梅棒 19th GIFT『クリス、いってきマス!!!』開幕!  生駒里奈・天野一輝[梅棒]・多和田任益[梅棒] インタビュー

さまざまな劇場で繰り広げられるエンターテインメントやアーティストのLIVE、さらに映像メディアまで、ジャンルを超えて振付や演出などで活躍するダンスエンターテインメント集団「梅棒」。

その最新作となる梅棒 19th GIFT『クリス、いってきマス!!!』が、12月1日開幕の東京・サンシャイン劇場を皮切りに、大阪・COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール、名古屋・ウインクあいちで上演される。

《STORY》
この世界の誰もがサンタクロースに憧れを抱いていたあの頃。サンタクロースは自分の後継者を育てるべく、世界中から子どもたちを集めて修行させていた。
時が経ち…後継者の座を勝ち取ったニコラスはずいぶんとぐうたらな日々を過ごしていた。というのも、子どもたちはサンタクロースにプレゼントをお願いしなくなり、すっかり人気を失ってしまったのだ。弟子のクリスは情けない師匠の姿に失望しつつ、退屈な毎日を送っていた。
そんなある日、2人のもとに届いたプレゼントを求める一通の手紙。配達を託された弟子のクリス。一人の少女の想い、かつての因縁、プレゼントをめぐり絡み合う運命…。何があっても、このプレゼントは絶対に届けてみせる!
打ち鳴らせ、ジングルベル!きよし、この夜!!クリス、いってきマス!!!

この作品『クリス、いってきマス!!!』は、1年ぶりとなる梅棒の完全新作。その主人公でサンタクロースの弟子・クリス役を演じる生駒里奈、クリスの師匠であるニコラス役の天野一輝、サンタクロースとはある因縁を抱えているビクター役の多和田任益という3人に、本作の内容や役柄、そして梅棒のステージの魅力について語り合ってもらった。

多和田任益[梅棒]  生駒里奈  天野一輝[梅棒] 

誰ひとり置いていかない舞台

──まず天野さんから、今回この作品を上演することになった経緯などを話していただけますか。

天野 僕らはわりと冬の公演が多いのですが、意外とクリスマスシーズン・12月に、地方含めて終演する時期には上演していなかったんです。今回はちょうどクリスマスということで、やはりそれにちなんだ話がいいんじゃないかと。それに梅棒は基本的にノンバーバルで話を構成しますので、できるだけ「あるある」という感じで、誰にでも想像しやすい世界観が話を創りやすい。また、今回は梅棒公演としては出演者が少なめなので、1人1人のドラマを丁寧に描くことができる。「クリスマス」がテーマなら、ファンタジーでありながら人間ドラマも描ける題材なので、ぴったりだと思ったんです。

──そして今回は生駒里奈さんが初参加します。   

生駒 これまでずっとオファーをいただいていて、まだグループにいる頃にも先輩に「生駒ちゃんは梅棒に出たらいいと思うよ」と言われたりしていました。他の公演で共演した野田(裕貴)さんや梅澤(裕介)さんにも、「今度、梅棒へ出てよ」とお声がけしていただいたり。でもなかなかタイミングが合わず、今回やっと念願叶って初参加させていただきます。すごく嬉しいです。

──梅棒の公演を観たことはありますか?

生駒 映像で何作か拝見していましたし、生の舞台は前回の『シャッター・ガイ』が初めてでしたが、すごい迫力で衝撃を受けました。それにあんなにお客さんを誰ひとり置いていかない舞台も初めてで。どんな舞台でも1人や2人は乗らないお客さんがいるんですけど、そういう方もうまく巻き込んでいって、客席全員を「気持ちよかった!」という雰囲気にしてくれる。そういうところはすごいなと思いました。手拍子なども梅棒ファンのお客さんがリードしてくれるし、客席に役者さんが降りてきて、目の前に来ていろいろやってくれたり。私はちょっと恥ずかしかったんですけど(笑)。

多和田 この公演ではやる側になるわけだけど。

生駒 やる側になったらめちゃくちゃ煽ります(笑)。

──この作品の内容についてはいかがですか?

