白井晃演出、水嶋凜・和田雅成らが出演、舞台『エウリディケ』開幕! 

白井晃演出に、和田雅成・水嶋凜らの出演による舞台『エウリディケ』が、2月4日から、世田谷パブリックシアターで開幕した。(18日まで、のち2月24日・25日に大阪公演あり)

上演に先立ち、公開ゲネプロと開幕直前取材が行われた。

《ゲネプロレポート》

音楽家であるオルフェ(和田雅成)は、エウリディケ(水嶋凜)と愛し合い結婚を約束する。結婚式当日、危険でおもしろい男(崎山つばさ)に見初められてしまったエウリディケは、亡くなった父(栗原英雄)からの手紙を渡してもらえるという言葉につられ、彼が住む部屋に行ってしまい、彼の誘惑からは逃れたものの、その帰りに階段から足を踏み外して死んでしまう。死者の国で父と再会したエウリディケは、父の愛によって「忘却の川」で消し去られたオルフェと愛し合った日々の記憶を取り戻していく。そしてオルフェはエウリディケを探し続け、とうとう地獄の門までたどり着く。

ニューヨークタイムズ誌で「神秘的で素晴らしい前衛的な作品」と紹介された本作は、2007年初演のサラ・ルールによる戯曲で、今回が日本初演となる。『オーランドー』(2017年)に続き再びサラ・ルール作品に挑んだ白井晃による演出は、独特な世界観を持つ本作を「現代版ギリシャ神話」として瑞々しく舞台上に立ち上げる。

ベースとなるギリシャ神話のオルフェウスとエウリディケの物語は、古事記に登場するイザナギ・イザナミの物語とも似ており、それだけこの物語のテーマは時代や国を超えた普遍的なものであることがわかる。死の側面から生を考えるという構造は、これまで白井晃が演出を手掛けてきた作品の多くに共通しているものでもあり、何を持って「生」そして「死」と呼ぶのか、その概念について改めて考えさせられる。

音楽を愛するオルフェ、本を愛するエウリディケ、そして互いに愛し合う2人。生きることはすなわち何かを愛することだとすれば、「忘却の川」でその愛を忘れてしまうことが、本当の意味での「死」なのかもしれない。死してなお娘への愛を忘れず、死者の国で再会できた娘に再び記憶を取り戻させる父の愛がこの作品を支える基盤であり、それを栗原英雄が懐の深い演技で柔らかく紡いでいる。

水嶋凜が、愛し愛されてはつらつとした姿、誘惑に心揺れる若者らしさ、生前の記憶を失って子どもにかえったような無邪気さ、とエウリディケの変化を鮮やかに見せる。状況に応じて次々と変わっていく衣装もエウリディケの内面と連動していて印象的だ。和田雅成は愛に一途なオルフェのまっすぐさに純粋な説得力がある。崎山つばさが2役を担い、人間の欲望や心の隙をのびのびとコミカルに表現している。

林正樹のピアノと藤本一馬のギターによる生演奏が物語を美しく情感たっぷりに彩り、石のコロス(櫻井章喜、有川マコト、斉藤悠)のカラフルで現代的な衣装や、どこか自由で力の抜けたステージングが、ギリシャ神話の世界と現代を繋ぐ役割を果たす。要所で「水」が印象的な使われ方をしているところも、示唆に富んでいる。

オルフェとエウリディケの愛の行方はどうなるのか。サラ・ルールが戯曲に幾重にも仕掛けたひねりと、白井晃の演出により引き出される「生」と「死」の狭間に見える刹那的な美しさと力強さを、ぜひ劇場で見届けて欲しい。

《開幕直前取材》

白井晃、栗原英雄、水嶋凜、和田雅成、崎山つばさ 

出演者の水嶋凜、和田雅成、崎山つばさ、栗原英雄、演出の白井晃が登壇した。

──初日を迎えるにあたり、役を演じてみての感想は?

水嶋 このままエウリディケを演じ続けていたらすごくおてんばな子になりそうだなと思っています。感情が豊かですし、言いたいときに言いたいことを言って、いろんな意味でまっすぐな子になっちゃいそうだなと(笑)。

和田 音楽を愛してエウリディケを愛しているオルフェに助けてもらう部分がすごく多くて、いろんなことに夢中になるって素敵なことだな、と教えてもらいました。稽古場から幸せな日々を過ごしています。

栗原 エウリディケの父親役を演じるにあたって、自分の中に父性があるということを確認できました。様々な現場で若い子たちといるとつい父親的な目で見てしまうところもありますし、今回は精一杯娘のことを思いたいです。

崎山 やっていてまだまだ底知れぬ、まだ見つけられていない部分が多いな、というのが正直な感想です。今日もギリギリまで白井さんにいろいろとご指導いただいたので、まだまだ自分なりにブラッシュアップしていければいいなと思います。

──ゲネプロを終えての感想は?

