
大部恭平の個人企画「おぶちゃ」の最新作『おとこたち』が、4月30日〜5月10日に新宿シアタートップスで上演される。
『おとこたち』は、岩井秀人が主宰するハイバイのために書き下ろし、2014年に初演、2016年に再演。さらに、2023年にはPARCO STAGEとしてミュージカルで上演され、「ハイバイ流の大河ドラマ」と称される名作として知られている。今回は大部の演出で、おぶちゃ流の会話劇として上演する。
仕事も生き方もバラバラな男4人。
24歳から82歳の人生の中で、彼らはどのような人生を歩むのだろうか。
結婚し、家庭を築く者。
スターの座から転落する者。
不倫に溺れる者。
挫折を経験し、心の病と向き合う者。
笑えて、苦くて、やたらと他人事じゃない人生の断片。
主人公で契約社員から未婚のまま老後になる山田役の上田堪大。戦隊もののヒーローとして活躍するがすぐ死ぬ津川役に富田翔。早くに結婚し、不倫がばれるも離婚しない森田役の大部恭平。森田の不倫相手・純子役と、石渡真修が演じる鈴木の妻・花子役の二役を演じる小田えりな。キャスト4人がこの作品について語り合う。
最初は嬉しくて、でもずっと憂鬱になって
──まず大部さんが今回この作品を上演しようと思った理由から聞かせてください。
大部 僕はこの作品が好きで、PARCO STAGE版は劇場で観ていますし、ハイバイで上演されたものも配信ですが拝見しています。そして去年あるご縁で岩井(秀人)さんとお会いしたときに、この作品の話が出て、岩井さんからやってみないかという話をご提案いただいて。こんな幸せなことはないので、ぜひ挑戦したいですとお答えしたんです。
──すごいですね。岩井さんの方から。
大部 そうなんです! でも毎回そうなんですけど、最初は嬉しくて、でもそこからずっと憂鬱になって(笑)。どうしてもそれまでの先人たちの背中がすごく大きく見えてしまうので。ただこうして稽古が始まってみると、もう僕たちは僕たちだと思って思い切ってやれてるんじゃないかと思ってます。
──今回の脚本はPARCO STAGE版をもとにしているそうですが、ミュージカルがやりたかったのですか?
大部 いえ、ミュージカルをやりたいというわけではなく、劇中にカラオケのシーンがあったりすることもあって、構成要素として歌がかなり入っているので、おぶちゃの公演としては歌も入れつつ、あくまで会話劇として向き合いたいという気持ちですね。
──キャストの方たちは歌が入っていることについてはいかがですか?
富田 僕は歌はNGにしてるんで。
全員 (笑)。
富田 NGは嘘ですけど(笑)、歌のある舞台はほとんどやってなかったんです。でもこの作品は歌でやる意味があると思ったので、がんばってます。
──上田さんは歌はいろいろな舞台で歌っていますね。
上田 歌もセリフなので。
全員 かっこいい!(笑)
上田 (笑)でも真面目に言うと、今回はおぶちゃとしてのアレンジになっているし、それにプレイヤーとしては若いキャストで演じさせてもらうので、また新たな一面が出せるかなとは思っています。
小田 私はすごく大事な歌が純子としてあるので、やっぱり歌もセリフのように(笑)。
全員 (笑)。
小田 ちゃんと伝わるようにがんばって歌えたらなと思います。

楽しかったなと思えるような人生に
──作品の印象について話していただきたいのですが。
大部 僕自身も脚本を書く立場として、日常を切り取る、そして会話劇でそれを届けるという意味では、この本は切り口の繊細さとか、どこまでを書くかということの難しさ、そのうえでの面白みとか可笑しみが詰まっていて、自分が書けないような会話劇としてずっと憧れがあったんです。そして、出てくる男たちに限らず人間のどうしようもない部分を、時に残酷に、時に面白く描いて、そのどちらにも見えるという瞬間がすごくある。残酷なものをどう面白く見せるか、残酷というのは酷いことをするという意味ではなく、ただ人が生きて死ぬということなんですが、そこをシンプルに見せてくれて、なんかいろんな感情になるからすごいなと思いますね。
──すごく生々しくて、いたましいようなものを見せられているのに、つい笑ってしまうようなところがありますね。
大部 そうなんですよね。そして読み物としての面白さに演じる人のエネルギーが乗っかることでの面白さがすごくあって、それはこの作品に限らずですけど、特にこの『おとこたち』という作品はその面白さをすごく感じます。
──小田さんは女性の立場からみたこの作品は?
小田 『おとこたち』という題名の通り、「おとこたち」の人生の話ではあるんですけれども、それに関わる「おんなたち」も、それぞれ重要な役割だなと思っています。私は純子と花子という二役をやらせていただくのですが、対照的な役柄ですから楽しみですし、「おとこたち」に負けないように「おんなたち」の人生もちゃんと感じていただけるようにしたいです。
──上田さんはいかがですか?
