東京芸術劇場・野田秀樹芸術監督が退任、新芸術監督に岡田利規と山田和樹が就任!
東京芸術劇場では、令和8年(2026年)3月31日をもって、野田秀樹芸術監督が退任し、令和8年(2026年)4月1日付で新芸術監督として岡田利規(舞台芸術部門)と山田和樹(音楽部門)が就任することとなった。
野田秀樹芸術監督は、平成21年(2009年)、初代芸術監督として着任以来、東京芸術劇場を東京の舞台芸術(演劇・音楽・舞踊等)分野の中心的施設として育てたほか、世界の劇場と積極的に連携し、多くの良質の海外舞台作品の招聘や、日本の数々の舞台作品を海外に送り出すなど国際交流を推進した。また、池袋西口を中心とした賑わいの創出、質の高い創造発信、若手育成の活動等にも多大に貢献した。
今後は、そのクリエイションが世界から注目を集める岡田利規を舞台芸術部門の芸術監督に迎え、新たな文化の創造・発信を行う場として館のプレゼンスの向上と、世界の劇場と伍する発信力を発揮できる劇場を目指していく。また新たに音楽分野の芸術監督として日本を代表するマエストロである山田和樹を迎えることで、1999席の座席数を有する日本有数のシンフォニーホールの特性を活かし、音楽公演のクオリティや国内外への発信力をより一層高めていく。
【岡田利規メッセージ】
芸術監督(舞台芸術部門)就任にあたって
芸術と、人びと/社会/現実との関係を問い続ける。それを、東京芸術劇場の芸術監督の仕事をするための、基本的な姿勢としたい。そのうえで以下の問いに、劇場の職員をはじめとする協働者のみなさんとアイデア・意見を交換し、コンセンサスをとりながら向き合い、試行錯誤を重ねていきたいです。舞台芸術と音楽とが交錯しあう企みも、音楽部門の監督となられる山田和樹さんとさまざまに、積極的に画策していきたいです。
上演に立ち会う観客との相互作用の結果として、感覚的悦び・励まし・ものごとを新しい眼差しで捉える経験・自分たちの声が代弁されているという思い・社会や自分自身を批評する機会などの、価値ある現象が生じる——そうした舞台芸術のポテンシャルを最大限発揮させるため、そこにできるだけ大きな射程を備わせるため、さて、どのような内容(プログラム)を、どのような形式(態度)を、東京芸術劇場は持つか?
国内の文脈における、かつ国際的な文脈における、東京という都市の位置づけ。可能性と問題点とをともに孕む、その両義性に積極的に目を向けて、さて、そのような都市に建つ公立劇場として、東京芸術劇場はなにをする(なにをしない)か?
舞台芸術を体験する悦び・舞台芸術を創造する悦び・そうした悦びが生じる場をつくり出す悦び、それらは、決して誰かの不幸な犠牲のうえに成り立つものであってはなりません。このことを含め、さて、東京芸術劇場がそこに関わる人びと、すなわち観客・創作に携わる芸術家・劇場職員──つまり、潜在的にはすべての人びと──にとって望ましい場所であるには?
《おかだ としき プロフィール》 演劇作家、小説家、演劇カンパニー「チェルフィッチュ」主宰。 その手法における言葉と身体の独特な関係が注目される。2007年『三月の5日間』でブリュッセルの国際舞台芸術祭、クンステン・フェスティバル・デザールに参加。この初の海外公演以降、国内のみならず、アジア・欧州・北米・南米あわせて90都市以上で作品を上演し続けている。2016年からはドイツの公立劇場レパートリー作品の作・演出も継続的に務める。2020年『掃除機』(ミュンヘン・カンマーシュピーレ)および2022年『ドーナ(ッ)ツ』(ハンブルク、タリア劇場)でベルリン演劇祭(ドイツ語圏演劇の年間における“注目すべき10作”)に選出。 タイの現代小説をタイの俳優たちと舞台化した『プラータナー:憑依のポートレート』で第27回読売演劇大賞・選考委員特別賞を受賞。能のナラティヴの構造を用いた『未練の幽霊と怪物 挫波/敦賀』(KAAT神奈川芸術劇場)で第72回読売文学賞・戯曲・シナリオ賞及び第25回鶴屋南北賞受賞。2021年には『夕鶴』(全国共同制作オペラ)で歌劇の演出を手がけた。 小説家としては、2007年に『わたしたちに許された特別な時間の終わり』(新潮社)を刊行。第2回大江健三郎賞受賞。2022年に『ブロッコリーレボリューション』(新潮社)で第35回三島由紀夫賞及び第64回熊日文学賞を受賞。 ※なお、令和7年(2025年)度からの東京芸術祭アーティスティックディレクターにも就任することが決定している。
【山田和樹メッセージ】
芸術監督(音楽部門)就任にあたって
東京芸術劇場は1990年10月に開館していますが、91年2月には小学6年生だった自分が早くもこの舞台に立っていました。音感教育の成果発表の場で、オーケストラ伴奏で独唱をしたのでした。同世代の中では間違いなく一番乗りでしょう。あの長い長いエスカレーターを見た時の衝撃は忘れられません。当時の自分はそこに東京という街の近未来の姿を見ていたのでした。 そう、私にとって東京芸術劇場というのは近未来の発信の場なのです。開館から34年経っている訳ですが、常に変貌する池袋・豊島区を象徴する建物であることに変わりありません。ここから何が発信できるか。見据えるのは、池袋から世界への発信です。世界から輸入する一方ではなく、輸出側に回る発想を軸にしたいと考えています。
時代はクロスオーバーです。ある一つの文化が放つ光は、また違う文化を照らすという側面がありますから、たくさんの文化が織りなす光は、さながら銀河系の様相を呈しているはずです。「芸劇」がその光の中心となればと思います。 どうせやるなら、今までになかったことをしたい。自分が持つ開拓と反骨の精神をフル活用していければと思います。舞台芸術部門の監督に就任なさる岡田利規さんとのコラボレーションもとても楽しみです。 常に変化しつづける東京芸術劇場にどうぞご期待ください。
《やまだ かずきプロフィール》 2009年第51回ブザンソン国際指揮者コンクールで優勝。ほどなくBBC交響楽団を指揮してヨーロッパ・デビュー。同年、ミシェル・プラッソンの代役でパリ管弦楽団を指揮して以来、破竹の勢いで活躍の場を広げている。2012年~2018年スイス・ロマンド管弦楽団の首席客演指揮者、2016/17シーズンからモンテカルロ・フィルハーモニー管弦楽団 芸術監督兼音楽監督、2023年4月からバーミンガム市交響楽団の首席指揮者兼アーティスティックアドバイザーに就任。日本では、東京混声合唱団音楽監督兼理事長、学生時代に創設した横浜シンフォニエッタの音楽監督としても活動。 教育活動にも熱心で、小澤征爾スイス国際アカデミーに毎年ゲスト・アーティストとして招かれている。また、バーミンガム市交響楽団のアウトリーチ・プログラムにも力を入れている。 これまでに出光音楽賞、渡邉暁雄音楽基金音楽賞、齋藤秀雄メモリアル基金賞など多数受賞。2022年にはモナコ公国からシュバリエ文化功労勲章を受章。
東京芸術劇場公式ホームページ https://www.geigeki.jp