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おぶちゃpresents『Bittersweet Flowers』間もなく開幕!稲村梓・野元空・大部恭平 座談会

大部恭平の個人企画「おぶちゃ」が『Bittersweet Flowers』を、4月2日~6日にシアター風姿花伝にて上演する。本作は2021年に上演して好評を博した⼥性キャストメインの作品で、今回は再演となる。

【あらすじ】
披露宴の余興の練習。新婦のお祝いのため、数年ぶりに集う⼥たち。
今はそれぞれの道に進み、懐かしさで思い出話に花が咲く。
と、1⼈の⼥が⼝を開く。「ごめん。私、本当はここにいちゃいけない⼥なの」
垣間⾒える、新婦と⼥たちの⼼の溝。
かつて⼀花咲かせるため切磋琢磨した⼥たちの、⽢くほろ苦い物語。

演劇をともに学んだ仲間たちの10数年後を通して、理想と現実の中で、取り繕いほころびる⼈⽣のほろ苦い瞬間や、葛藤する姿を映し出し、人間の本質的な幸福や悲哀を問いかける作品となっている。

その中で主人公となる舞台女優の秋原亜珠沙を演じる稲村梓、新婦の水瀬ひまりとひまりの教え子である羽那生凛という2役を演じる野元空、そして脚本・演出を手掛ける大部恭平が、この作品について語り合う。

野元空 大部恭平 稲村梓 

脚本の書き方が変わるきっかけとなった作品  

──この作品はおぶちゃでは初めてのほぼ女性だけという作品で、2021年に初演されました。今回再演するまでの経緯は?

大部 初演の少し前になりますが、あるコンクールに応募した僕の脚本について、女性の描き方がうまくないという評があったんです。それで悔しいけれど図星だなと。そこから知り合いの女性や友人に頼んで雑談をしてもらって、それを録音させてもらって、それをもとに書いたのがこの作品なんです。セリフの選び方とか脚本の書き方もかなり変わるきっかけになった作品なので、いつかまた上演したいと思っていて、去年は何本か過去の自作を再演して自分の中で実りがあったので、次はこれだなと思いました。

──実際の会話を研究したことで女性たちの言葉がとてもリアルで、女性が聞いても違和感のないところが素晴らしいですね。そして今回ほぼキャスト一新だそうですが、それも脚本に影響を与えていますか?

大部 かなりあります。言っている内容は同じでも言い方を変えたりしています。それに、例えばひまり役の野元さんが兼役で演じる羽那生凛という役については、セリフの量を増やさずに目立たせたいと思ったので、そのためにラストに向けての展開をちょっとだけ変えました。そういうことも稽古しながら考えています。

──この作品の舞台となるのは演劇の学校で、物語はそこの同級生の亜珠沙とひまりという二人の関係を軸に描かれます。その亜珠沙役とひまり役を稲村さんと野元さんが演じますが、このお二人に決めた理由は?

大部 稲村さんは舞台を拝見したとき、すごく人としてのパワーのある方だなと思ったんです。その覇気みたいなものが亜珠沙役と重なって、絶対にいいだろうなと。それで午前中にメールで台本を送ったら、数時間後に電話がかかってきて、「読みました。面白かったです!出たいです!」と熱烈な返事をいただいたんです。そのリアクションに感動しました。

稲村 それぐらい本から伝わる熱量がすごかったし、絶対に出演したかったんです。

大部 そして野元さんは、以前、僕の作品に出てくれた共通の知り合いが推薦してくれたんです。ひまりは亜珠沙と対抗する役なので、それに耐えうるぐらいの強さがある人が欲しかったのですが、お会いしたらぴったりだなと。

野元 私は『ポエム同好会』で初めておぶちゃさんを知ったのですが、「なんだこれ?めちゃ面白い!」と、私が今まで観たお芝居の中でも上位に食い込んでくる面白さでした。登場人物たちがバカバカしいことを本気でやっていて、それが刺さりすぎて、こういう作品に出たいなと思ったので、ご連絡があったときは嬉しくて、即答でした!

稲村 私も『ポエム同好会』は動画ですが拝見して、本当に面白くてびっくりしました。

改めてこれは亜珠沙とひまりの物語だと

──お二人は自分の役についてはどんなふうに感じていますか?

稲村 亜珠沙という役は、直感的に自分に似ているなと思いました。今、稽古で実際に演じてみると違うなと思う部分もあるのですが、感覚的に亜珠沙という人物像が好きになれるし、魅力的に感じています。たぶんそれは自分がこうなりたいという願望も含めて、カッコいいと思う生き方をしているからで、不器用なところも含めていい女だし、自分の今の理想でもあるような女性なので、演じられて幸せです。

──今、不器用とおっしゃったように、亜珠沙はいろいろ挫折もしますね。

稲村 一途なんです。正直で自分の好きなものに100%で向き合う。その極端さがいろいろ摩擦も生んでしまうのですが、そう生きられたらいいなと思います。亜珠沙の発言1つ1つにはすごく共感しています。 

──稲村さんに限らず、演劇を志した人なら共感するところがある役ですね。

稲村 そう思います。私にとっても等身大でできる部分が多い役です。

──野元さんは自分の役について、いかがですか?

