お役者/糞詩人である小野寺ずるが表現の世界で闘う女達にインタビュー。
彼女達の過去現在未来を聞きだし、想いを馳せながら
私たちの平和は、女の平和は、表現の世界に身を投じる我々の望む世界はなんなのか。を夢見る連載。
ファシリテーター とみやまあゆみ(プリンちゃん)

「出身地の気仙沼でいつか演劇WS(ワークショップ)をやってみたいけど一体どうしたら」
友人の俳優・ファシリテーターのあゆにそんな相談をした夏。
人情深いあゆはその気持ちを掬い上げ、自分のWS現場にすぐに私をアシスタントとして呼んでくれた。
WSを進行するファシリテーターという職業を「教える/仕切る」と思う人は多い。
私もそうだった。彼女の現場に入るまでは…。
私の「演劇」の概念を更新した、彼女の鮮やかで見事なファシリテートについて。
(※2024年8月取材/撮影)
彼女の”素(もと)”

『小学生のためのエンゲキワークショップ』【Hコース|小学5・6年生対象】
進行:とみやまあゆみ
こちらにアシスタントとして参加しました!
ず(ずる) あゆのファシリテーター姿、お世辞抜きでかっこいいなと思った。
あ(あゆみ) ありがとう(笑)。
ず 感動したので、なぜファシリテーターになったのか教えてください。演劇の始まりは?
あ 中学の時に演劇部に入ったのが自分で演劇を選んだ最初かな。私ね、元々は人前で喋る時に震えて泣いちゃうような子だったの。
ず マジで?
あ マジで。失敗したらどうしようって思いが強かったんだと思う。
ず 今は人前であんなに喋ってるのに…。
あ (笑)マシにはなってきた。そんな自分を変えたくて、小学校卒業する時に引っ越して、中学で周り誰一人知らないって時に「これはチャンスだ! 何とかしよう! 」って演劇部に入ったの。その流れで高校も演劇部。
ず コンプレックス解消で始めた演劇がそんなに続いたのはなぜ?
あ 私、飽きっぽいんだけど演劇は飽きなかったんだよね。なんでも自分たちで考えなきゃいけないでしょ、そうやって作ってくのが楽しかったんだと思う。でも高校2、3年の時に戯曲を扱って劇を作り続けるのに限界を感じて。
ず 早いね(笑)。
あ 飽き性だからね(笑)。で、ちょうどそのタイミングで初めて演劇WSに出会ったの。その会場がうちの高校だったから先生に参加しろって言われてさ、「え〜」と思いつつ参加した。その時進行してたのがNPO法人演劇百貨店の人達で、私も今はそこのメンバー。そこでは、ずるちゃんにもこの間のWSで見てもらった通り、戯曲をどう舞台に立ち上げていくかという様な作業は一切やらないわけですよ。
ず あれね、びっくりしたよ。
あ 発表会あるけど台本ないし一体何を作って何を見せるの? って中、何日もシアターゲームとかで必死で遊びまくってたら、なんか見せるものが出来てる。そういう作り方をする場と初めて出会った。「意味わかんない!面白い!」と思って、もうちょっと演劇やってみようかなって演劇の大学に進んだの。
ず じゃあそのWSと出会えてなかったら…。
あ 多分演劇続けてなかった。文学部か考古学に進んでたかもね(笑)。
ず それも似合いそうね(笑)。
あ 今でもね、そのWSで「あんたはどうしたいの? 」って沢山訊かれたことが忘れられない。高校や大学生の歳でさえ、日常でそんなこと聞かれてこなかったから、そんなの訊かれたってって困ったよ。でもさ、そう訊かれたら一生懸命考えてやらざるを得ない。その「あんたはどうしたいの? 」が、ずっと私の元にあるような気がする。
