いよいよ開幕間近!『ダンスカンタービレ2025 ~VIOLET~』稽古場レポート!

男性パフォーマー集団DIAMOND☆DOGSの一員として、流麗なダンスはもちろん多彩なパフォーマンスを繰り出すだけでなく、近年は振付家、演出家としても活躍の場を広げている中塚皓平が構成・演出・振付・出演を務める『ダンスカンタービレ2025 ~VIOLET~』がいよいよ7月30日、銀座の博品館劇場で開幕する(8月6日まで)。戦国の世を駆け抜けた織田信長と明智光秀を主軸とした人間模様が、中塚と宝塚OGを中心とする女性メンバー9人で、台詞を介さずダンスのみでドラマを描いていく意欲作だ。
そんなダンス表現の可能性を追求するメンバーが、振付に汗を流している稽古場を訪ねた。

この日は(取材は7月半ば)2部(※休憩を挟まないノンストップステージなので、厳密に言うと1部、2部に分かれている訳ではないのだが、中塚をはじめ創り手のなかでは、ドラマ部分を1部、続くフィナーレ的なショー部分を2部と表現している)のショーに入っていく導入の振付が行われていた。
このパートの振付は楢木和也が担っている。やはりノンバーバル(台詞なし)のダンス表現でドラマを伝えるエンターティメントを追求している梅棒の二枚目ダンサーで、今回の舞台にとっては打ってつけの人材。ここにD☆Dの若手メンバーTeam Novelの角野楓真も参加して、稽古場狭しと振付作業が急ピッチで進められていた。


楢木の振付はびっくりするほど早いテンポで進んで行く上に、例えばただそのカウントで手を回すということではなく、ほんの一瞬止めてからなどの非常に細かいニュアンスが多く、観ているだけで目が回りそうになることもしばしばだ。
それでも中塚はもちろん、彩凪翔をはじめとする女性メンバーの呑み込みも驚異的に早く、同じ振付を受けていたと思った刹那「あ、ごめん、こっちシンメね!(※センターから上手、下手がシンメトリーで逆振りになる)」のひと言で何事もなかったかのように対応していくスキルに圧倒させられる。1列に並んでいてもカウントでウェーブのように振りが横へ横へと広がって行く振付でも、そのカウントが人数と音楽の関係で一定ではなく、1拍待つ人、3.5拍待つ人などかなり複雑なのだが「ま~~慣れたらいける、ちょっとやってみよう」と「もうですか!?」と言いたくなったほど一気に曲がかかった時には、綺麗にセンターから上手下手に振りが流れていくのに感嘆した。




更にそこからは分業で、稽古場の隅から隅までを使った個々のパートの振付が入り乱れていく。楢木が沙弥音と白峰ゆりに振付けている横で、中塚、泉まいら、留依まきせの、遂々男性陣だなと思ってしまった(泉、留依は宝塚歌劇団の元男役)三人に角野楓真が振り移しを行い、彩凪、有栖妃華、音波みのり、篠本りの、松本ユキ子が振り確認をしたり、柔軟をしたり、次に自分が加わるシーンの振付を見つめていたり等々、全員がいま自分のするべきことを率先して行っているので、俯瞰していると、しばしどこで何が起きているのかわからなかったほど。時折どんな状況でも笑顔の楢木が「そこどいて~!」と言ったかと思うと、舞台の端から端へと動く動きがついているなど、完全に目が足りない印象に陥った。


中でも印象的だったのが角野楓真の振り移しが非常に懇切丁寧なことで、角野は得意のストリート系の振りにはじめやや苦戦していた宝塚OGに対して(おそらく宝塚歌劇団では登場機会の少ないニュアンスの振りだけに)「ここの動きがかなり速いです」「次に行く前にここで軽く跳んでます」「ステップはこっちから持ってきた方がいいと思います」等々、何が難しいのか、どこを改善すればいいのかに対してのサジェッションが的確で根気よく、会得するまで絶対に手放さずにくり返す様に感心しきり。「今のOKです!」と笑顔を見せた時には、食らいついていくという言葉がピッタリのOGたちの頑張りと共に、思わず拍手を贈っていたほど。中塚も「楓~ここはさ~」と気さくに話しているし、カメラを向けるといきなりふざけてポーズをとるなど、D☆Dらしい明るい雰囲気は絶やさないところから一転、振付を受けている時には「わかりました、ありがとうございます」と、グループの後輩の角野に対してもちゃんと敬語になることにも、あぁ良い稽古場の秩序だなと感じられた。