生駒 絵本を読んでいるみたいな楽しさがあるなと。演じる立場で読んだときは私が演じるクリスがバランサーだなと思いました。稽古をしていても、この役は周りの方たちの演じ方で毎日変わっていく部分があって、いわゆる「受け」の役なんですが、だからこそ芯のところは変わらないように作っていきたいです。

──多和田さんは作品の内容についてどう感じていますか?

多和田 この作品は皆さんがまず想像するようなクリスマスの話ではなくて、一捻りも二捻りもしてあるところが梅棒らしさだなと思います。普通にクリスマスプレゼントを届けたいというところを、「いや届けさせない!」みたいに物語を広げていくところとか(笑)、梅棒には人間じゃないキャラクターもよく出てくるんですが、そういうキャラにもそれぞれ個性があり成長物語があることとか。そのうえで王道らしさというか、誰もが抱いているクリスマスへの思いや、子どもだった頃の懐かしい記憶とか、親になって子どもを持ったときのクリスマスへの感じ方の変化なども描いています。それにプレゼントもテーマの1つになっていて、プレゼントって大人も子どももワクワクするじゃないですか。そういう意味で、この公演もプレゼントみたいにワクワクしていただける作品になっていると思います。

クリスの純粋さは子ども時代を思い出させる

──それぞれの役柄についても伺います。天野さんはサンタのニコラスです。

天野 ニコラスは厳しい選抜試験を勝ち抜いてサンタクロースになったのに、時代が変わって、子どもたちから手紙も来なくなってしまったので、すっかりダラけて暮らしているんです(笑)。物語の前半ではすごいがんばるんですが、1曲挟んだらいきなり怠惰になっているという役です(笑)。

──そんな役へのアプローチは?

天野 僕はイベントとか出掛けるよりは家にいるほうが好きな人間なんですが、ニコラスは逆で、本来は前向きでピカピカ要素のある人なんですよね。そこは自分にない感覚なのですごく新鮮です。あとはとにかくクリスの師匠の役なので、クリスに真っ直ぐな背中をちゃんと見せていきたいですね。

──そのクリス役は生駒さんです。
 
生駒 クリスはすごく真っ直ぐで純粋で、ニコラスに対する思いなどが輝きすぎていて、私もこういう時代があったけど、もう大人になっちゃったんだなと、ちょっと切ないです(笑)。でも自分の中にあったそういう気持ちを思い出しながら演じたいと思いますし、観てくださるお客さんたちも、クリスの姿に自分の子ども時代の純粋さを思い出してくださったりするんじゃないかと思っています。

天野 たぶんニコラスみたいな部分もクリスみたいな部分も、みんなにあると思うんです。だから、自分はあの時はこうだったなとか思いながら観ていただけば、何か1つ届いたということになるかなと思っています。

──多和田さんはビクター役を演じます。

多和田 ビクターはサンタクロース選抜試験に落ちて、ちょっとこじらせてしまって、自分のせいなのに素直になれなくて強がっている、今も子どものままみたいな人間です(笑)。でもそういう人ってどこにでもいるし、わりとみんなそういう部分を持っているんじゃないかと思います。そして、ビクターは今では大企業の社長になっているんですが、でもそうなれたのはニコラスへのライバル心があったからで。それは俳優の仕事でも同じだし、観ているお客さんにもあると思うんです。ただビクターはその過程でみんなを傷つけたり、掻き回したりしてしまう。でもそこから自分がやっていることの間違いにも気づいていくのですが。そのあたりの変化も見せていきたいですし、すごくやり甲斐のある役だと思っています。

──すごく起伏に富んだ生き方で、いろいろな面を持った人ですね。

多和田 ビクターにとっては娘のアンバーの存在がとくに大きくて、アンバーとの気持ちのすれ違いが、物語の中でも重要な要素になっています。娘の笑顔を崩したくないのに崩してしまうビクターの気持ちとか。

生駒 切ないよねー。

多和田 観ている方にも、わかるよねーと思っていただけるように、丁寧に演じたいなと思っています。

バラエティに富んでいるダンスナンバー

──梅棒公演と言えばダンスですが、生駒さんはダンスが得意ですね。

生駒 やめてください(笑)。梅棒さんのダンスは全然違いますから。ただ観る前は心配で大丈夫かなと思っていたんですが、舞台を観ていたら役に入れば踊れるのかなと思いました。ちゃんとクリスくんになれれば大丈夫かなと思っています。

──今、稽古をしていて難しい振付などありますか?

