
ありのままの自分で突き進む成瀬に近づきたい!
滋賀県で生まれ育った主人公・成瀬あかりが全力で我が道を突き進む姿や、
成瀬に影響を受けて新しい生き方を見つけていく人々の姿を生き生きと描き、
多くの読者を魅了した宮島未奈のデビュー作『成瀬は天下を取りにいく』(新潮文庫刊)。
2024年本屋大賞をはじめ数多くの文学賞を受賞したこの作品と続編『成瀬は信じた道をいく』(新潮文庫刊)を
もとに構成された、舞台『成瀬は天下を取りにいく』が7月4日より上演中。
その作品で単独初主演を果たす山下美月。
「乃木坂46」卒業後初の舞台となる山下が、作品に臨む想いや、舞台そのものに感じる魅力を語ってくれた。
その日にしか創れない成瀬を創りたい
──この作品の主演で、というオファーがあった時の気持ちから教えてください。
お話をいただいたのは去年の夏頃でしたが、当時、どの書店さんに行っても成瀬の大きなポスターが貼ってあって、本当にたくさんの方から愛されている作品なんだと感じました。最強で天才な成瀬あかりを自分が演じられるのかなというプレッシャーもありましたが、私は観劇が大好きで月に何本か色々な舞台を拝見しているので、出演できることは嬉しかったです。もちろん映像という表現の美しさなどは本当に大きな魅力ですが、舞台は毎回演者の皆さんが、その日その日にしかできないお芝居を、ご自分の魂を削って全員でコミュニケーションを取って創り上げているのが、とてもかっこいいなと思ってきました。私が舞台に出させてもらっていたのは十代の頃で、そこまで意識できていなかったので、今回は自分が拝見してきた時の感動を持って板の上に立たせていただいて、その日にしか創り出せない成瀬を創りたいと思いました。
──ではそこから舞台を観る姿勢にも変化はありましたか?
客席にいると、単純に物語を楽しんでいる自分がいるのですが、やはり久々の舞台、しかも主演をさせていただくと決まってからは、まもなく自分もこの舞台のゼロ番に立っている日が来るんだな、ということを噛み締めながら舞台を観に行かせていただいています。
──最強で天才と表現された成瀬というキャラクターについてはどうですか?
初めて小説を読ませてもらった時の印象はやっぱりカッコいいな! というものでした。自分の周りにはあまりいないタイプの女の子だし、すごく個性の強いキャラクターですが、成瀬は決してそれを意識してやっているわけではなく、あくまで自然体で自分を作ることなく生きているんですよね。私自身芸能界にいると、どうしても失敗してはいけないとか、きちんと見せなくては、ということを毎回考えてしまうのですが、だからこそなにひとつ物怖じせずに、ありのままの自分で起きる出来事に立ち向う成瀬に近づきたいなと思いました。その一方で、成瀬には完璧なだけではない人間性があるなと、台本を読んでいても感じます。成瀬って「普通」という枠組みから一歩飛び出たことを、たまにではなく連続してやっていく人間なんですよね。相手の気持ちを考えていないわけではなくて、成瀬の気持ちが普通の人とは違うところにあるからなのですが、それで空気が読めていないな~という感じになってしまう。それこそ天才故かなと思います。そうした言動のすべてが完璧ではない、というところには共感できますし、私は実家が西武ドームに近かったので、小さい頃両親によく球場に連れていってもらっていて、池袋の西武百貨店にも母とよく行ったのでご縁を感じています。素晴らしい共演者の方々からもたくさん吸収して頑張りたいです。
お芝居が本当に好きなんだという
気持ちがあふれ出て行く
──LIVEパフォーマンスと、お芝居として役を演じている時の心持ちの違いはありますか?
