劇団☆新感線いのうえ歌舞伎『紅鬼物語』に出演! 一ノ瀬颯インタビュー

同じ空間で、リアルタイムに皆さんと感情を共有したい!
近年数々の映像作品での目覚ましい活躍で注目を集める一ノ瀬颯が、5月13日に開幕した2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演 いのうえ歌舞伎【譚】Retrospective『紅鬼物語』で待望の初舞台を踏んだ。
劇団☆新感線の記念イヤー第1弾公演を飾る新感線流お伽噺に臨む一ノ瀬に、初舞台への想い、作品や役柄、更に俳優を目指したきっかけについて語ってもらった「えんぶ6月号」のインタビューをご紹介する。
鬼のイメージを大きく覆してくれる作品
──今回が初舞台ということですが、いつかは舞台にという気持ちは持っていらしたのですか?
いずれやっておくべきだという気持ちと、やってみたいなという思いの両方がずっとありました。この仕事をはじめて6年経ちますが、舞台出身の方とお芝居をさせていただくこともあって、皆さん伝える力がすごく強いんです。それでお話を伺うとどなたも自分のルーツである舞台で得られたものが大きいとおっしゃるので、舞台を経験することによって自分も何か得られるんじゃないか、大きく変われるんじゃないか、とずっと思ってきました。ですからこのタイミングでお話をいただけたことをとても光栄に思っています。
──その初舞台が、劇団☆新感線の作品だということについてはどうですか?
役者として本当にありがたい、贅沢な経験をさせていただけていると思います。たくさんの舞台作品のなかで「ジャンル・新感線」と言えるくらい唯一無二のものですし、視覚的に派手で華やかで、殺陣の迫力、歌など、様々なエンターテイメントの良いところを集めた魅力的なコンテンツだと思うので、そこで初舞台を踏めるのはただただ光栄です。
──いま本読みをされた段階ということでしたが、作品やご自身の役どころについてはどんな印象を?
僕は今まで「鬼」というと、赤鬼、青鬼がいて角が生えていてこん棒を持って…という幼稚園ぐらいで持ったイメージのまま止まっていたんですが(笑)、それを大きく覆してくれる作品です。「鬼」とは何か? と考えさせられる、悲しくもあるし、ある意味では鬼がずっと怖く感じられるようにもなるのかなと。役柄としては鈴木拡樹さんが演じられる源蒼の家臣の一人、桃千代役で、同じ家臣の喜矢武豊さん、千葉哲也さんと三人の中では一番癖がない人物なのに、突拍子もない行動を取る一面もあって。それが物語にも大きく関わってくるので、注目して欲しいポイントですし、そこに至る桃千代の心情の変化を大切に演じたいです。
──カンパニー、特に柚香光さん、鈴木拡樹さんとご一緒されていかがですか?
皆さん本当に優しくて、温かい方々ばかりのカンパニーです。柚香光さんはすごくしっかりされていて、隙のない美貌の方という印象が強かったのですが、実際にお話しさせていただくと結構お茶目なところがありますし、一人ひとりに目を配ってくださる、この人について行こうという意識が高まる座長さんです。鈴木拡樹さんはとても紳士で、オンオフがほとんど変わらない、見たままの王子様のような方で、劇団☆新感線の45周年公演だということにもすごく心を向けて、全体を見据えていらっしゃるので、頼りにさせていただきたいなと思っています。
蓋をしていた憧れがふっと開いた
──一ノ瀬さんご自身のことも伺いたいのですが、お芝居、表現することをしたいと思ったきっかけはなんだったのですか?
幼い頃に戦隊ものを観ていた時に、ヒーローになりたいではなくて、演じているお兄さん達かっこいいな、面白そうだなという興味があったんですね。でも、自分が俳優になれるとは全く思っていなくて、普通に就職するものだとずっと勉強していました。
──でもご自身で鏡を見て、自分もいける! と思われませんでした?
いえいえそんな(笑)、そう言っていただけるのは嬉しいですけど、自分では思ったことがなくて。でも高校一年生の時に「自分の人生の半分以上の時間を占めることになる仕事をお金で選ぶか、やりたいことで選ぶか」について書く授業があって、その問いかけが真っすぐ響いてきたんです。ずっと蓋をしていた小さい頃の憧れがふっと開いたと言うか。もちろん俳優という仕事について深くも知らないし、たくさん作品を観ていたわけでもありませんでしたが、「やりたいことを選びたい、俳優になりたい」と、迷わず書いたんです。
──本当に思っていたことが浮かび上がったんですね。
俳優って自分が歩んできた道とは全く別の人生も体験できる。今はひとつの職業に就いても転職するのは珍しくないですけど、そうは言っても一人でそういくつもの仕事や経験はできないじゃないですか。でも俳優は、本当に多くの人生を経験できることに魅力を感じましたし、何か人の役にたつ仕事に就きたいとはずっと思っていたので、作品や役柄を通して誰かを勇気づけられたり、誰かの人生が好転するようなきっかけになれたらいいなと。結果としてとても身近なところでは、もうあまり外出できない祖母が家でテレビを観る楽しみがすごく増えたと喜んでくれましたし、ファンの方からいただくお手紙や、SNSのコメントで、人生に絶望していたけれども僕が演じた役を観て、明日も頑張って生きていこうと思えました、という自分では全く想像できなかったほどの言葉をいただけたりしているのが本当に嬉しくて。自分がやりたいと思った仕事で、ひとつでも何かいい方向に物事が進んでいってくれているとしたら、すごく素敵なことだなと思って、より一層俳優として頑張っていきたいと思っています。特に今回は初めて舞台に立たせていただくので、皆さんと同じ空間で生まれた感情を、リアルタイムで共有できる機会だと思うとワクワクします。ちょうど7年目に入る俳優人生で様々な作品を通して培ってきたものに加えて、劇団☆新感線での稽古で得られたものを全部持って舞台に臨みたいので、是非同じ空気を共有しに観にいらして下さい!

