クリエーター&読者の皆さんが観た「面白かった!」芝居をご紹介!(6月〜7月上演作品)
雑誌「えんぶ」2026年10月号(9/9発売)掲載の「シバイのミカタ」!
はなばたけ
『ごう!!!』
作・演出◇ノスケ 出演◇高桑ゆうや 日廻ひなた 若林梨奈 久保航
6/26~28 ◎イズモギャラリー

失踪事件と純朴な恋路が交わる時現れる真相
これが初の本公演となる学生劇団は、ナンセンスギャグを満遍なく散りばめる。事件を捜査する警官と市民活動家の話、マッチングアプリで出会った男女の恋路が同時に描かれる。素っ頓狂に騒ぐ冒頭から始まり小道具系・身体系と幅の広いギャグシーンで尻上がりに爆発。ハイテンションに始まるものの2つの話が繋がった時に悲劇が現れる。絶望する登場人物、の横で警察官が脳天気にギャグをかます場面。ここが作・演出の性格の悪さが全開で最高。一部のギャグや演出に粗い部分も多いが、伏線を綺麗に回収し事件と恋路の顛末を同時に描く見事な戯曲など輝く部分も多い。2月の学生演劇祭での短編(観客賞受賞)は傑作だったし長い目で応援していきたい。
writer/ 公社流体力学 https://koushayuutai.web.fc2.com
明治座ミュージカル
AGATHA(アガサ)
脚本・作詞◇ハン・ジアン 作曲◇ホ・スヒョン 演出・上演台本・訳詞◇末永陽一 翻訳◇宋元燮
出演◇花總まり 黒羽麻璃央 渡邉蒼 上原理生 原田優一 東山光明 内田未来 丸山泰右 保坂知寿
7/18〜8/2◎東京・よみうり大手町ホール ほか愛知、大阪、福岡公演あり

実力派俳優の共演が興趣を染める新作ミュージカル
イギリスを代表する推理小説作家で“ミステリーの女王”と讃えられたアガサ・クリスティが、生涯その真相を語らなかったと伝えられる、実際に起きたアガサ本人の11日間の失踪事件を題材に、想像の翼を広げて紡がれ、2013年の初演以来上演を重ねている韓国ミュージカルの日本初演である。「小説よりもミステリー」と呼ばれた事件だが、この作品ではアガサ失踪の過去(1926年)と、物語世界の現在(1953年)とを交錯させ、一見謎の真相を追う“犯人捜し”の顔をしつつ、実は「創作すること」の壮絶な苦悩を浮かび上がらせたドラマの根幹が秀逸。多彩な音楽の魅力も満載で、花總まり以下実力派の豪華俳優陣の共演が興趣を深める新作ミュージカルとなった。
writer/橘涼 香
紀伊國屋書店創業100周年記念公演
『わたしの書、頁を図る』
作・演出・美術◇小沢道成 音楽◇オレノ・グラフィティ 出演◇木村多江 味方良介 光嶌なづな 中井智彦 坂口涼太郎 猫背椿
7/3〜19◎紀伊國屋ホール

図書館にこもる地味な主人公の妄想の果て
図書館員・柳沢町子(木村多江)は利用者を観察し選ぶ本から妄想を膨らませている。不登校の中学生(光嶌なづな)。無職の男(中井智彦)。売れない役者(坂口涼太郎)。平凡な主婦(猫背椿)、自称映画監督(味方良介)……利用者たちは皆、本に救いを求めているに相違ない。町子がそうであるように。ところがそれは見当違いで……。プロセニアムアーチの舞台が円形舞台のようでセンターの概念が希薄に見える。主人公の定位置は下手で彼女の地味な性格そのものだ。でもあるとき彼女の影は客席の天井に大きく伸びる。シェイクスピアが唱える世界=劇場が混沌の表象なら図書館は整然と分類された世界だ。この物語はその図書館的世界を演劇で解体してみせた。
writer/木俣 冬
劇団きらら
『鯛の鯛』
作・演出◇池田美樹 出演◇たろまるようた 磯田渉 富士咲ジョー 岩本一花 オニムラルミ 池田美樹
6/12~15◎ギャラリーキムラ(熊本)、6/27~28◎M★うぃんぐ(宮崎)、7/10~12◎インディペンデントシアターOji(東京)