野元 ひまりと凜の2役なのですが、凜はひまりの12年後輩で19歳なんです。でもひまりの登場するシーンも19歳のひまりなので、そこはあまり考えずにやれるかなと。性格的には私はどちらも理解できるところがあるし、どちらも理解できないところがあります。凜は亜珠沙に似ているかなと。ひまりはみんなと仲良くしつつも自分の時間を作る人なんですが、そこは私もみんなと輪を作るけれど、人は人、自分は自分と考えるタイプなのでわかります。

──ひまりは卒業公演で主役を演じてスカウトされる人で、仲間たちの中で一番の成功者とも言える役です。

野元 そういう本人の意志とか関係なく恵まれた星の下に生まれた人っていますよね。私はひまりのようにどんな状況においても、絶対にすくい上げられて真ん中に置かれる人間を、じとっと見てしまう側なのですが(笑)、ひまりのそういうところは憧れでもあるし、自分の近くにいるそういう人を思い浮かべてやってみようと思っています。凜はわりと等身大でできると思います。

大部 ひまり役を地に足を着けた存在にするのはけっこう難しいですよね。でも少ない登場シーンの中で印象が残るように心がけて書きました。そして凜の役については、年齢などはそんなに気にしないでやって欲しいと野元さんにも伝えて、再演でよりフォーカスしたセリフ選びが出来た自信があります。そういう意味では、凜という人間を一歩掘り下げられたのは再演のおかげですし、改めてこれは亜珠沙とひまりの物語だという発見もありました。

動物のような人とワイルドな子

──そんな役柄を演じる稲村さんと野元さんに、お互いの印象を聞きたいのですが。

稲村 空ちゃんとは、何も気にならないというか自然な関係でいられるのがいいなと。

野元 私は実は梓さんと共通の知り合いの女優さんがいて、前情報でその人にどんな人か聞いたら、「動物のような人」と言われて。

稲村 よく言われる!(笑)

野元 それに大部さんから、オファーしたらすぐ熱い電話がきたことも聞いていたので、すごい強い人で「女優!」みたいな人かと、ちょっと脅えていたんです(笑)。

大部・稲村 (爆笑)。

野元 それで迎えた稽古初日だったんですが、本読みがスタートして、最初のセリフを聞いて「私、この人のこと大好きだ!と思ったんです。

稲村 え、なにそれ?(笑)

野元 女優さんとして人間としてめちゃ好きだと本能的に思ったので。でも同時に最悪!と思ったんです。大好きなんですけど隣に並ぶのが最悪だと。

大部 それはわかる。その人の魅力に気づいてしまうと、自分がその魅力を上回れるかみたいなことも出て来るよね。それは俳優としての命題だと思う。

野元 作品としては亜珠沙が中心となるので、稲村さんが亜珠沙として作品の中心に立ってくれているということは、私としては最高なんですけど、ひまりを演じるプレッシャー的なものはどうしてもあって。でもそれはマイナスの感情ではなくて、役者をやっていたらみんな感じるような感情だと思います。

大部 俺も良い作品を観るとマジで気分悪くなるから(笑)。なんでこの作家、俺じゃないんだろうみたいな。去年、稲村さんが出ていた4人芝居も超楽しかったから、なんでこれ書いたの俺じゃないんだ!と(笑)。表現者としてそういう葛藤を受け入れるのは残酷な話だし、遮断してしまったほうがラクなんですが、亜珠沙とひまりのように仲間だといわば運命共同体みたいなもので、その人への賞賛も非難も受け入れなきゃいけない。そこでまた自分の嫌なところにも気づくという。

稲村 それめちゃ嫌ですよね。

大部 褒めて高め合いたいのに、そうじゃない自分を知ってしまう。これはもう人間であることの難しさを突きつけられますからね、僕らの仕事は。

──そういう意味では、亜珠沙とひまりの関係の着地がどうなるか楽しみです。

大部 ネタバレになるのであまり具体的には話せませんが、そこは「終わらない」を選んだ二人で終わろうと思ってます。それと野元さんが2役をやっていたことも、お客さんがわかるようにきちんと回収します。

向き合っているのは自分や人間というもの

──では改めて作品への意気込みをいただけますか。

稲村 今、このタイミングで集まったこの人たちと一緒にこの作品を作っている。そこに私はすごく重みみたいなものを感じています。役柄を飛び越えて自分をもう一度考えることができる。おおげさじゃなくてすごい作品だなと思いますし、これが舞台というものの素晴らしさだと思います。