ただ面白い演劇を!
ず WSネームのプリンちゃんは何なの?
あ プリンが好きだったから。20年以上プリンちゃんなの私。
ず 長っ!
あ 初めてのWSで、まず呼ばれたい名前つけろって言われて「ほんとに呼ぶんだろうな何でも」ってプリンちゃんにしたら、ほんとに呼ばれてそのまま20年経っちゃった。
ず そんなプリンちゃんはどうやってファシリテーターになったの?
あ 大学卒業して、NPO法人演劇百貨店代表の柏木さんに「私もそういう仕事をしたい」と相談したら、世田谷パブリックシアターの中学生向けWSのアシスタントに入れてくれたの。そこが始まり。で、そこから少しづつWSの進行したり、世田谷区内の学校の授業に関わったり、企画出したり。23、4の私は必死だったね。
ず そこからもう14、5年でしょ? WSのあゆの堂々たる佇まいは、その歴史で培ったオーラなんだね。
あ そうなのかな。
ず でもさ、子ども達が来る前に、コンビニのツナマヨおにぎりを真っ暗な目で黙々食べてるの見て、本当はすごいプレッシャーや責任を感じてるんだなって思った。
あ 恥ずかしい(笑)。
ず いや、その姿が誠実で素敵だった。もしこうなったらって何パターンもシュミレーションして準備して…WSは毎回参加者も違うし大変でしょ?でも続けてるのはそれを上回る何かがあるんだよね?
あ 単純に皆が作ってくれる劇が面白いし、自分が意義を感じてる活動だからかな。自分が人前で発言できなかった子ども時代にこういう活動と出会ってたら、ちょっと何かが違ったかもしれないって思うし。
ず なるほどね。
あ まぁでも確かにWSはどんな人がいてどんな発言するか予測できないからずっと怖いよ。準備するしかできないし、神経質な方だと思う。
ず それが信頼できる存在感に繋がってるよ。静かな女帝。
あ やだ、女帝ってなんか指図する人みたい。
ず (笑)逆だよ、自由がある。その上で安心感もある。
あ なら良かった(笑)。自由を感じる場になってる?
ず うん。自由を感じるように参加者との対話にも、準備にも心も頭も目一杯使ってて感動したよ。沢山の労力を割いてる。
あ …私ね、最近ずっと考えてたことがあるんだけど。私にとっては、どうしたらこの場に集まったこの人達と最大限面白い演劇が作れるか、ということが大事なんだよ。
ず お?
あ そのために、その場にいる一人一人の主体性や、伝えること受け入れること、一緒に変化していくことが必要だったりするから、発言してみてもいいかなと思える場づくりとか、作った劇を見せたい/見たいと思ってもらえるように取り組んでて…それが教育的な面から語れるような場になってもいるんだけど…それらは全て、面白い演劇を作るためなんだよ!
ず ほう!
あ まずそれなの。「小学生だからこんなもんだ」とか「演劇経験ないからしょうがないよね」みたいなことを、誰にも言わせたくないし思わせたくないって思ってる!
ず (笑)いいな〜強いな〜!
あ それをこの前、教育的立場から質問してくれたスタッフさんにちゃんとお伝えできなくて…次会ったら言えるようにずっと考えてた。頭の中で練習してる。
ず あなたおかしいよ(笑)。
あ おかしくないよ。ちゃんと答えられなくて悶々としてたの。…まぁでも根暗よね。…そんな私だけど、子ども達やWSの場に育ててもらってきたと思ってるよ。冗談じゃなく。これでも大人になってきたんじゃないかな。
キラめくための航海へ