上田 内容がなんか妙にリアルであったり、逆になんかちょっと現実離れしていたり、特に津川のシーンなどは、僕ら同業者からしたら思うところもあったりするんですけど。でも他人の人生を覗かせてもらっている感じがあって、結果「楽しそうだな」って僕は思ったんです。だから自分も、もしその時が来たら「自分の人生楽しかったな」と思えるような人生でありたいなと。そう思ったのが一番の印象です。
──その言葉、岩井さんが聞いたら喜びそうですね。けっこう酷い話が出てくるのに、人生を肯定的に捉えて読んでくれるのは。
上田 やっぱり年齢がいくたびに、友達の幅とかも狭まっていくと思うんですね。そういう中で、この四人はずっと友達でいる。それはやっぱり掛けがえのない存在なんだろうなと思うし、僕にとってはそこがなんか良いなと。
──まったく職業とか境遇が違う四人ですから、ある種のロマンがありますね。富田さんはこの作品の印象は?
富田 まず映像を観させていただいたんです。それから台本をもらって読んだらけっこう印象が違ってて、こんなことをちゃんと描いていたんだと。単純にすごい面白い舞台だと思って観ていたものが、実際台本を読んでみると、あ、これをこのアプローチでやっていたんだとか、じゃあ逆にこうやったらどうなるんだろうとか、すごく考えさせてくれる本で。ストーリーは観ているのでわかっていたんですけど、なんか岩井さんが書かれた文字の力とか言葉の力がけっこう来たんです。そういうものをポップにコミカルに描くことで伝わるものがあるというのが、この『おとこたち』の作品性だと思うので、せっかくやらせてもらうなら、それこそ大部くんの演出だったり、やる側のアプローチでたぶん全然変わるので、書かれている言葉は大事にしながらも、アプローチの部分は自分たち流にトライしてみたいと思いました。
──確かにセリフ1つ1つがさまざまなアプローチができそうで、そういうセリフが散りばめられているという本ですね。その意味では演出家は大変ですね。
大部 大変と言えば大変なんですけど、今みなさんが言ってくれたようにトライして生まれるものを大事にしたいなと。そして今回は僕も演者で入っていることが武器になったと思ってもらえるように、セリフを喋って感じたことをどんどんフィードバックしながら作っていくのが一番いいんじゃないかなと。もちろん大きな骨組みなどは僕が責任者として作るんですけど、それよりも今回の出演者全員で作る呼吸みたいなものが、最後まで続くことが大事なので、稽古をしながら、そこで気づいたこととか感じたものをみんなで共有しながら、それぞれの認識を高めたり深めたりできるとすごくいいんじゃないかと、今は感じています。
精神を冷静に保つのが難しい職業
──キャラクターの話をしたいのですが、この取材では鈴木役の石渡真修さんが不在なので、四人ではなく三人の「おとこたち」なのですが、まず一番若くして死んでしまう津川役の富田さんから。
富田 僕にそっくりの役です。
上田 いやいや、全然違うでしょ(笑)。
──現場でしくじるところなどはかなりカリカチュアされていますが、役者あるあるみたいなこともあるのかなと。
富田 酒飲んで現場行くとかは昔はあったと思いますし、そういうことに限らず、その何かがないと芝居ができない人がいたり、どこかで精神を冷静に保つのが難しい職業でもあるかなと。それでなかには津川のようになってしまう人もいる。ただ役者に限らず、その何かをやるためにはいろいろなことを削らなければいけなかったりする。そこで楽なほうを選んでしまったりする人間の弱さだったり、脆さだったり、そういうものを何かちょっと込められればいいなと。津川の人生、役者としての人生、子役からやってきたこととか、そういうところをちゃんとナマな感じを持ってやれたら、津川の役は面白くなるんじゃないかと思っています。
──富田さんはもう一役も演じます。
富田 いろんな意味で面白い役で、かなり振り切ってやれそうです。ただ、二役やる場合でも、ちょっと特殊なパターンで、津川との関係性にファンタジーが入るというか、ちょっと夢があるので楽しんでやれそうです。
──そして大部さんですが、ちょっとクズな?森田を演じます。
大部 クズです(笑)。
上田 モテてると勘違いしてて。 ああいう男いるよね(笑)。
──ただ、女性関係以外はそこそこちゃんとしている感じですね。
富田 仕事とかまあまあだし、わりとまともな人生ともいえますね。
