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OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」100周年記念作品が開幕!

「春のおどり」誕生から100周年を迎える記念の年を寿ぎ、OSK日本歌劇団「レビュー春のおどり」が新橋演舞場で上演中だ(5月5日まで)。

OSK日本歌劇団による「レビュー 春のおどり」は、1926年に始まった伝統の演目。和洋レビューの二本立て形式を基本に、様々な作品が生み出され続けてきた。そんな演目の節目となる100周年を迎えての公演は、第1部にシェイクスピアの『ロミオとジュリエット』を古代ヤマトの時代に移し、上演時間1時間に凝縮して綴る北林佐和子作・演出による和物ミュージカル「たまきはる 命の雫」と、平澤智が作・演出・振付を担う洋物レビュー「Silenphony─サイレンフォニー─」という、いずれも力のこもった二作品が揃った。

第1部『たまきはる 命の雫』は2000年にただ1度だけ上演された、OSK伝説の舞台を記念公演に相応しくブラッシュアップ。新橋演舞場のような大劇場公演で芝居ものが上演されるのはOSKにとっても久々のことで、大きく期待が膨らむなか、オープニングは「春のおどり」伝統の“春のおどりは、よーいやさー”の掛け声とチョンパ(暗転から一瞬で照明が明るくなる演出のこと)で幕が開き、華月奏を中心に煌びやかな和物の装束の出演者が居並び、トップコンビの翼和希が春の神、千咲えみが女神となっての華やかな舞踏が繰り広げられる。

ここから舞台は一気に「ロミオとジュリエット」の世界へ。仮面の人々が現れ始めることで、「あぁ、ロミオとジュリエットが出会う仮面舞踏会からはじまるのか……」と思えるのは、やはり演劇のバイブルと言って過言ではない、世に広く知られた原作世界の力が大きく作用している。

この感覚はずっと続くことになり、こことここが合体するのか、とか、この場面からここになだれ込むのか!と言った新鮮な驚きを感じさせながらも、物語の強固さが一瞬も観る者を置いていかない。それどころか、かの有名な「バルコニー」が「月見台」になる和物ならではのロマンや、モンタギュー、キャピュレットの面々が繰り広げる華やかな「節会」と、ロミオとジュリエットが秘密裏にあげる結婚式が、舞台上手下手で同時進行するなど、演出の手腕が鮮やか。1度ではすべてを観きれないと思えるほど、豊かな舞と歌と芝居の世界にひたることができる。

特に感心したのは、ロミオに対するマキューシオの感情と、誰もが知る悲劇の原因となる、ロレンス神父が送った書簡がロミオに届かない理由の「そうきたか!」という驚きと発見で、これまでどれだけ観たかわからない「ロミオとジュリエット」のなかでも、一、二を争うと思えたほど腑に落ちた解釈に感心しきり。これは「たまきはる 命の雫」の傑出した仕上がりにつながっているから、是非舞台でその描き方を堪能して欲しい。

そんな作品で何よりも目を引いたのが、ロミオの翼和希とジュリエットの千咲えみの瑞々しい若さの造形とその美しさだ。『ハムレット』のオフィーリアは俳優の実年齢に関わらず演じることができるが、『ロミオとジュリエット』のジュリエットには、生の若さが必要、というのはよく言われる演劇論だが、それほどこの一直線の恋に殉じる若い二人には、強い情熱と同時に若さ故の猪突猛進と、ある意味の未熟さが必要になる。その役柄を昇り龍の勢いでOSK日本歌劇団を率いている翼と、娘役トップスターの経験値を重ねている千咲が、苦も無く造形して見せたのにはハッとさせられた。翼のロミオの想いのままにどこに飛んでいってしまうかわからない、パタパタと表現したいような愛らしい走り方、千咲のジュリエットのロミオへの恋心がこぼれ落ちんばかりの無垢な笑顔等々、二人の恋の純粋さをまっすぐに伝えて目が離せない。同期生として初舞台を踏み、期待のホープだった時代にもコンビを組んでいた二人が、時を経てトップスター、娘役トップスターとして並び立ったいま、こんなにも清新な愛し合う二人を演じている姿は、眩しいばかりだ。

