三浦宏規が情熱を滾らせる!フレンチロックミュージカル『赤と黒』公開稽古レポート

フランスの文豪スタンダールの名作「赤と黒」を原作としたフレンチロックミュージカル『赤と黒』が、12月8日~27日東京芸術劇場プレイハウスで上演される(のち、2024年1月3日~9日大阪・梅田芸術劇場シアター・ドラマシティで上演)。

厳しい階級社会のなかで、貧しい製材屋に生まれた青年が、己の美貌と才能ひとつに懸けて高みへと昇ることを目指すものの、自分自身のなかにあった思わぬ純情=恋に足元をすくわれる様を描いた原作小説は、世界十大小説のひとつとも称される一篇で、主人公ジュリアン・ソレルの名はそのまま「野心」を連想するキーワードともなっている。

そんな小説を基に、本家本元のフランスでこの作品がフレンチロックミュージカルとして生まれ出たのは2016年。日本でも人気を博したミュージカル『1789』『ロックオペラモーツァルト』などを手掛けたフランスのプロデューサー、アルベール・コーエンによるパリ初演が大好評を博した。日本では宝塚歌劇団星組公演として、今年の春『Le Rouge et le Noir~赤と黒』のタイトルで、谷貴矢演出、礼真琴主演で初演され、こちらも壮絶なチケット難となったことは記憶に新しい。

今回の梅田芸術劇場による上演は、そんな作品の男女が演じるミュージカルとしては日本での初お披露目となる公演で、主演のジュリアン・ソレルにいま最も注目を集める若手ミュージカル俳優の一人、三浦宏規を迎えたのをはじめ、ジュリアンが故郷ヴェリエールで禁断の恋に落ちるルイーズ・ド・レナールに元宝塚歌劇団トップ娘役で、ミュージカル界で広く活躍している夢咲ねね。パリに出たジュリアンと情熱的な恋をして結婚を約束するに至るマチルド・ド・ラ・モールに抜群の歌唱力を誇る田村芽実。ルイーズの夫で町長のムッシュー・ド・レナールに幅広い役柄で活躍する東山光明。マチルドの父ラ・モール侯爵に近年ますますミュージカル界での存在感を高めている川口竜也。そして、作品の狂言回しと、作中の人気歌手ジェロニモの役割を担う、ダンス力と唯一無二の個性で魅了する東山義久。さらに町長に強烈な対抗心を持つムシュー・ヴァルノに名作ミュージカルへの豊富な出演歴を誇るベテラン俳優駒田一という、強力なキャストが集結。演出には世界で話題を集めている『SIX』共同演出家のジェイミー・アーミステージが、日本での初演出を飾る、という大注目の布陣も実現。新たな作品の誕生にいま、大きな期待が集まっている。

そんな作品の公開稽古&囲み取材が11月14日都内稽古場で開かれ、梅田芸術劇場版『赤と黒』の一端を知ることができる、貴重な三場面が公開された。

駒田、川口、田村、三浦、夢咲、東山光明、東山義久、ジェイミー

まず、公開稽古を前に、三浦宏規、夢咲ねね、田村芽実、東山光明、川口竜也、東山義久、駒田一、演出のジェイミー・アーミテージが挨拶を行った。

【登壇者挨拶】

三浦宏規 本日はお集りいただきありがとうございます。ジュリアン・ソレルを演じます三浦宏規です。この早い段階でこんなこと(公開稽古)になるとは思いもせず、非常に緊張しております。初日の前よりも今日が一番緊張しているんじゃないかなという気持ちです。でも今日ここでいいものをお見せして「うわ!これは是非生で観に行きたい」と思っていただけるように頑張りたいと思いますので、どうかよろしくお願いします。

夢咲ねね ルイーズ役を演じます夢咲ねねです。私も先ほどから緊張してしまっていますが、まだ初日までには時間がありますこのタイミングで、少し場面をやらせていただきます。どうぞお手柔らかにお願いいたします。

田村芽実 マチルド役の田村芽実です。この作品は古典をもとにしたミュージカルなのですけれども、何よりも私が好きなのは、ラスボスが集まっているかのような皆さんのキャラクター、本当に全員ラスボスみたいな感じなので、今日の稽古だけでも本番のようなエネルギーがこの稽古場に充満すると思います。楽しみにしていてください。よろしくお願いします。