ギリギリセーフの小林さん、川に吠える
「いつか大物になれる」。そう思いつつ、根拠もなく努力もせず日々を過ごしている。登場人物の小林さんのことであり、私のことでもある。表面的にはイケイケのようでも、それは見栄を張るのが上手なだけで、現実を直視できない。だから、直視せざるを得ない状況になると逃げ続ける。でも、永遠に逃げ続けることはできない。小林さんはセーフだったと思う。私は? もう手遅れかもしれない。世の中は現実を直視できない、手遅れの男性で溢れているのだ。というようなことは背景であって、本領発揮しているのは日常のさりげない描写をゲラゲラ笑わせて見せてくれる痛快なコメディ。熊本の劇団きらら、また東京で再会できますように。
writer/黒澤世莉 https://serikurosawa.com/
MEMELT
『おいしいディストピアの作り方』
脚本◇宇城悠人 演出◇平田純哉 出演◇山戸ユキノ 大見祥太郎 安藤理樹 古屋敷悠 村上弦 江益凛 松永ゆうほ ムニエル 池田桐麻 渋木耀太 平田純哉
7/8〜12◎すみだパークシアター倉

AI×人類のSFをアップデートする野心作
AIに支配された架空のディストピア日本、2時間超えの壮大な物語の果て、ついにたどり着いた「戦争」の目的は、ただ、AIトースターが「おいしいパンを焼く」ためだった…という残酷かつ脱力するようなオチのブラック本格SFコメディ。地に足のついた不思議な生々しさが魅力の主人公トリフネ(大見祥太郎)と、戦火を生き抜いたミナカタ(山戸ユキノ)は、ラスト、敵国のドローンに銃口を向けられながら、互いの口にパンを食ませ合い…どこか能天気に舞台は暗転していく。まるで人間の実存に中指を立てるような、唐突な幕切れ。演技に完全シンクロする映像演出や回転する盆舞台、劇伴劇中歌まですべて自前で手掛ける劇団の力が凄まじかった。
writer/イトウシンタロウ http://nice-stalker.com (イトウシンタロウ主宰団体)
THEATRE COMPANY左岸族
『夏の夜の世の夢のまた夢』
作・演出・出演◇左岸族(本間盛行、才木典泰) ウィリアム・シェイクスピア『夏の夜の夢』より
6/6、13、20◎大阪市天王寺区小橋公園(『パークdeカンゲキ』企画 関西シェイクスピア・フェステイバル参加作品)

おっちゃん2人の立ち話がシェイクスピアに
大阪人が立ち話すれば漫才になると聞いたことありますが、大阪のおっちゃんが立ち話するとシェイクスピアになるとは知りませんでした。たった2人での『夏の夜の夢』です。夜でもありません。真昼の公園でおっちゃん2人が必死でおもちゃで遊んでる、いえ、小道具を持って芝居しているのです。限りなく漫才に近いです。この2人だからできるシェイクスピアです。左岸族として喋りながらシェイクスピアの世界に連れて行ってくれます。泣くシーンではカラスが一緒に鳴いてくれました。カラスも世界に入り込んでいたのです。これが無料公演なのです。いろいろと目から鱗でした。ほんといろんなことから自由な左岸族のお2人、ほんとカッコよかったです。
writer/魔人ハンターミツルギ https://choyobi.wixsite.com/choyobi2005 (魔人ハンターミツルギ主宰団体)
ナッポス・ユナイテッド/アミューズクリエイティブスタジオ
『無伴奏ソナタ -The Musical-』
原案◇オースン・スコット・カード 脚本・演出・作詞◇成井豊 音楽◇杉本雄治 出演◇平間壮一 多田直人 真瀬はるか 熊谷彩春 長江崚行 西川大貴 畑中智行ほか
7/17~26◎サンシャイン劇場

