
生きていくのが大変なのは人間だけじゃない!
「日本発のオリジナルミュージカルを世界へ」をテーマに、ワタナベエンターテインメントと劇作家・末満健一がタッグを組んで立ち上げたMOJOプロジェクト。その第2弾となるミュージカル『どろんぱ』が3月に東京、4月に大阪で上演される。現世から《どろん》と消えた妖怪が、《ぱ》と現れる祈願祭を背景に、個性豊かな妖怪たちと人間の関わり合いや親子の愛と絆を描き出す。その作品で、どんな願いも叶える代償に死後は地獄に落とす人形神(ひんながみ)を演じる真琴つばさに話を聞いた。
人形神の怖さよりも哀しみを感じる
──本作への出演オファーが来た時の率直なお気持ちをお聞かせください。
とにかく台本が面白くて、「ぜひやりたいです」とお答えしました。妖怪たちにもこんな悩みがあるんだ、ということがとても面白く書かれているんです。今は現実がスマホの中にすべて入っている、みたいに感じることもありますが、妖怪は想像の世界の生き物で、目に見えない世界を想像するということの大切さをとても感じました。
──妖怪役ということに関してはどう思われましたか。
本作のビジュアルを見た人が「和製版『アダムス・ファミリー』みたい」と言ったのを聞いて、ああなるほどな、と思いました(笑)。皆さんすごく愉快な感じのキャラクターが多い中で、私はちょっとおどろおどろしいところもあります。でも人間としてはリアルすぎる台詞も妖怪として読むとなぜか安心感がありました。
──今回演じられる人形神については、どう思いますか。
この人形神は墓場の土と人間の血で出来ていて、どんな願いも叶えるかわりに最後は人間を地獄に落とすことを目的としています。執念とか執着もあるけれどそんな恐ろしさの中に人形神の哀しみも感じます。それと、かなり久しぶりの殺陣の場面もあるのですが、刀捌きも慣れている人形神にしなくてはと、ちょっと焦っています。
──もし人形神に会ったら何をお願いしたいですか。
地獄に落とされるのはなしで、朝起きられるようにしてもらいたいです(笑)。朝が弱くて、一度寝たら起きないんです。目覚ましが鳴っても気づかなくて。その代わり寝つきが悪くて、寝るまでに4、5時間かかったりもするんですけど。
──人形神をどのように演じたい、というプランは現時点でありますか。
他の妖怪と交わっているようで交わっていない。でもこれは、一人で思っていてもその通りにならなくて、稽古が進んでいくうちに、他のキャストの皆さんの個性が、思いもかけない方向へと人形神を導いてくれているのではないかと楽しみにしています。それと、人形神については資料があまりないので、作る想像の域は広げられる気がしています。個人的には、以前舞台で演じた『アダムス・ファミリー』のモーティシアとビジュアルが似ているので、ちょっとその要素が入ってしまいそうです(笑)。
人に思ってもらうことで妖怪も存在できる
──妖怪に対してどのようなイメージを持っていましたか。
ちょっと怖いかな、と思う部分の方が大きかったですが、今回の作品でそれぞれ愛おしさも出てきました。妖怪といえば、私は「緑の血が通ってそう」と言われたことがあります。ビジュアルがクールそうに見えるからなんですが、私のことをよく知っている人たちは「おっちょこちょいなところとか、人間っぽさがすごくあって、めっちゃピンクの可愛い血が流れてるよ」と言ってくれました(笑)。
──真琴さんの中で人形神はどのようなイメージですか。
台詞を読んだ時、映画「国宝」の女形をされた田中泯さんが浮かんできました。その後、オープニングの歌稽古したら、楽しくなって、どこかではっちゃけたい! と思う自分も出てきてしまいました。多分各妖怪のキャラクターソングもロックだったりラップだったり、狂言回し風だったり、色々楽しそうに見えたからかもしれません。キャラクターソングは観ている方もきっと楽しんでいただけると思います。