白井 皆さん、すごく頑張ってくださったと思いますし、上々の出来栄えだったと思っています。

──白井さんは、水嶋さん・和田さん・栗原さんとは今回が初めてですが、印象は。

白井 台本だけだと非常に難解な部分もある作品なので、意味合いをお伝えして皆さんと共有しながら稽古をやってきて、水嶋さんと和田くんを見ていると伸びしろがあって、つばさくんも前回一緒にやったときよりもさらに成長している感じがありましたし、「やっぱり若いっていいな」と思います。どんどん伸びて行ってくれるから、どんどん稽古をしたくなります。栗原さんは信頼できる俳優さんだなと思いましたし、稽古場の守護神のようにリードしていただけたなと感謝しています。

──白井さんからのアドバイスで印象に残っていることは?

水嶋 朝練です。稽古の1時間くらい前から、白井さんに(水嶋と和田の2人に)発声とか基礎的なところから、表現の幅をとにかく広げるようなことをやっていただきました。

和田 稽古終盤の方で白井さんと2人で話す機会があって、そのときにいただいた言葉とか、白井さんのこの役に対する思いとかを聞けたことが僕にとってはすごく大きくて、白井さんのこの作品にかける強い思いに絶対に負けないようについていこう、と思いました。稽古のときはいつも、いわゆる“ダメ出し”をノートに書き出すんですけど、他の作品のときは5ページくらいで終わっているのに、今回は36ページありました。それだけ言葉をいただけたということが僕にとってはプラスしかないので、この36ページ分しっかり生きようと思います。

──崎山さんは『サンソン』以来の白井演出で、先ほど白井さんからも成長しているというコメントがありました。

崎山 白井さんからそういう言葉をもらえることが嬉しいですし、今回一番嬉しかったのは、『サンソン』のときは「崎山くん」だったのが、今回「つばさ」と呼んでもらえたことです。距離がちょっと近づいたのかな、と恐れ多くも思いました。

──今回の芝居については?

崎山 新境地というか、自分にない部分を白井さんに引き出していただいた感じがあります。三輪車に乗ったりもするんですけど、世田谷パブリックシアターという場所で三輪車に乗れる人はそうそういないと思うので、(三輪車で)風を切って走れて気持ちよかったです。

──栗原さんは演技のことについて水嶋さんと何か話しましたか?

栗原 (水嶋が)困ったときに少し話したくらいです。

水嶋 めちゃくちゃ助けてくださいました。私が「どうしよう、わからない」となっているときに、みかんを渡しながら「こうやってやるといいかもね」と本当にお父さんみたいなアドバイスをしてくださいました。

白井 私がエウリディケに求めていることを、栗原さんが「白井さんが言いたいことはこういうことだから、こういうふうにやってみたら答えが出るんじゃないか」と仲介してくださったんです。栗原さんと僕は同年代というか、ほぼ同時期に演劇界に携わってきたから、そのへんの共通言語がわかっていただけたので、それで凜ちゃんも助かったんじゃないかなと思います。

──和田さんと崎山さんはこれまでいろいろな作品で共演しているが、今回改めてお互いのことをどう思いますか。

和田 今回、2人楽屋で一緒なのですが、僕の趣味の格闘技につばさくんが付き合ってくれたりするのが嬉しいです。さっきちょうど2人でいろいろ話をして、がんばっていこう、じゃないですけど、やっていこうね、という話をして僕はすごく気持ちが楽になりました。

崎山 これまで共演はしていたんですけど、ここまでがっつり話すことはあまりなかったので、すごく話しやすいですし、考え方とかが近しいというか、芝居に対する姿勢とか尊敬できる部分も多いですし、一緒にいて楽です。

──観客へのメッセージを。

水嶋 朝練をしながら、サポートもしていただきながら、新境地を築きながら、みんなで頑張って作った作品です。白井さんと皆さんと一から作り上げた作品だと思うので、ぜひ見て欲しいです。

【公演情報】
舞台『エウリディケ』
作:サラ・ルール
演出:白井晃
翻訳:小宮山 智津子
音楽:林 正樹
演奏:林 正樹(ピアノ) 藤本 一馬(ギター)
出演:水嶋凜 和田雅成
櫻井 章喜 有川 マコト 斉藤 悠
崎山 つばさ 栗原 英雄
●2024/2/4~18◎東京公演 世田谷パブリックシアター 
●2024/2/24・25◎大阪公演 梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈料金〉12,000円(全席指定・税込・未就学児童入場不可)
〈お問い合わせ〉
東京公演:公演事務局 https://supportform.jp/event(平日10:00~17:00)
大阪公演:キョードーインフォメーション:0570-200-888 (平日・土曜11:00~18:00 ※日祝休み)
〈公式サイト〉 https://eurydice-stage.com/
〈公式X〉 @eurydice_stage
 

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