MENU
情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
公演情報、宝塚レビュー、人気作優のコラム・エッセイ、インタビューなど、楽しくコアな情報記事が満載!
ミュージカルなどの大きな公演から小劇場の旬の公演までジャンルにとらわれない内容で、随時更新中です。

(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
広告掲載のお問い合わせ

【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第152回「二月の罠」

今年って令和6年なんですよね。なんだかまだ実感がありません。まあ令和5年の時だって実感なんてありませんでしたから問題ないんですけど。今年は令和6年。皆様もこの機会に憶えて頂ければと思います。私も憶えます。

さて、そんな令和6年一本目の舞台であるdopeⒶdope step.9「バンピーラダーズ」は新宿御苑前のサンモールスタジオにて2月28日(水)〜3月3日(日)の上演です。次の人生までの待ち時間に他人を使った人生すごろくゲームをプレイする、という作品でして、小劇場ならではの濃密な劇空間をお楽しみ頂けると思います。
ただ、公演スケジュールを見ていると何やら違和感がありましてね。どうしてだろうと思っていたのですが、よく見たら公演2日目が2月29日。そうか、今年は閏年なんだ。この2月29日という表記が見慣れないからだったんですね。
見慣れないとは言っても4年に一回あるんですからさすがに慣れていても良いはずなのに、未だになんとなく2月29日という存在には違和感が拭えないんですよね。ていうか、なんで2月に閏年の日にち調整をするんでしょうか。

4年に一度訪れる閏年。それは地球の公転周期が365日と約6時間なので、4年で約1日分ズレてしまうのを解消するために存在します。そうしないと暦と季節がどんどんズレていってしまうからですね。
うん、それは判ります。しかし、その調整がなぜ2月末に行われるのでしょうか。それは古代ローマ時代の紀元前45年、ユリウス・カエサル(ジュリアス・シーザー)がユリウス暦を制定した時に、それまで使っていた暦では2月が一年の終わりだった事に合わせて2月を調整の月にしたからなのだそうです。2月が28日しかないのも同じ理由なんですって。
今から2000年以上も昔にはすでに地球の公転周期が正確に判っていたというのは驚きですが、我々が現在も使っている暦が古代ローマ時代の名残だというのも面白い。2000年も前から決まってるんじゃしょうがないので、慣れていくしかないですね。
まあとにかく、今年は1日分の得をしている訳です。そう考えるとちょっと嬉しくなってきませんか。閏年って良いよね。

しかし待ってください。閏年には得をするという事は、そうではない年には損をしているって事になりませんか。いや、別に損をしている訳ではありませんが、なんとなく納得がいかないような気もします。しかし、平年の2月には演劇の現場ではもっと切実な問題が発生しているのです。それが「2月の罠」です。

劇団☆新感線ではだいたい春と秋に公演があります(今年は違うけど)。春公演の初日が3月半ばになることが多く、とはいえ新感線の舞台稽古は長いので稽古場での稽古は実質的には3月頭頃までしかありません。1月末頃にはまだあまり稽古が進んでいなくても「まあまだ一ヶ月あるし」とか思っているのですが、ここに「2月の罠」が潜んでいるのです。そう、平年の2月は28日しかないのです!
2月の末頃は稽古の最終盤であり追い込みの時期です。あれもこれもやらなくてはならない決めなくてはならない、そんな修羅場なのに2月は28日間しかないのですよ。他の月なら31日は、せめて30日はあるのに、2月に限っては28日しかないのです。締切間際に2〜3日も足りないってのは絶望的でしょう。
2月半ばには「まだ半月あるし」とか思っていても、気が付くと2月末が音も無く忍び寄ってきているのです。だって2月は短いから。セリフも憶えなくてはいけないし段取りも憶えなくてはなりません。作り物の多い小道具部や衣裳部なんか阿鼻叫喚です。せめてあと3日あれば、いや2日あれば。そんなやるせない気持ちにさいなまれながら大慌てで稽古を進めるのです。どうして2月は短いんだよ。

毎年繰り返しているのだからいい加減憶えろよとは思うのですが、毎年こんな感じでバタバタとしております。これが2月の罠です。一日増える閏年だってせいぜい29日までですからね。増えたとて他の月よりも少ないんですよ。
演劇の現場だけではありません。皆さんも苦労しているのではないでしょうか。経理の締切とかノルマの達成とか、2月ならではの苦労がありませんか。そうです、それが2月の罠なんですよ。仕方がありませんね。それが古代ローマ時代からの罠なのです。じゃあしょうがないか。

本文とは関係ありませんが、千歳船橋で見つけた「おしゃれ工房」さんの看板。ちゃんと「れ」と認識できるのはすごいな。素敵なレタリング。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
dopeⒶdope step.9「バンピーラダーズ」
2024年2月28(水)~3月3日(日)◎サンモールスタジオ

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!