東山光明 レナール役の東山光明です。昨日やっと全ナンバーの振り付けなどができて、それをいま、頭から順に稽古している最中です。どんな風になるのかすごく楽しみで仕方ありません。今日は短い時間ですが、楽しんで帰っていただければと思います。

川口竜也 ラ・モール侯爵を演じます川口竜也です。僕の役は(田村)芽実ちゃんのお父さんで、芽実ちゃんが演じる娘のマチルドを溺愛している父親です。今日はその様子がわかる場面を、一場面だけですがお見せできますので楽しみにしていてください。どうぞよろしくお願いします。

東山義久 狂言回し、そしてジェロニモ役を演じます、東山義久です。僕もまだ数回しかリハーサルができていない状況なので、ようやくスタートラインに立って一生懸命やっているところです。日本版の新しい『赤と黒』を三浦くん筆頭に、そして、(演出の)ジェイミーさんのもと、新しい作品をこのカンパニーでお届けしたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

駒田一 ヴァルノ役を演じさせていただきます駒田一です。本日残念な話ですが、私のナンバーはございませんで、(一同笑)申し訳ありませんが、本番で観ていただけたら……本番もほとんど歌っておりませんが…残念なことですね(一同爆笑)。演出のジェイミーさん、そして振付のアレクザンドラ(・サルミエント)さんに来ていただいて、苦しくもあり、楽しくもある稽古場です。これからどんどん練って、いろんなアイデアを出しながらみんなでパズルを組み合わせて、皆さまのところにいいものをお届けできたらと思いますので、どうぞ今日一日楽しんでくださいませ。よろしくお願い致します。

ジェイミー ありがとうございます。日本の皆さまに歓迎していただいて、特別な経験をしていると思っています。『赤と黒』は「愛」「革命」そして「変革」を描く作品です。ジュリアン・ソレルという若い青年が、上りつめそして落ちていく。色々な人に会いながら経験を重ねていく物語です。稽古場でこれまで創ってきたものをほんの少しですけれども、本日ご披露させていただきます。素晴らしい振付家アレクザンドラ・サルミエントさんが創り上げたシーンです。また(音楽監督の)前嶋康明さんをはじめ、素晴らしい音楽班の皆様、素晴らしいプリンシパルキャストの皆様、同じく素晴らしいアンサンブルの皆様、本当にたくさんの方々が、我々と一緒にこの作品を創り上げているので、皆さまに感謝しています。そして本日お越しいただきました皆様にも本当にありがとうございます。
(日本語で)ありがとうございました。

それぞれの挨拶のあと、今日の公開稽古では自分の場面はないと説明していた駒田が、「では皆様、さようなら」とマイムで示す如く、何度も立ち止まって退場していくのに、和やかな笑いが広がるなか、出道具のベッドが設置されていき、これから演じる場面について、まず演出のジェイミーからの解説があり、各場面が披露された。 

【公開稽古】

★1幕第7場~「♪禁じられた愛の言葉」

ジェイミー 本日最初にご紹介するのは、ジュリアンがようやくルイーズの寝室に入って、彼の気持ちを告白するシーンです。二人はこの恋にすごくドキドキしているんですけれども、ジュリアンは聖職者になりたい(※この時代、貧しい平民家庭に生まれた青年が唯一立身出世を目指せるのは聖職者になることだけだった)。ルイーズは結婚しているという状況です。でも勇気を出してルイーズに自分の気持ちを言おうと、ジュリアンは彼女のもとを訪れます。でも二人とも、実は小間使いのエリザ(池尻香波)もジュリアンのことを愛している、恋に落ちているということを知らないのです。この曲の途中で彼女が登場し、二人の逢瀬を目撃してしまいます。『赤と黒』の最初のロマンチックなシーンです。どうぞお楽しみください。

ルイーズの夢咲ねねが静かに稽古場の中ほどに進み出て、物思いにふけっているところに、下手から突然入ってくるジュリアンの三浦が、既に切羽詰まった雰囲気を醸し出しているのに目を引きつけられる。子供たちの家庭教師が、突然雇われている貴族夫人の寝室を訪ねるなど当然言語道断で、「気でも狂ったの!?」とルイーズは叫ぶ。それに対して、「奥さま、あなたを愛しています!」と、なんの言い訳もないまま本心を告白してしまうジュリアンの純粋さが、ずっとこの階級社会を憎み続けている聡明さと、反面で全く世慣れていず、不器用な行動をしてしまうという、小説のなかにも度々表れていくアンビバレンツを引き起こすことを、この短いやりとりでよく伝えてくれる。