──人形神のキャラクターソングの印象を教えてください。
「土人形」とか「私を祀りなさい」みたいに歌詞がちょっと怖いものもでてきますが、とても覚えやすいメロディです。オリジナルミュージカルということで私が演じることを前提に曲を作っていただけたことに感謝しています。今はピアノでお稽古していますがこれから笛や太鼓といった和のテイストも加わるそうなのでとても楽しみです。
──今回、この役を通して真琴さんのどういった部分を出していきたいと思っていますか。
男性でも女性でもない、低音勝負の私らしさを出せたらと。天邪鬼役の相葉裕樹さんと2人で歌うところは、私が下のパートなんですよ。それが最高に嬉しくて、お客様にどう聴こえるか楽しみです。滑瓢役の吉野圭吾さんと座敷童子の生駒里奈さんとは2度目の共演で、吉野さんとは15年前にミュージカルで恋人同士の役だったんです。今回はあまり絡みがなさそうでちょっと寂しいです。小池徹平さんとはもう20年くらい前かな、TV番組で一瞬だけご一緒したことがあるんです。その時の印象がとても素敵で、魅力的だったことを今でもはっきり覚えています。そんな小池さんとの初めての舞台はどんな感じになるか、ワクワク感でいっぱいです。
──見どころはどんなところになりそうでしょうか。
私は小池さんの役が特に好きなんです。烟々羅という煙の妖怪で、人間に恋しちゃうピュアな心を持った妖怪というのを、ぜひ皆さんに観ていただきたいです。烟々羅はもともと資料がほとんどない妖怪なので、ここから新たな烟々羅の歴史が始まったらいいな、と思います。
──本作にはどのようなメッセージがあると感じていますか。
私は想像力の面白さを強く感じました。生きていくのが大変なのは人間だけじゃない! 妖怪だって大変。妖怪の日常ってどんなだろう。そんな想像力を広げるきっかけをもらいました。人間の想像が生み出したものだから、恐らくそれによってしか存在の意義がないかもしれません。「何のために生きているんだろう」と考えたとき、人に求められたり頼られたりすると生きている甲斐がある、と感じられる瞬間がありますよね。妖怪も人にそう思ってもらえることで存在価値が生まれるのなら、彼らたちの住みやすい世界を想像してみる。妖怪に家族や親せきはいないのだろうかとか、想像は果てしなく続けられると思いました。
(このインタビューは「えんぶ4月号」より転載)
インタビュー◇久田絢子 撮影◇中村嘉昭 ヘアメイク◇土屋裕子(マハロ) スタイリング◇山下 由(コンテンポラリー・コーポレーション)
プロフィール
まことつばさ○東京都出身。元宝塚歌劇団月組男役トップスター。退団後は歌手として俳優として舞台やドラマに出演、またテレビのバラエティ番組などでも活躍中。近年の出演舞台は、『歌うシャイロック』、『8人の女たち』、ミュージカル『神が僕を創る時』、live『未来へのOne Step! 〜世界を結ぶ愛の歌声〜』など。
公演情報

MOJOプロジェクト -Musicals of Japan Origin project- 第2弾ミュージカル『どろんぱ』 supported by にしたんクリニック
作・演出◇末満健一
作詞◇森雪之丞
作曲・編曲・音楽監督◇深澤恵梨香
ゲストコンポーザー◇和田唱
出演◇小池徹平 屋比久知奈 生駒里奈 木内健人 東島京 加治将樹 土井ケイト 相葉裕樹 吉野圭吾 真琴つばさ ほか
3/16〜29◎日本青年館ホール
〈チケット問い合わせ〉
サンライズインフォメーション 0570-00-3337(平日12:00〜15:00)
4/3〜7◎SkyシアターMBS
〈チケット問い合わせ〉
キョードーインフォメーション 0570-200-888(平日12:00〜17:00)