【プロフィール】
いちのせはやて〇東京都出身。2019年スーパー戦隊シリーズ『騎士竜戦隊リュウソウジャー』の主演で俳優デビュー。20年大河ドラマ『麒麟がくる』(NHK)で大河ドラマ初出演を果たす。その後も映像作品を中心に活躍、21年よりTBS『王様のブランチ』にレギュラー出演中。近年の主な出演作に、【ドラマ】『119エマージェンシーコール』(CX・25)、『ハスリンボーイ』(WOWOW・24)、『若草物語─恋する姉妹と恋せぬ私─』(NTV・24)、『Believe─君にかける橋─』(EX・24)、『SHUT UP』(TX・24)、【映画】『十一人の賊軍』(24)、『仕掛人・藤枝梅安2』(23)など。

【公演情報】
2025年劇団☆新感線45周年興行・初夏公演
いのうえ歌舞伎【譚】 Retrospective『紅鬼物語』
作:青木 豪
演出:いのうえひでのり
出演:柚香光/早乙女友貴 喜矢武豊 一ノ瀬颯 樋口日奈/粟根まこと
千葉哲也/鈴木拡樹 ほか
●5/13~6/1◎大阪・SkyシアターMBS
●6/24~7/17◎東京・シアターH
〈お問い合わせ〉
大阪・キョードーインフォメーション 0570-200-888 (12:00~17:00/土日祝休)
東京・サンライズプロモーション東京 0570-00-3337(平日12:00~15:00)
〈公式サイト〉https://www.vi-shinkansen.co.jp/akaoni/
【インタビュー/橘涼香 撮影/中村嘉昭 ヘアメイク/池上豪(NICOLASHKA) スタイリスト/檜垣健太郎(tsujimanagement)】