生駒 振付の方にもよりますけど、基本はジャズで、私はジャズダンスを習っていたのでなんとか踊れています。それにダンスを見せる部分もありますが、1つの作品の表現をみんなで作る中にダンスもあるので、一緒に作品を作っているという感じで、楽しく踊らせてもらっています。

──天野さんも多和田さんも振付をしますが、振りを作るときは自分ならこう踊りたいという発想なのですか?

天野 僕の場合は、自分のシーンは他の人に振付してほしいタイプなんです。自分が考える表現はどうしても自分のできるものしか出てこないし、自分の動きは一番考えづらいんです。でも例えばクリスをどう動かそうとか、ビクターの動きはこうしたいとかの方がイメージ湧きやすいです。

多和田 僕は、いわゆる「踊るぞ!」みたいなダンスより、そのシーンの心情に添ったダンスのほうが振り付けしやすいです。自分が役者だから特にそうなのかもしれませんが。それにいつも思うことは、例えばクリスのダンスを振り付けるときは、クリスとして踊るというだけでなく、生駒ちゃんがこういうのを踊ったら映えるだろうな、可愛く見えるだろうな、というのがベースにあるんです。でもときにはこういうシーンだからみんなでこういうふうに踊ってほしいとイメージを優先するときもあって、それぞれ時と場合で取捨選択していますね。それに相手がダンサーさんと役者さんではまた違って、ダンサーさんには難しい踊りでもいいけど、役者さんには踊りやすいものとか考えます。でもいつも根本にあるのは「その人に合わせてあげたい」で、ダンスシーンは言葉がないぶん踊りで表現させてあげたいと思っています。

──今のお話を聞いて、いつも梅棒公演のダンスナンバーがそれぞれバラエティに富んでいるのは、いろいろなメンバーが振付しているからだとわかりました。

天野 例えばある公演の20曲の中から僕の振り付けたものだけ切り取って並べたら、けっこう似てるんじゃないかと思いますし、ほかの誰かが振り付けたナンバーだけでもそうなると思うんです。そういう意味ではいろんなメンバーの振付が観てもらえるのは梅棒の1つの強みかなと。感情を表現するダンスが得意な人も、ショーアップしたナンバーでダンスのスキルを見せるのが得意な人もいるし、人の流れとか舞台セットの動きとか構成で魅せるのが上手い人もいて、その全てを1人ではできないわけで、お互いに補い合えるのが梅棒の良さなのかなと思っています。

梅棒の公演は「観ると人生が豊かになる」

──そんなダンスが今回もふんだんに出てくる『クリス、いってきマス!!!』 を観てくださるお客様へ、アピールを一言ずついただけますか。

多和田 僕が初めて梅棒を観たときにも感じたんですけど、まず前半から面白さで引っ張っていくんですが、後半でもっと大きなポイントが必ずあるんです。サプライズというかドンデン返しというか。今回も、まず子どもの頃の懐かしい気持ちを思い出すような話から始まって、笑いになって、最後はちゃんと泣けるという。その梅棒の作り方のフルコースなので、絶対に楽しんでいただけますし、初めての方にもすごくわかりやすい作品ですので、ぜひ観にいらしていただければ嬉しいです。

生駒 クリスマスの絵本を読んでいるような、アドベントカレンダーを楽しんでいるようなそういう作品です。舞台はちょっと敷居が高いとか思っていらっしゃる方、めちゃくちゃ面白いので、今すぐチケットを手に入れてください(笑)、と自信を持って言えるぐらいのパフォーマンスをみんなで作り上げます。私も梅棒さんで新しい能力をいろいろ身に付けてさらに成長したいと思っていますし、ぜひ皆さんもこの楽しい作品に参加してください。

