
蛇が去り、馬がやってきました。
少年は白蛇から跳びあがり、軽々と馬に跳び乗ります。
おじさんは軽々とはいきませんので、気をつけて跳ばなくてはなりません。
まず軽くはないし、なんでもないことで足腰膝を痛めるものです。
先日などは、正月で体が鈍らないようにとスクワットをしたら膝に鈍痛が走ったものです。
そして昨年「シッダールタ」で8キロほど痩せたけど、まだ公演も終わっていないのに若干リバウンドが始まっています。
今兵庫公演に来ているわけだが、ホテルの朝食ビュッフェが幸せすぎて食べすぎてしまうのです。
すると楽屋で、数人がとても強いワードを吐き捨てているのが聞こえてきた。
「朝食がクソまずい」。
なんてことだ。味覚の話をしているのではない。私が幸せに浸っている時に、こんなにも不快に陥っている人がいるとは・・。
まずありがたいじゃん。ひっくるめて美味しいじゃん。それでいいじゃん。
とも思いつつ、そういえば「まずい!」という感想を日頃からよく耳にすることに気がついた。私があまり「まずい!」とまでは思わないので聞く度に非常に驚くのだ。
食事に対する採点がとても厳しい民族なのかしら。
だから人と食事に行くとビクビクしてしまうのだ。僕が美味しいと思っているところ、不満に溢れたフレーズが吐き出されたらどうしようと。
私には、食事に付加価値を付けがちなところもあるようだ。
例えば旅先でたこ焼き屋があったので食べてみたら味は普通だった。友人は「うまかねえな・・!」という感想なのだが、私は「旅先で、一生に一度しか出会えないたこ焼き」というシチュエーションが大幅に加点されて「美味しい・・!」となるのである。
でもまあ、いちいちマイナス評価を声を大にして言わないでいいではないかとは思う。と思うのは結局、私の個人的な価値観なのだ。今年も多様性と向き合うのである。
なんにせよ、私は明日も、幸せな朝を迎える。そして跳ね返りの危機とも向き合うのだ。
落とすのにはあんなにも苦労をしたのに、戻るのはなんと一瞬のことか。
せいぜい2キロくらいの戻りで留めたいところです。
にしても体が軽いのはこんなにも快適だったか。をしみじみ実感しているところ。今、西宮の駅で買ったホウライの肉団子を頬張りながらこれを書いているところ。うーむ幸せ。
東京に戻ればすぐに「アンサンブルデイズ」の稽古開始。
若者20名は、きっと、それこそ軽々と馬に跳び乗って駆けていくことだろう。
目一杯尽力したい。E N B Uゼミ第1期生であった28年前を思い出す。
あれから28年間、今日のこの瞬間までずっと地続きである。
あの時私は何に飛び乗ったのだろうか。
夢中すぎて、必死すぎて、わからなかった。
今は、なんとなくわかる。
希望と書いてのぞみです。冗談です。
いや、案外と冗談でもないかもしれない。
乗ってみようか、今年はそののぞみに。
のぞみ通りにはいくまい。しかし持っててみよう。
今年もよろしくお願いいたします。
著者プロフィール

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。
今後の活動
・舞台出演
「シッダールタ」
HP:https://setagaya-pt.jp/stage/25224/
原作:ヘルマン・ヘッセ 「シッダールタ」「デーミアン」(光文社 酒寄進一訳)
作:長田育恵 演出:白井晃
<兵庫公演>
公演日程:2026年1月10日(土)〜18日(日)
会場:兵庫県立芸術文化センター 阪急 中ホール
・演出
COCOON PRODUCTION 2026
Bunkamuraオフィシャルサプライヤースペシャル
『アンサンブルデイズ―彼らにも名前はある―』
作・音楽:松尾スズキ
演出:ノゾエ征爾
@Bunkamuraシアターコクーン
2026/3/19(木)~3/22(日) 全6公演
https://www.bunkamura.co.jp/cocoon/lineup/26_ensembledays.html
・脚本
新国立劇場「りんごが落ちる」
脚本:ノゾエ征爾 演出:金澤菜乃英
@新国立劇場 小劇場
2026年 6月13日〜28日
https://www.nntt.jac.go.jp/play/nozoeseiji-newplay/
▼▼前回の連載はこちら▼▼
https://enbutown.com/joho/2025/12/17/nozoe-153/





