『熱海連続殺人事件』二人の木村伝兵衛再び!今度こそ完全走破を目指す!荒井敦史×多和田任益インタビュー

荒井敦史 多和田任益

紀伊國屋ホール60年の歴史の中で最も上演回数の多い作品であるつかこうへいの『熱海殺人事件』が、今年も上演中だ。(22日まで)

2バージョンを上演する今回、『Standard』で木村伝兵衛部長刑事を演じるのは、今回が5回目の伝兵衛となる荒井敦史。『モンテカルロ・イリュージョン』で伝兵衛を演じるのは、これまで伝兵衛、熊田、大山とすべての登場人物を経験してきた多和田任益。この2人の伝兵衛に話を聞いた「えんぶ」8月号の記事をご紹介する。

〝戦友〟同士で挑むリベンジ公演 

──お二人が初めてお仕事でご一緒された2020年の『改竄・熱海殺人事件』では、今回のように2バージョン上演され、それぞれで伝兵衛を演じました。あれから4年経ちましたね。

荒井 『熱海~』に関しては、たわちゃん(多和田)の方が出演が早くて。

多和田 熊田役で2017年に出演してるので。

荒井 でも、伝兵衛ということで言うならば、僕たちは同じスタートラインで、一緒に頑張っていこうと走り出したのですが、コロナのこともあって、僕らの『ザ・ロンゲストスプリング』チームは比較的公演をやれたけど、たわちゃんの『モンテカルロ・イリュージョン』チームは千穐楽が急遽前倒しになってしまったんです。

多和田 その後も2021年に『モンテ』のリベンジ公演をやろうとしたら直前で全公演中止になってしまって。

荒井 たわちゃんは熊田も大山も演じていて、なんなら水野もちょっとだけやっていて(笑)。そういう中でもやっぱり今回『モンテ』で伝兵衛をやることには特別な思いがあると思うし、絶対に最後まで乗り切ってほしいですね。僕自身も、2021年の『新・熱海殺人事件』のときに、最後4公演が中止になってしまったので、演出の中江功さんとはそのときのリベンジという思いもあります。

多和田 僕はあっちゃんのことを戦友だと思っています。それは『熱海~』を一緒にやっているときだけじゃなくて、別の作品に出ているときも、あっちゃんが頑張ってるから僕も頑張ろう、と思える存在なんです。そういう気持ちになれたのはやっぱり『熱海~』で一緒に走れたからなので、今回また並走できることが嬉しいなと改めて感じています。昨年の『バトルロイヤル50’s』であっちゃんが伝兵衛、僕が大山を演じたとき、やっぱり僕はあっちゃんの伝兵衛が好きだなと思いました。毎回やるごとに厚みが増していくのはもちろん、オーラが出始めている気がします。

二人が悩まされる〝熱海〟とは?

──お二人にとって『熱海~』をやってきたという経験が生きているなと思う瞬間というのは、他のお仕事のときにもありますか。

荒井 それはめちゃくちゃあると思います。どんなにセリフが多い役が来ても怖くないですし、伝兵衛をやっていると度胸がつくというのもありますし、いろいろ勉強になりますし、何度やっても未だにずっとチャレンジだなと思います。

多和田 ものすごい熱量とセリフ量の濃い芝居なので、やり切れたときに「もうそんじょそこらのものじゃびびらないかも」みたいな、自分の中で少し自信に繋がるんですよ。しかもやり切った後に「もっとやってみたいな」と思えるのが不思議なところです。結構ハードな作品ではあるのでエネルギーは使うけど、やればやるほど、嚙めば嚙むほど味が出てくるみたいな感じがあります。あと、早く喋るのが全然苦じゃなくなりましたね。前は一生懸命に早口で喋らなきゃ、という感じだったんですけど、今は何も考えないで喋れるようになったということを、特に他の現場に行ったときに感じます。それはやっぱり『熱海~』で積み重ねてきたおかげですね。

荒井 確かにそれは間違いない。俺は逆に最近、他の芝居のときに「ちょっとセリフ早いな」って反省することが多くて。

多和田 わかる、わかる! 自分がセリフ言ってる映像を見て「あれ、思ったよりも早口だな」って思うんだよね。

荒井 まあでも、開き直ってるけどね。「いいんだよ、みんなついてこい!」みたいな(笑)。

多和田 僕らは感覚がバグってるんだと思います(笑)。多分普通より1・5倍ぐらい速い感覚になってるから、他の人のことを「遅い、早く早く!」って思っちゃうんですよ。

荒井 それめっちゃわかる!

