堂本光一が前人未踏の領域を走り続ける『SHOCK』単独主演回数2000回達成セレモニーレポート!

ミレニアムの2000年に誕生し、当時帝劇史上最年少座長として、21歳で帝劇初主演を務めた堂本光一が、以来磨き上げ、進化を続けて半世紀に迫ろうかという時を駆け抜けた唯一無二のエンターティメント『SHOCK』が、去る2024年4月22日、演劇における代役なし、単独主演記録となる2000回を達成し、昼の部終演後この偉大な記録を祝うセレモニーが開催された。

『SHOCK』と言えば、帝劇の世界的にも貴重なスケールを誇る公大な舞台面、瞬時に舞台セットを転換することが可能な大ぜり、盆などの舞台機構を使いつくし、歌、ダンス、アクション、パーカッション、殺陣、階段落ち、マジック、客席の上空までのフライング等々、ここにしかない豪華な演出を誇る作品。更に堂本光一が脚本・演出にも関わるようになり、タイトルも『Endless SHOCK』と改められた2005年以降の上演では、それらエンターティメントのますますの充実と共にSTORY面でもブラッシュアップを重ね、進化に次ぐ進化を続けてきた。2011年の東日本大震災、2015年に起きた公演中の事故、更に2020年に世界を覆った新型コロナ禍と、様々な苦難に直面しながらも、作品は決して歩みを止めず、コロナ禍にあっては、感染対策に万全の配慮を期しての上演を可能にする為に、本編から3年後のカンパニーの姿を描いたスピンオフ作品『Eternal』バージョンが生み出されるなど、『SHOCK』の歴史はそのまま、堂本光一という類まれなエンターティナーと共にあるものだった。しかもWキャストではない単独主演の形態を実に23年半続けて、遂に迎えた2000回の上演記録には、どれほど感慨が深いだろうと観る側でさえ思いが募るばかりだったものだ。

けれども2000回目の舞台を終え、通常の公演終了の挨拶をはじめた堂本光一からは「昨日まで今日が2000回だって忘れていて、どうして明日は昼間1回公演なんだよと思った」という言葉が飛び出し、公演の初日や千穐楽、節目の記念日などなどをいつも忘れていて、ファンに教えてもらうことが通常運転という堂本の、やはり凡人の感覚の及ばない地点にいる人なんだな、と改めて感嘆させられる異能ぶりが見えるようだ。一般的にわかりやすい困難だけでなく、この年月、日々の公演を積み重ねるなかで、本人がどれほどの苦悩や高い壁を越えてきたのかは想像に難くないだけに、こうした記録に拘泥しない、日々全力のエンターティメントを届けるだけ、という姿勢があるからこそ、逆説的にこれだけの記録が作られたのかもしれないと改めて思わされた。

そんな堂本の思いをよそに、通常通り幕が下りるはずはなく、『SHOCK』の醍醐味のひとつであるLEDパネルによる目にも鮮やかな映像効果に美しい花火があがるなか「SHOCK 上演回数2000回達成!ご声援ありがとうございました」のメッセージが浮かびあがり、総立ちの客席から万雷の拍手が沸き起こった。

ここから『SHOCK』を長年支えてきたおなじみのメンバー「ふぉ~ゆ~」の越岡裕貴と松崎祐介の司会でセレモニーがはじまる。

下手からくす玉が登場し「これ大変なんだよ、掃除が」と笑わせる堂本に、越岡と松崎が紐を引くように促して、くす玉が割られると、大量という言葉ではとても足りないと感じる深紅の紙吹雪と、「ついに来ました2000回!」の文字幕が下りて、堂本は大量の紙吹雪と共に帝劇の舞台を転がる。佐藤勝利を筆頭にキャストたちが舞台面から拾い上げた紙吹雪を更に堂本に拾ってはかけ、拾ってはかけの大騒ぎが繰り広げられた。

ここで「お祝いのビデオメッセージが来ています」との紹介からスクリーンに大写しになったのは井上芳雄。言わずと知れた同じ2000年のミレニアムに帝劇で上演されたミュージカル『エリザベート』で鮮烈デビューを果たして以来、この年月ミュージカル界のトップランナーとして走り続けているミュージカルキングだ。堂本にとって『SHOCK』以外の初ミュージカル挑戦となった『ナイツ・テイル─騎士物語─』での共演以来、盟友関係が続いている。

