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三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂 幕を閉めるな』いよいよ開幕! 囲み取材レポート

坂東彌十郎 中村鴈治郎 片岡愛之助 松本幸四郎 中村獅童 三谷幸喜 

第2弾は「どれだけ面白いものが作れるか」!

第1作目から6年――三谷かぶき最新作が11月2日から幕を開けた。
これまで、舞台はもとより映像作品でも数々の名作喜劇を生み出してきた三谷幸喜。2019年6月に「三谷かぶき」の第1弾『月光露針路日本(つきあかりめざすふるさと) 風雲児たち』が歌舞伎座で上演され、好評を博してから早くも6年。その最新作『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな』が、11月2日から歌舞伎座「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部で上演される。(26日まで、10日・18日は休演) 

この作品は、三谷の主宰劇団「東京サンシャインボーイズ」に1991年に書き下ろされた、ある劇場のバックステージを描いた傑作喜劇『ショウ・マスト・ゴー・オン 幕を降ろすな』に新たな命を吹き込んで、新作歌舞伎として上演するもの。
歌舞伎の三大名作のひとつ『義経千本桜』は元は人形浄瑠璃の作品だが、歌舞伎として1748年に伊勢で初めて上演されたといわれている。その上演中に、芝居小屋「蓬莱座」の舞台袖と舞台上で繰り広げられる予測不可能な展開から目が離せない、注目のコメディーだ。

キャストは、狂言作者の花桐冬五郎の松本幸四郎、座元藤川半蔵の片岡愛之助、役者山本小平次の中村獅童、女方・竹島いせ菊の坂東彌十郎、坂田虎尾など2役を演じる市川染五郎といった三谷作品と縁の深い歌舞伎俳優から、頭取・嵐三保右衛門の中村鴈治郎らの初めて三谷作品に出演する歌舞伎俳優、そしてスーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』などですでに歌舞伎経験のある浅野和之や、阿南健治という三谷作品おなじみのベテランバイプレーヤーなど、この顔ぶれを見ただけで何かとんでもなく楽しいことが起こりそうな予感に満ちている。

10月下旬、都内でその取材会が行われた。会見には、脚本・演出の三谷幸喜、松本幸四郎、片岡愛之助、中村獅童、坂東彌十郎、中村鴈治郎が出席。それぞれから挨拶の後、質疑応答のインタビューに移った。

【挨拶】
谷幸喜 6年前にやらせていただいて以来ですが、今回の僕のテーマは、歌舞伎座始まって以来の、割れるような拍手と言われるような、ガラスが割れるぐらいの笑いに満ちたコメディをやりたい。僕も知っている歌舞伎役者の皆さんは、コメディアンとしても本当に優れた人たちばかり。そんなに笑いのセンスのある喜劇俳優が集まった劇団はそうはないので、それをフルに生かして最高の喜劇を作りたいと思います。

松本幸四郎 三谷さんの作品は本当に楽しみにしていて、稽古に入ってだんだん形になっていくことに本当にわくわくしています。ぜひとも本当にすごいもの、お芝居は「ショウ・マスト・ゴー・オン」です。とにかく芝居を愛している舞台を愛している人たちばかり登場するお芝居。自分自身もそれに幸せを感じながら勤めたい。

片岡愛之助 今回、私は三谷さんの歌舞伎に2回目に出させていただきます。これは観ていただいてのお楽しみということで、全力で千穐楽までみんなで頑張っていきたい。

中村獅童 三谷さんとはNHKの大河ドラマ『鎌倉殿の13人』以来のお仕事で、大変嬉しく思っております。舞台は2本目ですね。最近は若い方も、今まで観たことがなかったけど歌舞伎を観始める方が結構いらっしゃると思います。歌舞伎にはいろいろなタイプのお芝居があることを若い方たちでも知っていただけて、難しいだけではなくこういった新作歌舞伎で、コメディー作品もあると知っていただけたら嬉しい。

坂東彌十郎 今回は女方ということで、大人しく過ごしていきたいと思いますが、さっき三谷さんが仰ったように、今回も本当に大爆笑です。皆さん出ずっぱりですが、私は出番が飛び飛びなので、稽古場でもいつも大爆笑で、本当に楽しい時間を過ごさせていただいております。これをお客様に共有していただきたい。

中村鴈治郎 三谷さんと一緒に仕事をさせていただくことを本当に望んでいました。初めて三谷かぶきに出させていただき嬉しいです。今回は、できるだけ笑わない鴈治郎を皆さんに観ていただきたい(「一番笑ってる…」と幸四郎)。

【質疑応答】

──お稽古が始まっていますが、三谷さんから見ていかがでしょう。

三谷 現代劇として僕が何回か上演していた『ショウ・マスト・ゴー・オン』を、今回時代劇に置き換えて作り直しました。ほぼ原形をとどめていないので、かなり執筆には苦労しましたが、やっぱり皆さん力のある方なので、すぐ役を自分のものにしてくれて、すごく順調に進んでいますね。

──幸四郎さんは、三谷さんとのご関係は。

幸四郎 100%信頼している人。書いていただいたもの、与えていただいたものをどうするかは役者次第で、そういう緊張はありますが、何とか三谷さんの傑作を傑作にしたい。

三谷 僕がすごく感慨深いのは、幸四郎さんと初めてお仕事をさせていただいた舞台の時っておいくつだったんですか?