その二人を取り巻く人々を演じる面々も多士済々で、モンタギュー大臣の華月奏が、出てきただけで「あぁ、モンタギューの当主だ」と感じさせる居住まいが重厚で、軽やかに笑いも含んだ役柄も得意とする華月の、役幅の広さを感じさせる。その妻、モンタギュー家室の羽那舞も、『三銃士』のミレディなど大人の役柄を好演してきた経験が活き、妻としてまたロミオを愛する母としての芝居が光る。

また、ロミオの親友は原典ではベンヴォーリオとマキューシオだが、この作品ではマキューシオの椿りょうに集約されていて、前述したようにこの「たまきはる命の雫」独自の解釈が加わっているが、それが十分ありだなと感じられ、椿の真心を感じさせる真摯な演技が、物語世界の舵を、悲劇へと切る役割りの彩を深めた。

一方のキャピレット家は、キャビレット卿が登場しないという斬新なスタイルのなか、キャピレット命婦の城月れいが、双肩に家を担う位取りを見せて堂々たるもの。桐生麻耶トップスター時代に、実質コンビと言って過言ではない存在として大活躍していた経験値と、持ち前の美貌と歌唱力、全てが揃っての好演だった。

その甥ティボルトの天輝レオは、目力の強さとどこか妖しい香りをも漂わせる大人の男役の色気を持ち合わせた貴重な人材で、本人のそうした資質と両家の対立のなか、戦陣を切っていく役柄の危険さがベストマッチ。非常に見応えのあるティボルトになった。

また、原典のジュリエットの乳母の立ち位置になるマリアの唯城ありすは、ジュリエットの最も身近にいる侍女の趣で、可憐さも纏ったまま甲斐甲斐しくジュリエットの世話をする姿が、ベンヴォーリオ不在の脚本で、重要な役割りを担うことに説得力を与えている。

「ロミオとジュリエット」最大のキーパーソンロレンス神父にあたる、僧ロレンスの登堂結斗は、舞台となっている瑞穂の国に渡ってきたという設定が効いていて、ひとつ異なる視線で両家の争いを見つめている人物の、良い意味での異質さを表現。原典では年配の俳優が演じることがほとんどの役柄だが、この人にもまた若さ故の未熟さがあった、とも感じさせる登堂の演じぶりが物語展開には効果的で、キャスティングの妙を感じた。

ジュリエットとの結婚話が持ち上がる瑞穂国親王パリスの壱弥ゆうは、両家よりも明らかに位の高い人物としての振る舞いにプライドを感じさせる演技を披露。和物のなかで、一つひとつを決めながらの動きにも権高さがあり、役柄を印象づけている。

そして、瑞穂国女帝エスカラスには、特別専科の朝香櫻子が登場。2000年の上演時にはマリア役を演じていたという唯一の作品経験者で、両家が迎える悲劇に対して自らの責任にも言及する、こうあって欲しいという国を率いるものの姿勢を、いつまでも娘役と呼びたい持ち味のなかで屹立させているのが貴重で、愛の力が両家を和解させる、代償の大きさと共に天の園の幸福な二人をも感じられる美しいラストまで駆け抜ける舞台だった。

そんな広く知られた作品に、新たな読み解きを与えた和物ミュージカルのあとに控えた第2部が、作・演出・振付 平澤智による洋物レビュー「Silenphony-サイレンフォニー-」。タイトルは「Silence(静寂)」+「Symphony(交響曲)」を掛け合わせた造語で、静寂の中から音が生まれ、やがて壮大な交響曲となるというコンセプトのもと、こちらも斬新な構成が目を引く。これまでもOSKで振付、そして作・演出作品を生み出している平澤だが、今回の「Silenphony-サイレンフォニー-」は、平澤自身が作品創りを重ねるなかで、いまのOSK日本歌劇団の魅力をしっかりと把握し、こちらも新たな読み解きをしようとしていることが感じられる、定番のレビューとは趣を異にする場面進行が力強い。

