絶賛上演中! ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』にモンタギュー卿役で出演! 田村雄一インタビュー

2001年にフランスで生まれ、世界20ヵ国以上で600万人以上を動員したメガヒットミュージカル『ロミオ&ジュリエット』。日本では2010年宝塚歌劇団によって初演されたのち、宝塚版と同じ小池修一郎潤色・演出による「日本オリジナルバージョン」が2011年に初演。双方が再演を重ねる人気作品となっている。今回の上演はその「日本オリジナルバージョン」の3年ぶり6目となる上演で、ガラリと入れ替わった新鮮なキャストが大きな話題を集めて上演中だ。

そんな舞台で、主人公ロミオの父親モンタギュー卿を存在感たっぷりに演じている田村雄一が、作品やミュージカルに感じる魅力を語ってくれた。(※取材は稽古中に実施)

争いあうのがどれほど無意味で愚かなことかを伝えたい

──新生『ロミオ&ジュリエット』と言いたい、新鮮な顔触れのカンパニーですが、今回のキャスティングにあたってはオーディションが行われたと伺っています。その時の様子から教えていただけますか? 

モンタギュー卿で受けたのですが、役柄的にソロ曲がないので、キャピュレット卿の「娘よ」を課題曲で歌ったんです。

──本当ですか?それはお聴きしたかったです!

いや、でもね、僕そこでやらかしちゃったんですよ(笑)。「娘よ」って後半に間奏が入ってまた始まるんですけど、そこで曲が終わったと思って、勝手にありがとうございましたみたいな感じにしていたら、後半部分が流れ出して、まずい!と思ってラストまで歌い切ったんですが小池(修一郎)先生に「わかりました大丈夫ですよ」とは言われたものの、あーやってしまった、という感じでした。

──それは確かに少し慌てますね。でも、ちゃんとモンタギュー卿としてキャスティングされて。

嬉しかったですね。特に自分も父親で息子も、娘もいますので、父親役ができるというのはとても幸せです。モンタギュー卿はロミオの父ですけど、男の子ってやっぱりやんちゃなんですよ。実際うちの息子もやんちゃなので、その辺の機微はよくわかりますし、そのやんちゃな男の子たちが、モンタギューとキャピュレットの一族に生まれたから、という理由だけで争いあっていくことが、どれほど無意味かというね。シェイクスピアが作品を書いた何百年も昔からずっと変わらず戦いって本当に無意味で、ただただ色々な人が犠牲になってしまう。この作品では純粋な愛が犠牲になっていきますが、それがどれほど愚かで滑稽で醜いのか、ということをきちんと見せて、モンタギュー卿ってなんて小さい男なんだ、とお客様が思われるくらいに演じられればいいなと思っています。

──そんなモンタギュー卿を実際に演じるとなって、改めて作品についてはどうですか?

やっぱりまずはフランス発のミュージカルということで、ブロードウェイや、ウィーンのものとは、楽曲の雰囲気が全く違いますね。曲が全てと言ってもいいくらい良いですし、アレンジもとても現代風で。それが日本オリジナル版の演出の、現代っ子が躍動しているというところにもあっていてとても面白いなと思います。日本版ももちろんですし、世界各国で上演されているものも、それぞれすごく色が違う、そうした自由度も楽しいですね。

──特に日本オリジナルバージョンは、時代を近未来に移すことによって、テーマの普遍性を強調しようとしていると思いますが、その辺りはどう感じられますか?

この作品って何しろあまりにも有名なので、結末は皆さんがご存じじゃないですか。純粋な愛が死に向かっていくストーリーだということは。その結末ありきで演じなければならない難しさはすごくあるのですが、戦いによって愛が犠牲になるというのは昔から変わらないし、さっきも言いましたが、戦うことが如何に無意味で愚かなことかを、全編を通じて訴えていく。決して遠い昔の物語じゃないよ、ということが伝わるといいなと思います。ただそんな物語のなかでも、若いキャストのみんながふざけあったり、軽いノリで楽しい場面もあるので、等身大の人間たちとして見ていただけたらいいですね。

お客様の前で演じた時、どんな感情になるのか

──先ほど、全曲がいいというお話もありましたが、本当に名曲揃いのミュージカルですが、特にお好きなナンバーはおありですか?