天野 ダブルキャストもあるので16人で15役を演じるのですが、それぞれにドラマがあるし見どころがあります。きっとお客さんそれぞれが感情移入していただける役が出てくると思いますし、ご自分の人生と重なるシーンもあると思います。 梅棒を観てくださる方が「観ると人生が豊かになる」と言ってくださるのですが、なくても困らないけどあると人生をより楽しく生きられる。クリスマスもそういうイベントですし、この作品も絶対にそういう作品になる、というかそういう作品にします!ので(笑)、ぜひ劇場で楽しんでください。

生駒里奈 天野一輝[梅棒] 多和田任益[梅棒]

■PROFILE■
いこまりな○秋田県出身。乃木坂46ではデビューシングルから5作連続でセンターを務め、2018年に同グループ卒業後は俳優として舞台や映像で活躍中。近年の作品、【ドラマ】「推しを召し上がれ〜広報ガールのまろやかな日々〜」(テレビ東京)「社内処刑人〜彼女は敵を消していく〜」(関西テレビ)、【映画】「忌怪島/きかいじま」(東映)「室井慎次 敗れざる者」(東宝)「室井慎次 生き続ける者」(東宝)、【舞台】少年社中公演『光画楼喜譚』朗読劇『ROOM』リーディングドラマ『西の魔女が死んだ』朗読劇『青野くんに触りたいから死にたい』など。NHK Eテレ「ストレッチマン・ゴールド」レギュラー出演中。

あまのかずき○東京都出身。東京大学卒業後、不動産会社へ就職。会社員とダンサーの二足の草鞋で活動していたが、脱サラして梅棒の事業法人である「株式会社dynamize」を設立し、代表取締役社長へと就任。振付・出演をこなしながら、公演プロデュース等のマネジメント面を担っている。近年の作品、【振付】『アラジン・クエスト』、滝澤諒「うその音」、『ワールドトリガー the Stage』シリーズ、ミュージカル『SPY×FAMILY』、音楽劇『歌妖曲~中川大志之丞変化~』【振付・出演】「第70回NHK紅白歌合戦」郷ひろみなど。
 
たわだひでや○大阪府出身。俳優・振付師。2011年に舞台デビュー。以降、舞台や映像で活躍中。近年の主な出演作品、【映画】「ひだまりが聴こえる」、【ドラマ】「手裏剣戦隊ニンニンジャー」(EX)、「シュガードッグライフ」(ABC)、【舞台】舞台「文豪ストレイドッグス」シリーズ(2017〜20)、舞台「PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice」シリーズ(2019〜20、24)、『薔薇と海賊』、『アナザー・カントリー』、『白蟻』、『12人のおかしな大阪人2023』、『熱海連続殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』。振付作品は舞台『マッシュル-MASHLE-』THE STAGEなど。 

【公演情報】
梅棒 19th GIFT『クリス、いってきマス!!!』  
作・総合演出:伊藤今人[梅棒]
振付・監修:梅棒
出演:伊藤今人(愛知のみ)、梅澤裕介、鶴野輝一(東京・大阪のみ)、塩野拓矢、天野一輝、野田裕貴、多和田任益[以上、梅棒]
生駒里奈、志田こはく、筒井俊作[演劇集団キャラメルボックス]、一色洋平、SuGuRu、岡島源武[Protea*]、髙澤礁太、鳥飼真大、山﨑琉豊
※伊藤今人は愛知公演、鶴野輝一は東京・大阪公演のみの出演。
●12/1〜15◎東京 サンシャイン劇場 
●12/20〜22◎COOL JAPAN PARK OSAKA TTホール 
●12/26・27◎愛知ウインクあいち 
〈料金〉SS席9,500円 S席8,500円 U-25サービスエリア3,500円(全席指定・税込・未就学児童入場不可) 
※SS席(前方センターブロック/各回席数限定)  
※U-25サービスエリア(25歳以下・身分証明書要提示・当日指定席)
〈公演特設サイト〉http://umebou19th.dynamize.net/
〈梅棒オフィシャルサイト〉https://www.umebou.com/                 
〈梅棒 OFFICIAL FANCLUB『ひのまる弁当』〉https://www.umebou.net/
 

【構成・文/榊原和子 撮影/田中亜紀】

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