『Change the World』まもなく開幕! 辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)インタビュー  

舞台『Change the World』が、6月8日から東京・サンシャイン劇場で上演される。

本作は、『HERO』や『アンフェア』など幅広いフィールドと絶大な支持率を持つ作家・秦建日子が脚本を担当し、『サイレント・トーキョー』というタイトルで映画化され話題になった長編小説『And so this is Xmas』の続編だ。 

主人公のベテラン刑事を演じるのは、秦作品に共鳴し出演を決めた松岡充。さらに、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)、剛力彩芽、日向野祥、福圓美里、田中尚輝、塚本凌生、渡辺みり愛、槙尾ユウスケ(かもめんたる)、大林素子、金子昇ら豪華キャストが集結。総勢27名で創り上げる誰にでも起こりうる社会派ミステリ作品となっている。

この作品で刑事の泉大輝役を演じる、辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)に作品に懸ける思いを聞いた。

秦さんの作品は、みんながそれぞれの人生を背負っている 

──まずは意気込みからお聞かせください。

辰巳 僕自身、演劇というものが大好きで、 これまでたくさんの役柄を演じてきたんですけども。今回僕が演じる泉という刑事は映画の『サイレント・トーキョー』や小説の『And so this is Xmas』にも出てくる役柄で、今回舞台『Change the World』において泉役を演じられることを誇りに思います。個人的な話ですが、映画の『サイレント・トーキョー』では、仲良しの役者である勝地涼くんが泉役を演じているので、勝手にライバル心を燃やしています(笑)。今、すごいキャストさんの中で稽古をやっている最中ですが、すでにたくさんの刺激をもらっています。橋本(昭博)さんの演出、そして秦(建日子)さんの本を大切にしながら、泉大輝を演じるのではなく、泉大輝として生きる時間を精一杯楽しみたいと思います。

──出演が決まったときはどんなお気持ちでしたか?

辰巳 僕自身、小学生からこの世界にいるんですけども、中学生ぐらいで初めてお芝居の仕事をやって、もっともっとお芝居をやりたいという気持ちが強くなっていったんですね。でも当時はなかなかお芝居の仕事にチャレンジする機会が少なかった。そんなときに、勉強として、たくさん舞台を観劇していたんです。それで、たまたま秦さんの『Pain』という作品を下北沢で観まして。その日はゲリラ豪雨のように激しい雨が降っている日だったんですが、その『Pain』の終盤、衝撃的なセリフをいう場面で、信じられないぐらい大きな雷が鳴って!僕はそれは演出の音響だと思っていたんですが、後々聞いたらそれは演出ではなく、外でたまたま鳴った雷だったんですよ。『Pain』という作品ももちろん心に残っているのですが、あのとき、ドラマや映画では決して感じられない、演劇は生ものであるということを肌身で感じて衝撃を受けたんです。以来、秦さんのお名前を見る度に「いつか絶対、秦さんの作品に出る!」と思っていたので、今回、作品に参加できることが決まったときは本当に嬉しくて。自分が長年目標としていたことを達成できたという達成感もあったし、「僕もちゃんと芝居で呼ばれるようになったぞ」という自覚も芽生えて、一層気合が入りました。僕がお芝居の中ですごく大切にしているのは「演じる」とか「役になる」とかではなくて、「役として生きる」ということ。 それは舞台、ドラマ、映画、すべてで大切にしていることなんです。そんな中で秦さんの作品はすべての登場人物に思いがあるし、特に今作は『And so this is Xmas』などで繋がっているので、自分の中で資料になる部分も多い。出てきたときにお客さんに「28歳の泉大輝が何を感じて生きてきて、今ここに立っているのか」を感じてもらえるような役者でいたいと思っている僕にとって、今作を通じて確実にまた一つ役者としての階段を昇れる気がする。自分でもハードルを上げて稽古や本番に臨もうと思います!

──当時なぜ秦さんの作品をご覧になろうと思ったのですか?

辰巳 当時の僕は演劇初心者だったので、それこそ下北沢で芝居をたくさんやっているということもよく分かっていないぐらいだったんですね。だから生田斗真くんなど、知り合いの役者にどんな演劇がおすすめか、どこで観たらいいかといったことを聞いていたんですよ。その中で秦さんのお名前が挙がってきたので、観劇をしました。

──逆にいうとそれ以前は秦さんの作品には触れていなかった。

辰巳 はい。『Pain』が初めてでした。自分が今でも好きな演劇だったり、演じる上でも大切にしていることだったりするのは、一人一人の役の人生を一人一人の俳優が背負っているかということなんですね。そういう意味で、秦さんの作品は、みんながそれぞれの人生を背負っている。「みんなにちゃんと人生があるんだよ」というメッセージを感じるので、すごく刺激を受けたんです。

──秦さんの作品に出ることが憧れでもあり、目標でもあったわけですか。

辰巳 そうですね。憧れもあるんですけど、もがいていた時期に秦さんの作品を観たこともあって、僕の中では決意に近いものがあったんですよね。いつかは秦さんの作品に出るんだという。だから、今回出演が決まって、めちゃくちゃ嬉しかったですね。あまり自分で自分を褒められないタイプなんですけど、今回ばかりは「よく演劇を続けてきたな」と褒めてあげたくなります。

