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貴城けい×田野聖子『マリア・シュトゥアルト』上演中!

貴城けいと田野聖子が演じる舞台『マリア・シュトゥアルト』が10月28日に開幕、そのレポートと舞台写真が届いた。公演は10月30日までの第一期を終え、第二期が11月10日〜13日にIMAホール(光が丘)にて上演される。
 
本作は、スコットランドの元女王マリア・ステュアートと、イングランドの女王エリザベス1世を描くシラーの戯曲で、史実では一度も会うことのなかった二人の女王を戯曲の中で対面させた。

今回の公演最大の挑戦は、二人の女優による「役の交換」である。
前半、貴城けいは処刑を待つ囚われの女王マリア・シュトゥアルトを、田野聖子は玉座に君臨するエリザベス一世を生きる。だが、史実には存在しなかった二人の女王の「対面」を境に舞台は反転する。
後半、貴城は王冠の孤独を抱えるエリザベスを、田野は死へと歩むことで自由を得るマリアを演じ直す ── 勝者と敗者、権力と信仰、ひとつの運命の表と裏を、二人がその身体で入れ替わりながら照らし出すのだ。
一人の女優が一夜のうちに二人の女王を生きること。それは技術ではなく、覚悟の問題である。
気品と熱を併せ持つ貴城けいと、緻密な言葉の芝居で客席を掴む田野聖子。この二人だからこそ成立する危うい賭けに、注目したい。
それぞれの女王を導き、操り、時に観客をも巻き込む語り手には、豊原功補・堀部圭亮(Wキャスト)。道化役として舟木 健がそこに交わる。

【『マリア・シュトゥアルト』初日直前・ゲネプロレポート——90分、目を離せない】
初日を目前に控えたIMAホールで、『マリア・シュトゥアルト』のゲネプロが行われた。休憩なしの90分。通し終えた瞬間、客席に残っていたのは拍手より先に、息を整える気配だった。本番を前に、ここで見えてきたものを記しておきたい。
これまで数多く上演されてきた「メアリー・スチュアート」とは違う。女優二人が前半と後半で役を入れ替える——その新しさだけが、この公演の魅力ではない。
舞台に立つのは、役者としての出発点は近いのに、まったく異なるジャンルで生きてきた二人の女優。その交錯こそが核である。
貴城けい。気品と気高さ、そして孤高。その佇まいはそのままに、今回は心の奥底に封じられていた熱量が弾ける瞬間がある。私たちがまだ見たことのない貴城けいの新たな一面であり、観客は思わず感情を寄せ、魅了されていく。
田野聖子。確かな演技力で、エリザベスの孤独を、そしてマリアの崇高さとたおやかさを見事に演じ切る。言葉を一つずつ置いていく精度の高さに、客席が静まり返る場面が幾度もあった。
二人の女王が口にする「どちらでもよかったのかもしれない」「どちらでもよくないのだから」という言葉にも、ぜひ耳を澄ませてほしい。役を交換して演じるこの構造のなかで、その一言がどこへ落ちていくのか——それはご覧になってのお楽しみとしておく。
そして舟木健。まさに八面六臂の活躍である。恵まれた身体と自在の声色に「道化」というエッセンスが加わることで、この物語の操り手は実は演出助手の企みだったのではないか、と見間違うほどだ。
物語を司る<語り手>=演出家は、豊原功補と堀部圭亮のWキャスト。ゲネプロの語り手は豊原功補だった。
豊原の演出家は、穏やかな人である。落ち着いたベテランが、急遽のアクシデントで来られなくなった役者の代役プロンプターを務めるはずが……。作品が進むにつれ、その穏やかさは次第に情熱を帯びていく。作品を客観的に眺めているようでいて、実は登場人物たちの運命を握り、救いの場を用意し、「会えば分かり合える」と信じて疑わない。自信に満ちていたはずのその確信が、少しずつ崩れ始める。淡々と、ほとんどぶれずに進んでいたはずの彼に訪れる悲哀。それが静かに、しかし確実に客席へ届く。この<語り手>という存在そのものが、とても面白い。
一方、舞台稽古で見た堀部圭亮は、まったく違うアプローチをとっている。飄々として、一瞬お調子者にも見える。ベテランの風格を湛えながらも、自らが翻弄され、どんどんこの世界に拘束されていってしまう男。稽古が進むほどに二人の違いは色濃く立ち上がり、同じ台本から、まったく別の印象の舞台が生まれつつある。その色合いの違いを見比べることも、この公演の大きな愉しみになるだろう。
舞台上に居続けるもう一人の存在が、楽士アラン・パットン。その生演奏が、この作品の悲喜交々を彩り、ときに押し出し、ときに引き留めながら物語を展開させていく。
そして終盤。私たちは一体何を目撃していたのか——それを思い知らされる瞬間の仕掛けについては、ここでは書かない。ただ、上演台本・演出を手がける中原和樹がつくりだす【アクチュアル】な場が、その一点で鮮明に浮かび上がる、とだけ記しておく。

 【公演情報】
『マリア・シュトゥアルト』
原作:フリードリヒ・フォン・シラー
上演台本・演出:中原和樹
音楽・演奏:アラン・パットン
出演:貴城けい 田野聖子 舟木健
豊原功補/堀部圭亮(Wキャスト)
●10/28〜30◎IMAホール(光が丘)終了
●11/10〜13◎IMAホール(光が丘)
〈公式サイト〉https://m-s-stage.com/