ルイーズに夫を呼ぶと宣言され、もう二度と自分と関わることはないでしょう…と背を向けるジュリアン。三浦の明らかに傷ついた表現に、必死で突っ張りながらもどこか叱られた子供のような切なさがあって、追い払おうとしたルイーズがつい呼び止めてしまうことに説得力がある。夢咲の清楚ななかに母性を感じさせる佇まいもいい。

さらに、ジュリアンをこれ以上自分に近づけてはいけない、と思いながらも彼が肌身離さずつけているペンダント(※ロケット)に誰が描かれているのかを尋ねるルイーズ。実はジュリアンが立身出世の象徴として崇拝するナポレオンの肖像なのだが、王政復古の世の中で、ナポレオン崇拝はたちまち投獄されかねない危険思想。ジュリアンは、誰かは言えないけれども、男の人で「英雄だ」と答える。「英雄」という言葉に思わず「良かった」と漏らすルイーズも、神の教えと夫に背くことを自らに戒めながら、ジュリアンに惹かれていることが伝わるシーンだ。

そのままピアノ伴奏で「♪禁じられた愛の言葉」のナンバーが、ジュリアン、ルイーズの思いのなかに、コロスも登場してのコーラスが盛り上がるが、その光景を観ている小間使いのエリザ役、池尻香波のソロから悲しみと憤りがあふれ、ジュリアンとルイーズが互いの愛を確かめ合い、距離を縮めていく様とのコントラストが強い光と影を作り出していく。衣裳やセットが加わった本番の舞台の完成形に期待が募った。

★1幕第10場「♪赤と黒」

ジェイミー 次のシーンは、ジュリアンとルイーズの仲が夫のレナールにバレてしまいます。エリザがこの情報を漏らしてしまい、それによってジュリアンはこの家から追放されてしまうのですが、孤独で打ちひしがれてどうすることもできないんだけれども、自分の運命を受け入れなければならない。それでも彼には怒りが沸いていますし、本当に混乱しています。そして、このシーンは1幕ラストのシーンになりますが、彼は愛というものを諦めて、これからは野望のために立ち上がっていこうと決意します。そのパフォーマンスをお楽しみください。

オーケストラによる録音音源が使用されたこの場では、フレンチロックらしい世界観がたちまちにして場に広がる。絶望し、更に階級社会への怒りに震えるジュリアンの三浦が歌う作品のタイトルがそのまま冠された「赤と黒」のナンバーに、昏いパワーが溢れる。ルイーズと完全に隔てられ、決して近づけない関係性を盆回しで見せる演出も印象的だ。

激情にかられる三浦の熱唱は悲痛で、さらにアンサンブルの面々とのコンテンポラリーの香り高い、激しいダンスに目を奪われる。バレエダンサーとしての経歴も持つ三浦ならではの振付がつくシーンがある、とは聞いていたが稽古場の、段差も何もない同じ立ち位置の目線の先で、三浦が踊る姿は圧巻。この場面で、舞台の幕がどんな風に切られるのだろうと、想像を膨らませるだけでドキドキするような気持ちになった。

★2幕第1場「♪誰も彼も退屈」

ジェイミー 1幕ラストの非常にエネルギーの高いシーンが終わりまして、観客の皆さまにはちょっと休憩していただいた後、パリの世界へと飛んでいただき、これが2幕の冒頭のシーンになります。ジュリアンは新たにラ・モール侯爵のもとで働くことになり、侯爵に信頼される秘書というとても重要なポジションを得ます。その侯爵の娘の名はマチルドで、侯爵家での舞踏会のシーンであるこの場面で、マチルドが紹介されるのですが、彼女は社交界に飽き飽きしています。マチルドの愛すべき父親であるラ・モール侯爵も初めてここで登場します。そんな2幕冒頭をどうぞお楽しみください。

