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舞台『十二人の怒れる男たち』間もなく開幕! 富永勇也・小波津亜廉・朝田淳弥 インタビュー

朝田淳弥・富永勇也・小波津亜廉 

“法廷もの”の最高傑作として知られる『十二人の怒れる男たち』が、豪華キャスト陣により、3月26日から30日まで、東京・サンシャイン劇場で上演される。

原作はレジナルド・ローズが1954年にアメリカのテレビドラマとして執筆、1957年に映画化されて大ヒットした。舞台でも世界各国で何度も上演されていて、今回は小田島恒志と小田島則子が翻訳を務め、緻密で丁寧な舞台作りでは定評がある野坂実が演出を手掛ける。

物語の内容は、父親殺しの罪に問われた少年の裁判で、12人の陪審員が全員一致の評決に達するまで一室で議論する様子を、リアルにドラマチックに描き出す。

この作品で最初の評決で1人だけ「無罪」に票を投じる審査員8番を演じる富永勇也、それに反発する10番の小波津亜廉、さまざまな意見に揺れる2番の朝田淳弥というキャスト3人が、本作の内容と自分の役柄を語り合う。

時代を超えて上演される王道の会話劇

──まずこの作品への出演が決まって感じたことから伺いたいのですが。

富永 世界的によく知られている面白い作品で、内容も僕がこれからもっとやっていきたい本格的な演劇ですから、ぜひ出演させていただきたいと思いました。演じる役も陪審員8番ということでワクワクすると同時にプレッシャーもありますが、しっかり務めていきたいなと思っています。

小波津 8番はずっとしゃべっていて大変ですよね(笑)。僕は、この作品はかなり以前に映画で観ていて、今回の出演が決まったときにもう一度観なおしたんですが、すごくよく出来た面白い作品だなと。日本ではまだ陪審員制度が出来ていない時代に公開されていますが、そこから時代を超えていろいろなカンパニーで舞台化されたり、三谷幸喜さんのようにアレンジして上演する方がいたり、本当に人気のある作品だなと思います。その作品に出演できて陪審員10番を演じることができることは嬉しいです。会話劇ですから他の役との掛け合いが大事ですし、個性豊かな方々との共演もすごく楽しみです。

朝田 僕も映画を観ています。モノクロなんですよね。そういう時代の作品なのに今の僕たちが観ても共感できるような内容で、しかも会話劇の王道で、いろいろな形でオマージュされている。そういう作品に出演できるのはとても素敵だなと思っています。

──それぞれの役柄についてはどんなふうに捉えていますか。

富永 8番は建築家で、この裁判では正義というものを通すことや論理的に考えていくことを大事にしていますが、僕も曲がったことは嫌いなので。

小波津 うん。

富永 亜廉さんとはよく共演しているので、そこは分かってくれていると思うのですが、自分の中で「これは正しいでしょう」とか「これは間違ってるでしょう」というのが、けっこう強くあるほうなので、そういう部分は似ているかなと。ただ、8番はまったく反対の意見の人たちの中で自分が正しいと思うことをずっと主張し続ける。あそこまで正義感を通していくのは僕自身としてはなかなか難しいですね。

──演じ方について、今考えていることはありますか?

富永 沢山の陪審員たちを相手に場を回していったり、議論したり、発信していく場面が多いので、そこは皆さんとの稽古の中で積み上げていくしかないと思っています。

他人事であっても人一人の命がかかっている

──小波津さんは陪審員10番です。

小波津 10番は固定観念や偏見に縛られている人間で、ずっと怒っているんですよね。僕はこれまで何度か、怒りを抱えていたり怒りでしか自分を表現できない人間を演じてきたのですが、僕自身は基本的にハッピーな人間なので、怒りっぽい人のことは理解しにくいんです。でもそういう人間のどこに怒りのフックがあるのか、そして彼が相手のどこに怒りを感じたのか、そこを想像することが大事だと思っていますし、この10番もそういう彼のベクトルを考えたうえで演じたいですね。 

──10番は修理工場の経営者ですが、差別主義者的な面も持っていますね。

小波津 息子とうまくいってないこともあって、誰にでも突っかかるんですよね。相手をその人としてちゃんと見ようとしないで、自分の狭い世界でしか見ていない。僕は今の年齢になったからこそこういう人も演じられるようになりましたけど、何年か前ならまだ難しかったかもしれません。いろいろな現場と出会ってきた経験が少しは生きるかなと思っています。とにかく楽しんで場をかき回せたらいいなと。全員をイラッとさせて、いろんな相手にフックを掛けさせてもらって(笑)。

