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詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』尾上菊之丞・北翔海莉・天華えま インタビュー

 
日本文化の魅力を発信する公演として2017年から開催されている「J-CULTURE FEST」の公演として、2025年2月に東京国際フォーラムホールD7にて、詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』が上演される。

今回は、源氏物語のうち「宇治十帖」と呼ばれる部分を描いた作品で、光源氏の息子である薫と源氏の孫にあたる匂宮を中心に、大君や中の君、浮舟などの女君たちとの恋物語を、装束と歌、舞踊、音楽で多重的に表現するエンターテインメント作品となっている。

本作の演出・振付および喜撰法師役で出演する尾上流四代家元・尾上菊之丞と、大君役と浮舟を演じる元宝塚歌劇団星組トップスターの北翔海莉、中の君役を演じる元宝塚歌劇団星組男役スターの天華えまの3人に、公演への思いを聞いた。

天華えま 尾上菊之丞 北翔海莉 

「詩楽劇」という新たなジャンル

──本作は日本文化の魅力を発信する「J-CULTURE FEST」の公演ですが、どのような企画なのか菊之丞さんからお話しいただけますか。

菊之丞 これまでもシリーズとしては、必ずしも日本の伝統的なものに限らずに様々なジャンルの方にご出演いただいてきた公演で、例えば宝塚だったら男役が演じることで男らしさが強調されたり、逆に歌舞伎では女形が演じることで女らしさが強調されたり、というようなそれぞれ独特の様式の美しさがありますよね。でも普段は宝塚の俳優さんと歌舞伎役者がご一緒するということはなかなかなくて、このシリーズではそうした垣根を飛び越えて、ほかにもミュージカル俳優や舞踊家の方などもご参加いただいたりして、それぞれの経験で積み上げてきたものを出し合うことで新しいものが生まれたらいいな、ということをコンセプトにしています。「詩楽劇」という新たなジャンルとして、歌に踊りにお芝居、そして和楽器を大切にしながら、何か新たなことにチャレンジしてみよう、という感覚でやってきました。

──チャレンジということでいえば、今回北翔さんと天華さんは琴の演奏に初挑戦されるそうですね。

北翔 11月からお稽古をして、何とか弾けるようにはなってきたんですけど、勝負はここからですね。「できる」というところから、「聞かせる」というところまで持っていかなければいけないので、残りの練習期間でどこまで深められるかが課題になってくると思います。でも、一流の先生に教えていただいて、一流の楽器を使わせていただけるという、こんな機会は本当に貴重だと思うので、ありがたいなと思いますし、絶対自分のものにしたいなと思っています。

天華 私はお琴はもちろん、和楽器に触れること自体が今回初めてなので、とても緊張しています。

北翔 中井智弥先生に教えていただいているのですが、導き方がお上手なんですよ。いわゆる褒めて持ち上げる、というやり方ではなくて、1人ずつの稽古のときに、「天華さんはもうここまでできましたよ」とか、プレッシャーをかけられるんです。そう言われて焦って、家に帰って自主練をするという。(天華に)逆もあるんだよね?

天華 そうなんです。仕事の都合などでお稽古に遅れて参加すると、先にお稽古を始めているみちこさん(北翔)の音色が聞こえてきて、みちこさんはもうここまで弾けてるんだ!ってなります(笑)。

北翔 そうやっていい感じにプレッシャーをかけるのが、中井先生はお上手なんですよね。

菊之丞 中井さんにうかがったら、おふたりのことをすごく褒めていましたよ。もちろんプロの演奏家みたいに弾きこなすようなことまでは求めていませんが、その音色に薫が引き寄せられるわけですからね。

天華 そうですよね……大丈夫かな(笑)。

菊之丞 「うーん……もうちょっと聞いてみよう」って、薫がしばらく入って来なかったりして(笑)。

北翔 すんなり来ていただけるように頑張ります(笑)。

背中を追いかけていた先輩と姉妹役

──本作への出演オファーが来たときの率直なお気持ちをお聞かせください。

北翔 私は「源氏物語」もそうですが、平安時代の作品自体が今回初めてなんです。それに、宝塚卒業後に女性の役を演じるとき、サバサバしている自立した女性を演じることが多かったので、こうした色恋が絡む物語で「お美しい」とか言われる側になったことがないものですから、こういうのもたまにはいいなぁ、なんて思いながら(笑)、楽しんでやりたいと思います。性格的にも自分にはない部分を持っている女性だと思いますし、所作の美しさが重要な役だと思うので、しっかり勉強させていただきつつ、役者として新しい引き出しができたら嬉しいなと思っています。