悪い人は誰も出てきません。でも…
誰もが幸福になるために、幼児期のテストによって職業が決定される時代。卓越した音楽の才能を見出された男の人生が描かれます。悪い人は誰も出てきませんが、あることを契機にして、男の人生は穏やかとは言えないものになっていきます。別の世界の人々のはずなのに、役者たちの力によって、舞台の上で生きる人々は、私たちにとても似ています。ミュージカルであることも、そう感じさせることに寄与しているように思えます。何日経っても、いろんなことを考えさせる舞台です。幸福とは何だろう。なぜあんな世界ができたのだろう…。しっかりとした脚本と、役として生きている役者たち、観劇してよかった、と思える舞台でした。
writer/タチアオイ
秦組 Ask Presents
『舞台~らんシリーズ~ 「月の谷」「らん」「赤い石」三作品合体完全版』
脚本・演出◇秦建日子 出演◇本間日陽 山本亮太 佐倉初 山木透 田中尚輝 杉江優篤 平山佳延 林千浪 築山万有美 横山一敏 藤原習作 滝佳保子 ほか
6/26〜7/2◎すみだパークシアター倉

抗えぬ時代の渦と愛憎が交差する魂の軌跡
2010年初演作品の完全版。原作・脚本・演出の秦建日子先生が「舞台『らん』はこれで最後」という覚悟で企画された本作は、その言葉に相応しく生命力に満ち溢れていた。豪族の支配に苦しむ村民たちが出会った救世主、主人公「らん」。彼女の数奇な運命がマチネとソワレを通して丁寧かつ壮大に紡がれていく。人間の欲望と時代の残酷さに呑み込まれながらも懸命に生きる人々の姿に、終始胸が締めつけられた。秦先生の覚悟に応えるかのような役者陣の魂を燃やす熱演、そして圧巻の殺陣からは一時も目が離せない。約3時間にも及ぶ公演をさらに彩る生演奏も実に見事だった。この作品と巡り逢えた奇跡に、心から感謝したい。
writer/かに @ei5_wakarahen
『コテンペスト』
原作◇W・シェイクスピア 脚本・演出◇村上大樹 出演◇小手伸也 鈴木保奈美 片桐仁 崎山つばさ 松田凌 AOI ほか
6/27~7/7◎本多劇場 ほか大阪公演あり

小手さんがテンペストでコテンペスト
シェイクスピアほぼ関係ありません。今乗りに乗ってる小手伸也さんのキャラと演技力をフューチャーした、というよりいじり倒したコメディです。古びた商業ビルを舞台に役者陣が暴れ回り、笑いと郷愁をそそられる。小手さんの熱演もさながら、鈴木保奈美さんはじめ、豪華な共演陣が、笑いのためにここまでやるの、というエネルギッシュな舞台で、明日への活力に漲っていました。
writer/暴れミニピン
Bunkamura Production 2026/DISCOVER WORLD THEATRE vol.16
『ウェンディ&ピーターパン』
作◇エラ・ヒクソン(J.M.バリー原作より翻案) 演出◇ジョナサン・マンビィ 出演◇芳根京子 渡辺翔太 鳥越裕貴 松岡広大 富山えり子 天野はな 玉置孝匡 池谷のぶえ 石丸幹二 ほか
6/12~7/5◎THEATER MILANO-Za (東急歌舞伎町タワー6階) ほか、大阪公演あり

ピーターパンが来てしまった…
子供の頃に見たピーターパンとは違い、原作に近い危うさや切なさを感じさせる作品でした。渡辺さんは、無邪気さの裏に潜む異質さや不穏さを繊細に表現。雷鳴とともに現れる登場シーンから、「ピーターパンが来た」という高揚感より、「来てしまった」という空気を生み出していたのが印象的でした。一方、芳根さん演じるウェンディは物語を通して成長し、その変化がピーターパンとの価値観の違いを際立たせ、ラストの切なさへとつながります。壮大な海賊船や満天の星空の演出も美しく、ネバーランドへ迷い込んだような幸福感に包まれる舞台でした。
writer/そして
PRIME VINsTAGE
『ジャコメッティのように』
作・演出◇岸谷五朗 出演◇渡部豪太 純名里沙 岸谷五朗 小田直哉(大駱駝艦) 石井エリカ(大駱駝艦)
7/17〜8/2◎シアター・アルファ東京