大部 でもなんか基本すこしズレてるというか、ちゃんと物事を捉えられていない感じというかある。妻の良子に対しても結果オーライになっているだけだし、良い人生なのかどうかはわからない。自分が森田をやるという気持ちで見ているせいか、なんかピッチにいるだけで別に何も点取ってないなと思っちゃうんですよ。そこに別の意味での面白さは感じられますけど。あとやっぱり二人の女性、純子と良子のシーンとかは、自分自身結婚をしているので身につまされますね。
上田 実際、不倫もしてるしね。
大部 いやいやいや、してないしてないしてない(笑)。
全員 (爆笑)。
大部 ただ、そういう森田を見ていると、どこかで笑っちゃうけれど他人事じゃない可能性もあるから、妙なリアリティと危うさがあっていいなと。あと個人的には、年取って山田と二人でトボトボ歩いたりするシーンとか結構好きなんですよね。あの枯れ具合とか寂れ具合みたいなものは、それこそ僕にはまだわからないことだから楽しみで。読んでても観てても演じていても、いやーすごいなと思うんですよね。
──岩井さんそれをかなり若い時に書いていたわけですよね。
大部 たぶん今の僕ぐらいの時に書いているんですよね。恐ろしいですね。

なぜ生きるのかまで広がる純子の歌
──小田さんは二役ですが、まずは森田の愛人の純子役について。
小田 私は、不倫する女の子の気持ちがあんまりわからないんです。男の人に依存するとかも理解できないんですけれど、ただ、純子の何かにすがりたくなるような気持ちはすごくよく描かれていて、そこは純子の女性らしさかなと。そして最後に歌があるのですが、そこにつながる純子の気持ちをしっかり演じていければいいなと思っています。
大部 僕は最初に、「これは会話劇でミュージカルではない」という言い方したんですけど、唯一、純子が歌うところは、鮮烈に純子の役を集約していると感じたシーンで、なぜ歌うのかがなぜ生きるのかまで広がっていって、すごくヒリヒリしたし、純子が歌う必然性をすごく感じたんです。だから今回も絶対歌にしたいなと。それでその曲だけミュージカル畑の方に作曲を依頼して、今、練習している段階なんですが、すでに相当素敵です。
──女優としての小田さんの魅力はいかがですか。
大部 以前、コント公演だったんですけど、たぶん8役ぐらい出ていて、それをちゃんと演じ分けていて、自分と役を切り分ける力がすごいなとその時から思っていたんです。それと歌は特に素晴らしくて、バーッと歌ったときに良い意味での意外性というか迫力があるので、今回も僕の中ではかなり期待してます。
──小田さんはもう一役、鈴木花子を演じます。
小田 鈴木の妻で子どももいる、この役も私とはすごくかけ離れている存在で、正直、大変です(笑)。
大部 この作品において家庭が描かれているのは実は鈴木なんです。森田も家庭はあるのですが夫婦だけですし、鈴木は家族という意味ではちょっと違うレイヤーにあるとも言えます。花子は鈴木と結婚して子どもができて、いろいろあったのに、死別するまで別れはしなかった。そういうところはどうしてなのかみたいなことを、演じ分けというよりも、花子はなぜそうしたのだろうと、稽古するなかで一緒に考えられたらと思っています。
──上田さんが演じる山田は24歳から82歳まで生きて、友達それぞれの事情に関わるという役です。
上田 大変です(笑)。
大部 山田に関しては、どちらかというと「この人生がモラトリアム」という表現を岩井さんがしていたんですけど、定職に就かないで、辞めようとした仕事で社員になってしまったり、自分の人生を握っているようで握ってない、でも結果握ってるのかもしれないみたいな一番曖昧な中で生きていて、だからこそいろんな人の人生を見てしまうことになる。その星のもとに生まれたという言い方がありますけど、山田はそういう星のもとに生まれたので、役割としていろんな人の人生を見て、最終的にああいう終わり方になるのかなと。
──上田さんはこの役を演じると知っていかがでした?
上田 僕が今まであまり演じていない役柄で、正直難しいかもと不安しかないです。ただ山田って優しいよなと僕的には思っていて。津川の神の話に付き合ってあげたり、みんなの相談に乗ってあげたりする。よく言えば優しい、でも悪く言えば優柔不断というか、これだという自分の意見をしっかり持ってない人だなと。そこは自分とは離れてる人だなという印象が強いですね。
──大部さんは山田役を上田さんにと思ったのは?
