア・ロルカ 
翻案・台本:木内宏昌
演出:栗山民也
出演:中山優馬 宮崎秋人 伊東蒼 岡本玲/舩山智香子
柴田実奈 金井菜々 角川美紗 谷田歩 秋山菜津子 
●12/7〜18◎東京公演 IMM THEATER
〈チケット問い合わせ〉サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00〜15:00)
●12/28・29◎兵庫公演 兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
〈チケット問い合わせ〉芸術文化センターチケットオフィス 0798-68-0255(10:00-17:00 月曜休/祝日の場合翌日)
〈公式サイト〉https://chinokonrei24.srptokyo.com/

【インタビュー/久田絢子 撮影/福岡諒祠(株式会社GEKKO) ヘアメイク/二宮紀代子 スタイリスト/柴田拡美(Creative GUILD) 衣装提供/ベスト SEVESKIG(severing.net/) パンツ Taiga Igari(taigaigari@gmail.com) 靴 RED WING WING(RED WING JAPAN 03-5791-3280)】

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