妖怪ってナニモノ? ザ・プレイボーイズ『ハロー、妖怪探偵社』稽古場レポート到着!
ザ・プレイボーイズ 第11回公演『ハロー、妖怪探偵社』が、11月22日より、下北沢・小劇場B1にて開幕する。作・演出を務めるのは、ザ・プレイボーイズの主宰である善雄善雄(よしおぜんゆう)。その稽古場を見学した。
『ハロー、妖怪探偵社』という公演タイトルの通り、今作の舞台となるのは“探偵社”。武良木良平(結城洋平)が営んでいる。しかし良平は、探偵なのに思考整理が苦手だ。
また、この探偵社には、4人の不思議なキャラクターが入り浸る。小豆田頼(田中祐希)。彼は、人付き合いが苦手でボソボソと話す姿が特徴的。河端伯明(村田和明)。彼は、昼夜構わず酒浸りで、常に酒瓶を手に持っている。矢敷童士朗(おなか☆すいたろう)。彼は言動からして子供のようにみえるのだが……。そして、九梨野瑤子(橘花梨)。彼女は「だってぇ」や「~じゃん」といった軽い言葉を多用する。ここまででおわかりの通り、依頼を受けて調査を行う“探偵社”という場所にしては、一見頼りなさそうな人たちが集まっているのだ。実際に、依頼数も振るわない。そんななか、ひとりの女性、天草一花(久保乃々花)が、ふいに探偵社を訪れる。
「彼女は**されました……妖怪に、**されたんです」
一花は大学生で理学部に所属している。一花のいう“彼女”とは、同級生・永尾雪(濵尾咲綺)のことだ。雪に関する、とある依頼をきっかけに物語が大きく動き出し、一花と雪のエピソードや、彼女たちの大学に勤める助教授・鬼嶋鈴(鈴政ゲン)との関係性があらわとなっていく。探偵社の人たちは彼女たちとどのような物語をつくるのか。そして、“妖怪”とは一体、何者なのだろうか──
その日の稽古では、全体をシーンごとに区切り、動きの段取りを確認しながら繰り返し練習を重ねていた。最後の場面まで進んだので、それぞれのキャラクターの心情の変化、また、それを演じる俳優自身の表情も、じっくりと見つめることができた。
まず探偵社のメンバーについて。良平は、探偵社を営んでいるだけあって、入り浸る4人の中心に立つ、お兄さん的存在なのだが、彼を演じる結城も、稽古がスムーズに進行するように、善雄や俳優に対して積極的かつ優しく、声かけや提案をしている姿が印象的だ。
童士朗を演じるおなか☆すいたろうと河端を演じる村田は、ザ・プレイボーイズの常連俳優だ。前作、前々作の本公演に続けて出演をしている。だからこそ、なのか……稽古中に、創作の醍醐味だなと感じる瞬間に出逢った。物語終盤の探偵社、良平の言動によって登場人物たちの心情が大きく揺るがされる場面がある。稽古では、そのシーンで舞台装置をどのように動かすと良いか、段取りについて話が及ぶ。結城の提案によって動機の伴う動きがうまれたが、善雄が観客に見せたいと思うイメージを表現するには、さらにもう一歩のアイディアが必要となった。そんなとき、おなかと村田は、絶妙な味付けをするように、結城の発想を活かしたうえで小さな動きの提案を行った。小豆田を演じる田中と、瑤子を演じる橘も、その様子を見守り、一緒になって探偵社の空気をつくりあげていく。結果、非常に見応えのあるシーンが誕生した。
創作に対する各メンバーのアイディアが、きれいなグラデーションでひとつの絵になっていく様子は、本当に美しい。そのような舞台を客席で観られる体験は、観客にとってきっと幸せな時間になるだろうと感じた。
大学チームとして探偵社と交わっていく3人のキャラクターも個性的だ。一花は、コミュニケーションが不器用だが思いやりのある人物だ。演じる久保も、相手を真っ直ぐ見つめる視線がとても魅力的で、人を惹きつけるパワーを感じた。雪は、どこまでも人に優しい。それは良くもあり、悪くもあり……。演じる濵尾は悲しんだり笑ったり、雪の心の機微を丁寧に汲み取って演じていた。鈴のキャラクターは冷静さが印象的で、それは安心感がありながらも、あまりに落ち着きすぎているので、反対に不安も感じさせる。彼女を演じる鈴政は、その“安心”と“不安”のバランスを、ひとつのキャラクターに見事に同居させていた。
演出の善雄は、練習をとめるごとに、「いいですね」「いいシーンになりそうだ」「すごくよかった」といった前向きな言葉を、ストレートに発する。そのおかげで、稽古場の空気は明るく、常に着実に歩みを進めていた。
また、会場である小劇場B1は、正方形の舞台に対し、客席はLの字で囲むように配置されている。縦と横、観客がどちらの席から観ても楽しめるように、善雄は、演出卓にとどまることなく、両側へ頻繁に移動しながら、芝居の見え方を丁寧に確認していた。特に、探偵社に入り浸る4人が愉快に喋り合う場面は、この舞台のおもしろ(リラックス)ポイントだと思うのだが、客席の構造を活かして、それぞれの動きがよく見えるように演出をされていたので、ぜひ注目してほしい。
「妖怪」という言葉を改めて調べてみる。書き方は様々だが、一般的に「理解できないモノ」という意味が出てくる。この物語の“妖怪”は何者なのだろうか。どんなカタチをしていて、どんなことを話す者が“妖怪”なのだろうか。稽古の見学を通して私は「人間は皆、妖怪なのかもしれない」と感じたのだが、観る人の考え方によって、妖怪が示すモノは様々に解釈されるのだろうと思う。観劇後に話し合ってみたい。
善雄は、妖怪という言葉を、この探偵物語に重ね合わせることで、人と人が支えあって生きていくことの難しさと、それをどうしたら楽しめるのか、その道筋を丁寧に描き、提示しているように感じた。ノリとツッコミのような、テンポ感のある楽しい台詞を交えながら話が展開していくので、肩の力をふっと抜きながら観劇できるのも、嬉しい見どころだ。
ちょっと笑顔になりたいな……であったり、人付き合いに疲れたな……であったり、妖怪に興味があるな……であったり。そんな少しのきっかけから、ふらりと劇場に向かってほしい。幅広く、多くの方に観ていただきたい作品だと感じた。
文/臼田菜南 写真/堀山俊紀
【公演情報】
ザ・プレイボーイズ第11回公演「ハロー、妖怪探偵社」
日程:2023年11月22日(水)~28日(火)
会場:下北沢 小劇場B1
作・演出:善雄善雄
出演:おなか☆すいたろう、久保乃々花、鈴政ゲン、橘花梨、田中祐希、濵尾咲綺、村田和明、結城洋平
〈料金〉一般4,200円 前半割3,800円 U-25:2,500円(全席自由・整理番号付)
※前半割は11月22日・23日のみ適用 U-25は要年齢確認証提示
〈公式サイト〉https://the-playboys.com/stage/191/
《アフターイベント》
「ゲーム王は俺だ!」
11月24日(金)19時公演
登壇:善雄善雄、全キャスト
《アフタートーク》
11月26日(日)18時公演
ゲスト:こだま(エッセイスト・作家)
登壇:善雄善雄、結城洋平