正直、なんでわかるのかわからないという瞬間が多くあり、2時間が経過しても全く休憩なしという驚異の稽古場で、ちゃんとわかっている全員が、曲で踊った時には全てのパーツがハマる快感に目を奪われる。荷物置き場の片隅でつけられていた振りが実は舞台のドセンターでの振りだった!など、この時間だけでサプライズの連続。中塚とセンター挟みで颯爽と対峙できる彩凪。とことん真摯で真面目で実直な泉。顔を真っ赤にして踊りながら明るさが稽古場を照らすような留依。踊る姿が可憐でありながら芯の強さも感じさせる有栖。永遠の娘役の面影を手放さない一方、踊りのキレは抜群の音波。振り入れの真剣さに目を引かれる沙弥音。クールビューティなイメージを一変させて踊りまくる白峰。一つひとつの動きがなんともセクシーな篠本。黙々とすべきことを果たしていく松本とこの時間でも各々の個性が光る稽古場だった。そんな稽古について中塚は「僕のやりたいことをやらせてもらっているのですが、1人で担うことによる責任感が強く、D☆Dのグループでやっている時よりも、更にあらゆることに敏感なんですよ。周りの人も色々と助けてくれますし、アイディアもくださるのですが、最終決定は僕が1人でしなければいけないことによって、何倍にも成長させてもらえている現場です。皆さんもとても素敵なので、頑張りたいですし是非多くの方にご覧いただきたいです」と、語ってくれた。
そして何しろ休憩なし!の稽古場だったので、キャスト一人ひとりに1部のドラマで演じる役柄と、この稽古場でいま感じていることをひと言だけ、コメントしてもらった。

彩凪翔「織田信長役です。挑戦の稽古場!精一杯頑張ります!」

泉まいら「羽柴秀吉役です。頭を整理してダンス頑張ります!」

留依まきせ「柴田勝家を演じます!灼熱の稽古場です!」

有栖妃華「濃姫役です。一生分愛します!」

音波みのり「徳川家康です。もっと踊りたいです!」

沙弥音 「森蘭丸役です。生きている感じがします!

白峰ゆり「前田利家役です。必死です!!」

篠本りの「ダンサーです。ダンスでどこまで表現できるか模索中です」

松本ユキ子「ダンサーです。皆さん個性的でスキルフルな方ばかりなので、私も負けないように勉強しながら頑張ります」

中塚皓平「明智光秀です。暑い夏を乗り切るぞ!」
ここからどんな『ダンスカンタービレ 2025 ~VIOLET~』が生まれ出るのか。開幕を待ちたい。

【公演情報】
『ダンスカンタービレ 2025 ~VIOLET~』
7/30~8/6◎博品館劇場
構成・演出・振付:中塚皓平
出演:彩凪翔
泉まいら 留依まきせ
有栖妃華 音波みのり 沙弥音 白峰ゆり(五十音順)
篠本りの 松本ユキ子
中塚皓平
〈料金〉10,000円(全席指定・税込)
〈お問い合わせ〉博品館劇場 tel.03-3571-1003
〈公演サイト〉https://www.hakuhinkan.co.jp/theater/archives/event/pr_2025_07_30
★7月31日&8月5日両日18時半公演 東山義久ゲスト出演決定!
【東山義久コメント】
2007年より、家族よりも兄弟よりも長く一緒に時を過ごし、
また多くの舞台を共に闘い抜いてきた中塚皓平が、
「僕も僕の舞台を創ります」と。
心から嬉しい。
DIAMOND☆DOGSを通して培ってきた経験と技術をもって、全身全霊で臨むと確信しております。
僕も彼の全魂の作品に華を添えられるよう頑張ります。
劇場でお待ちしております!
【取材・文・撮影/橘涼香】