
江戸糸あやつり人形結城座は、380年以上の歴史を持ち、国の記録選択無形民俗文化財および東京都の無形文化財に指定されている、伝統ある「江戸糸あやつり人形」劇団。古典の操りをベースに、新作公演、江戸写し絵公演、海外の演出家・作家とのコラボレーションなど様々な公演活動を行い、数度にわたる海外公演も成功を収めるなど、国内外でも高い評価を得ている。
今回上演するのは、寺山修司の戯曲『狂人教育』。1962年に寺山が人形劇団に書き下ろした人形劇で、結城座が寺山作品を取り上げるのは初となる。演出は松本修が手がけ、十三代目結城孫三郎をはじめ、結城育子、湯本アキ、小貫泰明、大浦恵実、中村つぐみ、浦塚理央、三代目両川船遊(現・十二代目結城孫三郎)が出演する。
「うちにね・・・うちの家族のなかに、たった一人だけ狂人がいるんですって」
「狂人が?誰が一体、狂人なんだい?」
「それがわかんないの。何しろ数学的な問題なのよ」
小児麻痺の女の子の蘭は、個性的な五人の家族、祖父・祖母・パパ・兄・姉と暮らしていた。 ある日、法医学者のドクが、「この一家の中に一人だけ狂った人間がいる」と告げる。祖父は家族の名誉と血の純潔のために、その狂人を密殺することを提案するが────。
三代目両川船遊はこう語る。「今まで何十年間も寺山作品が上演候補に上ったことはありますが、一度として実現したことはありませんでした。唐十郎さんと佐藤信さんの作品は多々取り上げてきたのですが、同時代の寺山作品だけが、なかなか結城座としては上演することに二の足を踏んだのは、私の中であまりにも“人形の世界に近い”という感覚があったのかもしれません・・・」。
そして今、半世紀以上の時を経て、結城座の舞台に寺山修司の人形劇がついに立ち上がる!
両川船遊からのメッセージ

ナンシー国際演劇祭
今回、結城座の演目は、寺山修司の戯曲「狂人教育」です。結城座が寺山作品を取り上げるのは、初めてのことになります。今まで何十年間も寺山作品が上演候補に上ったことはありますが、一度として実現したことはありませんでした。この間、唐十郎さんと佐藤信さんの作品は多々取り上げてきたのですが、同時代の寺山作品だけが、なかなか結城座としては上演することに二の足を踏んだのは、私の中であまりにも「人形の世界に近い」という感覚があったのかもしれません・・・。
寺山さんに初めてお会いしたのは、私が二十九歳のとき、五十年以上前のことになります。その頃、フランスのドイツに近い場所にあるナンシーという町で、「ナンシー国際演劇祭」が開催されていました。前衛的な作品だけが世界各国から集められる中、日本からは結城座や天井桟敷などが招待されて、結城座は遠藤啄郎さんの「ゴリラ ゴリラ」、天井桟敷は「邪宗門」で参加しました。寺山さんはその正規の公演以外に、突然教会の中で女性が真っ裸になるなどのハプニングを起こし、ナンシーの警官に追いかけられるという騒ぎとなりました。しかし、寺山は「邪宗門」で大変な話題になり、ヨーロッパ全域で一躍有名となりました。その公演が終わった後、日本の外務省でパーティーが開かれ、寺山さんにお目にかかったのが初めてでした。
「いつかはこの人と芝居を作ることがあるかもしれない」と思ったあのときから、既に半世紀がたってしまいました。今さらながら、なぜもっと早くやっておかなかったのだろうと悔やんでみても、後の祭りというものです。





