“歌舞伎×インド”の熱いコラボが6年ぶりに再演!『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』菊之助・米吉・隼人・宮城聰 取材会レポート

『バーフバリ』や『RRR』などのインド映画が根強い人気を保ち続けるなか、歌舞伎ファンだけでなく、インドエンタメファンにとっても見逃せない舞台の幕が開く!

日印友好交流年、そして日印文化協定発効60周年の節目となった2017年10月、歌舞伎座で、世界三大叙事詩の1つであり、神々と人間たちが織りなす壮大な物語「マハーバーラタ」を初めて歌舞伎化した『マハーバーラタ戦記』が上演され、大反響を呼んだ。その作品が、日印国交樹立71年目という新たなスタートにあたる今年11月、6年ぶりに歌舞伎座で再び幕を開ける(11月2日~25日まで、10日・20日は休演)。

主人公の迦楼奈(かるな)を勤めるのは、初演と同じく尾上菊之助(もう1役、シヴァ神も演じる)。『NINAGAWA十二夜』『風の谷のナウシカ』『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』など、古典歌舞伎の持てるものをしっかり活かしながら、新たな作品を生み出していく手腕には定評がある。他の出演者は、迦楼奈と阿龍樹雷(あるじゅら)王子の母・汲手(くんてぃ)姫に成長著しい中村米吉、迦楼奈の兄弟でありライバルでもある阿龍樹雷王子に活躍めざましい中村隼人などをはじめ、初演からがらりと配役が変わっているところも注目だ。

隼人・米吉・菊之助・宮城聰

10月中旬、都内でこの公演の取材会が行われた。菊之助、米吉、隼人、そして菊之助が『マハーバーラタ戦記』を作るきっかけとなった舞台である、SPACの『マハーバーラタ』を手掛けた演出家の宮城聰が登壇し、それぞれから挨拶の後、質疑応答に移った。

新作歌舞伎に取り組むなら、古典となるような作品を作りたいと常に語ってきた菊之助。再演への思いを「今この作品をやる意味が、私は2つあると思います。1つは“ダルマ”です。作品にも出てきますが、ダルマは使命のようなもので、自分が人生を全うすると同時に、人をいかすために生きること。コロナなどで人と人との繋がりが難しい時代に、ダルマを持って生きることはとても大切ではないでしょうか。もう1つは“未来への希望”です。最近も戦争が起きるなど、心沈むニュースが多いご時世ですが、『マハーバーラタ戦記』では、登場人物たちが葛藤を抱えながら未来への希望を持って物語が進んでいきます。ぜひ、神様と人間の壮大な物語に身を置き、少しでも憂さを晴らして、心躍る劇場体験をしていただきたい」と力強く語った。

初演にあたり、近松門左衛門の『国姓爺合戦』のように、外国を舞台にした作品でありながら日本の古典になるような作品が作りたかったという宮城聰。「初演の時に、これがレパートリーに残っていくといいねと、(脚本の)青木豪さんとも相談して台本を作っていました。その夢がこうして少しずつ現実のものになってきて、とても嬉しい」と満面の笑みを見せた。

初演には出演していなかった米吉と隼人は、今回、物語のなかで大きな役割を担う。舞台の熱気を感じつつ、初演を観客目線で楽しんでいたという米吉。汲手姫の役について「菊之助のお兄さん(迦楼奈)の母親であり、隼人さん(阿龍樹雷)の母親でもあり、私が神様と子どもを作ってしまったばっかりに、いろいろなことが起きて、申し訳なさもあります(苦笑)。汲手姫は、神話のなかにありながら、子どもを育てる自信がなくて川に捨ててしまったり、子どもたちに対して葛藤をもっていたり、非常に人間味が溢れた1人の女性だと感じます。良い作品にできるよう、持てる力を尽くして勤めたい」とヒロインの重責に応える意欲を見せた。

初演では中村梅枝が汲手姫の若い頃(前半)、中村時蔵が壮年期(後半)を親子で分担して演じたが、今回は米吉の通し役となる。役作りを聞かれて「前半では、純粋無垢で可憐な少女の部分をしっかり出したい。後半では、身分の高い母親の役柄など、自分が経験、勉強してきたものを総動員して勤めたいと思います。時蔵のおじが勤めていたので、貫目(役の貫禄や重厚さ)ではとても太刀打ちできません。ただ、私が一貫して演じるからこそ、私自身、自分の気持ちを持っていきやすいですし、お客様に伝わりやすい部分もあるかと思います。一貫した気持ちを大事に勤めたい」と気を引き締めた。