天華 私は女性の役を演じるのが今回初めてで、しかも現代の女性ではなく平安時代の女性ということで、頭を抱えています(笑)。私自身はアクティブでサバサバしてるタイプの人間なので、本作の素敵な女性像を自分が演じるということがまだあまり想像つかないです。でも初めての女性の役ということで一歩踏み出すためにも、こういう場をいただけて本当に光栄だなと思っています。

北翔 髪の毛がここまで長い役をやったことがないんですよね。だからビジュアル撮影のときに「おお!」と思いました。

菊之丞 後ろに引っ張られるでしょう?

天華 そうなんです! 髪の毛が重たくて(笑)。

北翔 後ろ髪引かれるってこういうことなのか! みたいな(笑)。

天華 頭の上が重たいのはよくありましたけど、下に重いのはなかなかなかったですよね。

北翔 今回は私たちにとって、初めての体験がいろいろあるよね。

──北翔さんは大君、天華さんはその妹で中の君ということで姉妹役を演じることになります。

北翔 私たちは同じ星組だったのですが、私の卒業公演のときに新人公演で同じ役を演じてくれていたというご縁があったので、今回のお話を聞いたときに、ぴーちゃん(天華)だったら安心して身を委ねられるな、という思いはありました。

天華 まさかあんなに背中を追いかけ続けていたみちこさんと姉妹役をやらせてもらえるなんて! と嬉しい気持ちでいっぱいです。全然みちこさんみたいにできなくてビービー泣いてた当時の私に教えてあげたいです。

──菊之丞さんは喜撰法師役ということで、語り部的な役割も担われています。

菊之丞 「宇治十帖」は最終的に救いがない物語なので、あまり暗い感じで終わりたくないというのがあって、救いが少し感じられるようにしたい、ということで脚本の戸部和久さんと相談をしたところ、宇治の和歌を詠んでいて、いろいろな意味で時代を超越している喜撰法師を登場させましょうか、ということになりました。

救いが感じられるような物語に

──台本を拝見すると、かなりセリフの量も多そうです。

菊之丞 セリフも多いし、歌も多いですね。僕自身が、あまりまったりした時間が好きじゃなくて、もちろん「源氏物語」の少しゆったりとした雰囲気を感じられるような時間も必要ですが、テンポ感を大切に作りたいな、と思っています。

北翔 本当にたくさん歌がありますよね。心がドキドキ不安になったり、ワクワクしたりするような、いろいろなリズムの素敵な曲を中井先生が作ってくださっています。

天華 和楽器でしか出せない音色にプラスして現代的なところもありつつ、聞いていて独特で不思議な雰囲気を感じる楽曲です。

菊之丞 「詩楽劇」ですから音楽が重要ですし、琴という楽器は古くからありますが、現代の曲も演奏できるように25弦のものが作られるなど、進化し続けている楽器でもあるんですよ。洋楽との親和性も高くて、厳かさや雅さに加えてモダンな雰囲気も出せて、かっこよくもなれる楽器なんです。

──楽しみな要素がたくさん詰まった作品ですが、井筒さんによる装束・衣裳も大きな見どころです。

菊之丞 舞台の衣裳というものは、舞台に沿うようにいい意味での嘘がたくさんあります。井筒さんはそうした嘘がない、いわゆる本物の装束を元々手掛けていらっしゃって、この「詩楽劇」においては、うまく本物の良さを残しながら舞台に乗るように、例えば着るための手数を減らすような仕掛けを入れてくださったりしています。毎回ではないですが、劇中で装束を徐々にまとっていくシーンを織り込むことがこれまで多くて、そこには当時の人たちの心を映し出しながら、装束の色合いや材質も含めて本物を身近に感じていただきたいという思いがあります。

日本のさまざまな美しさを届ける

──公演を楽しみにされている方へのメッセージをお願いします。

北翔 昨年は真田広之さんが『SHOGUN 将軍』で日本の伝統文化を世界にもう一度アピールするきっかけを作ってくださったので、文化はもちろん、日本人が持つ精神的な心の部分も、こういう舞台を通して私達がメッセンジャーとして伝えることができれば嬉しいなと思いますし、日本には言霊の美しさや所作の美しさなど、美しいものがいろいろあるんだということを、もう一度自分自身も勉強し直して自分の引き出しにして、新しい北翔海莉を皆さんにお届けできたらと思っています。

