
本作は、作・趙博、演出・金守珍が担当する新作で、1942年に山口県で起きた長生炭鉱水没事故を題材にした物語が描かれる。この事故は太平洋戦争開戦直後に山口県宇部市の海底で起きたもので、183名が犠牲者になり、その多くは強制的に集められた朝鮮半島出身の鉱夫が占めていた。この歴史を踏まえ、演出に韓国舞踏や韓国楽器を取り入れ、国境を越えて鎮魂の思いを紫テントの幻想的な世界観の中で、海の底から立ち上がり舞台へと昇華していく。
新宿梁山泊の15年ぶりのテントツアー公演は、9月11〜13日◎大阪朝鮮中高級学校/9月21〜23日◎宇部市床波公園/10月17〜28日◎赤坂サカス広場 各特設紫テントで行われる。
韓国国楽団:ミン・ヨンチ、ハ・ヨンス、金・オル、韓国舞踊:ペミヒャンが出演。俳優は水嶋カンナ、藤田佳昭、佐藤正行、二條正士、宮澤寿、柴野航輝、荒澤守、本間美彩、大久保千代太夫、反町鬼郎、小谷佳加、原佑宜、一條日和、シュアン、恩知晴香、内山ゆうな、神志織、四方美古都、清水宏太郎、趙博、金守珍、特別出演としてラサール石井が参加。
水嶋カンナからのメッセージ

海の底に、今も183人が眠っている。
山口県宇部市・長生炭鉱。1942年に起きた水没事故で、朝鮮半島出身者136人を含む183人が犠牲となりました。
昨年、ラサール石井さんが金守珍に「長生炭鉱の水没事故を演劇にしませんか」と持ち掛けたとき、私はこの出来事を知りませんでした。
その後、現地を訪れ、坑口や追悼広場、ピーヤがそびえ立つ海を見つめたとき、「これは演劇にしなくてはいけない」と直感しました。「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」代表・井上さんから、当時の過酷な労働や事故後の対応について話を伺い、憤りも覚えました。
慰霊碑に刻まれた183人。一人ひとりに名前があり、家族があり、愛する人がいて、夢や未来があったのだと胸に迫ってきました。
戦争も差別も、人間が人間として生きる当たり前の時間を奪っていく。そして今も世界では、多くの命や未来が奪われています。
演劇にどこまでできるのか、わかりません。
でも私たちはテントを建て、生身の人間が叫び、歌い、笑い、泣きます。かつて確かに生きていた人々の体温を、今ここに立ち上げたい。
忘れないために。忘れさせないために。
そして、人間が人間として生きる尊さを共有するために。
今、この時代に『海底骨歌』を上演します。
【ものがたり】
⻑野県飯田市生まれの井上陽子は、結婚して山口県宇部市に移り住んで四〇年。ある日、韓国在住の李春愛という女性から手紙を貰う。見知らぬ人…しかしその文面には、李が陽子の小学校時代の同級生(日本 名・国本春子)で、1965年に北朝鮮に「帰国」し、その後、90年代に韓国に密航してソウルに暮らしていると書かれてあった。さらに、李の祖父が宇部の⻑生炭鉱で事故死した事実も。「⻑生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」の活動を続けてきた自分にこんな巡り合わせが訪れるとは…陽子は驚愕する。
折しも、今後の運動方針を巡って「真相究明で充分だ」「いや、遺骨を探すべきだ」と「会」内部で意見 が対立していた中で、陽子は決意する。「遺族に返還する責任まで果たすべきだ」と。
戦後 80年の8月、ついに犠牲者の遺骨が発見された。死者と生者が出会い、そして、語らいが始まり、「骨」に染みこんだ非情と不合理と怨恨の歴史が紡がれて行く。陽子と春愛は、巫女が舞い踊り鉦や太鼓 が打ち鳴らされる荘厳な追悼式(クッ)で、数十年ぶりの再会を果たす。

公演情報

新宿梁山泊 三都市テントツアー『海底骨歌/해저골가』
作・出演◇趙博
演出・出演◇金守珍
出演◇水嶋カンナ 小谷佳加 二條正士 荒澤守 他
9/11〜13◎大阪朝鮮中高級学校 特設紫テント
9/21〜23◎宇部市床波公園 特設紫テント
10/17〜28◎赤坂サカス広場 特設紫テント