冒頭の序章「Silence Symphony」では、レビューの幕開きとしてこれまでにほとんど例がなかったのではないか?とさえ感じる、全く無音のまま華月奏、椿りょう、京我りく、依吹圭夏、空良玲澄、奏叶はる、6名の男役によるダンスが展開される。聞こえてくるのは6人の足さばきの音のみ、という精緻な静けさが続くなか、 舞台中央奥からせり上がりで翼和希が登場。娘役も加わったダンスのあと、雨の音が響くなか翼、京我、依吹、空良、奏叶のタップダンスが続き、ウスバカゲロウの千咲えみが登場して歌い……という緊迫も持ち合わせた場面から、華やかなオープニングへと続く流れがただただ目を、耳を奪っていく。特別専科、桐生麻耶の花道セリからの眩しい登場。翼と千咲による初舞台の102期生、美嶌ゆうき、光留れん、乙葉咲月、蓮実シュウ、姫葵るいの紹介からラインダンスへと一気呵成。定型に属さないレビューの魅力が横溢する。

その後も、翼が入団以来14年越しの夢を叶えたという髭を蓄えてのコミカルで華やかなインド映画をモチーフにした場面。一転して研ぎ澄まされた登堂結斗を中心とした和のモチーフの場面。華月奏、城月れい、天輝レオ、唯城ありすを中心とした物語性の強いダンスシーン。桐生が一人大舞台の空気を掌握する歌唱場面。翼、千咲以下総力戦の情熱のスパニッシュ。そしてトップコンビのデュエットダンスと、パッションとサイレントの緩急が巧みなレビュー全体の流れに一点の曇りもない。

特に壱弥ゆう、椿、依吹、空良の男役4人、また唯城、羽那舞、琴海沙羅、華蓮いろはの娘役4人といった、新鮮な組み合わせも目を引き前述の初舞台生を含めて、100周年を迎えた「春のおどり」が、次、の100年に向かっていく決意と、OSK日本歌劇団の豊かな人材による勢いを感じさせる見応えある二本立てだった。

初日を翌日に控えた4月29日には、通し舞台稽古のあと囲み取材も行われ、トップスターの翼和希と娘役トップスターの千咲えみが出席した。

第一部「たまきはる 命の雫」について翼は、26年前に上演された幻の名作に取り組むにあたり、はじめこそプレッシャーを感じていたが、演出の北林からの新作に取り組む気持ちで、との言葉に救われた。との想いを語り、良い意味でこれまでの「歌劇」の常識にとらわれず、『ロミオとジュリエット』の世界に飛び込んだ。1時間に凝縮された世界なので、ここが見どころとはとても選べず、見逃していいところはひとつもないので、物語と同時に和ものの絵としての美しさも感じて欲しい、との想いを語った。
千咲も、「春のおどり」100周年というタイミングで『ロミオとジュリエット』ができるとは思っていなかったが、自分たちにしかできない世界観の『ロミオとジュリエット』になっていると思うので、こんな解釈もあるのかと感じて欲しい。また二人の結婚式のシーンが、両家の節式と同時進行で進む流れがとても好きで、客席から観たいほど、との作品の美点に言葉を尽くした。

また、「Silenphony─サイレンフォニー─」について翼は、静寂からはじまる異色のオープニングからひとつとして同じカラーの場面がなく、お客様それぞれがお好きな場面がきっと生まれると思う、と期待を込めると、千咲もラインダンスがオープニングのなかに組み込まれているなど、これまでのレビューとの違いを楽しんでいただける、ダンスのOSKが表現できている作品、と力を込めた。
更に「レビュー 春のおどり」100周年という節目にトップスターを務めていることに触れて翼が、劇団100周年の時にも感じたことだが、演目が100周年を迎えられるのは、先輩方が「春のおどり」を守り続けてくださったからこそで、感謝と誇りと責任を胸に、次の200周年、300周年へと伝えていける舞台を創っていきたいと意欲的に語った。

全体に記者の質問に対しても「嬉しいです!」「本当ですか?やった!」などの感想や、逆質問も重ねながら積極的に、朗らかに語る翼と、がっちり信頼感を築きながら微笑む千咲の姿が印象的で、京都南座での公演を経て熟成を重ねる豪華二本立てを何度でも観たいと思える和やかな会見だった。

【公演情報】
OSK日本歌劇団「レビュー 春のおどり」
【第一部】『たまきはる 命の雫』
作・演出:北林佐和子 (W.シェイクスピア作「ロミオとジュリエット」より)
【第二部】『Silenphony─サイレンフォニー─」
作・演出:平澤智
出演:翼和希、千咲えみ ほかOSK日本歌劇団 
●4/10~19◎京都・南座
●4/30~5/5◎新橋演舞場
〈お問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489 (10:00-17:00)
 

【取材・文・撮影/橘涼香】