その2幕冒頭は、狂言回しの東山義久の登場からはじまった。演出のジェイミーが説明した通り、舞台がパリ、ラ・モール侯爵邸に移ったことが語られ「ではご紹介致しましょう。マチルド・ド・ラモール」のくっきりした台詞のあと、センターからマチルドを演じる田村芽実が登場し、社交界に退屈しきっている様を歌い踊る。驕慢的だが蠱惑的でもあるマチルド像を、登場から鮮烈に印象づける田村の表現の力が稽古場を埋め尽くすようだ。

ほどなく、父親のラ・モール侯爵が登場。娘を溺愛している父親がわがまま放題の娘を、言葉を尽くしてなだめながら、そろそろ結婚を考えるようにと説く様を、川口が強面の信念の人を演じている時とは打って変わった明るくおだやかな声で表して新鮮だ。
その父親の言葉尻を捉えて叫ぶような台詞から、アンサンブルを従えてマチルドが華やかに踊る流れもこれぞミュージカルの醍醐味にあふれる。この場はピアノ伴奏による披露なのだが、力強く鍵盤を叩くことで良い意味で雑味のある和音がリズムを刻んでいて、「禁じられた愛の言葉」とは全く違う音色が奏でられていることにも感心した。

結婚を勧める父親に、「お父様だって貴族との結婚に飽き飽きしている。心から笑っているのはあのパッとしない秘書と一緒に居る時だけ」とマチルドが反論することで、パーティの群衆のなかにいたジュリアンが浮かび上がる。舞台では照明効果が加わるだろうが、それがない稽古場でも視線を集める三浦の存在感がさすがだし、この流れだけで一気にジュリアンがラ・モール侯爵の厚い信任を得ていること、そのジュリアンにマチルドが関心を示していることを伝えるドラマ運びが秀逸だ。

このパーティシーンでは、中心となるマチルドとラ・モール侯爵の周りで、パーティの客として様々な人物が語らっていて、ジュリアンがパーティにはジェロニモとして参加しているのだろう東山義久と話していたり、今日は出番がない、と言っていたはずの駒田が仮面に隠れて、しかも時折そっと片目だけを見せるなどの茶目っ気を発揮しながら紛れ込んでいるなど、目が足りない感覚と共におおいに盛り上がったところで、公開稽古は終了。趣の異なる三つの場面が、作品への興趣を一層かき立ててくれた。

最後に、今まで熱気にあふれていた稽古場での囲み取材となり、ジュリアン役の三浦と演出のジェイミーが登壇。質疑応答に応えて舞台への意気込みを語った。

【囲み取材】

──公開稽古を終えた感想を教えてください。
三浦 3曲お届けしたのですが、1公演終わったみたいな感じですね。すごい緊張感で、個人的には一瞬違う歌詞で歌ってしまいました(笑)。でもこういう緊張感のなか稽古ができて、皆さんにお見せすることができたというのは、本番に向けてのすごく良いステップだと思いますし、いい時間を過ごすことができました。ありがとうございました。
ジェイミー 本当に嬉しかったです。素晴らしいキャストの皆様が、ここまで創り上げてくださっていることに感謝しています。この作品の本当に一部のみを今日は紹介させていただきましたが、我々の作品の中でもエネルギーの高い、力強いシーンを紹介させていただいたので、それは三浦さんの疲れた感じからもお分かりいただけると思いますし、待機されている他のキャストもグッタリされています(笑)。これだけのエネルギーを持ってパフォーマンスをすることで、皆さんがどれだけ頑張ってくださっているのかを、お分かりいただけたと思います。
──公式のコメントでジェイミーさんは、三浦さんは「危険でスリリングなジュリアンになる」とおっしゃっていましたが、実際に稽古をされてみてそんな実感はありますか?三浦さんご自身からお願いします。
三浦 え?わたしから?歌詞を間違えそうな危険ということですか?(笑)ええと、自分自身ではデンジェラスさは分からないんですが、ジュリアンという人物ははすごく二面性を持っているキャラクターなんですね。自分の内に秘めている強い思いがありますが、それを外では出さないようにしています。例えば今日お届けした楽曲は、自分の中にある思いと感情を爆発させて歌っていますが、そういった部分との差、楽曲もこれだけエネルギーが強いので、自分もエネルギーを出さないとい届かないキャラクターですし、そういう音楽だと思うのでそこは意識してやっています。それがジュリアンの危険さというものに、(ジェイミーを見て)繋がっているでしょうか?
ジェイミー 僕が危険でスリリングということですか?(三浦笑)僕は安心できるとても落ち着いた男性だと思っています、冗談ですよ!(笑)。(三浦については)これだけ自信を持って、自分の能力をギリギリまで発揮してくださるというところが本当に素晴らしいと思っています。何よりも彼のことを素晴らしいと尊敬しているのは、この作品全体を通してひとつのエネルギーを描いていくことができるところだと思います。ジュリアンはお客様に愛していただかなければいけないし、応援していただかなければいけない。そして成功して欲しいと思っていただきたい。なので彼の危険でスリリングな部分が見えたとき、それをちゃんと尊重できるものにしていけたらと思っています。

