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株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.146「串田和美さんと笠木泉さんと」

串田和美さんの創作現場は、非常に面白かった。
これまで自分が、こんなアバウトな作り方をしていていいのだろうか?とか、決定したくない、確定したくないとか、
創作に際して持っていた様々な思いや趣向を、よその現場ではあまり歓迎されないような作り方を、真正面から肯定してくださった。というか、串田さんがまさにそういう創作をされていた。
もちろん私なんかよりももっともっと深いところでのそれだったが。
ちょっと言葉にはできないほどのものをいただいた、貴重な現場でした。
にしても82歳?であの元気と活気は、とんでもない。恐ろしい。
「そよ風と魔女たちとマクベスと」というタイトルでしたが、串田さんこそが魔女そのものでした。
松本公演も全て満席で、たくさんのご来場、誠にありがとうございました。

そして松本から戻った翌日、岸田國士戯曲賞の授賞式に参加させていただきました。受賞された笠木泉さんのスピーチをさせていただいたりしつつの、とてもいい式でした。
私も2012年に受賞させていただき、その13年後に同学年の笠木さんが受賞した。
13年前に新調したスーツで行ってみたが、もうパツパツでだめだった。
13年かけてダメになっていく一方、今、旬を迎えた同級生がちょっと羨ましかった。
でもこれだけ聡明に演劇を見つめて、真摯に自分の言葉を紡ぐ人を他に知らない。ずっと受賞してほしいと願っていたのでとても嬉しかった。

受賞発表がある夜、何人かで、渋谷の居酒屋で笠木さんを待ち構えた。
ニューヨークでのリーディング公演から帰国したその足で、笠木さんは居酒屋に来てくれた。
発表の連絡は、もう来たのか、どうなのか・・?
ドキドキしながら笠木さんに注視するも、彼女は、靴を脱ぎながらどうでもいい話をしている。靴を脱いだり脱がなかったりしている。脱いだ靴はどこに置けばいいかと彷徨っている。
そして片手に靴を持ちながらようやく言った、「あ、あの、受賞しました。」
一斉に吠えた。演劇人が約10人、心の底から吠えるととんでもないボリュームになるのだが、それはお店の方や他のお客さんにも大変申し訳なかったが、
その凄まじいボリュームに、笠木さんが30年の活動で積み上げた愛され度の深さを感じた。
本当におめでとうございます。
同時受賞の安藤奎さんも、誠におめでとうございます。

著者プロフィール

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。

【今後の予定】

世田谷パブリックシー@ホーム公演
「お江戸でチャーリー」
公演日程:2025/5/30(金)~6/13(金)
会場:世田谷区内の高齢者施設・障害者施設の13ヵ所

脚本・演出:ノゾエ征爾
出演:山本光洋、たにぐちいくこ、串田十二夜、ノゾエ征爾

https://setagaya-pt.jp/stage/26598/

▼▼前回の連載はこちら▼▼
https://enbutown.com/joho/2025/04/16/nozoe-145/

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