私の2026年は劇団ホチキス「ベイビーブラフ」から始まりました。既に本多劇場での東京公演が終わりまして、この2月には新潟県の長岡と、名古屋での公演がございます。新潟には何度も行っておりますが長岡市は初めてですし、もちろん会場となる長岡リリックホールシアターも初めてです。名古屋にも何度も行っておりますが、こちらも会場となるメニコン シアターAoiは初めてです。
初めての土地や初めての劇場というのはなんだか興奮しますよね。楽しみでもあり不安でもある。もちろん仕事場ではありますので不安やワガママを言っている場合ではありませんが、使いやすければ嬉しいなとは思っていますよ。
そんな訳で先週は本多劇場に通い詰めでした。2021年の劇団悪い芝居「今日もしんでるあいしてる」以来ですから久しぶりです。といいますか、小劇場自体が久しぶりです。久しぶりに小劇場で、しかも小劇場の代表とも言える本多劇場で公演をして、あることに気付きました。いや、いつも思うことなのですが、改めて実感したのです。
この連載ではこれまでにも何回か小劇場について書いてきました。小劇場ならではの発声の仕方や所作の話、楽屋での過ごし方などを書きましたね。でもね、今回気付いたのはもっと単純なことでして、それは「小劇場だと歩く距離が短くて済む」という事なのです。そりゃそうだよ。
劇団☆新感線が普段公演を行うような大劇場というのは客席も広いし舞台も広い。そりゃそうです。だから大劇場なのです。当然ながら舞台ソデも広いし楽屋も広いのですね。大きな舞台セットが出入りしたり、大勢の出演者やスタッフを収容するためです。もちろんそれはありがたいし嬉しいことなのですが、ちょっと困る点もございます。それはね、「楽屋から舞台が遠い」って事なのですよ。
大劇場では限られたスペースを有効に利用するために階層構造になっていることが多く、要するに楽屋から舞台面に行くには階段を使う必要がある場合が多いのです。時によっては2〜3フロアも離れていたりしまして、エレベーターが無い場合にはこれを何度も上り下りする必要があります。これがね、結構大変なのよ。激しいアクションなどをしてグッタリしている時なんかは楽屋までの階段のなんとしんどいことか。
階層構造になっていない地方の大劇場などでは舞台と楽屋が同じ階層にあることも多いのですが、その場合でも広い楽屋エリアと舞台を長い廊下で繋いでいたりしますので、これはこれで遠い。余裕のある作りでありがたいのですが、やっぱり遠いのです。こちらもね、何度も行ったり来たりすると大変なのです。
それがね、小劇場の場合は舞台ソデのすぐ近くに楽屋があることが多いのですね。つまり楽屋を出たらスグに舞台です。これがね、実に楽なのですよ。久しぶりにそれを体感してなんか嬉しかったのね。ただ、舞台に近すぎるので本番中に楽屋で騒いでしまうと音が漏れてしまうという危険もあるのですが。
また、大劇場では舞台面も広いので、例えば舞台の上手から下手まで走り抜けるなんて芝居があったりすると、間口12間なら約22mも走らなければなりません。助走も付ければ相当な距離を走ることになりますが、間口5間の小劇場なら約9mで済みますし、助走が付けられるほどのソデもありません。随分と楽です。
舞台が広いって事は舞台裏の通路も長いって事ですから、出番の合間に裏通りを上手から下手まで移動するだけでも遠いのです。一回だけなら大したことはありませんが、毎日何回も何回もアッチこっちと移動するスタッフさんはそりゃもう大変です。でも、小劇場ならちょっとの距離で済むのです。劇場によってはそもそも上手ソデが無くて裏通りすら無い場合だってありますからね。
まあとにかく、大劇場は全てが大きくて助かる反面、移動距離が長すぎて大変だったりしますが、小劇場は全てが狭くて大変な反面、移動距離が短く済んで助かるという一面もあるのです。それぞれの良さがあるのですが、今回は移動距離の点で随分と楽だという点を思い出したという話です。
おかげでそれほど疲れることなく本番を終えることができました。いや、もちろん疲れはするんですけれども、いつもの新感線に比べれば、そりゃあ、ねえ。
ホチキス「ベイビーブラフ」の次はプロジェクトKUTO-10「三大劇作家の世界大冒険」です。こちらは更に小さい劇場ですから色々と大変そうですが、小さい劇場ならではの楽しさをお届けできるようにしたいと思っております。3月に大阪・山形・東京と巡りますので、どうぞお楽しみに。

久しぶりの本多劇場。改めまして、良い劇場だなあ。

粟根まこと
あわねまこと│64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。
【出演予定】
劇団ホチキス 第52回本公「ベイビーブラフ」
【東京公演】
1/28〜2/1◎本多劇場
【長岡公演】
2/7・8◎長岡リリックホール シアター
【名古屋公演】
2/14・15◎メニコンシアターAoi