お芝居は自分ではないギアが入るんですよね。その舞台に立っているのは自分ですが、見ている世界は演じているキャラクターの視点なので。ですからライブだと例えば挨拶するときなどはすごく緊張するんですが、舞台上でお芝居をしているとあまり緊張しないんです。一度幕が開いたら終わりまで役として走り続けるという感覚なので。それは舞台に限らず映像作品でもそうで、その作品の準備が始まった段階から、日常生活のなかでもこの役だったらいまどういう選択をするだろう? 彼女なら今夜何を食べるかな? など、日常から役と一緒に生きている感覚を持って過ごす方なので、今回成瀬というキャラクターが自分とは遠いところにいるからこそ、日常の成瀬と一緒にいられるのが楽しみです。
──グループを卒業されて個人として活動されるようになって、感じた変化はありますか?
私はお芝居をすることが本当に好きなんだな、その気持ちがあふれ出て行くなと感じています。やっぱり年齢を重ねるにつれて、色々な人生経験が自分のなかに積み重なっていくなかで、役を通してそれが活かせるのがとても幸せです。
──そんななかで、今後やってみたい系統の役柄などはありますか?
私は見た目の印象からかしっかり者の役柄を演じることが多いのですが、それをもっとぐっと振り切って、ヒールというか悪魔的なポジションの役柄をやってみたいです。映像では恋愛ものもやらせていただいていて、儚げなキャラクターも演じているのですが、自分はあんまり儚い雰囲気が漂っていないタイプの人間なので(笑)。
──いえいえ、先ほどの撮影でもとても多彩な表情を見せてくださって素敵でした。最近印象に残った舞台はありますか?
『ハムレット』を拝見して、すごく感動しました。シェイクスピア作品にはいつか携わらせていただきたいと思っていて、大きな目標のひとつです。
──あぁ、オフィーリアはぴったりでしょうね!
そうでしょうか、嬉しいです。若い世代の方々がとても力強く演じていらして、すごく刺激をもらったので、頑張っていきたいです。海外でも舞台を拝見するのですが、言葉がわからなくても楽しめるので、舞台のエネルギー、勢いって本当にすごいなと思います。今回私にとってはとても久しぶりの舞台なので、全編終わった後にお客様のお顔を拝見できるのをとても楽しみにしています。皆さんが観終わって笑顔になって帰っていただけるように、拍手をもらえるようにお芝居を頑張りたいです。
──万雷の拍手が起きることと思います。では最後に改めて、舞台を楽しみにされている方たちにメッセージを。
色々な方々から多くの反響をいただいて、この作品がどれほどたくさんの方から愛されている大切なものかということを、いま自分自身が一番感じています。プレッシャーもありますが、脚本・演出のG2さんがいままで観たことがないような、奇想天外なステージをご覧にいれます、とおっしゃっているので、私自身もどんな作品が生み出されるのか、本番をとても楽しみにしています。是非皆さまもこの夏は『成瀬は天下を取りにいく』を楽しみに、劇場にいらして下さい、お待ちしています!
プロフィール
やましたみづき〇東京都出身。2016年に「乃木坂46」3期生オーディションに合格し、中心メンバーとして活躍。24年に卒業。グループ在籍時より現在まで数々の映画・ドラマに出演し、女優としても活躍。主な出演作は、NHK連続テレビ小説「舞い上がれ!」、「Eye Love You」、「愚か者の身分」など。また、女性ファッション誌「CanCam」の専属モデル、NHK Eテレ「沼にハマってきいてみた」のMCも務めている。7月17日には、映画「キングダム 魂の決戦」が公開予定。
(このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年8月号より転載)
インタビュー◇橘涼香 撮影◇中村嘉昭 スタイリスト◇ゴウダアツコ ヘアメイク◇:miura(JOUER)
公演情報

舞台『成瀬は天下を取りにいく』
原作◇宮島未奈(『成瀬は天下を取りにいく』
『成瀬は信じた道をいく』(ともに新潮文庫刊))
脚本・演出◇G2
出演◇山下美月 藤野涼子 山﨑静代 ISSEI
天宮良 田畑智子 ほか
7/4〜12◎東京・サンシャイン劇場
7/16〜26◎京都・南座
7/28~29◎滋賀・大津市民会館 大ホール
〈お問い合わせ〉
チケットホン松竹 0570-000-489、
チケットWeb検索





