「はえぎわ」が劇団創設25周年を迎え本多劇場で来春公演!

ノゾエ征爾が主宰する「はえぎわ」が劇団創設25周年を迎え本多劇場で来春公演を開催する。多彩な活動で人気のノゾエだが劇団での公演は2年半ぶりで、毎回劇団ならではの表現に対しての真摯なアプローチぶりを心待ちにしているファンにとっては、「はえぎわ」の更なる進化を垣間見る瞬間に立ち会える機会に期待が広がる。
「25年間、劇団では稽古しながら執筆をする方式でやってきましたが、今回は初めて、稽古初日に完本した状態でスタートしようと、今書いています」と抱負を語るノゾエ征爾に、立ち上げの初演をみて衝撃を受けた(編注:本人の記憶が曖昧で本当に初演だったかは定かではない)「えんぶ」の編集長の坂口が話を聞いた。

——「はえぎわ」が劇団創設25周年ということでおめでとうございます。
 ありがとうございます。99年に始動したので、今年(2024年)で25周年だったのですが、3月までは25周年期ということで、来年の2月26日から3月2日に公演を開催させていただきます。

——会場は本多劇場ですね。
 はい。本多劇場さんから下北沢演劇祭への参加のお話をいただきまして、とてもありがたく光栄ではありつつなんですが、劇団のポテンシャル的には、ちょっとハードルの高い劇場になりますかね。

——でもタイミング的にはよかったと。
 そうですね、思い返せばこの25年間、ほぼ縁と言うか、縁にばかり支えられて成り立ったってきたと言っても過言ではありませんので、今回の本多劇場さんとのご縁とも繋がらせていただこうと思い至りました。きっと必ず、やって良かったと思えることがあるだろうと、そうなるように頑張ります。

——25年前に吉祥寺の小劇場で観せていただいた初演を思い出します。
 吉祥寺でやったのは、まだはえぎわをやる前の、E N B U(ゼミナール)時代にやった単独公演になりますかね。はえぎわの初演は、神楽坂でした。出演者は6人だったんですが、ある回では、開演時に4人だったお客さんが、終演時には3人になっていたという。昨日のことのように、一生忘れない光景ですし、なので今でも、一人のお客さんへのありがたさは強くあります。初期は、アングラテイストがかなり強かったですね。生まれるとか、死ぬとか、性とか身体のことばかり考えていました。1メートルのチン◯や4メートルのチン◯、果ては花火噴射で空飛ぶチン◯までと、あらゆるチン◯を登場させ続けていましたけど、どれもこれも、昨日のことでよかった。としみじみ思ってしまいます(笑)。

——いま思えばあれくらいのエネルギーの積み重ねがあってこその現在ですね。
 確かに赤面するものは多いですけれど、中身の一つ一つは表現に対して真摯に突き進んでいた自負はあります。今は好みがまるで違うので、到底あのような表現はやりませんけど、あの当時のエネルギーには、我ながら感心します(笑)。まあ、大した作品は残せていないかもしれませんけど。

——いえいえ、私たちは「はえぎわ」の創作活動全体から見れば断片かもしれませんが、とてもおもしろい作品をたくさん観せてもらっています。ここまで参加されてきた劇団のみなさんの力も大きいですね。
 そうですね。はえぎわのメンバーは、本当にいい人ばかりで、あんなこともこんなことも、みんなよく頑張ってくれたなと、たまに一人で感激しています。そして、これまで関わってくださった、たーくさんの関係者の皆さん。そして、お客さん。何千人、何万人もが集まるような場所ではないですけど、極めて狭小な住まいではあるけど、誰かにとってはきっと、希少で貴重な場所になっているといいなと思います。

——チラシのイラストが松尾スズキさんですね。
 松尾チルドレンとしては禁断でしたが、自分なりにけじめと覚悟をつける意味もあってお願いしました。松尾さんも、いつだったか描きたいとおっしゃってくださっていて、とてもありがたかったです。この先の勇気になるような、何かを見つけられたらと模索しています。

——ゲストのみなさんも多士済々で劇団のみなさんともどんなコラボレートになるのかとても気になります。
 初めての人もこれまでご一緒した人も、関係なくお呼びしたかった。
串田十二夜くんは、初めて観た時に、なんてキラキラしているんだろうと一目惚れしてしまって、すぐに声をかけてしまいました。東野くんは、ずっと気になっていて、たまたま一度飲む機会があったときに、人柄も好きになって、それもすぐに(笑)。山本くんと柴田くんは、最近いろんな公演に参加してもらっていて、俳優としてももちろん最高にいいし、創作現場にいいエネルギーをもたらしてくれる人たちです。
笠木さんは、僕の作風が変わった2010年頃から何回か連続で参加してもらっていて、声も佇まいも姿勢も大好きな人。作家としても尊敬しています。10年ぶりくらいなのでちょっと緊張しています(笑)。
そして高田聖子さん。Bunkamuraの『母を逃がす』という作品が中止になってしまって以来、ずっとタイミングを伺っていたのですが、まさかはえぎわでハマるとは。もう掴まってしまったが最後(笑)、思いっきりご活躍いただこうと思っています。

——本多劇場の公演はどんな内容になるのでしょうか?
 周年のお祭り的なものは「はえぎわ」には似合わないと思っていて。普通に、はえぎわ渾身の“嘆きの喜劇”をやれたらと。描くべき社会問題などもたくさんありますが、もっとシンプルに、人としての根源的なところにスポットを当てて描けたらと。たとえば「幸せとは?」とか、そういったことです。ただ、「ほんとはね」とタイトルでもあるように、逆のことから描いていきたいので、結果的に、人間のエゴについてのお話になりますね。はえぎわ風味にしなやかな喜劇!にできたらと思っています。

公演情報

はえぎわ25周年公演
『幸子というんだほんとはね』
脚本・演出◇ノゾエ征爾
出演◇町田水城 竹口龍茶 踊り子あり 鳥島明 富川一人 山口航太 ノゾエ征爾
串田十二夜 山本圭祐 東野良平 柴田鷹雄/笠木泉 高田聖子
2025/2/26〜3/2◎本多劇場
お問い合せ:リトル・ジャイアンツ 090-8045-2079

劇団公式HP https://haegiwa.net

【構成・文/坂口真人】

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