──今回初めて日本で演出をされますが、手応えはいかがでしょうか?
ジェイミー 本当に楽しんでおります。エキサイティングです。今日はキャストの皆さんから新しいスニーカーをいただきました(履いているスニーカーを示す)
三浦 赤と黒!
ジェイミー (笑)いつも稽古場でスリッパのサイズが合わなくて、靴下でいたんですが……
三浦 あ、そういうことだったのか!
ジェイミー それはちょっと…ということで、皆さんが耐えかねて買ってくださったのかもしれません(笑)。それ以外でもとてもマジカルな時間を過ごさせていただいています。とにかくチームの皆さまの技術や情熱、この作品に向けて真摯に取り組んでいる姿、そして梅田芸術劇場さまから多大なるサポートをいただいております。僕も(振付の)アレックスも非常に歓迎されているんだなという風に感じております。
──ジェイミーさんはこのようにおっしゃっていますが、三浦さんはいかがですか?
三浦 ジェイミーさんと稽古場近くのスーパーでお会いしたんですよ。ちょっとお昼、何を食べるんだろう、と興味があるじゃないですか。それでパッと見たらマグロの寿司を買っていて!(笑) 日本でのお仕事は初めてだと聞いていたから、スーパーでマグロのお寿司を買うってすごいなと思いました。(ジェイミーに)Do you like Sushi?
ジェイミー I love Sushi!(一同笑)今夜もお寿司をいただくぐらい大好きです。ですからお昼にもいただいています。
三浦 それが嬉しくて、日本の料理を楽しんで、好きで食べていらっしゃる姿を見るとすごく嬉しいです。僕たちに対してリスペクトを持って接してくださるから、僕たちも何とかそれに応えようとして、一致団結してよいものを作るんだという思いになります。それはジェイミーさんの人柄、そしてリスペクトしてくださる気持ちが伝わるからなので、安心してついていけます。
──三浦さん、これから本公演までにブラッシュアップしていきたいこと、核になると考えていらっしゃるところは何でしょうか?
三浦 今回の作品は、原作がスタンダールの小説なのですが、フレンチロックミュージカルということで、楽曲が非常にたくさんあるんですよ。その分、お芝居をする部分が多くはない。ちょっと少なくなっているので、如何にひとつのシーンとひとつの歌がつながるか。言葉が少ない中でもどれだけ自分たちが理解し、読み込んで、お客さまに伝わるように表現をして、全てのシーンをつなげていくことですね。ドーンと迫力があるナンバーが多いので、ともすればショーみたいに見えてしまう瞬間もあるんです。それはそれでこの作品の魅力なのですが、それだけではなくて、物語を伝えるためには、そこに至るまでにどんなストーリーがあって、どういう気持ちでその歌を歌うのか、という作業をこれから丁寧にやっていくと思います。たくさん出ている僕が一番そのことを意識しなければいけないんですけど、全員がその気持ちを持って、今日からまた稽古をしていくのが大事なことかなと思います。それがつながってできたときに、皆さまに何が伝えられるのか、僕たちも楽しみですし、気になるところです。
──ジュリアンという役としては、何を意識したいですか?
三浦 原作で描かれているジュリアンは、本当にデンジャラスな男なんですよ。ルイーズへの行動の動機をはじめ、僕はすごく欲が強い人物だと認識してたんですね。でも稽古場でそういうお話をしたときに、ジェイミーさんは「その方向じゃない」とおっしゃって。「もっとピュアなんだ」と。ジュリアンは、これまで生きてきて女性と接したことがなかったし、ナポレオンを崇拝していてナポレオンの言葉に力をもらって「俺はできる!」と言い聞かせてルイーズの手を取ったり、キスしようとしたりするんですよ。だから先ほど公開したシーンでもわかるように、ルイーズの部屋にパーッと入ってきて、言うことがなくなって、突然「愛してます!」と言っちゃうくらいピュアなんです。そんな彼が、内に秘めた成りあがりたいという気持ちとの狭間で揺れて、揉まれて、取り返しがつかないことをしてしまい、最後は落ちていく。そこをちゃんと繋げたいんです。そこが飛び飛びになってしまうと、「歌はかっこよかったけど、何のシーンだったっけ?」になってしまうかもしれないと、今僕は一番それを危惧していて。観てくださるお客さまにちゃんとストーリーが伝わるように、ジュリアンの気持ちの変化を丁寧に丁寧に描きたいと思うし、それを伝えられるように頑張りたいと思っています。