多和田 多分、これは「熱海病」ですね(笑)。

荒井 よかった、それに悩んでるの俺だけじゃなかった(笑)。

みんなと一緒に走り切るのが目標!

──荒井さんのチームは、新内(眞衣)さんが水野役、高橋(龍輝)さんは昨年は熊田役でしたが今回は大山、と『熱海~』でご一緒したことのある二人がいらっしゃいます。

荒井 まいちゅん(新内)は水野4回目で、僕も5回目だから、今回は一つ俺らのペアでの形みたいなものを作れるように深めていきたいね、という話は二人でしています。龍輝くんは今回大山役で、構図的には熊田vs大山になるので、熊田役の富永くんが大変だと思います。そこは大山に負けてしまわないように僕の方でもいろいろ手を考えないとな、と思っています(笑)。

──多和田さんはやはり鳥越(裕貴)さんが大山というところに大きな意味があるのかなと思います。

多和田 鳥ちゃん(鳥越)とはとにかく『モンテ』で1回一緒に走り切りたいです。もちろん作品として深めて広げて、というのもありますが、まずはこれまでモンテを作ってきたみんなの思いも背負って一緒に走り切ることが1個目標という感じです。役者としても信頼しているので安心感もありますし、稽古に入るのが楽しみですね。

──今回、荒井さんチームは中江さん、多和田さんチームは中屋敷さんが演出です。

荒井 僕は今度こそ中江さんで最後までやり切る、という思いが強いです。伝兵衛をやるのが5回目となると、前回の自分を超えるというよりは、「また同じことをやってる」とお客さんに思われないように、もっと深いところに行かなきゃいけないですし、それを中江さんと一緒に探していくという作業になるんだろうなと思っています。

多和田 僕はヤシキさん(中屋敷)とも中江さんとも『熱海~』でご一緒していて、どちらも途中で公演中止になってしまって完走できていないんです。だから今回は皆さんと一緒にリベンジをしたい、という気持ちが強いです。ヤシキさんは僕の演劇に対する気持ちを変えてくれた存在です。ヤシキさんと僕と鳥ちゃんは『モンテ』再演組なので、僕と鳥ちゃんはもちろん、ヤシキさんの中にも今回に懸ける強い気持ちが絶対あると思います。でも、稽古場でとんでもないことを言い出しそうだな、とちょっとドキドキしています(笑)。

【PROFILE】

あらいあつし○1993年生まれ。埼玉県出身。09年に俳優デビュー。最近の主な出演作品は、【映画】『神さまの轍-checkpoint of the life-』、『HiGH&LOW THE WORST』、『信虎』、【ドラマ】『水戸黄門』(BS-TBS)、『デジタル・タトゥー』(NHK)、『サ道』(TX)、『柳生一族の陰謀』(NHK BSプレミアム)、【舞台】『いとしの儚』、『新・熱海殺人事件』、『熱海殺人事件 バトルロイヤル 50ʼs』、『かわりのない』、『ルール~「十五少年漂流記」より~』など。

たわだひでや○1993年生まれ。大阪府出身。2011年に舞台デビュー、ダンスエンターテインメント集団「梅棒」のメンバーとしても活動中。最近の主な出演作品は、【映画】『ひだまりが聴こえる』、【ドラマ】『手裏剣戦隊ニンニンジャー』(EX)、【舞台】『熱海殺人事件 バトルロイヤル 50ʼs』、梅棒 17th STAGE『花婿は迷探偵 -THE FINAL-』、『舞台 PSYCHO-PASS サイコパス Virtue and Vice 3』、『白蟻』、【振付】「マッシュル-MASHLE-」THE STAGEなど。

【公演情報】

紀伊國屋ホール60周年記念公演『熱海連続殺人事件』

●7/5~22◎紀伊國屋ホール

『熱海殺人事件 Stamdard』

作:つかこうへい 

演出:中江功

出演:荒井敦史 新内眞衣 富永勇也 高橋龍輝

『熱海殺人事件 モンテカルロ・イリュージョン』

作:つかこうへい 

演出:中屋敷法仁

出演:多和田任益 嘉島陸  鳥越裕貴 木﨑ゆりあ

〈チケットお問い合わせ〉Mitt 03-6265-3201(平日12:00~17:00)

〈公式サイト〉http://www.rup.co.jp/stage/atami_2024.html

【インタビュー◇久田絢子 撮影◇友澤綾乃】

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