オーディションで歌った「娘よ」はとてもいい曲だなと思います。ミュージカル版では、原作にはないジュリエットとキャピュレット卿の設定があるんですが、それを越えて娘を心から愛している、と切々と歌う。練習していてもちょっと辛い歌でもあるのですが、娘に対する思いを歌っていると、プライベートでは二人いる自分の娘に対する思いが、深まるものがあります。あとはやっぱり「世界の王」ですね。今回はすごくフレッシュな若い方々が歌っているので、聞いていると本当に楽しくなります。もうひとつ、って言い出すと本当にどの曲も素晴らしいんですが「エメ」がいいですね。

──前奏が流れた途端にグッときます。

「愛する」という意味で「エメ」というひと言だというのも美しいですし、旋律もすごく素晴らしい。聴いていて綺麗なメロディーだなと思うんですが、いざちゃんと譜面にあたって歌おうとすると、実は音程をとるのがなかなか難しい曲なんです。今回のロミオとジュリエット、それぞれWキャストの4人、小関裕太さん、岡宮来夢さん、吉柳咲良さん、奥田いろはさんが、本当によく取り組んでいてステキだと思います。そういう息子や娘があんなに若くして亡くなってしまうまで、戦うことの愚かさがわからない大人たち側を演じる人間としては、それだけの犠牲を払ってやっと手を取り合う、その終幕の感情が本当に大切になります。自分でも舞台に立って、お客様の前で演じた時にどんな感情になるのか、言いました通り皆さんがご存じの「悲劇」ですけれども、そのなかで、ラストシーンに何を思うのか、そこに参加できるのが楽しみです。

芝居と歌と踊り、全てが入っているミュージカルの魅力

──そんな大作に向かって進まれている田村さんですが、ミュージカルを志されたそもそものきっかけはなんだったのですか?

僕は両親が公務員、小学校の先生で、教員組合に演劇サークルのようなものがありました。限られた演目なんですが、年に何回かちょっと安く観られたんですね。それでうちの母親はいつも劇団四季のミュージカルを選んでいたらしく、僕が小学校に上がり、劇場に観に行ける歳になった時、初めて母親に連れられて観たのが、劇団四季のオリジナルミュージカル『ユタと不思議な仲間たち』でした。小学校三年生くらいの時だと思います。

──あ、それは素晴らしいファーストコンタクトですね。

そうなんですよ。初めて観たのが日本で創られたオリジナルミュージカルで、座敷童子が出てくる、とても温かみのある作品だったので、こんな世界があるんだ、やってみたいと思ったんです。

──最初の観劇でそう思われた?

そう、やりたい!と思って。ただ、家庭内に最初の難関があって。

──と言いますと?

僕、ずっと体育会系でラグビーをやっていて、お芝居がやりたいなんて恥ずかしくて誰にも言えずに、ずっと黙っていたんですよ。それで、いざ大学をどうするか?という話になったところで、初めて「実は芝居がやりたい」と打ち明けたら一族全員公務員なんで、男が芝居だなんて、まず食べていけないだろうと猛反対にあいまして。

──あぁ、確かに厳しい世界ですから。

ただ、絶対そうなるだろうなとは思っていたので、最初はミュージカルを学べる専門学校に行きたいと言ったんです。でも祖父に「大学には行ってくれ」と言われまして、「ここだ!」と見つけたのが大阪芸術大学で、「大学に行くので芝居をやらせてください!」と強引に丸め込みました。

──そうしますと、田村さんはそれこそソロのないお役はもったいないな、と思うほどの歌唱力の持ち主ですが、歌のレッスンはいつ頃から?

大学に入ってからです。

──それでそんなに歌えるようになるんですか?!

ラグビーをやっていたから肺活量があったので、元々声は出たんで。

──いえいえ、それとこれは。神様にもらった声なんですね。

あぁ、まぁ、父親が全く同じ声なんですよ。歌もそれこそ別に習っていないのに、いい感じに歌えたりする親父なので、確かにそれには感謝しています。

──声楽に秀でた方からは、時折こういうなんとも羨ましいお話を伺いますが、そこまで田村さんを惹きつけたミュージカルの魅力を言葉にしていただくとすると?

