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市川團子インタビュー

新宿の街に歌舞伎の新風を吹かせる!

市川中車が猫の怪となって宙を飛べば、市川團子は十三役早替りの変化舞踊で魅せる! 5月に東京・THEATER MILANO-Zaで上演される、歌舞伎町大歌舞伎 三代猿之助四十八撰の内『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』。この舞台は、歌舞伎ならではのケレンの面白さをたっぷり詰め込み、さらに「こえかぶ」とのコラボという珍しい趣向もあり、新宿の街に歌舞伎の新風を吹かせる! そんな話題の公演への抱負と歌舞伎への熱い思いを市川團子が語ってくれた。

「東海道五十三次」を逆にたどる物語

──「歌舞伎町大歌舞伎」は、2024年から始まり、今回はその第2弾として、お父様の市川中車さんや團子さんをはじめとする澤瀉屋一門で、『独道中五十三驛』を上演します。THEATER MILANO-Zaには初めての出演となりますが、いかがですか?

 新宿という場所、初めてのTHEATER MILANO-Zaでの公演ということで、いろいろな面で新鮮さを感じています。今回は「こえかぶ」とのコラボということもあり、見に来てくださるお客様の層が変わるという側面もあるのかなと思っています。初めて歌舞伎をご覧になるお客様もいらっしゃると思いますので、今回の公演が、歌舞伎に興味をもってくださる方が増えるきっかけになれればいいなと思っています。2023年、2025年に「立川立飛歌舞伎」に出させていただいたときに、「立川でやっているなら観に行こうか」と思って来てくださった地域のお客様も多いと聞きましたので、いろいろな場所で歌舞伎を上演させていただくことは、すごく意義があることだと思っています。

──『獨道中五十三驛』は、お祖父様である二代目市川猿翁さんが創られた「三代猿之助四十八撰の内」の一つで、澤瀉屋さんにとって人気演目の1つでもあります。猿翁さんが演じられたのを最初にご覧になった時の印象はいかがでしたか?

 僕が初めて祖父の『獨道中五十三驛』を観たのは、生の舞台ではなく映像だったのですが、『伊達の十役』を超える十八役を祖父が勤めていたことに衝撃を受けました。『獨道中五十三驛』は、元は1827年に四世鶴屋南北が書き下ろして初演された作品で、そのなかで今回父が演じる「岡崎の猫」の場面だけは、初演以降もたびたび上演されましたが、それを祖父が1981年に通しで上演して復活させました。筋としては、御家騒動に、当時流行していた十返舎一九の『東海道中膝栗毛』をオマージュして絡めたもので、本来、東海道五十三次は、日本橋から出発して終点が京都三条大橋になるのですが、この作品では出発点と終点を逆にして、京都三条大橋から日本橋までの道のりをたどる趣向にして、その道中で物語が展開していく作品に仕立てられています。そこに、「岡崎無量寺」の場面で描かれる化け猫伝説だったり、いろいろな脇筋が絡んでくるのが見どころであり、作品の魅力になっていると思います。

──異色作であり、とても面白い作品ですね。今回は中車さんがその「岡崎無量寺」の場面で十二単を着た化け猫の姿で、THEATER MILANO-Zaでは初めてとなる宙乗りに挑戦します。中車さんは製作発表会見で、猿翁さんが得意とされた今回の役柄とケレン味あふれる演出について、「そこに込められたスピリットを一人でも多くの方に見せたい」と抱負を語っていました。團子さんは宙乗り経験者ですが、客席をどんな感覚で見ていますか? 

 僕のなかでは、『ヤマトタケル』で最後に白鳥が飛んでいく時は、客席の景色に夕陽のイメージを重ねていました。心がけていたのは、自分としてではなく、とにかく役として景色を見るということ。祖父がよく「ケレンの演出は、心理を伴わなければただ派手なものになってしまう。ケレンを1やるなら、5、6いや10以上に突っ込んで心理の部分を作らなければ、良い舞台にならない」と言っていたからです。

「こえかぶ」で初心者の方にもわかりやすく

──また今回の公演は、通常の歌舞伎ではなく、「こえかぶ 朗読で楽しむ歌舞伎」とのコラボレーションという新しい試みもあります。

 この作品は、1981年の初演以来、何度か祖父が再演していますが、そのたびに改変を加えています。ただ、今回、歌舞伎の場面として上演される「岡崎無量寺」と「写書東驛路」だけは、祖父の初演から最後に上演された1997年6月の公演まで、ほとんど改変がありません。祖父の芸談にも、この二つの場面だけは初めから本当に良くできていると書いてありました。ですから物語全体の流れの中で、歌舞伎としては選び抜かれた二つの場面を上演して、そのほかの場面は「こえかぶ」として、現代語に近い言葉で現代のお客様にもわかりやすく伝えていただく。こういう構成の公演になるのではないかと思います。

──歌舞伎の場面を演じる側としては、「こえかぶ」によってお客様に物語の流れに乗っていただいて、そこに呼吸を合わせて舞台に出ていくという感覚でしょうか?