──そのフックを掛けられる1人でもある陪審員2番を演じるのが朝田さんです。

朝田 真面目な銀行員ですが、役の説明には、周りに流されやすいとか引っ込み思案とか書いてあって、僕はわりと不憫な役が多いので(笑)、そこは僕っぽいかなと思いました。でも2番は周りをよく見ているし、協調性もある。そして最初は意見をちゃんと言えないんですけど、だんだん言えるようになっていく。それは本当は信念というものを持っているからかなと。そこは僕も同じで、信念を持って生きているので。2番を演じるうえでそのことは大事にしていきたいですね。

──そういう様々な人が集まった陪審員たちの中で、8番は自分と反対意見の人たちを次々に説得していきます。そういう彼の背景とかアイデンティティはどんなところにあるのでしょう?

富永 この作品は登場人物が名前ではなく、陪審員番号で呼ばれるという枠組みになっていますよね。つまり誰でも8番になり得るし、10番にも2番にもなり得るということを描いていると僕は思っているんです。この裁判では8番は確かな信念がありますが、もし状況が違えばまた違っていたかもしれない。たとえば事件の被告人が女性だったとしたら、陪審員たちの評決はまた全然違ったかもしれない。そういう意味で大事なのは、この裁判は他人事ではあるけれどそこに人ひとりの命がかかっていて、自分たち1人1人の評決がそれを左右してしまうという感覚をちゃんと持って向き合えるかで、そういう意識をきちんと持っている8番を演じたいと思っているんです。

それぞれのパーソナルスペースは?

──お互いについてどう思っているか話していただけますか。

富永 小波津さんは2度共演させてもらっていますが、いい兄貴という感じで、面倒見がいいんです。ご飯も何度も連れて行ってもらってます(笑)。

朝田 わー! 僕もお願いします(笑)。

小波津 今回は僕よりもっと大先輩の方々が沢山いますから、そういう方たちに連れて行ってもらいましょう(笑)。僕は面倒見がいいというより、単純に寂しがりやなんです。トミー(富永)については、今回の役が8番と聞いてぴったりだなと。自分の信念をちゃんと持っているし、他人に左右されない自分の空間を持っている。だから最初はちょっと恐い人かなと(笑)。真剣になったときの表情とかすごい真剣なので、あまり立ち入ったらいけないかなと思っていたら、全然そんなことなくて気さくだし、話をすると楽しいし、そして芯があるんです。

朝田 安心しました!最初恐かったなんていうから(笑)。

小波津 いわゆるパーソナルスペースの問題で、誰にでもそういう部分はあるじゃないですか。僕はそれがなくてみんなにオープンなだけに、そのペースで誰にでも話したりしていたんですけど、最近そこはちゃんと学んで(笑)、相手の気持ちを読むことが出来るようになったんです。

──朝田さんから見てお二人の印象はいかがですか?

朝田 第一印象は身長が高いなと(笑)。

富永・小波津 (笑)。

朝田 作品でご一緒するのは初めてなんですが、親しみやすいお兄さんたちという感じなので、仲良くさせていただこうと思っています。

──富永さんと小波津さんは持ち味が正反対に見えますが、実は通じ合う仲なのですね。

富永 前回ご一緒した作品では亜廉さんとかなり一緒にいた記憶があります。舞台での絡みはなかったのに。

小波津 まったく絡まなかったね。

──富永さんは見かけによらずすぐ気を許してしまうタイプですか?

富永 いや慎重派です。とくに先輩だとどこまで踏み込んでいいかわからないし、それに100%大丈夫だなと思わないとだめで、70%ぐらいだと行けない(笑)。でも開いたら一気にこの人大好きだ!ってなるんです(笑)。

──朝田さんはどういうタイプですか?

朝田 僕は自分を説明するときに、庭にはすぐ入れてしまうけれど家には小人数しか入れない人間ですと。でもお二人にもう庭には入っていただいてますから。

小波津 次は家だね(笑)。

考えてもらうための何かを渡したい

──今回はキャストが13人という大人数の公演ですが、そういう作品では何を大事に作っていきますか?