幸四郎 20代ですよ。

三谷 あの時の幸四郎さんに(市川)染五郎さんが近づきつつあるじゃないですか。そう思うとすごく嬉しいというか、感慨…。

獅童 僕も感慨深いんですよ。そのお芝居を「いつかこういうお芝居に出てみたいな、三谷さんのお芝居に出てみたいな」と思ってその頃は客席から観ていたんですね…感慨深い(一同笑)。

──愛之助さんはどうですか? 三谷さんとは。

愛之助 私は、最初はテレビからでした。それから舞台を何回かやらせていただき、本当にいろんなことを求められる。それが役者としても非常に楽しく、毎回楽しみながらやらせていただいています。

三谷 僕の中では、愛之助さんには立派な人を演じてもらいたい思いがあって、大河(ドラマ)でも舞台でも割とそうですが、今回は立派な愛之助さんじゃない、ちょっとふざけた、頼りない、いい加減な感じのキャラを…。

愛之助 新しいキャラクターですね、今までの中で。

──獅童さんは三谷さんとどうですか? 

三谷 あんまりいい関係ではないです。

獅童 (笑)そうですね~。

三谷 でも僕、すごく助かったんだ。『江戸は燃えているか』(2018年)を新橋演舞場でやった時に、獅童さんが主演でしたが、女優さんが急病で出れなくなり、僕が代役でやらなきゃいけなくなって、その時にやっぱり座長としてすごくみんなを引っ張って、あのピンチを切り抜けた。

獅童 そうでしたね。

三谷 一生の思い出ですよ。頼りになる人です。

──彌十郎さんは?

彌十郎 私は6年前の三谷かぶきが初めてでしたが、それからおかげさまで度々ご一緒させていただき、その都度、本当に「三谷さんの頭の中はどうなってるんだろう」と思うぐらい。今回もあの『ショウ・マスト・ゴー・オン』がこう変わるんだと、いつも衝撃というか感動をいっぱい覚えさせてもらっています。

三谷 彌十郎さんはもう台本を書く段階からいろいろアドバイスをいただいて。僕は歌舞伎をそんなにわからないし、時代背景も江戸時代ですから、知らないことだらけですが、いろいろ彌十郎さんが教えてくださってすごく助かりました。

──鴈治郎さんはいかがですか?。

鴈治郎 初めて仕事させていただいて、前回の『ショウ・マスト・ゴー・オン』を松也さんがやったのをたまたま観に行けて、面白くて。こういうものを歌舞伎で…と思って、まさか歌舞伎でやって、こちらにお鉢が回ってくるとは、大変嬉しく思っております。

三谷 僕は初めてですが、今までなぜこんな面白い生き物がこの世の中にいたことを知らなかったのか、本当に悔やまれてならない。もっと早く出会っていたかった。

──今回、脚本も結構大変だったとか。もうできあがってはいるんですか?

三谷 もちろんできあがっています。ただ今回はやっぱり大変だったので、稽古初日に最後まで本がなかった。でもそれは僕にとっては本当に久々ですね。それだけ時間をかけて書かせていただいたし、ちょっと自信のあるものにはなった気がします。

──配役については?

三谷 僕はそれほど歌舞伎の皆さんを存じ上げていないし、ここにいる皆さん以外にもたくさん出てらっしゃるので、幸四郎さんと一緒にキャスティングをさせていただいた感じですね。

──そうすると、本作りの段階で彌十郎さんや皆さんにいろいろご相談されたり?

三谷 そうですね。劇中劇がありまして、元の作品だと『マクベス』をやっている劇団の話でしたが、(今回は)当然できないので、何がいいかと彌十郎さんに相談して、『義経千本桜』がいいんじゃないかと。で、『義経千本桜』をちょっと見て研究して、その『義経千本桜』のキャスティングをまたやらせていただきました。彌十郎さんがぜひ静御前をやりたいと仰るので(一同どよめく)、滅多にやれる役じゃないですからね。

彌十郎 はい、そうですね、はい。

──彌十郎さんが女方をやる狙いは?

三谷 観てみたかった。僕、彌十郎さんが大好きで、一緒にお仕事させていただくようになる前からずっと舞台を観ていて、こんなに面白い人がいるんだな、この人には何か特別なことをやってほしいと常に思っていて、その一環ですね。

──「バックステージもの」の魅力とは?

三谷 僕は映像もやらせていただきますが、基本は演劇の人間だと思っています。やっぱり舞台が好きだし、舞台が面白いし、舞台の裏で頑張っている人たちにすごくリスペクトを感じている。『ショウ・マスト・ゴー・オン』も舞台監督が主役ですが、歌舞伎には舞台監督がいないので、狂言作者になりますが、名前は違ってもやっている仕事は一緒だし、そういう裏方さんが頑張って盛り立てていることを皆さんにも伝えたいなという思いがありますね。

──映画の影響などでますます歌舞伎に注目が集まっているが、特にどんな点に注目してほしい?

