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「TACHIHI presents 立川立飛歌舞伎特別公演」初日レポート

『寿曽我対面』(左から)曽我五郎時致=市川團子、曽我十郎祐成=中村壱太郎、大磯の虎=市川笑也、工藤左衛門祐経=片岡仁左衛門(C)松竹

立川の秋の風物詩が今年も開催!
11月3日、今年で4回目となる「TACHIHI presents 立川立飛歌舞伎特別公演」が、立川ステージガーデンにて初日の幕を開けた(8日まで)。2023年に始まったこの公演は、今ではすっかり秋の立川でおなじみの光景となり、人気を集めている。

開場時間のかなり前から、劇場入口近くに設置されたパネルをバックに写真を撮る人や待機列で待つ人がいたり、劇場の前を通りすがる人たちも「今回はあの俳優さんが来てるんだって」「今度は観にいこうか」などと話す様子が見られるなど、公演への関心が高まっていることが感じられた。

今回のプログラムは、「一、ご挨拶・解説」「二、寿曽我対面」「三、俊寛」「四、蜘蛛の拍子舞」の4作品。出演者による挨拶と解説、歌舞伎を代表する古典作品、奥深い人間ドラマ、華やかな変化舞踊という、歌舞伎の多面的な魅力あふれるラインナップだ。

出演者は、まずは市川中車、市川團子、市川猿弥、市川笑三郎、市川青虎、市川笑也といった澤瀉屋一門のおなじみのメンバーに中村壱太郎、そして今回は片岡仁左衛門、片岡孝太郎などの松嶋屋が初参加。歌舞伎で屈指の人気を誇る仁左衛門の登場に、いやがおうにも期待が高まる。ここでは公演初日の模様をレポートする。

「ご挨拶」市川中車_(C)松竹

まずは幕開きの「ご挨拶・解説」から。今回のために作られた、「対面」のイラストが描かれた幕を背に登場し、開口一番の挨拶をつとめたのは中車。客席からの拍手を受けて「おかげさまで4回目の開催で、初日の幕が開けられるます。皆様にお会いできて感謝の気持ちでいっぱいです。毎年秋に(立川に)来られることが何より楽しみであり、励みになります。一人でも多くの人に歌舞伎に親しんでもらいたい」と感謝を述べた。続いて、猿弥と青虎による楽しい演目解説がスタート。ていねいに解説しようとする青虎と、マイペースにチャチャを入れる猿弥の名(迷?)コンビに客席も盛り上がる。

解説」(左から)市川青虎、たっぴくん、たっぴちゃん、市川猿弥(C)松竹

続いては「寿曽我対面」。日本三大仇討に数えられる曽我兄弟の仇討をモチーフにした、歌舞伎らしい様式美が凝縮された一幕。工藤祐経を演じる仁左衛門の声が響き、舞台の正面にどっしり座るその姿が見えると、大きな拍手が起こる。風格と威厳ただよい仁左衛門の工藤に、観客の視線が注がれる。真面目で一本気な團子の曽我五郎、はんなりした風情で芯の強い壱太郎の曽我十郎、女だてらに兄弟に助力する片岡孝太郎の舞鶴、兄弟それぞれの恋人である笑也の大磯の虎と笑三郎の化粧坂少将、大切な刀探しに奮闘した猿弥の鬼王と、適材適所。「対面」のあとは、舞台姿のままの出演者によるカーテンコールもかねての手拭撒きのサービスがあり、客席のあちこちで賑やかな争奪戦が行われた。

『寿曽我対面』(左から)曽我五郎時致=市川團子、曽我十郎祐成=中村壱太郎(C)松竹
『寿曽我対面』工藤左衛門祐経=片岡仁左衛門_(C)松竹
『寿曽我対面』曽我五郎時致=市川團子(C)松竹

幕間をはさんで「俊寛」。いわゆる「鹿ケ谷の陰謀」のあと鬼界ヶ島に流罪となった俊寛、平判官康頼、丹波少将成経たちのもとに都から赦免船がやってきて…という近松門左衛門による義太夫狂言の名作。タイトルロールの俊寛を、亡き父・二代目市川猿翁の型で初めてつとめるのは中車。憔悴しきった登場から、少将の恋の話に心が浮き立ち、赦免船への乗船をめぐる使者との争い、幕切れまで起伏のある難しい役に全力でくらいついている。技術的な向上の余地はあっても、刀を振り上げた見得のすごみや、人物像の掘り下げなど、香川照之であり市川中車であるこの人にしかできない俊寛があるのではと感じずにいられなかった。包容力ある青虎の康頼、すずしい美丈夫の團子の少将、情が深くて一途な壱太郎の千鳥、颯爽とした笑三郎の丹左衛門、憎々しいが憎みきれない猿弥の瀬尾と、他のメンバーも好演している。

『俊寛』(左から)俊寛僧都=市川中車、瀬尾太郎兼康=市川猿弥_(C)松竹
『俊寛』俊寛僧都=市川中車_(C)松竹

さいごは「蜘蛛の拍子舞」。平将門を倒してから、謎の病にふせっている源頼光の館に、お見舞いの使者・妻菊が薬をもって訪れ…。頼光は笑也。久しぶりの立役(男性役)は憂いの貴公子のような佇まい。頼光の腹心・碓井貞光は團子。妻菊は壱太郎が初役でつとめる。赤い衣裳に身を包み、あふれる色気、扇で隠れた表情からのぞく妖しさ、吾妻流家元としての踊りの巧みさが光る。笑也、團子と三人での連れ舞も見ごたえあり。間(あい)狂言(舞踊の前半と後半をつなぐ場面)は、笑三郎の蚊の精と、青虎の雷電入道(なまず)によるコミカルな掛け合いが絶品。妻菊の正体が明らかになると、鮮やかな紅葉を背景に頼光たちとの迫力ある蜘蛛の立廻りや、宙乗りでの幕切れなど、手を変え品を変え「観客を楽しませよう」という趣向があふれる変化舞踊の面白さを味わえた。猿弥の坂田金時の存在感も印象的。

『蜘蛛の拍子舞』妻菊実は平将門息女七綾姫=中村壱太郎_(C)松竹

地元をあげて公演を盛り上げよう!というハッピームードでいっぱいの「TACHIHI presents 立川立飛歌舞伎特別公演」。8日までという短い期間だが、年に一度のお祭りのようなこの公演の醍醐味を、ぜひ現地で堪能してほしい。


【公演情報】
『立川立飛歌舞伎特別公演』
●11/3~8◎立川ステージガーデン
〈公式サイト〉https://event.tachihi.co.jp/kabuki/

【取材・文/内河 文 写真提供/松竹】