富永 まずはみんなが出ずっぱりですよね。それに陪審員12人の座る席も決まっていると思いますから、その中でどうシーンに変化をつけていけるのか。そこは演出の野坂実さんのお考えもあると思いますが、自分なりに見せ方は考えていきたいですね。

小波津 会話劇ではありますが、誰かがしゃべっているとき、それをみんなが100%聞いているわけではないと思うんです。もちろんしゃべっている人の邪魔をしてはいけないけれど、そこにいる1人1人が自分の役をどう表現するか、そのバランスは大事だろうなと。そして、それぞれがしゃべっている人にとって仲間なのか対立する側なのか、口には出さなくても態度で見せたり、そういう立ち位置が見えたら面白いのだろうなと思っています。

朝田 僕は2つあって、1つは大きな作品こそ小さなことにこだわりたいといつも思っていて、会話劇だからたぶんそれぞれのニュアンスとか毎日変わると思うんです。そこを汲み取ることを大事にしたいなと。もう1つは空気感で、会場となるサンシャイン劇場の空間を含めて陪審員室にしたいなと。先ほど富永さんもおっしゃっていたように、そこにいる全員が他人事ではなく、当事者として受け止めるような空気を作っていけたらいいなと思っています。

──最後に改めてお客様へのメッセージをいただけますか。

朝田 この作品と出会って学んだことが沢山ありまして、先入観とか偏見とか法の持つ力とか、それに自由の幅とか深さも感じられる作品だと思いますし、社会で生きていくうえでの価値観というものが学べる作品だと思います。観に来てくださった方にそういうものを1つ1つ手渡したいですし、何か1つでも感じたことを持ち帰っていただければ嬉しいです。

小波津 最近コンプライアンスが厳しくなっていますが、舞台上のキャラクターたちの中にはコンプライアンスどころではない人物も出てきます。そういうキャラクターを「こうはなりたくないな」とか「ここは共感できるな」とかいうことも含めて、お客さんが自分自身を見つめなおす機会にしていただければと思っています。

富永 僕はこの作品のこのワードを持って帰ってほしいというより、観終わったときにお客様がどう思ってくれるのか、そこが大事だと思っています。そのための何かをちゃんと渡せる作品に作り上げたいと思っています。

朝田淳弥・富永勇也・小波津亜廉 

■PROFILE■
とみながゆうや○神奈川県出身。最近の出演舞台は、アメツチ舞台『アテルイ』、『戦隊大失格』ザ・ショー、紀伊國屋ホール60周年記念公演『熱海連続殺人事件 Standard』、ミステリ・ミュージカル『ルームメイトと謎解きを』、脳内クラッシュ演劇『DRAMAtical Murder』フラッシュバック、日活歌謡シリーズ 第一弾 舞台『夜明けのうた』、舞台版『マーダー☆ミステリー ~探偵・斑目瑞男の事件簿~』など。

こはつあれん○沖縄県出身。主な出演作品は『ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-Rule the Stage』、ハイパープロジェクション演劇『ハイキュー!!』シリーズ、『マッシュル-MASHLE-』THE STAGE 2.5、アイ★チュウ ザ・ステージ シリーズ。最近の出演舞台は、坂東玉三郎 初春お年玉公演『長崎十二景』、朗読劇『刻め!秒針よりも速く!!』、朗読劇『文豪LETTERS』、ミュージカル『鉄鼠の檻』など。

あさだじゅんや○大阪府出身。最近の出演舞台は、劇団papercraft『ミタココロ』、劇団Uzume『「あの春は、いつまでも青い」-永南高 校バスケットボール部-』、劇団papercraft『空夢』、アナログスイッチ『幸せを運ぶ男たち』、『ovation! ovation!!』、劇団チーズtheater『川辺市子のために』、梅棒 遠山晶司作・演出公演『Cʼest Promis』、劇団papercraft『人二人』など。

【公演情報】
舞台『十二人の怒れる男たち』
原作:レジナルド・ローズ
翻訳:⼩⽥島恒志 / 小田島則子
演出:野坂実
出演:富永勇也 小波津亜廉 日向野祥 宮城紘大 朝田淳弥 松永有紘 輝海 宮崎卓真 菊池拳心/細貝圭/松田賢二/牧田哲也/桂憲一
●3/26~30◎サンシャイン劇場
〈公式サイト〉https://12angryman-stage.com/

【構成・文/榊原和子  撮影/中田智章】

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