──ジェイミーさんは『SIX』でもロックを使っておられましたが、今回もフレンチロックだから伝えられるものがあるとお考えですか?
ジェイミー 僕はもともとコンテンポラリーな音楽を使って物語を伝えるミュージカルが好きなんです。過去から学べることもあるでしょうけれども、コンテンポラリーな音楽を通してそれを伝えることによって、より現在のお客様に過去の物語を理解していただけると思うんですね。そして現代に生きる私たちのこの時代と、過去の歴史の時代というものが同じだったのか、何が違うのかということを感じることができると思います。それと、もう一つはやっぱりロックが大好きなので、その二つのバランスだと思っています。
──では最後にお客さまに向けてメッセージをお願いします。
ジェイミー 本日はお越しいただきましてありがとうございました。この作品は本当にスリリングですごく素晴らしい作品になっている、その一部を今日ご紹介しました。僕が愛しているように、日本のお客さまにも愛していただける作品になるのではと思っております。素晴らしいキャストのパフォーマンスを是非皆さまご覧になりに劇場まで足を運んでください。皆さんが忘れられないような経験を体感していただけたらと思っております。
三浦 本日はありがとうございました。この作品には色々なメッセージが込められています。フランスの古典作品で、しかもポスタービジュアルのあの写真を見て、もしかしたら皆さんは「難しいかもしれない」「怖いのかな?」「ちょっと勇気がいるかな?」と思われるかもしれないですけど、全然そんなことないです。本当に普遍的なテーマがたくさん散りばめられて、社会の格差、貧富の差への提言や、愛とは何だろうか、自分の欲に生きるとはどうなのかなど、色々なテーマが散りばめられた素敵な作品なんです。今の時代にも本当に通ずると言うか、今の人たちが観ても「あーなるほど、気持ちわかるな」と思うところがたくさんあると思います。ポスターもこういう感じなので(同じポーズをして見せて)一切笑いどころなどはないんじゃないかなと思われるかもしれませんが、想像以上に面白いシーンがあります。くすっと笑ってしまうような。それはジェイミーさんの演出の力です。音楽もすごくロックでかっこいいですし、色々なお客様に喜んでいただける作品になっていると思うので、ぜひ劇場に『赤と黒』の世界を体感しに来てください。お待ちしています!

【公演情報】
フレンチロックミュージカル『赤と黒』
演出:ジェイミー・アーミテージ
上演台本・訳詞:福田響志
出演:三浦宏規/夢咲ねね 田村芽実 東山光明 川口竜也/東山義久 駒田一
遠藤瑠美子 池尻香波/斎藤准一郎 竹内真里 増山航平 髙橋莉瑚 松平和希 加藤さや香 荒川湧太 吉井乃歌
〈料金〉【東京】S席 13,500円 A席 9,000円【大阪】13,500円(全席指定・税込)
●2023/12/8~27◎東京芸術劇場プレイハウス
●2024/1/3~19◎梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ
〈お問い合わせ〉梅田芸術劇場(10:00~18:00)<東京>0570-077-039 <大阪>06-6377-3888
〈公式サイト〉 https://www.umegei.com/rouge-noir2023/
〈公式X〉 @rougenoir2023

【取材・文・撮影/橘涼香】

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