大部 上田さんは今回初めてお仕事をさせていただくのですが、一方的に知っていて、歌えることと、今、演じたことのない役とおっしゃったように、あまり山田っぽい人にやってもらうよりいいんじゃないかと。それに翔さんと知り合いで。
富田 そう。たまたま堪大にオファーがあった時期に、僕が大阪で後輩のイベントでMCをやって、堪大がゲストで出て、そのとき初めて二人でご飯に行ったんですよ。そこで『おとこたち』の話が出て、翔さんも出るんですね、みたいな話になったので、いろいろ説明したら、出ますとなって。そういう形で話が繋がったのはすごく良い縁だし、本当にたまたま初めて二人で行った時だったから、ある意味嬉しい驚きでした。
上田 でも出ようと思った一番の要因は大部さんとタメだからです(笑)。
大部 そうそうタメなんです、同い年。
上田 それ嬉しかったですね。
演劇というよりも人生を覗きに来るようなつもりで
──そんな縁も含めて集まった皆さんで作る今回の『おとこたち』がとても楽しみです。最後にお客様へのメッセージをいただけますか。
上田 この作品は語るのがとても難しいのですが、舞台の良いところが沢山詰まっていて、生で見ないとわからないし、口で説明してもこの作品の面白さは伝わりにくいんです。でも本読みで初めてそれぞれの声で聞いたら、笑っちゃうぐらい面白いシーンがあったし、実際に観ていただいたらグッときたり、ちょっと心痛いところがあったりする作品なので、それを目の前で観られるシアタートップスという劇場で観てもらえることが、すごい強みだなと思っています。だからまずは一度、生で観て、何かを感じてほしいなと思います。
富田 本当に説明しづらい作品で、「とにかく観てもらえればわかる」という言い方になってしまうのですが。人の人生を覗いて、改めて自分の人生を振り返ったり、未来を予想したり、人生を考えていくための一つの材料として観に来てもらえたらいいなって思っています。
小田 お話もすごく面白いのですが、音楽の方もすごく良くて、頭にすごい残るフレーズだったりが歌稽古している中にもあるので、お芝居はもちろん、歌唱のほうも楽しんでいただけたらいいなと思います。
大部 おぶちゃでやってきた中で、また新たな角度のチャレンジという作品で、一緒に作ってくれているスタッフや演者の皆さんが本当に素敵な方ばかりなので、自信を持ってお届けできます。僕自身としても年齢的にまた一つ上の段階に行くためのチャレンジでもあって、今までの自分ならチョイスしないようなフレーズとか、そういうものも含めて人の人生を描いていきたいし、欲とか業とか、そういうことにもっと深く向き合って構築できたらいいなと思っています。ですから演劇というよりも人生を覗きに来るようなつもりで、もちろん演劇的な面白い要素もいっぱいあるので、広く楽しんでいただけたらなと思います。

(プロフィール)
おおぶきょうへい○神奈川県出身。劇作家・演出家・俳優・おぶちゃ主宰。俳優としてキャリアを開始し、舞台やドラマのほか、WINKケーブルTVバラエティ「おねこうTV」(レギュラー)、などに出演。脚本、演出では、おぶちゃ全作品をはじめ、『ほむら先生はたぶんモテない』(横浜ランドマークホール)、アニマックス朗読劇『逆転裁判』など。作風として「リズムの良い会話劇」を得意とし、人間味、温かみのある雰囲気・空間づくりの演出には定評がある。
うえだかんだい○京都府出身。ホリプロ所属。舞台を中心に数多くの作品に出演し活動中。主な出演作品は、MANKAI STAGE「A3!」シリーズ(雪白東役)、「HUNTER×HUNTER」THE STAGE、舞台『くちづけ』、『濱マイク』など。7月よりミュージカル『愛の不時着』に出演。
とみたしょう○東京都出身。2002年、テレビドラマ「ごくせん」レギュラーで俳優デビュー。03年、スーパー戦隊シリーズ「爆竜戦隊アバレンジャー」アバレブルー役で知名度を上げる。以降、舞台や映像で活躍。最近の出演舞台は、『99』(主演)、オムニバスコント『TOKYO NIGHT CRAB』、富田翔・一人芝居『憑』、剣劇『三國志演技〜曹魏』、劇団ココロゴス 第5回公演、TBS 舞台『パイロット』など。
おだえりな○神奈川県出身。女性アイドルグループ・AKB48の元メンバー。2024年にグループを卒業。以後、ソロライブや作詞作曲など、「歌」を中心に舞台出演を含め幅広い分野で活動中。神奈川県の観光情報サイトである「アットヨコハマ」のナビゲーターも務めている。最近の出演舞台は、NLTプロデュースコント公演『天使のように微笑んで財布なくしてガム踏んで』、ミュージカル『薔薇王の葬列』、OFFICE SHIKA PRODUCE『世界は密室でできている。』など。

【公演情報】
おぶちゃStage
『おとこたち』
脚本:岩井秀人(ハイバイ)
演出:大部恭平(おぶちゃ)
出演:上田堪大 富田翔 石渡真修 大部恭平 小田えりな 稲村梓 藤代海 岡部直弥
●4/30~5/10◎新宿 シアタートップス
〈公式サイト〉https://ofcha.biz/otokotachi
【取材・文◇榊原和子 撮影◇中田智章】