天華 女性の役への初めてのチャレンジが、こうした日本の文化に深く関わりのある作品であることを心から幸せだなと思っています。様々なジャンルの第一線で活躍していらっしゃる方々とご一緒させていただく貴重な機会を経ることで、自分自身しっかり成長できるように頑張っていきたいなと思いますし、この作品を観た皆様が「源氏物語」や歌舞伎の世界や和楽器の世界など、いろいろな興味を持ってくださるような、楽しんでいただける作品にできるように頑張ります。

菊之丞 「源氏物語」という作品は、日本の伝統芸能だったり、装束だったり、音楽だったり、様々なものを抱え込んでしまうぐらい懐が深いので、今回無理に日本らしさを出すというつもりはなくて、それぞれの要素と作品をしっかり見せていけたらそれでいいと思っています。あまり難しく考えずに、昔の人も今の人も考えていることや、やっていることはそんなに変わるものでもないですし、そういう意味では共感できるといいますか、それぞれの人物の視点で見ていただける作品になると思うので、それぞれの俳優さんの今まで見たことのない魅力をお見せできたらいいなと強く思います。

天華えま 尾上菊之丞 北翔海莉 

■PROFILE■
おのえきくのじょう○東京都出身。日本舞踊尾上流三代家元・二代尾上菊之丞(現墨雪)の長男として生まれる。2歳から父に師事し、1981年(5歳)国立劇場にて「松の緑」で初舞台。90年に尾上青楓の名を許される。 11年8月に尾上流四代家元を継承すると同時に三代目尾上菊之丞を襲名。振付・演出家としての最近の作品は、『赤銅鈴之助』、『風の谷のナウシカ』、歌舞伎NEXT『阿弖流為』、スーパー歌舞伎Ⅱ『ワンピース』『オグリ』。またフィギュアスケートとのコラボレーションや宝塚歌劇団、OSK、花街舞踊の振付も手掛け、京都芸術大学では非常勤講師を勤めている。 

ほくしょうかいり○千葉県出身。1998年宝塚歌劇団に入団。月組、宙組、専科を経て15年に星組トップに就任。16年11月『桜華に舞え』『ロマンス!!(Romance)』で退団。宝塚卒業後は、ミュージカル『パジャマゲーム』、『ふたり阿国』、『海の上のピアニスト』、『うたかたのオペラ』などにて主演。主な出演作品は、『RANWAY』、『CLUB SEVEN 』、『アルジャーノンに花束を』、音楽劇『星の王子さま』、『銀河鉄道999―THE MUSICAL-』、『夜想曲~ノクターン~』、藤間勘十郎文芸シリーズなど。その他現代能『マリー・アントワネット』に出演する他、数々のコンサートやディナーショーにて活躍中。

あまはなえま○滋賀県出身。2012年宝塚歌劇団に入団、『華やかなりし日々/クライマックス』で初舞台。2013年組回りを経て星組に配属。16年『桜華に舞え』で、新人公演初主演。その後『THE SCARLET PIMPERNEL』『ANOTHER WORLD』で新人公演主演、男役スターとして活躍。24年『RRR×TAKA”R”AZUKA〜√Bheem』/『VIOLETOPIA』 で惜しまれつつ退団。同年5月の舞台『サイボーグ009』にて声の出演で活動を開始。8月『Adding My Colorフェス』、8月・9月天華えまディナーショー『華』、12月七海ひろきクリスマスディナーショー『Dearest』。

【公演情報】
東京国際フォーラム × J-CULTURE FEST presents 井筒装束シリーズ 
詩楽劇『めいぼくげんじ物語 夢浮橋』
構成・演出:尾上菊之丞
脚本:戸部和久
出演:北翔海莉 中村莟玉 和田琢磨 天華えま/尾上菊之丞
演奏:中井智弥 長須与佳 吉井盛悟
●2/8~12◎東京国際フォーラムホールD7
〈料金〉詩楽劇9,900円 詩楽劇+講演会チケットセット11,000円(全席自由・税込)
〈講演会情報〉https://www.ujijujo.com/lecture/
〈チケットに関するお問い合わせ〉stage.contact55@gmail.com
〈公式サイト〉https://www.ujijujo.com/

【取材・文/久田絢子 撮影/中田智章】

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