【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第163回「応援上映」
明けましておめでとうございます。気が付いたら令和ももう7年。もう7年ですか。早いものです。今年もなんだか良い年になるといいですね。
さて、劇団☆新感線の舞台を収録し、それを映画館の大画面、大音量で楽しんで頂こうという試みであるゲキ×シネも20周年を迎え、数多くの作品を映画館でお楽しみ頂けるようになりました。
しかも通常の上映だけでなく、《爆拍》応援上映なんてのもやるようになったりしております。爆拍ってのはどうやら「爆裂拍手」の略だそうですが、まあ要するに「通常の応援上映のように声を出したりしながら応援して、声を出すのはちょっと恥ずかしいという方ならば拍手で応援して下さいね」ということだと思います。
映画館で映画を見る場合は基本的には静かに鑑賞することが求められますから、歓声はもちろん拍手すらすることはありません。しかし、演劇の場合はカーテンコールでは拍手をするし、演目によってはキメどころで拍手をしたりすることもあります。
しかし、ゲキ×シネの場合は鑑賞しているのは舞台の映像ですが、ココはやはり映画館ですので拍手などするのも躊躇ったりしたりしちゃいますよね。しかし《爆拍》応援上映などでは遠慮なく拍手ができます。なんならウチワを振ったりして本当に応援したっていいんです。
そういえば、歌舞伎などではキメどころで「○○屋!」などと大向こうの声が掛かったりしますよね。そう考えると日本の演劇というのは応援と相性が良いのかもしれません。
そもそも映画での応援上映というのはいつ頃始まったのでしょうか。どうやら2000年代に入ってからアニメ作品などでペンライトを振るような応援上映が始まったようです。またディズニーの大ヒット作「アナと雪の女王」では「みんなで歌おう♪歌詞付版」というのが上映され、観客も一緒に歌ったりできたのだそうです。そして今では様々な作品で「応援上映会」が催されるようになっているのですね。
鑑賞しながら拍手したりウチワを振ったりする観客参加型の応援上映会では感動を共有したり発信するコトができるので、更なる没入感を得ることができるのです。
ただし、作品や上映館によって様々な決まりもあるようですので、よく調べてから行った方が良さそうですね。あくまでも節度のある楽しみ方とマナーが必要なのだと思います。たくさんの人々が参加する企画ですので、お互いに楽しく鑑賞できればいいですね。
ただ、私自身はゲキ×シネも含めて映画でもちゃんとした応援上映会に参加したことはないのですよ。気にはなっているんだけど、行ったことはないのです。
でもね、今になって考えてみればかつて参加した上映会が、あれは応援上映的なモノだったなあ、というのが二つあります。
一つは応援上演会の元祖のような作品である「ロッキー・ホラー・ショー(The Rocky Horror Picture Show)」ですよ。もちろんミュージカルの「ロッキー・ホラー・ショー」の映画版です。アメリカではカルト的な人気を博し、お米を撒いたり新聞紙を傘代わりに広げたりと大盛り上がりになったのだそうです。
日本でもそういった観客参加が可能な「ロッキー・ホラー・ショー」上映会が何度も開催されており、30年ほど前でしょうか、何故だか私もプレトークに参加させて頂いてそのまま上映を見た覚えがあります。そういう上映会があるという知識はあったのですが、実際に参加しながら見るのは初めてだったので実に楽しかったです。
観客の中にはベテラン鑑賞員もいたので、それはもう的確なパフォーマンスで笑わせてもらいました。ド頭の教会の映像がパンダウンしていくのに合わせてスクリーンを下から押し上げる真似をするトコロから、「Kick it!」とかロッキーの「ウー!」とか、まあとにかく次から次へと繰り出されるパフォーマンスが圧巻でした。
あれはまさしく応援上映会だったのですが、その当時はよく判っていなかったのですね。
もう一つはもっと昔の話です。40年ほど前の大学生の頃、所属していた大学のSF研究会が主催だったのか、それともDAICON FILMが主催だったのか、今となっては思い出せませんが、大阪の公民館を借りて一日中、様々な特撮映画やアニメ映画が上映されたのです。一日は駆り出されて設営やら会場整理やらを担当したのですが、次の日には全ての上映を見ることができました。
もう朝から晩までの上映で、お客さんも大いに盛り上がり、最後の方には本当にみんながハイになっておりました。そしてその日の最後の作品が往年の名作アニメ「パンダコパンダ 雨ふりサーカスの巻」。原案・脚本・画面設定が宮崎駿さん、監督が高畑勲さんというゴールデンコンビの若き日の作品です。
上映中はみんなで笑ったり手を叩いたりしながら、そして最後のクライマックスでは大歓声と拍手の渦になりました。規模の小さな上映会で、一日中見ているという一体感の中、偶然にも生まれたあのグルーブは今にして思えば上演上映会のようなモノになっていたのかなと思います。
かつてはごく限られた作品や条件の中でしか味わえなかったあの一体感をおおっぴらに楽しめる応援上映会というのは、映画などをディスクやサブスクによって自宅で楽しむことになりつつある現代にこそ映画館へと足を運ぶモチベーションになっているのかもしれません。
映画館ならではの楽しみとか、応援上映ならではの楽しみとか、これからはそういったプラスαの価値が求められているのですね。私もいつか応援上映に参加してみたいと思います。中に入っちゃえば楽しいのは判っていますからね。その気になりさえすれば大丈夫でしょう。機会があったら皆様もぜひご参加下さいませ。
本文とは関係ありませんが、渋谷駅の東急百貨店東横店南館の解体の様子。2024年末でこの状態でした。すぐに更地になっちゃうんだろうなあ。
プロフィール
粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み
【出演予定】
大阪国際文化芸術プロジェクト「FOLKER」
2025年2月14日(金)〜23日(日祝) 堂島リバーフォーラム
https://osaka-ca-fes.jp/project/event/folker/