息づかいまで伝わる!贅沢で濃密な会話劇
1995年の地球ゴージャス旗揚げ公演も観劇したファンとして、岸谷五朗さんの新プロジェクトはワクワクしながら観に行きました。昔と変わらない熱気の中に大人の落ち着きと深みが漂っていて、一気に引き込まれました。純名里沙さんの美しくチャーミングな佇まいや、岸谷さんと渡部豪太さんの濃密な会話劇はもちろんですが、特に大駱駝艦の不思議で異彩を放つダンスの演出が圧倒的でした。セリフを超えた強烈な身体表現が舞台に独特の奥行きを与えていて、思わず息をのむほどでした。シアター・アルファ東京というコンパクトな空間だからこそ息づかいまで肌で伝わる、最高に贅沢で胸が熱くなる観劇体験でした。
writer/髙山英哲
Studio Life
『マクロプロスの処方箋』
作◇K・チャペック 演出◇倉田淳 出演◇曽世海司 笠原浩夫 坂本岳大 大沼亮吉 緒方和也 岩崎正寛(演劇集団円) 今拓哉(ロックリバー) 清水明彦(文学座)
7/2~12◎中野ウエストエンドスタジオ

魅力的な客演陣と繰り広げる上質な会話劇
4人の客演陣を迎えての、カレル・チャペック作品の上演。遺産相続を巡って百年にもわたって続いた裁判の判決の日。誰も知らなかった遺言状の情報を持って現れた謎の美女マルティ。一幕はマルティに男たちが翻弄され、様々に思惑を振り回すのが、コミカルでもあり不穏でもあり。登場人物がそれぞれとんでもない長台詞をこなし、スタジオライフならではの軽妙な掛け合いを繰り広げるのが楽しい。二幕はマクロプロスの処方箋に焦点が当てられ、男たちがそれぞれ意見を披露し、議論を白熱させていくのがスリリング。テーマは重苦しいはずなのだけど、最後マルティが見せた何かから解放されたかのような表情のおかげで、晴れやかな気分で観終われた。
writer/ゆうき
花組芝居
『レッド・コメディ ~赤姫祀り~』
脚本◇秋之桜子 構成・演出◇加納幸和 出演◇加納幸和 原川浩明 山下禎啓 桂憲一 八代進一 北沢洋 横道毅 秋葉陽司 磯村智彦 丸川敬之 押田健史 永澤洋 武市佳久 髙橋凜(研修生) 阿部丈二(演劇集団キャラメルボックス)
7/9~12◎座・高円寺1 ほか松本公演あり

昭和十二年、女形と男と女、そして時流
車椅子の赤姫姿の女形を囲む、顔が白塗りの男たちは演舞からそのまま昭和十二年の人々を演じ、違和感を感じる間もなくこの世界に引き込まれてしまう。文士・編集者・役者の愛憎劇に歌舞伎の様々なシーンが挟みこまれ、ヒロインのはずの赤姫が集団でぞろぞろ出てくるのに笑っていたら、歌舞伎をなぞることで衝撃的な展開を象徴的に見せる、という演出に改めて歌舞伎が持つ過激さを感じた。ラスト、タイトルの「コメディ」の意味が時代背景と重なって明かされ、観ているこちらが慄然となる間に、再び白塗りの男たちが演舞して幕となる、構成の鮮やかさ。武市佳久さんの可愛らしさ、客演の阿部丈二さんのキャラクターが役柄にぴったりだった。
writer/古今堂 https://note.com/kanngekiki
チリアクターズ
『どんな顔すればいいの@焼跡』
作・演出◇大島寛史 出演◇miggy 木村涼香 上田幸侍 影島紗絵 竹村果夏 大島寛史 ほか
7/16~19◎ラゾーナ川崎プラザソル

