情報☆キックコンテンツ一覧
お得なチケット販売中!
情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
公演情報、宝塚レビュー、人気作優のコラム・エッセイ、インタビューなど、楽しくコアな情報記事が満載!
ミュージカルなどの大きな公演から小劇場の旬の公演までジャンルにとらわれない内容で、随時更新中です。

(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
広告掲載のお問い合わせ

【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第169回「劇場に通う」

 劇団☆新感線「紅鬼物語」の東京公演が始まりまして、昨年開館したばかりの新しい劇場であるシアターHに通う毎日です。シアターHは品川区勝島、大井競馬場のすぐ北側にありましてね、通うにはちょっと面倒くさい劇場なのです。

 公演が始まりますと当然ながらほぼ毎日劇場に通うことになります。だってそこが職場なんですから。職場が固定されている職業の方からすると奇妙に思われるかもしれませんが、我々は稽古場とか劇場とか、ひと月ごとくらいに職場が変わるのです。それが普通なのです。

 公演中、劇場に通う方法は人それぞれです。ゲストさんなんかはね、自分で車を運転してくる人もいれば、マネージャーさんに送り迎えしてもらう人もいたり、タクシーの方もいます。劇団員たちはまあだいたい電車通いでして、一ヶ月を超える公演だと定期を作る人も多いですね。私なんかは色んなルートを試すのが好きだから作らないけど。さらにアクションマンの中には都内ならどこへでも自転車で行っちゃう、なんてツワモノもいたりします。足腰も鍛えられるしね。
 スタッフさんたちはね、朝早くて夜遅いから、自宅が遠い人の中には劇場の近くにウィークリーマンションを取る人もいます。電車賃や通勤時間を考えれば案外と現実的な選択なんですよ。

 でね、ここで問題となるのが、その劇場がどこにあるかなんです。劇場が新宿や渋谷などの巨大ターミナル駅の近所にあればまあ通いやすいんです。また、下北沢や日比谷のように通っている鉄道が多い駅あたりなのも大丈夫。ただね、通うのに困るのがちょっと離れた駅だとか、あるいは最寄りの駅から遠い劇場などの場合なのです。
 いや、もちろんワガママなのは判っているんですけどね、できれば通うのが楽な劇場だと良いなあ、とか思ってしまうんですよね。最近の公演では昼公演の開演時間が早くなってきてましてね、スタンバイ時間を考えると朝ラッシュの最後の方に巻き込まれてしまったりもするのです。いやいや、もちろん皆様も毎朝その苦労をなさっているのは重々承知してはいるのですが、演劇人ってのはそういう真っ当な社会人生活が苦手な人種なのです。ダメな人たちなのです。ダメな人たちなので楽をしたい。そう思ってしまうんです。

 しかもその駅が普段はあまり使わない駅で、普段はあまり使わない路線で、あまりやったことのない乗り継ぎだったりしますとね、とにかく戸惑ってしまうのですよ。慣れてない路線だから遅刻しないようにと必要以上に早めに家を出たりね。乗り換え方が判らなくて反対方向の車両に乗っちゃったりね。そんで早く出たのに遅刻しちゃったりね。そんで怒られたりしてね。ほら、慣れるまでが大変なのよ。
 まあね、慣れてくれば何時の電車に乗れば間に合うかも判りますし、乗り継ぎもスムースにできるようになります。ちょっとした近道を発見したりね、途中のコンビニの品揃えなんかも把握してきましてね、色々と楽になってきます。そうなれば気持ちに余裕もできて舞台にも集中できるってものなのです。そう、慣れるまでの辛抱です。ただまあ、やっぱり遠いのは変わらないからやっぱり大変なんですけどね。

 ついでに、劇場通いに関してちょっとした逸話を。昔、あるロックアーティストの方と共演したのですが、稽古終盤にはちょっと辺鄙な場所が稽古場だったんです。ある日の稽古終わり、ダブッとしたオーバーオールにボサボサ髪、大きな眼鏡といった、まああまりパッとしない風情のロッカーと帰りの電車で一緒になったのです。その方が楽だからといって、実際に誰にもバレていませんでした。
 それがね、劇場に入って本番が始まると、ピンストライプのダブルのスーツに派手なサングラスを掛けて、アメ車をブオンブオン言わせながら楽屋口に到着したんですよ。居並ぶファンに手を振りながら颯爽と楽屋に入っていく彼を見ながら、やっぱりロックだなあとか思ったことを思い出しました。

 そんなこんなの劇場通い。ただ職場に行くだけの行程ですが、こういう職業ならではの色々もあるんですよという話です。まあ、我々が通いにくいということは、皆様にご来場頂く際にも判りにくいということですよね。初めての劇場の場合には、よく下調べをしてからお越し下さい。早く出たのに遅刻しちゃった、なんてことがないようにお気をつけ下さいませね。

京急の各駅停車で立会川駅に向かうと、一つ手前の鮫洲駅で特急とかを1〜2本待つので時間が掛かりますよ。

PROFILE

粟根まこと
あわねまこと│64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み。

【出演予定】
劇団☆新感線「紅鬼物語」
【大阪公演】
2025年5月13日(火)~6月1日(日) SkyシアターMBS
【東京公演】
2025年6月24日(火)~7月17日(木) シアターH

演劇ぶっく無料公開
よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!