 そうなると思いますし、そのことでさらに良い化学反応が起きたらいいなと思っています。声優さんってすごいですよね。僕たち役者は、衣裳でも、化粧でも、身振り手振りや動きでも、役に近づけるのに対して、声優さんは本当に声一つでその役を想像させなければいけません。やはり、そういう卓越した表現力がおありだと思いますので、表現力ということにおいて、何か盗めるところがあるのではないか、学ぶ機会があるのではないかなと思っています。

十三の役にはそれぞれの物語がある

──團子さんは今回、大詰の舞踊「写書東驛路(うつしがきあずまのうまやじ)」をつとめますが、なんと十三役の早替りがあります。

 初めて変化舞踊に挑戦させていただくので、緊張しています。南北の原作では、実は物語は箱根までで終わっていたのですが、そこから先の日本橋までの旅を舞踊化したものがこの「写書東驛路」で、祖父が作ったオリジナル部分になります。江戸時代に南北の『獨道中五十三驛』を初めて演じたのは三世尾上菊五郎さんで、当時は十役早替りだったそうですが、祖父は復活通し上演の初演では十八役早替りを演じています。祖父のそれまでの最高の早替り数は『伊達の十役』の十役で、芸談でも「これ(十役)を超える」と残していて、その言葉通り十八役を演じたのは、相当の意気込みや熱量があったのだと思います。

──今回は十三役早替りですが、役それぞれに背景があるのですね。

 同じ南北の作で『於染久松色読販(お染の七役)』という演目をベースとして、そこに更にいろいろな作品を取り込んで、役を増やしていっての十三役なので、役それぞれに物語があります。例えば、土手の道哲の踊りは舞踊の『うかれ坊主』のパロディですし、他には弁天小僧菊之助が出てきたりします。本来であれば、それらの役が全部できる役者が、おいしいところだけをやるという構成なので、様々な役を勤めたことのある祖父はいいとこ取りでパパッとできたんです。

──猿翁さんはすごい方ですね。元の役を熟知されているから、それをまとめて、しかも早替りでお客様にお見せしようという発想になる。早替りの技なども研究されたのでしょうね。 

 やはり『伊達の十役』で培われたものがすごく大きいと思います。しかも見せ方も凝っていて、弁天小僧菊之助などは、その台詞にもあるように岩本院の稚児上がりなので、お話の舞台が江ノ島の近くに来た時に、ちゃんと稚児の姿で出てくるんです。そういう演出もすごく粋だなと思います。僕はこの十三役をほとんど演じたことがありませんので、原作が体に入っていない状態で挑ませていただくわけで、身に余る大役をいただいたことは本当にありがたいのですが、その難しさも感じています。とにかく元の作品、その作品の本質を自分のなかに入れた上で早替りを演じることで、それぞれの役の演じ分けもメリハリがつくと思いますから、まずは原作をしっかり押さえて、たくさんお稽古を重ねたいと思います。

──THEATER MILANO-Zaでは、その十三役の元の作品や役をまったく知らないお客様もご覧になると思いますが、そこはいかがでしょう?

 お話を知らないままいらっしゃっても、短い時間でどんどん役が入れ替わっていくこと自体が面白いと思いますので、予備知識がまったくゼロでも楽しんでいただけると思います。そういう意味で初心者の方にもおすすめの作品だと思います。

──これまで演じられた『ヤマトタケル』や『義経千本桜』「四の切」の狐忠信もそうですが、やはり早替りでパッと出ていくと、お客様はワッと盛り上がりますね。

 こちらとしてもそれは本当に嬉しいし、ありがたい瞬間で、やはり祖父の遺してくれた演出の偉大さをいつも感じます。ただ舞台裏での早替りの瞬間は、役者はただ立っているだけで本当に何もしていなくて、澤瀉屋のお弟子さんの皆様、裏方の皆様に助けていただくから、初めてできるものなんです。とにかく、しっかり呼吸を合わせて、早く、鮮やかに出てこられるようにつとめられたらと思います。

──團子さんは若い娘役は何度か演じていらっしゃいますが、今回の十三役のなかには年増の女性など、普段は演じることがない役もありますね。

 お半の母のお繁が出てきますし、女方から女方に早替りするところもあります。立役(男性の役)から女方への早替りなどは、外見からも「変わったな」と演じ分けを感じていただきやすいのですが、女方から女方だと自分の内面や仕草でかなり差をつけなければお客様に伝わりません。そこは難しいと祖父も芸談で書いていたので、心してつとめたいと思います。

祖父を追いかけたいという心を忘れずに

──先ほどの「こえかぶ」の声優さんのお話にも繋がると思いますが、表現者としての團子さんご自身についても伺います。この公演がある5月には、もう大学を卒業されているということで、本当に役者一筋になりますね。