小田原のチリアクターズ、川崎初公演
お前は忍者の末裔なんだよ、父の突然の告白に戸惑う主人公マイ。無我夢中で乗り込んだ電車には、天狗の大群!偶然居合わせた、ある女性に助けてもらい、その人のあとを付いていくと、何とも怪しい、超視力研究所の所長であった。これはマズイと逃げ出した先に居たのは、学生時代、マイに大きな影響を与えた唯一の存在、ナナ先輩であった。目の前には一枚の扉、知らぬ間に首から下げられた鍵…。超スペクタクルSF大作であり、ギャグも散りばめられ、最後はちょっとセンチメンタル。地元小田原を中心に活動を続けている、チリアクターズ。他県の皆様にも是非、観ていただきたいです。
writer/カミチャン
優しい劇団の大恋愛
『やっとかめ! ~いきとしいけるもの音頭~』
作・演出◇尾﨑優人 出演◇田内康介 中村亮太 久川德明 熊野晋也 好姫 夏アンナ 夏目みほ 末延ゆうひ 田宮ヨシノリ 吉良沙月 海華まい 尾﨑優人 千賀百子 橘朱里 石丸承暖 宮﨑奨英 池田豊 下野はな
7/5◎七ツ寺共同スタジオ

名古屋を舞台に繰り広げられる大恋愛シリーズ
名古屋を拠点に活動する優しい劇団の代名詞ともなっている「大恋愛シリーズ」。公演は1日のみ、役者陣は当日の朝集合し、数時間の稽古の後に本番を迎えるこのシリーズは回を重ねるごとに評判を呼んでいる。Vol.12となる今回は久々の地元・名古屋、しかも聖地・七ツ寺共同スタジオでの公演ということもあって、作・演出を務める尾﨑優人の名古屋愛が炸裂する作品となっていた。タイトルの「やっとかめ」は名古屋弁で「久しぶり」という意味で、「いきとしいけるもの」の名の通り、人間のみならず様々な生命体が“待ち合わせの街”名古屋を行き来する。人と人とが出会うことの奇跡を描くこの作品は演劇そのものの素晴らしさをも伝えてくれた。
writer/法水
CCCreation Presents
『Burlesque KUROTOKAGE –after die– ~new museum party~』
原作◇江戸川乱歩 脚本◇エスムラルダ 演出◇丸尾丸一郎(劇団鹿殺し)
出演◇雷太 島田惇平 中尾暢樹
7/1〜7◎六本木トリコロールシアター ほか大阪公演あり

バーレスク黒蜥蜴、その後へ続く物語
江戸川乱歩の小説を題材に上演された、2025年2月上演『黒蜥蜴〜Burlesque KUROTOKAGE〜』は黒蜥蜴の死で幕を閉じた――はずだった。しかし、もしも黒蜥蜴が生きながらえ明智小五郎に激しい妄執を抱いていたら? これはその先を描いた物語。見どころは3人のキャストが日替わりで異なるメイクと衣裳をまとい明智、黒蜥蜴、謎の人物Xを演じるという挑戦。小林少年役の日替わりゲスト(平賀勇成・大崎捺希・大城麗生・川﨑優作・笹川幹太)も交えた非日常の空間は、それぞれの怪演は妖しさと熱を増し、同じ物語でありながら、これほどまでに変わるものか……と日々、観客を魅了し続けた。
writer/おーちようこ https://x.com/yoko_oochi
体感型2.5次元舞台
『うらみちお兄さん ~集まれ!飛び出せ!よい子のみんなこんにちは!~』
原作◇久世岳 脚本◇Vivi 演出◇三貝豪 出演◇西海龍人 二階堂心 中田凌多 大海将一郎 澤田真里愛 田口巧輝 島田弘蓮 小椋涼介 中島礼貴 鷲尾修斗
7/8~12◎シアターサンモール