そんな井上は「2000回の大台達成おめでとうございます!今日は残念ながらそこにはいかれなかったのですが……あ、井上芳雄です」と、知らない人はここにはいないだろうことを逆手に取った挨拶で早速笑わせ、観客、キャスト、スタッフ、オーケストラ、そして関係者全員に祝意を送り「皆様が支えてくださったからこその今日の記録で、僕の立ち位置がよくわかりませんけれども(笑)、嬉しい気持ちでいっぱいです」と、堂本との絆、盟友感をたくまずしてにじませる。なかでも堂本が2000回もやっているのに、毎公演「今日はできるだろうか」とのある種の不安を抱えつつ、それをひと公演ごとに懸命に務めたことの繰り返しが2000回なのだと、堂本から聞いているという心情を代弁。帝劇が建て替えになるため『SHOCK』も4月5月、そして11月の公演でいったん終わり、3年後を描いた『Eternal』は5月で終わるということで、自分も帝劇に行きたいと思っている。本当におめでとうございます、と「皆さんもVTRばっかり見せられてもね」と井上らしいウィットをまじえながらの、心からの祝意が伝わるメッセージを届けてくれた。

その様子を舞台上手隅にはけて見つめていた堂本も「何度も観に来てくれている」と、井上のコメントに感慨深い様子を見せていると、越岡と松崎から「セレモニーはまだまだ続きます。この方が駆けつけてくださいました。ミュージカル界のレジェンド市村正親さんです!」との紹介があり、堂本と「ミスター帝劇」の名を二分する言葉通りのミュージカル界のレジェンド市村正親が、深紅の薔薇の花束に純白の薔薇で「2000」の文字を浮かび上がらせた巨大な花束を持って登場。喝采が広がるなか、花束贈呈が行われた。

『SHOCK』は何回観たかわからないという市村は「光一が走り続けるなら俺も走り続けてやると思った。この帝劇の空間が宇宙のようで、宇宙遊泳しているかのようだった」と、この特別な2000回の公演を独特の表現で表し「最後まで乗り切って」と、『ミス・サイゴン』初演で、帝国劇場初の半年のロングラン公演を経験している、ロングランの過酷さも知るレジェンドの市村だからこその思いのこもった挨拶を贈る。

一方堂本は「市村さんが隠し切れないオーラで客席にいたので」と、舞台から市村に気づいていたことを明かし、蜷川幸雄演出でシェイクスピア作品に精通している市村の前でリチャード三世を演じることに緊張したと語ると、市村が「上手くなったな!」と太鼓判を押すひと幕も。さらに「芳雄はビデオだったけど、僕も公演中なのにここにきたの。光一のことならどこにでもついていくから!」と笑わせながら宣言し、全員での写真撮影のあと、明るいオーラを振りまきつつ退場していった。

堂本はプライベートでもお世話になっていると市村のことを語り「『ミス・サイゴン』の市村さんの演技が好きで、市村さんがやめるやめるっていいながら何度もやっているので、俺もやめるやめると言いながら……」と言いかけると、観客から歓声と大きな拍手が沸き起こる。『SHOCK』を終えることを撤回してくれるなら、すべての人が大歓迎するに違いない思いをこの大きな拍手から敏感に感じ取ったのだろう。「ここがなくなっちゃうからね。しょうがない」と、堂本が言葉を継ぐと、越岡と松崎から「でも光一くんならまたなんか面白いこと考えてくれるでしょう」との力強い言葉が出て、再び大きな拍手が劇場中を包み、共演者の前田美波里、中村麗乃も笑顔で拍手を贈り続けた。

最後に堂本から「大切な節目で皆さんがこうしてお祝いしてくださるのは感謝しかない。ここでの思い出はたくさんあるのですが、ありすぎて逆に思い出せない状況にもなっていたりします。毎日ステージ上で当たり前のことを当たり前にやるのってすごく難しいんです。でもみんながそこに徹してくれているのをすごく感じるし、毎日その日の公演をベストに、と言葉では言いますけれども、全員がそれを実践してくれているんですよね。それを感じて自分もその気持ちに負けないようにやろう、というお互いの相乗効果になるんだなと感じています。そういう支えを感じながら最後までやりきれるのはとても幸せなことなので、皆さんからの愛を大切に最後までやりきりたいと思っています。改めましてありがとうございました!」との挨拶があり、名残りを惜しむ拍手が続くなか、2000回セレモニーの幕は下りた。

この時間に、この2000回という途方もない記録は、1回、1回の公演を「ベスト」の公演にいう、堂本光一が主演者として、また演出家として心を砕いてきた、23年半に渡る変わらない積み重ねが残した結果なのだと思うと、すべてが神々しい気持ちさえする。生まれたときから『SHOCK』はエンターティメントの世界にあるものだった、というファンも少なくない、この特別な舞台に、タイトル通りに「Endless」を貫いて欲しい、終わって欲しくないという正直な思いが胸に迫るのと同時に、堂本光一が走り続ける奇跡の舞台の軌跡をこれからも見つめていきたいと願う時間だった。

【取材・文・撮影/橘涼香】

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