
緊張感あふれるサスペンス劇に再び挑む!
深作健太演出により2024年に上演された『罠』が再演される。フランスの劇作家ロベール・トマが1960年に発表したサスペンス劇で、登場人物はわずか6人だけ。上川隆也が前回公演に引き続き主演を務めあ上川演じるカンタン警部が捜査する新婚妻行方不明事件において、妻の安否を気遣う夫・ダニエル役の渡辺大も前回公演に引き続いての出演となる。スリリングな展開で緊張感に包まれた本作と改めて向き合う思いを、渡辺に聞いた。
「もう一回観たい」と言う人が多かった
──再演のお話しを聞かれた時の気持ちを教えてください。
これまで舞台に出演してきた中で、再演に出演するということは初めての経験なんです。この作品にまた出られることが非常に嬉しいですし、同時にあの世界に再び踏み入れることに対して、ワクワクする気持ちと怖さを感じる気持ちがぶつかり合うというか、両方が駆け巡る感じですね。
──怖さというのはどのあたりに感じているのでしょうか。
毎公演、舞台袖で待機しながら、開演前のベルを聞くたびに「始まる、始まる」とドキドキしていました。幕が開いたら、一瞬袖にはけるときはあるけれども、ほぼ舞台上に出ずっぱりなんです。そういう作品に出演することもなかなかないので、身も心も削られるような心境でした。
──前回公演で印象に残っていることはありますか。
僕自身のことで言うと、6人という少人数であれだけの内容をやるというのは、なかなかない経験だったので、「やり切った」という思いも非常に強かったです。あとは、観た方たちの反応がすごくよくて、「もう一回観たい」と言ってくれる人が多かったのが印象的でした。結末を知った上で、もう一度観直したい、ということですね。
──確かに、登場人物の誰にフォーカスするかによって、見え方が変わってくる部分もありますよね。
初めて観る時は、恐らく僕が演じるダニエルがお客さん目線に近いので、その視点で観る方が多いと思うのですが、2回目、3回目と観る時は他の登場人物の視点で観るという楽しさがあると思います。「あの時、この人はこんな表情していたんだ」とかがわかると面白いですよね。
──サスペンス劇ということで、最初から最後まで気が抜けない、非常に緊張感あふれる作品です。
この作品に関しては少しの齟齬も許されないというか、もしセリフや動きを飛ばしてしまったら軌道修正しづらい作品です。だから演じる側は皆さん緊張していると思いますし、すごく難しい作品です。稽古場では、ウォーミングアップでストレッチをしながらセリフ合わせをしたりしていました。非常に正確性を求められる舞台だったので、時間さえあれば自主的にセリフの練習をしていましたし、本番に入ってからは毎回スリルがありました。
再演のようで再演ではない
──演出の深作さんとは昨年の『醉いどれ天使』でもご一緒されています。
前回の『罠』の時に初めてご一緒したのですが、まだ舞台の経験が浅くてどう動いたらいいのかわからない中で、深作さんから本当にたくさんのことを教わりました。『醉いどれ天使』ではご一緒するのが2回目でしたから、初回に比べたら同じ目線に立って一緒に作っていけた感覚がありました。今回の『罠』では、ついていくので精一杯だった前回とは違った目線で作品に携われるかな、と思っています。ある一定の水準を超えてくると、深作さんは役者のやりたいことを尊重して、ある程度自由にやらせてくれるところもあるので、それは非常にありがたいです。
──今回の再演では、須藤理彩さん以外の出演者は初演から続投のメンバーです。
この作品は独特な雰囲気があるので、「前にやったでしょ」というのが通用しない舞台だと思います。だから今回は、再演のようで再演ではない、という感覚があります。深作さんはキャストに合わせた演出をされる方なので、今回初参加の須藤さんがきっといい化学反応を起こしてくださると思いますし、それ以外でも新しい部分が増えてくるだろうなと思っています。
──以前のインタビューで、『罠』を完走したことが自分の中で一つレガシーになった、いうお話しをされていました。具体的にどのあたりがレガシーになったと感じたのでしょうか。
僕がそれまでやってきた舞台は比較的出演者が多かったので、登場人物が6人だけでサスペンスをやるということで、見せ方や動き方というものが今までとは違う部分も多く、上川さんをはじめとする皆さんのテクニックを近くで見ることができたのは大きかったです。あの時に培ったことが、その後の舞台で僕を助けてくれることがとても多いと感じています。『罠』という作品は非常に技量を試される作品だと思いますし、役者にとっては勉強になると思います。
──舞台ならではの楽しみをどのように感じていますか。
観客が目の前にいてダイレクトに反応が伝わってくるというのは、やはり面白い部分です。特に『罠』は、開演前から客席がものすごく静かで、お客さんが来ていないんじゃないかな、と思うぐらいなんですよ(笑)。始まる前から固唾をのんで待ってくださっているなんて、すごいことですよね。
──もし渡辺さんがプロデューサーの立場だとしたら、やはりこの作品を上演してみたいと思われますか。
上演したいですね。例えば若い子たちにやらせてみても面白いんじゃないかな、と思います。ワンシチュエーションで、舞台の面白みが全部入っている作品なので、良い勉強になりますよ。シンプルだからこそ役者の技量を高めるにはすごくいい作品だなと思っていて、僕以外の人の演じるダニエルも観てみたい、という思いもあります。
──この作品を楽しみにしているお客様へのメッセージをお願いします。
緻密ながらも大胆な2時間を作っていきますので、特に予備知識もなく気軽に劇場に来ていただいて、でも本番が始まったら片時も目を離さずに、この緊張感を僕たちと一緒に楽しんでいただけたらと思います。この作品は観るたびに面白さが変わってくるので、初見のときは誰からも何も情報を聞かないで来てもらいたいですし、観るのが2回目以上の方には、ぜひいろいろな角度でいろいろなからくりを楽しんでもらいたいです。観た回数によって楽しみ方も変わってくると思うので、回数の違う人同士で感想を語り合うのも楽しそうですよね。2回目以上の方はぜひ初見の方とお誘い合わせの上、劇場に足をお運びください!
(このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年6月号より転載)
インタビュー◇久田絢子 撮影◇中村嘉昭
衣装協力/スーツ[ラルディーニ]、シャツ[ジャンネット](問い合わせはともにトヨダトレーディング プレスルーム 03-5350-5567)、その他はスタイリスト私物
プロフィール
わたなべだい○東京都出身。2002年、俳優デビュー。18年、主演映画「ウスケボーイズ」で、マドリード国際映画祭・アムステルダム国際フィルムメーカー映画祭にて最優秀主演男優賞を受賞。近年の出演作は、【舞台】『醉いどれ天使』、『Take Me Out』、『TARKIE~伝説の女たち~』、【映画】「長崎-閃光の影で-」、「シンペイ 歌こそすべて」、【ドラマ】「看守の流儀」(EX)、「いきなり婚」(NTV)など。
公演情報

『罠』
作◇ロベール・トマ
翻訳◇平田綾子
演出◇深作健太
出演◇上川隆也 藤原紀香 渡辺大 財木琢磨 須藤理彩 藤本隆宏
6/6〜26◎東京 よみうり大手町ホール
6/28◎大分 中津文化会館
6/29◎福岡 福岡市民ホール 大ホール
7/1◎高松 レクザムホール(香川県県民ホール) 小ホール
7/2◎徳島 あわぎんホール(徳島県郷土文化会館)
7/4・5◎大阪 森ノ宮ピロティホール
7/7◎水戸 水戸芸術館 ACM劇場
7/19◎新潟 新潟県民会館 大ホール