隼人は、梵天と阿龍樹雷の2役を演じる。初演の記憶を「所作事(踊り)や歌舞伎独特の演技法が入って、見事にマッチしたスペクタクル大作だと感じました」と振り返る。阿龍樹雷役について「前回は尾上松也兄さんがなさった、迦楼奈のライバル役で、本当に恐れ多く光栄です。迦楼奈が慈愛の精神で世を治めようとするのに対して、阿龍樹雷は、天下無双の力により支配しようという考え方。物語のなかで、2人のこの食い違いも出せたら。自分もいろいろな新作歌舞伎に携わってきたので、その経験をいかしながら、先輩たちが作り上げたベースを参考に、初演から携わっていた方々にアドバイスをいただきながら勤めたい」と答えた。阿龍樹雷の性根(性格)について、「この世を力で治める使命を持って生まれた人物ですが、意外と兄弟思いの心もあり、自分のなかでも矛盾が生まれています。どうしたらより対比が出るか、宮城さんや菊之助兄さんと相談したい。頼もしさや、腕っぷしの強さなどがある人物だと思います」と分析した。

米吉と隼人との共演について、菊之助は「米吉さんは『風の谷のナウシカ』と『ファイナルファンタジーⅩ』をご一緒させていただき、発想力や役の工夫を1作品ごとに感じた。汲手姫は、今回は神々が見染めるほど、とても純真無垢な少女として演じていただきたくて、そのイメージに米吉さんはぴったり。隼人さんは、歌舞伎のみならずいろいろなところで活躍して、めきめき力をつけられていて、ご一緒したかった。今回叶ってとても嬉しい」と期待を膨らませた。

初演との違いについて、インド映画が大好きという菊之助は「2幕目の婿選びを、前回はクイズ形式でやりましたが、今回はインド映画の舞踊をまねて、“踊り合戦”で勝ち残った者が婿に選ばれるという場面に新しく作り変えようと思っています(笑)」と答え、場内を沸かせた。他にも、それぞれの役の葛藤をより鮮明に描くことや、神とその子(帝釈天と阿龍樹雷)の対話を増やすこと、そして所作事や最後の戦乱の立廻り(タテ)もよりブラッシュアップすることなど、ビジョンを語った。

初演の際、菊之助はインドの地を訪れ、母なるガンジス川の川岸で現地の人々が祈りをささげる姿を目の当たりにしている。迦楼奈が祈りをささげる場面では、インドで見た光景を思い出しながら、オマージュして演じたという。「今回は訪問できませんが、体からインドの香りが滲み出ればと思っています(笑)。前回は、銀座界隈で食べられるカレーマップを用意しましたので、今回も作っていただこうかな」とほほえんだ。

再演にあたり、演じる俳優の顔ぶれや、各場面の変化などはもちろん、オリエンタルな音楽の素晴らしさ、3Dプリンターを駆使して新調された鎧の衣裳など、見どころは盛りだくさん。神々という圧倒的な存在、いつの世も変わらない人間の愚かさや逞しさ、心の美しさなどを描き、聖書の4倍はあるという超壮大な叙事詩の面白さをぎゅっと凝縮させておくる『マハーバーラタ戦記』。その新たな1ページを、ぜひ劇場でひもといてほしい。

【公演情報】
歌舞伎座新開場十周年 吉例顔見世大歌舞伎
●2023年11月2日(木)~25日(土)◎歌舞伎座(東京都中央区銀座4-12-15)
■上演演目:『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』ほか
■チケット発売中
チケットホン松竹 0570-000-489(午前10時~午後5時)
チケットWeb松竹(24時間受付)
■『極付印度伝 マハーバーラタ戦記』出演者
迦楼奈/シヴァ神 尾上菊之助
太陽神 坂東彌十郎
仙人久理修那 中村錦之助
帝釈天 坂東彦三郎
百合守良王子 坂東亀蔵
風韋摩王子 中村萬太郎
汲手姫 中村米吉
阿龍樹雷王子/梵天 中村隼人
納倉王子 中村鷹之資
我斗風鬼写/ガネーシャ 尾上丑之助
鶴妖朶王女/ラクシュミー 中村芝のぶ
沙羽出葉王子 上村吉太朗
森鬼獏 尾上菊市郎
森鬼飛 上村吉弥
道不奢早無王子 市川猿弥
亜照楽多 河原崎権十郎
羅陀 市村萬次郎
多聞天 市川團蔵
大黒天 坂東楽善
那羅延天 尾上菊五郎
https://www.kabuki-bito.jp/theaters/kabukiza/play/843


【文/内河 文 写真/©松竹】

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