野元 さっき私が稲村さんについて感じていることが、この作品と繋がるという話をしましたけれど、私がそういうふうに考えられるようになったのは最近のことなんです。気づきみたいなことなのですが、自分の感情と向き合うということを最近よくしていて。私は楽しいと悲しいはよくあるんですけど、怒るという感情はあまりなかったんです。

稲村 すごい! そんな人いるんだ!(笑)。

野元 でも怒る人は好きなんです。いつも怒ってる人とか。

稲村 面倒くさいぞ、それは(笑)。

野元 本人は大変そうですけど、私は「まあまあ」とかできちゃうから、怒っちゃうとか感情の起伏の激しい人が、すごい好きだと思っちゃうんです。しかもこういう職業だとそういうほうが面白いだろうなと。だから自分がイライラしたときに、私ってなんで怒ってるんだろうと考えるんです。何が原因で何に引っ掛かってこうなっているんだろうと。そういうことを最近すごくするようになって、1つ1つの感情と向き合うことが増えてきて、それを考えはじめたら、いろいろ面白くなってきたんです。

──それは女優としてはすごく大きな発見ですね。

野元 このタイミングでそういう発見があって、この作品で2つの役をいただいて、稲村さんと出会えて、個性豊かな共演の方たちと出会えて、よかったなと。やっぱり私、お芝居がすごく好きだと思えたし楽しいです。

稲村 それいいよね。というか今思い出したんですけど、共通の知り合いの女優さんが、空ちゃんのことをワイルドな子と言ってた!

野元・大部 (爆笑)。

稲村 私が動物的で空ちゃんがワイルドな子で、意外と似てるんじゃない?

野元 だから違和感がないんだ!(笑)

──表に出す方法が違っているだけで意外と本質は似ているのかもしれませんね。では最後に大部さんもアピールをお願いします。

大部 この作品は出演者がほとんど女性なので、女性の芝居という印象を受けるかもしれませんが、今も二人がいろいろ語ってくれたように、向き合っているのは自分だったり人間というものだったりして、その出口が女性というだけなんです。なので人間ドラマを観てほしいし、男女を問わず演劇をやっている人や演劇を好きな人にぜひ観てほしいです。この二人だけでなく、個性豊かな出演者たちの群像劇ですし、全員それぞれに見どころがあります。劇場で楽しんでいただきたいです。

野元空 稲村梓 大部恭平 

■プロフィール
いなむらあずさ○東京都出身。舞台、映画、テレビドラマ、ラジオドラマ、声優など様々な分野で活躍中。最近の出演作品は、【ドラマ】連続テレビ小説『ちむどんどん』 (NHK総合)、【舞台】羽原組『フラガール』、『せんにゅうかん』、菅野臣太朗演劇倶楽部 番外公演『贋作・オセロー』、舞台『けものフレンズ』JAPARI STAGE!〜きみのあしおとがまたきこえた〜、座・だるま水鉄砲 第1回公演『ちち』など。 

のもとそら○鹿児島県出身。女優、歌手、ダンサー。2011年、ダンス&ボーカルグループ「フェアリーズ」としてメジャーデビュー。2020年より個人で芸能活動を行い、映像や舞台で活躍中。最近の出演作品は【映画】『ファンファーレ』、【舞台】『あゝ青春の血は燃ゆる』、T-gene stage『コトの葉』、ピウス『アサルトリリィ・御台場女学校-The Snowdrop-』、『RUN TO YOU』、mucho produce vol.2 舞台『悲しい時には羊のうたを』、朗読劇『放課後に星はみえるか』など。
 
おおぶきょうへい○神奈川県出身。おぶちゃ主宰。おぶちゃの全公演の脚本・演出を担当。作風としてリズム感のある台詞回し、人間味、温かみのある雰囲気・空間づくりの演出には定評がある。近年の主な脚本・演出作品は、【舞台】『キミに贈る朗読会 ~ほむら先生はたぶんモテない~』(演出)、【テレビ】U-NEXT配信ドラマ『見上げた空に、あなたを想う』(脚本・監督)など。俳優としても活動しており2025年10月に主演舞台『魔法使いのパレード』(脚本:西野亮廣、演出:川本成)が控えている。

  
【公演情報】
おぶちゃpresents
『Bittersweet Flowers』
脚本・演出:大部恭平
主題歌:IKE & rice water Groove Production
音楽:IKE、田中和音
出演:稲村梓 野元空 内木志 瀬口美乃 じん 三田萌日香 飯田菜々 田中杏佳 安達優菜 飯山さな tamico. 大部恭平
●4/2~6◎シアター風姿花伝
〈公式サイト〉https://ofcha.biz/bsf2025


【構成・文/榊原和子 撮影/中田智章】
  

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