めんどくさいことに向き合ってくれる匂いが

──今回の脚本を読んだ感想を教えてください。

辰巳 小説のように一気に読み終えて、うわ~面白かった!すごいな!ドキドキしたな!……でも、これ舞台でどうやるの?と思いました(笑)。映画のような壮大さ、展開のスピード、役柄の多さ……舞台で どのように表現するのかなぁと最初に思いましたね。だからこそ今、稽古をする中で、一つ一つのシーンが舞台に立ち上がっていく様子はとてもワクワクしますよ。それから、人間の想像力についても考えました。秦さんがこの作品を書いたのは、今よりもっと前のことなのに、今この脚本を読んだときの説得力が半端じゃない。さまざまな世界情勢や、自分が日常で感じていることが詰まっているんです。加えて、テーマソングであるSOPHIAさんの『あなたが毎日直面している 世界の憂鬱』が、僕はこの舞台のための書き下ろしだと思っていたんです。歌詞も音楽も。でもそうではないと聞いて、その点でも想像力が爆発している作品だなと思いました。

──演じる泉大輝という役についてはどんなことを思っていますか?

辰巳 (松岡充さんが演じる)世田の元相棒という役なんですが、直接的に描かれていない部分もいろい/ろと共有できたらいいなと思っています。つまり、世田と長い時間を一緒に過ごしたという関係性が感じられるようなお芝居ができたらいいなと思って。みなさん、ご家族といるときの自分と、友達といるときの自分は違うじゃないですか。それと同じように、世田と泉の関係性が自然と見えたらいいなと思っていて、例えばですけど、世田が水を欲しているサインを出したら、泉が水を渡す。それが当たり前に染み込んでいるバディだったら、何も言わずに水を受け取ると思うんです。でもそれが共有されていなかったら、世田は「おっ、ありがとう」と反応すると思うんですね。その共有をきちんとしたい。正直、自分がモチベーション低かったら、面倒臭い作業だろうなと思うんです。「俺らは昔どんな感じだったんですかね?」と聞いても「そこまで考える?もういいじゃん」と言われたらそれまでですしね。でも松岡さんは、僕と同じようにめんどくさいことに向き合ってくれる匂いがするので(笑)、そこは丁寧に作っていきたいです。泉は、2年前に起こった渋谷のテロ事件で何を思い、何を考え、今ここにいるのか。そして刑事としてどう生きていきたいのか─。そういう点もしっかりお芝居に反映させていきたいですね。

観終わったときにタイトルの意味がのしかかってくる

──稽古場の雰囲気はどうですか?

辰巳 僕、稽古場に駄菓子屋を作るのが好きなんですね。で、今回、駄菓子を1万3000円分ぐらい買ったんですけど、3日でほぼなくなりました。稽古が大変だからでしょうか、みなさん甘味を欲している(笑)。今までのカンパニーで断トツに減るのが早いですね。剛力(彩芽)さんが脚本を片手に持ちながら、もう片方の手でうまい棒をとって食べていたのがすごく嬉しかったです。差し入れてよかったぁ~と思いました(笑)。

──最後に、観客の皆さんへメッセージをお願いします。

辰巳 演劇って1回として同じことはできないものだと思います。誰かが変われば、必ず周りもどんどん変わっていく。それが演劇だと思います。劇場で感じてもらえることがたくさんある作品だと思いますし、作品の中で起きる事件のことについて考えたときに「あれ、果たして自分は被害者なのか?もしかしたら自分が加害者なのか?」なんて考える時間もあるかもしれません。そして、観終わったときに『Change the World』という作品のタイトルの意味がのしかかってくるはずです。僕ら刑事はとにかくこの事件に真剣に立ち向かいますし、中にいる登場人物みんなが熱い思いを持ってステージに立ちます。ぜひ劇場で一緒に事件を解決していただきたい。よろしくお願いします!

【公演情報】

『Change the World』

原作・脚本:秦 建日子「Change the World」(河出書房新社刊)

演出:橋本昭博

テーマソング:SOPHIA「あなたが毎日直面している 世界の憂鬱」(TOY’S FACTORY)

出演:松岡 充/辰巳雄大(ふぉ~ゆ~)/剛力彩芽/

日向野 祥 福圓美里 田中尚輝 塚本凌生 平山佳延 杉江優篤 渡辺みり愛 長谷川里桃 高橋明日香 岩崎楓士 宮岡大愛 林 千浪 甲斐千尋 塩出純子  石井真司 塩見奈映

槙尾ユウスケ(かもめんたる) 亀岡孝洋 ぎたろー 吉田晃太郎/

藤原習作 築山万有美/大林素子/金子 昇

●6/8~16◎東京公演 サンシャイン劇場

〈公式サイト〉http://askcoltd.com/ctw-stage/

〈公式X〉@CtwStage

 

【取材・文・撮影:五月女菜穂 ヘアメイク:柴田桃子 早川葵】

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