三谷 さっき獅童さんが仰ったのが本当にそうだと思いますが、本当にいろんな歌舞伎がある中で、僕がやるべきことは、やっぱり笑いに特化した歌舞伎。かなりいろんな仕掛けもあるので、エンターテインメントとしての歌舞伎の一つの到達点みたいなものになるといいなと思っています。

──見どころは?

幸四郎 歌舞伎は本当にいろんなジャンルがあると思います。私自身だけに限っても、今年は『大富豪同心』があり『木挽町のあだ討ち』があり、野田秀樹さんの(『野田版 研辰の討たれ』)があり、玉三郎さん演出(『火の鳥』)があり、そして三谷さんがあり。歌舞伎という枠の中でそれだけの舞台があり、古典歌舞伎、三大名作もありますので、歌舞伎という表現方法であらゆるジャンルの作品を作れる。それが今の歌舞伎だなと感じていただきたい。『国宝』で興味を持っていただくのはありがたいですが、まだまだ進化しているところをびっくりしに、歌舞伎座に来ていただきたい。

愛之助 息つく間もない作品ですね。おそらく1回観ただけじゃ見逃した部分がたくさんあるかもしれないので、2回3回と観て「そういうことか!」と気づいていただければ。おそらく毎回変わると思います。ふざけているわけじゃなく、いろいろ進化していくと思う。歌舞伎はいろんな作品があるし、これもできれば繰り返して再演していただいて、他の方も演じていただいて、時が経てば古典と言われるぐらいの名作になればいいなと僕は思って稽古しております。

鴈治郎 だいたいこの本名題、『歌舞伎絶対続魂』が読めないですよね。「ショウ・マスト・ゴー・オン」ってどうやって読むんだっていう…。私も言われるがままに身を任せながら、自分で役を作っていく面白さをつくづく感じています。稽古しながらもどんどん進化していくだろうし、初日が開いてからも多分変わっていくだろうと楽しみな芝居ではないかと思います。

彌十郎 皆さんが仰った通り、ずっと進化し続ける演目だと思います。千穐楽まで多分変わっていくと思いますが、初めてご覧になる方は、明らかに観ただけで面白くて楽しめる。そして歌舞伎を前からご覧になっている方は、バックステージものですから「今きっと舞台はこういうところをやっているんだ」と想像できる。見えているところ以外まで想像しながら観られるお芝居だと思います。

──原形をとどめていないということですが、言えることがあれば。また歌舞伎はいろいろジャンルがあるとも仰いましたが、三谷さんが今回歌舞伎の脚本を書くにあたり、どういうところに歌舞伎味を出そうと意識しましたか。

三谷 内容に関してはお話しできませんね。全部話したくなっちゃうから。ただ、昨日クライマックス直前までの通し稽古があって、やっぱりすごいスピード感で、1時間40数分でしたがあっという間で…体感10分ぐらいですよね?

幸四郎 そんなことはない…もうちょっとだと思います。

三谷 あの…もしかしたら最初に言うべきことだったかもしれないなのですが、これって歌舞伎なのかなあ…?(一同笑) 大丈夫ですか? 歌舞伎ですか?

幸四郎 ど真ん中の歌舞伎です。

三谷 僕はすごくやりたいことをやらせていただいている。僕にできることは、やっぱり喜劇を作ることで、歌舞伎のつもりで作ったわけでも実はなくて、歌舞伎座で歌舞伎役者さんを使って、どれだけ面白いものができるかのチャレンジみたいな形でやらせていただきました。でも幸四郎さんが歌舞伎だって仰ってくれているので、多分歌舞伎だと思います。すごく型破りの歌舞伎かもしれませんが、そういうものがあって、多分伝統文化は先へ進んでいくので、楽しみにしていただけたらなと思います。

【公演情報】
11月歌舞伎座 松竹創業百三十周年「吉例顔見世大歌舞伎」夜の部
三谷幸喜:作・演出
三谷かぶき『歌舞伎絶対続魂(ショウ・マスト・ゴー・オン)幕を閉めるな』
出演
狂言作者花桐冬五郎:松本幸四郎
座元藤川半蔵:片岡愛之助
山本小平次:中村獅童
油屋遊女お久:坂東新悟
浅尾天太郎:中村福之助
篠塚五十鈴 中村莟玉
市山赤福 中村歌之助
坂田虎尾/狂言作者見習花桐番吉 市川染五郎
竹田出雲弟子半二 中村鶴松
附打芝助 片岡千太郎
囃子方五郷新二郎 大谷廣太郎
附師鍛冶屋為右衛門:澤村宗之助
大道具方儀右衛門:阿南健治
骨つぎ玄福:浅野和之
竹田出雲:市川男女蔵
榊山あやめ:市川高麗蔵
竹島いせ菊:坂東彌十郎
頭取嵐三保右衛門:中村鴈治郎
叶琴左衛門:松本白鸚
●11/2~26◎歌舞伎座
〈公式サイト〉https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/939

【取材・文/内河 文 写真提供(C)松竹】 

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