大人だからこそ「体感」できる表と裏
教育番組の「お兄さん」「お姉さん」たちの実情を、ブラックユーモア混じりに描く人気漫画の舞台化作品。映像演出を使用せず、いい意味でチープさのある小道具や衣装を駆使し、成人済みの役者陣が子どもから犬、時には神をも人力で舞台上に描き出す姿には、原作のシュールな味わいが立体的に宿っていた。大玉を客席全体でリレーするお楽しみコーナーなど「体感型」の要素が満載だったが、最も「体感」させられたのは、お兄さん・お姉さんたちが身を置く理不尽な職場環境のリアルさだ。「よい子のみんな~!」と明るく呼びかけてくれる声に元気よく返事をしつつも、自分の中の社会人的経験の苦さが刺激される、表裏一体な時間だった。
writer/ぺぺアジこ
オフ・ブロードウェイ ミュージカル
『アーネスト・シャクルトンに愛されて』
訳◇小田島恒志 演出◇岡﨑育之介 音楽監督・キーボードコンダクター◇中村匡宏 出演◇紫吹淳 伊原剛志
6/11~24◎東京芸術劇場 シアターイースト

ふたりだけのミュージカル
紫吹淳・伊原剛志の二人が舞台で100分間歌いつづける日本初上演のオフ・ブロードウェイ作品『アーネスト・シャクルトンに愛されて』。自分は割とお芝居好きな者ですが、宝塚出身女優さんのお芝居は初めて。紫吹淳さん登場からの身のこなし! 美しいターンと立ち姿。華麗とはこういうことを言うのかなと思いました。20世紀に実在し南極探検隊を率いたアーネスト・シャクルトンを演じた伊原剛志さんと、シングルマザーの紫吹淳さん演じるキャットが出会い系サイトでマッチするという時空を超えたストーリー。キャットは電子ヴァイオリン、アーネストはヴァンジョーをかき鳴らし、歌いつづけるふたりだけのミュージカル。引き込まれる舞台でした。
writer/船田久美子
トム・プロジェクト プロデュース
『空飛ぶドン・キホーテ』
作・演出◇小見山佳典 ピアノ◇松永裕平 出演◇村井國夫 山﨑薫
7/22◎渋谷区文化総合センター大和田6階伝承ホール

名優村井國夫が誘う1日限りの歌唱と朗読
舞台上にあるのは古いプロペラ機を改造した「ロシナンテ号」のセットとグランドピアノ。操縦する「教授」と呼ばれる老紳士の隣席には戦場カメラマンとして前線に赴き命を落とした息子の婚約者だった娘「ハナ」。2人は眼下に広がる土地の人々の思いや祈りを集める旅をしている。81歳にして今なお色気の中に無邪気さや哀愁を持ち合わせ、そしてハイバリトンの美声で夢とうつつを歌う村井國夫の「教授」はまさにドン・キホーテ。美しい「ハナ」の歌声と重なる心地よいハーモニーや、荒々しいタンゴの調べに心が浄化されるような極上の時間だった。時に遠い日を思い出すような「教授」台詞には、何故か故郷の景色を思い出し、目頭が熱くなった。
writer/Mikata
神威少女パンク。
『踊ろうドロシー×化かす』
作・演出◇政木コヲタ 出演◇新乃舞子 長月うさぎ リ 勇雅 大森陽太 小山内あすか 宮越虹海
7/17〜20◎シアターシャイン

ビジュアルとは裏腹の硬派な不条理演劇
二作を交互上演。うち「化かす」を観劇。尖ったビジュアル。ふざけた前説。そして開演前の舞台上からの懐メロを繋ぐDJ。開演前から独特の世界観へと誘われる。もしも自死を選んだ女性が「銀河鉄道」に乗ったら、生死の境をさまようたびに途中下車を迫られるのか。走馬灯を思わせる物語は何度も同じ場面を繰り返す。序盤にジョバンニからそんな説明は無かったぞと、戸惑う走馬灯の出演者たちのやり取りがおかしい。ビジュアルとは裏腹に、別役実を思い出させる硬派で緻密な不条理演劇。独特の言葉遊びと絶妙な間が効いていて、細かいネタにクスクス。ポップさと不条理の難解さとが不思議に同居した、クセになる感覚の舞台。
writer/てっくぱぱ https://www.nanka-ku-kai.com
石原正一ショー
『筋肉少女26』『筋肉少年・改』
作・演出・出演◇石原正一 出演◇「少女」モモ 田川徳子 森口直美 seico 佐藤みか 吉沢紗那 澤田紗菜 吉迫綺音 岸本奈津枝 中西邦子 ほか 「少年」竹下健人 樋口みどりこ 北村守 山本貴大 澤田誠 坪坂和則 松田拓士 魔人ハンターミツルギ 上原日呂 西田政彦 ほか (両作品)近藤ヒデシ 山浦徹
7/1~5◎扇町ミュージアムキューブ CUBE01
https://x.com/halashow01