芝居と歌と踊り、全てが入っているところですね。そこにまず衝撃を受けたし、その三つが舞台にあることが何よりの魅力だと思います。だからいまでも、歌だけのLIVEは苦手なんですよ。芝居で役として作品のなかで歌うのはいいのですが、歌だけを取り出すとすごく歌いにくいんです。もちろん活発にLIVE活動もなさっている方もたくさんいらっしゃいますし、ミュージカルLIVEコンサートをお好きな方も多くいらっしゃると思いますが、僕はどうしてもストーリーのなかから歌に繋がっていかないと恥ずかしくなってしまうので(笑)。

──そうなんですね。「娘よ」をLIVEで歌ってください、とお願いしようとしていたところでした。つまり、総合芸術としてのミュージカルに惹かれていらっしゃると。

そうです。とは言え、踊りもやったことがなかったのではじめた時には大変で、やっぱり憧れだけではいけないなと本当に思いましたが、そこは何よりの魅力ですね。

70代を越えても歌える俳優でいたい

──また、近年多岐に渡る個性的な役柄や、作品に出演されていますが、役幅を広げようという意識を持たれているのですか?

それもないわけではないですが、やっぱりまず出会いです。演出家の方に声をかけてもらったり、自分が望んでオーディションを受けて、受かったり落ちたりがあるのですが、ミュージカルだけではなく、ストレート・プレイや朗読劇など、色々なジャンルをやらせてもらうことで、自分の様々な面が出せるし、たくさんの演出家の方と出会える喜びがありますね。

──そんななかから選ぶのは難しいと思いますが、特に印象に残っている作品をあげていただくとすると?

自分のなかのエネルギーという話になるんですが、大学の時に自分たちでお金を出して『銀ちゃんが逝く』を自主公演でやったんですね。みんな大学生で、血気盛んで、縛られるものが何もなく、自由に好き放題やっていた。あのエネルギーに勝るものをずっと探している、あの時噴出できたパワーに巡り会おう、巡り会いたいみたいな気持ちはずっとあります。もちろん舞台の出来がすごく良かったというわけではないんですよ!ただ、なんであんなにエネルギーを注げたんだろうと、今でも思うんですよね。

──やはり、プロとなるとまた異なる?

いま言ったあのエネルギーを越えたいという気持ちと、どこかでは越えたくないという複雑なものもあります。そんななかで、最近の舞台では『太平洋序曲』が面白かったです。自分が舞台と出会った原典が和物だったのもあって、和物が大好きですし、大学時代に狂言の授業を取っていたことが『太平洋序曲』では思いがけず役に立ったんですよ。歩き方や所作や手の握り方など、経験していないとなかなかできないことがスッとできましたし、高校時代に剣道をやっていたことも殺陣に活かせて。役者としてもやりがいがありましたし、作品もとても面白かったなと思っています。

──田村さんもですし、キャストの方々皆さんに見せ場や歌のソロもあって、拝見していても刺激的な作品でした。では今後こんなことをやってみたいとか、夢やビジョンはありますか?

いやー、そういう野心のようなものはもうなくて(爆笑)。やっぱり長く俳優を続けていると、心や体が疲れて、もうやめてしまおうか……、と思った時期もあるんですよね。でもそういう辛い時になるとポンと仕事が入ってきて、良い言葉かどうかかわりませんが、戻ってきちゃう。だから、ここまで続いてきたということは、結局、自分にはこれしかできないということなんだなと。

──やはり、好きだとか、演劇への情熱があるから戻ってこられるということですよね?

そうなんですよ。いざ稽古に入るとメラメラしちゃって、弱っていた自分がどこかに行ってしまい、集中して熱くなるので。そうだな、だから野心はもうないと言いましたけれども、70代になっても俳優をやっていたい、という気持ちはあるんです。そこに行かないとできない役ってあるじゃないですか。そういう役をやられている先輩方を見ていると、よし、自分も!と思いますし、その時にも歌える喉はキープしておきたいなと。「え、この年齢なのにこの人歌えるの?」と驚かれたいというのが野心なのかな。絶対に主役がやりたいとか、大きな役がやりたいなどは本当になくて、まぁ責任逃れをしたい自分もいるんだと思うんですが(笑)、でも70代、80代まで役者を続けて、田村雄一という人がいるなと思ってもらいたいという気持ちはありますね。