ず 今回あゆが考えたスゴロク使った演劇、傑作でしたね。
あ 良かったよね。
ず 子ども達が書いた「未来に起こるかもしれない出来事」って付箋がまさかのスゴロクのマスになって、そのマスの出来事を皆で話し合って短い演劇にする、そして進んでいくってよく思いついたよね。
あ 最初意味わかんなかったでしょ(笑)。
ず 正直、最初は「どういうこと??」って動揺した(笑)。2マス戻るとかのマスもあって、3、4回同じ劇を見せるチームもいて面白かったな(笑)。
あ も〜自分達で戻るマスとか作るから(笑)。
ず 4チーム対抗で時間制限あったのもゲーム性があって良かったよね。叫び声がすごかった(笑)。
あ 盛り上がってたね〜。
ず 発表会前にさ「人生って同じこと繰り返したりもするしうまくいかないこともある。でもこの皆で演劇をやれることはたぶんもう二度とないから、一緒に一生懸命見せよう」ってあゆが言ってて泣いちゃったよ。それを皆が真剣に聞いてて…まぁ私が一番真剣に聞いてたけど。
あ そこ張り合わなくていいよ(笑)。
ず (笑)。しかも事前打ち合わせの時に「自分自身が人生ままならないまま生きてるから、みんなで未来のスゴロクを作りたい」みたいなこと言ってて…。
あ ああ、人生は辛いっていう私の根暗発言(笑)。
ず ファシリテーター本人の、あゆ自身の人生の葛藤から生まれたスゴロクってプランを、0から全員で立ち上げて、子どももスタッフの大人も真剣にサイコロふって、全力で演技して、応援して、皆の演劇にした。そしてその子ども達を産んだ親御さん達が発表会を見てて…。
あ そうだね。
ず 胸が熱くなった。
あ みんなあの時、願いは1つだったね。全員がゴールまで行く、だった。
ず 見たことない光景だった。私が知ってる演劇のイメージではない、これも演劇なんだって、それこそカルチャーショック。
あ 今回ね、スゴロクの理不尽さや偶発性が人生的で面白いと思ったから、そこを通して生まれるエネルギーが見えたらいいなと思って。悔しかったら思い切り落ち込めばいいし、嬉しかったら盛大に喜ぶ。そういう瞬間を作れる仕掛けとしてスゴロクを使ったんだよね。
ず 目論み大成功だね。ファシリテーターって船の船頭さんみたい。海に出てスゴロクの島にちゃんと到着した感じだ。
あ いや、私にとってはスゴロクが船かな。こういう船だと、良い航海ができるんじゃないかって提案をしてる。
ず …今すごい腑に落ちた。この3日間の過程が、航海そのものが作品だったのか。島に行くとか、どこの国に行くとかじゃなくて、皆で海に出て、サンゴ見たとか雨に打たれたとかってこと、それがあの演劇だったんだ。
あ だからその演劇で何が重要かって、演技が上手い下手とかそんなことではないよね。その人がちゃんとそこにいて「命キラめいているか」だと思うの。勝手にキラめかないからさ、一人一人は。他者とWSの時間を共有していく中で、その人がキラめいてるかどうか、だよ。それが私にとっての面白い演劇かな。
ず キラメキだらけだった…。
あ だから、面白い演劇を見せてくれて皆マジありがとうって感じ(笑)。


とみやまあゆみの平和
伝えようとすること
受けとること
変化する可能性
プロフィール

とみやまあゆみ
とみやまあゆみ○1986年神奈川県横浜市出身。桜美林大学総合文化学群演劇専修卒。俳優活動と並行し、演劇ワークショップのプランニング、ファシリテーターとしても活動。「明日がちょっと楽しみになる」場づくりを目指す。NPO法人演劇百貨店メンバー、世田谷パブリックシアター契約ファシリテーター。また、舞台では演劇ユニット鵺的の構成員。
【CONTACT】俳優▶︎1046 / ファシリテーター▶︎NPO法人演劇百貨店
著者プロフィール

小野寺ずる
おのでらずる◯気仙沼生まれのお役者、ド腐れ漫画家、脚本演出。
個人表現研究所・ZURULABO所長。ダイナマイトアナルズのドラム兼座付き作家
【SNS】X@zuruart / Instagram@zuru_onodera
【漫画連載】日刊SPA!『小野寺ずるのド腐れ漫画帝国』
構成・文・とみやまあゆみ撮影◇小野寺ずる
WS写真提供◇世田谷パブリックシアター