友情! 努力! 勝利! の舞台が帰ってきた
人気漫画・アニメ・ドラマの登場人物たちをモチーフにした群像コメディを、毎年年末に発表するのが恒例となっていた、パロディの名手・石原正一。しばらく活動休止状態だったが、過去の名作2本立てで、ついに復活した。プロレス漫画の名作『キン肉マン』の主人公の娘(息子)が、若き超人たちが集う高校に入学して、学校を影で操る悪を退治するという、往年の少年漫画のようにスカッとする、勧善懲悪バトルものだ。ほぼ全員の性別が入れ替わるだけで、内容・キャラクターとも同じ物語なのに、とにかく明るくて真っ直ぐな印象の「少年」と、どこか影があってピカレスク風味を感じる「少女」と、雰囲気が変わることが思わぬ発見だった。
writer/吉永美和子
風姿花伝プロデュース
『ハムレット』
作◇ウィリアム・シェイクスピア 演出◇ニシサトシ 出演◇成河 永井茉梨奈 林田航平 矢野昌幸 古川路 ほか
6/22~7/12◎シアター風姿花伝

笑って泣いて共感する、カタルシスの先へ
言わずと知れたシェイクスピア四大悲劇のひとつ。ニシサトシと成河を中心に1年かけて解体と再構築をしたという本作は、まったく新しい『ハムレット』に仕上がっていた。驚くことに台本は無いという。演じる役のセリフを役者自身が一から自らの言葉に生まれ変わらせる。中世デンマークと目白の劇場を自由自在に、もしくは地続きに存在させる圧倒的話術。そこには古典名作ではなく2026年の「私たちのハムレット」があった。その圧倒的リアリズムは現代口語訳劇という一言には収まらない。5人全員が複数の役を兼ねているが、キャストが少ないからではない、意味のある演出をこれでもかと見せられる。HANAのBlue Jeansに乗せて。
writer/梅ゆかり
流山児★事務所
『青森県のせむし男』
作◇寺山修司 演出◇流山児祥 出演◇伊藤弘子 栗原茂 甲津拓平 三上陽永 原きよ 浅倉洋介 小林由尚 鈴木麻理 家田三成 本間隆斗 山川美優 ほか
7/11〜20◎ザムザ阿佐谷

既成概念を疑い挑発した寺山修司の名作!
物語の舞台は、青森県の大正家。女中のマツは、跡取り息子に犯され赤児を出産した。世間体を考えて結婚という形を取ったものの、大正家の命令で下男が子を川に捨てることに。月日は流れ、主人である老夫婦と息子は他界。女主人となったマツの前に現れたのは、大正松吉を名乗る醜いせむし男だった……。松吉の登場によって、運命に翻弄された母・マツは、憎しみ、苦しみ、悲しみなどを爆発。マツを演じた伊藤弘子が生み出す緊張感、妖気が凄まじい。59年前の初演では、マツを美輪明宏が演じて好評だったという。伊藤が見せる哀しげな表情、エキセントリックな笑い声など、美輪を彷彿とさせた。役者の力量を見せつけられた思いだ。
writer/シン上田
「えんぶ」次号(2026年12月号)の原稿募集中です。締切は9月30日!
原稿は【投稿フォーム】にて受付中です。みなさまの投稿、お待ちしています♪