 やはり学生という立場が終わって、社会人になり、役者一本になるということの重みを強く感じています。昨年10月には『四の切』、その前の年には『ヤマトタケル』という、祖父のライフワークであった作品をつとめさせていただいて、自分のなかでも、とにかく本当にしっかりしなければいけないという意識が常にありました。この4月以降は『獨道中五十三驛』のお稽古も本格的に始まり、さらにその意識が強くなると思いますし、ならなければいけないと思います。ただ、そう思うことは大切ですが、それをどういうふうにしたら体現できるのか。それにはやはり、とにかく舞台のクオリティを上げることのみだと思っていますので、そこに集中して、さらに気を入れて取り組みたいです。

──團子さんは8歳で初舞台を踏まれて、今年の6月を迎えたら芸歴14年目に入ります。その間ずっとぶれない歌舞伎への思いというものは、どこから生まれてきたのでしょうか?

 やはり祖父の存在、そして、祖父が具体的に残してくれたものですね。祖父は芸談を本として残してくれたり、たくさんの舞台を映像として残してくれています。ですから、挫けそうな時でも、祖父の芸談や舞台のビデオを観ると、「よしやろう!」という気持ちになります。祖父は昭和の1960年代ぐらいから、多分誰よりも早く、テレビの撮影などではなく「個人で舞台をビデオに残す」ということを始めていた人です。おそらく撮影会社に発注したりとか、お金もかけて、意識的に公演ビデオを記録していたのだと思いますし、残してくれたものから多くのことを学ぶことができるので、本当に助けられています。僕はとにかく祖父を目指していますので、そこはこれからもぶれずに、変わらずにいたいです。祖父を追いかけたいというこの心を忘れずに、たくさん努力をして精進したいという思いは、変わらず持ち続けたい。「歌舞伎が楽しい」、「もっともっと良い舞台にしたい」という今の思いをずっと忘れずにいきたいです。

──演じることや表現することはきりがないだけに、苦しい部分も多いと思います。そういう時の立ち直り方などは?

 憧れの人を見ることで、モチベーションが出るタイプなので、祖父に限らず、本当に芸を極めた人の演技やその舞台を、映像でも生でも観ることで、「自分もその高みに一歩でも近づきたい」という思いが生まれます。ですから、先人の方たちの素晴らしい芝居から刺激を受けて、立ち直るということは多いかもしれないです。

──歌舞伎は歴史が深い世界ですから、それだけに頂上も遠いと思います。

 本当にそうです。例えば名優六代目菊五郎さんの辞世の句は「まだ足りぬ 踊り踊りて あの世まで」というものでした。あんなに芸を極めた方でさえ、そういう辞世の句を詠まれているので、私たちはどうすればいいんだというぐらい、本当に果てしない道です。

──そんな歌舞伎愛に満ちた團子さんから、改めてこの公演を観てくださるお客様へメッセージをいただけますか。 

 早替りあり、宙乗りありのスペクタクルな舞台で、化け猫伝説などいろいろなお話や趣向が多彩に盛り込まれた本作は、歌舞伎をこれまで観たことがない方にも、たくさん観ていただいている方にも、どの世代の方にも歌舞伎の面白さが伝わる作品になると思います。演じる側としては、とにかく皆様に本当に楽しんでいただくことを一番に、舞台を精一杯つとめます。そして、観た方たちの明日の活力になるような舞台をお届けできるように頑張りますので、ぜひよろしくお願いいたします。

(このインタビューは「えんぶ4月号」より転載)

インタビュー◇久田絢子 写真提供◇NHKエンタープライズ

プロフィール

いちかわだんこ○東京都出身。市川中車の長男。祖父は二代目市川猿翁(三代目市川猿之助)。2012年 6月・7月新橋演舞場スーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のワカタケルで五代目市川團子を名のり初舞台。24年に新橋演舞場、御園座、大阪松竹座、博多座の四劇場でスーパー歌舞伎『ヤマトタケル』のヤマトタケルをつとめた。近年の出演作は『新・三国志 関羽篇』『天守物語』『火の鳥』『義経千本桜』など。

公演情報

歌舞伎町大歌舞伎  三代猿之助四十八撰の内
『獨道中五十三驛(ひとりたびごじゅうさんつぎ)』

作◇四世鶴屋南北

出演◇市川中車 市川團子 市川笑也 市川笑三郎 市川寿猿 市川青虎

「こえかぶ」出演◇置鮎龍太郎 福山潤 細谷佳正 小林裕介 内田直哉 櫻井孝宏 石谷春貴 蒼井翔太 野島健児 山口勝平 速水奨 内田夕夜 東地宏樹 関智一 岡本信彦 森久保祥太郎 吉野裕行

5/3〜26◎THEATER MILANO-Za

〈チケットに関する問合わせ〉
Bunkamuraチケットセンター 03-3477-9999 (10:00〜15:00)

〈公演に関する問合せ〉
Bunkamura 03-3477-3244 (10:00〜18:00)

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