こまつ座が井上ひさし作『夢の泪』を初上演!
井上ひさしが2003年に新国立劇場のために書き下ろした「東京裁判三部作」の第2作目『夢の泪』が、初演から20年以上を経た2024年4月、紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演される。
『夢の泪』は井上ひさしが6年近くをかけて書いたライフワーク「東京裁判三部作」の中の一作。01年に上演された『夢の裂け目』、06年の『夢の痂』とともに、東京裁判が行われた当時の庶民の生活を借りて、笑いと音楽をふんだんに盛り込みながら、日本人として避けては通れない「戦争」の真実を改めて問う作品。
1983年、井上ひさしが自ら立ち上げ、以降、井上作品を専門に作り続けてきたこまつ座での初上演となる。
演出には井上ひさし作品などで、芸術選奨文部科学大臣賞など数々の賞を受賞している栗山民也。出演者は、こまつ座では出演のみならず脚本・監修や演出もつとめたことのあるラサール石井。こまつ座『きらめく星座』で第22回読売演劇大賞最優秀女優賞を受賞した秋山菜津子。近年、映像や舞台で個性的な存在として、出演作品の幅を広げている瀬戸さおり。久保酎吉、土屋佑壱という井上作品おなじみの俳優や、粕谷吉洋、藤谷理子、板垣桃子、前田旺志郎など旬の俳優が揃った。
さらにピアノ演奏として井上作品を主に、こまつ座、新国立劇場などの演劇作品で演奏歴の豊富な朴勝哲を起用。
絶妙なキャスティングで上演される、井上ひさし生誕90年第一弾公演!
【コメント】
栗山民也
79年前、戦争が終わって夢のような時間がまた戻りましたが、その5年後再び朝鮮で戦いが始まり、取り戻した夢に裂け目が入り、また人びとは泪を流しました。そしてその傷口は黒い痂になって今に残っています。
この東京裁判三部作は、井上ひさしさんとの間に生まれた記憶と現在の劇です。人間である以上なん度も躓き後悔を繰り返しますが、それでもこの正体のわからぬ世界や人間の在り方について、いつも考えなくてはなりません。どこで間違えてしまったのか、そのいたましい歴史の点と線を私たちは見つめ続けなくてはなりません。そして今のこの地球に起こるさまざまな不条理に対し、確かなまなざしを持つことが必要なのです。この劇は、そんな現在を映します。
ラサール石井
『円生と志ん生』以来、再びこまつ座井上作品へ参加できることは望外の喜びです。念願だった栗山演出初参加にも身の引き締まる思いです。
『初日への手紙~東京裁判三部作のできるまで』(最初の打合せから3本の戯曲が書き上がるまでの克明な記録)を読めば、いかに作者が命を削っての執筆だったかが分かります。膨大な資料(読むだけでなくそれらを全て書き写している!)、履歴書のような人物設定、細部に渡るプロット。
素晴らしい共演者の皆様と、井上先生のメッセージを笑いと唄にのせてお送りします。
秋山菜津子
『キネマの天地』『きらめく星座』に続いて、今回の『夢の泪』で井上先生の作品には3度目の出演となります。楽しみでもあり、身の引き締まる思いでもあります。この作品を観客の皆さまに深くしっかりとお届けできるよう懸命に取り組んでいきたいと思います。是非、劇場でお会いしましょう! お待ちしております。
【あらすじ】
昭和21年、新橋駅近く。
弁護士・伊藤菊治は、継父を慕う秋子の娘・永子、事務所に住み込みで働く田中正と暮らしている。
亡父の残した法律事務所で働く菊治のもとへは、永子の幼なじみ・片岡健やクラブ歌手のナンシー岡本とチェリー富士山から数々の騒動が持ち込まれる。
そんな折、妻・秋子が東京裁判においてA級戦犯・松岡洋右の補佐弁護人になるよう依頼される。事務所の宣伝のため、とりわけ秋子との関係修復のため、菊治も勇んで松岡の補佐弁護人になるが、難問が山積み。
ついにはGHQの米陸軍法務大尉で日系二世のビル小笠原から呼び出しが菊治にかかる・・・(公演チラシより)
【公演情報】
こまつ座 第149回公演
『夢の泪』
作◇井上ひさし
演出◇栗山民也
音楽◇クルト・ヴァイル 宇野誠一郎
出演◇ラサール石井 秋山菜津子 瀬戸さおり 久保酎吉 粕谷吉洋
藤谷理子 板垣桃子 前田旺志郎 土屋佑壱 朴 勝哲
《東京公演》
4/6~29◎紀伊國屋サザンシアターTAKASHIMAYA
《所沢公演》
5/8◎所沢市民文化センターミューズ マーキーホール
《山形公演》
5/11◎川西町フレンドリープラザ
〈公式サイト〉
こまつ座 http://www.komatsuza.co.jp