
人間ドラマを色濃く描きたい
30-DELUXが劇団の代表作の1つ『オレノカタワレ』を、本年9月、10月に東京・大阪・愛知・埼玉で上演する。
舞台に生きる者たちの栄光と挫折、才能と嫉妬、そして揺るぎない絆を描く本作は、06年に初演。
14〜15年には『オレノカタワレ~早天の章~』として、劇団朱雀とのコラボが大きな話題を呼んだ。
今回は11年ぶりの上演で、『オレノカタワレ~紅蓮の章~』となり、演出・アクションすべてを刷新、次世代への継承の意味も込め、全役ダブルキャストで挑戦する。
その公演を前に、演出を手がける俳優で新進気鋭の演出家・小笠原健と、俳優で劇団主宰の清水順二が作品について語り合った。
次世代のためにも若い演出家で
──小笠原さんは、30-DELUXにはこれまで2作出演しています。
清水 最初は『テニスの王子様』に出ている若手俳優として紹介されて、舞台を観たらスタイリッシュなイケメンでアクションも出来る、うちの劇団にぴったりだなと。それで2013年の『デスティニー』にガルーダという暴れ者の役で、2015年の『義経千本桜』では碇知盛の役で出てもらいました。出身が僕と同じ愛知で、通っていた大学も近い。しかも野球部出身というのも一緒で、熱くて真っ直ぐで話が通じやすい。世代は一回りぐらい違うのですが、こういう人がチームにいてくれたらいいなと思っていたので、今回も参加してもらいました。
──小笠原さんは、今回演出をという話を聞いていかがでした?
小笠原 最初はまず「僕なんかに務まるのかな」と。清水さんがやってこられたことの大きさはよく知っていますから。でもこれを断ったらきっと後悔すると思ったし、僕にやらせたいと言ってもらえたことは素直に嬉しかったので、すぐに「よし! やってやろう」という気持ちに変わりました。
──演出はこれまで何本も手がけていますね。
小笠原 自分のユニットで3本、外部で2本、これが6本目です。
清水 うちの劇団では次世代への継承のためにも、演出もなるべく若い世代の人にやってもらおうと思っていて、去年の『デスティニー -アドラメレクの鏡-』でも、俳優として知っていた林明寛くんを演出に抜擢しました。小笠原くんは、こどものための市民ミュージカルを奥さんと立ち上げて、演劇の裾野を広げる活動もしている。そこもいいなと思ったので。
小笠原 僕はコロナ禍のときに、このままでは演劇が死ぬと思って、どうしたらいいのかすごく考えたんです。そしてスポーツでいうならプレイヤーだけじゃなく、コーチとか監督とかそういう視点から業界全体を盛り立てていくことが大事だと。今いろいろがむしゃらにやっているところだったので、清水さんからお声がけいただいたのは本当に嬉しかったです。
「紅蓮の章」から、また次の「新章」へ
──今回はニューバージョンということですが。
清水 この作品には大衆演劇の一座が登場するのですが、再演から10年以上経ったことで、今の大衆演劇の現実と少しズレが出てきている。そこで原作側とも相談して設定を少し変えてみようと思ったんです。それで小笠原くんに脚色してもらったら、『オレノカタワレ』の世界観をちゃんと残しながら、ちょっと小劇場的な劇団の話に書き直してくれた。
小笠原 再演では劇団朱雀がモデルだったわけですが、今回は30-DELUXに近づけてみようと思ったら、スラスラ書けました。
清水 いわゆる大衆演劇をよくご存知の方が「なるほど」と思う部分は残っていて、殺陣やコント部分などにも大衆演劇のエッセンスがちゃんと入っている。そして、芝居をやる人間の根底にある魂とか、人が生きていく上での愛憎とか、同じ夢を生きるライバルであり同時にカタワレであるという、この作品の核となるものはすごく大事にしてくれているなと。
小笠原 結局人間ドラマなので、そこを色濃く描きたいと思ったし、笑える場面も沢山ある作品なのですが、コメディで終わらせたくないので、結構がんばって書きました。
──そのコメディ部分ですが、有名な戯曲の名場面とかショートコントなどが、大衆演劇風のアレンジで次々に出てきますね。
清水 「ホスト忠臣蔵」の場面などは、僕が90年代に大阪の劇団MOTHERにいたとき、役者たちで作ったコントがもとになっているんです。何を頼んでもドンペリを持ってくるホストとか、コーラの水割とか、そういうホストコントを初演で入れたんです。
小笠原 あそこは面白かったので、今回もほぼ残してあります。
──そういうコントも入りつつ、終盤には「本能寺」のヒリヒリするような場面も出てきます。
小笠原 大河ドラマでもこの前やってましたね。描き方の角度が面白かった。
清水 この作品もテレビのプロデューサーの方に「これBLでしょ?」と言われて。作っている側はそんなつもりはないのですが、そういう観方をされても間違いではないなと。
──それだけいろいろな観方ができる深い作品でもありますね。最後に改めてお客さまへのメッセージを。
清水 三度目の上演で中身もだいぶ変わって、しかも全役ダブルキャストです。僕は大沢樹生さんとのダブルですが、同じ役柄でも全く違う感じになると思います。先日、大沢さんと殺陣稽古をしましたが、いい意味で自由さのある方なので、舞台では伸び伸びとやってくださるのではないかと楽しみです。
小笠原 演出としては、せっかくのダブルキャストなのでそれぞれ別の色になるように作っています。片方を観たら絶対にもう1つのチームも観たくなるはずです。自信があります。そしてこの作品が、再演の「早天の章」から今回の「紅蓮の章」になったように、また別の「新章」に進化して、次の世代へ、また次の世代へと繋がっていく、その1つのステップになればいいなと思っています。
(このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年10月号より転載)
インタビュー◇宮田華子 撮影◇中村嘉昭
プロフィール
おがさわらけん○愛知県出身。ミュージカル「テニスの王子様」に出演後、多くの舞台で主演を務め、幅広い分野の芝居で活躍中。2019年の舞台『Get Back!!』で初の脚本・演出を担当。また「ヴィクトリアミュージカル」などの「こども・市民ミュージカル」をプロデュース・演出している。
しみずじゅんじ○愛知県出身。劇団MOTHERで中核俳優として活躍し、02年に30-DELUXを立ち上げる。製作総指揮・殺陣師・俳優の三役をこなし、外部の舞台・映画に積極的に参加。15年に初のロンドン公演、17年にフランス「JAPAN EXPO」で公演。23年、映画「まくをおろすな!」を初監督と多彩に活躍中。
公演情報

30-DELUX NEXT STAGE THEATER
『オレノカタワレ~紅蓮の章~』
powered by NTT docomo
作◇米山和仁 脚色・演出◇小笠原 健
出演(全役ダブルキャスト)◇小辻 庵/大野紘幸 村瀬文宣/橘 龍丸 兼崎健太郎/横山真史 山崎真実/三田麻央 谷口敏也/田中 精 清水順二/大沢樹生 ほか
9/26〜10/4◎東京公演 シアターグリーンBIG TREE THEATER、10/10〜12◎大阪公演 近鉄アート館、10/24・25◎愛知公演 東別院テラスホール、10/28・29◎埼玉公演 プラザイーストホール
〈チケット問い合わせ〉stage.contact55@gmail.com