──そんな田村さんが様々な役に挑戦し続けていくことを楽しみにしていますが、では改めてこの『ロミオ&ジュリエット』を楽しみにされている方たちに、メッセージをお願いします。

フランスで2001年に初演されて以来、世界各国で上演されている、ファンの方も多くいらっしゃる作品だと思います。そんな歴史ある作品を、今回初参加のメンバーが非常に多い、フレッシュな顔ぶれで上演させていただくので、ぜひ劇場で何かをプレゼントできたらと思っています。楽しみに観にいらしてください。

たむらゆういち〇千葉県出身。大阪芸術大学卒業後劇団四季に入団。『ライオンキング』ムファサ役、『キャッツ』マンカストラップ役などを好演し、2006年退団。その後は『蜘蛛女のキス』『ニュー・ブレイン』『レ・ミゼラブル』『エリザベート』『CHESS THE MUSICAL』『スカーレット・ピンパーネル』『モーツァルト!』『NEWSIES』『リトル・ゾンビ・ガール』『太平洋序曲』『THE BLANK!』『Mogut』『月世界旅行』等々、ミュージカルを中心に多彩な舞台で活躍を続けている。

【公演情報】

ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』

原作:ウィリアム・シェイクスピア

作:ジェラール・プレスギュルヴィック

潤色・演出:小池修一郎(宝塚歌劇団)

出演:小関裕太/岡宮来夢、吉柳咲良/奥田いろは(乃木坂46)

内海啓貴/石川凌雅、伊藤あさひ/笹森裕貴、太田基裕/水田航生、栗山廉(K-BALLET TOKYO)/キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)

彩吹真央、吉沢梨絵、津田英佑、田村雄一、ユン・フィス、雷太、渡辺大輔、岡田浩暉 ほか

●上演中~6/10◎新国立劇場 中劇場

〈料金〉平日: S席 14,000円 / A席9,000円

土日祝・千穐楽(6/10): S席 15,000円 / A席9,500円

〈お問い合わせ〉ホリプロチケットセンター 03-3490-4949(平日11:00~18:00/土日祝休)

●6/22~23◎愛知・刈谷市総合文化センター 

〈料金〉S席 15,000円 / A席9,500円

〈お問い合わせ〉中京テレビクリエイション 052-588-4477 (平日11:00~17:00/土日祝休)

●7/3~15◎大阪・梅田芸術劇場メインホール

〈料金〉平日: S席 14,000円 / A席9,000円 / B席 5,500円

土日祝: S席 15,000円 / A席9,500円 / B席 6,000円

〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場 06-6377-3800 (10:00~18:00)

【LIVE配信情報】

◉配信日程

●6月9日(日)18:00公演

 ※アーカイブ配信…6月12日(水)23:59まで視聴可

 ロミオ:小関裕太/ジュリエット:吉柳咲良/

 ベンヴォーリオ:内海啓貴/マーキューシオ:伊藤あさひ/

 ティボルト:太田基裕/死:栗山廉(K-BALLET TOKYO)

●6月10日(月)12:00公演

 ※アーカイブ配信…6月13日(木)23:59まで視聴可

 ロミオ:岡宮来夢/ジュリエット:奥田いろは(乃木坂46)/

 ベンヴォーリオ:石川凌雅/マーキューシオ:笹森裕貴/

 ティボルト:水田航生/死:キム・セジョン(東京シティ・バレエ団)

◉視聴チケット料金(税込)

・配信視聴券:各5,000円

・配信視聴券(公演プログラム ─舞台写真版─郵送サービス付き):各7,500円 ※送料別途必要、数量限定)

公演プログラムは2.500円で、各上演会場でも販売。

視聴チケット発売中

6月9日(日)18:00公演…6月12日(水)21:30まで購入可。

6月10日(月)12:00公演…6月13日(木)21:30まで購入可。

◉視聴チケット購入ページ

PIA LIVE STREAM 

https://t.pia.jp/pia/event/event.do?eventBundleCd=b2448779

◉配信のご視聴・ご購入方法

https://pia-live.jp/about

【取材・文/橘涼香】舞台写真/©ミュージカル『ロミオ&ジュリエット』公演事務局

撮影:渡部孝弘/田中亜紀

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