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大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~⑮

Concorde(コンコルド)からBastille(バスティーユ)

― Parisは、街が舞台。―

宝塚ファンの皆さまには、お馴染みのコンコルドからバスティーユ。

Parisは、街が舞台。

7月になりました。

Parisで暮らしていると、毎日のように歩いている道の向こうに、何百年もの時間が見えてきます。

コンコルド広場のオベリスク。足元にはルイ16世とマリー・アントワネットを記憶するプレート
「ここが処刑の場所であったこと」を示す記念銘板
1793年1月21日、ルイ16世が処刑された。
そして1793年10月16日、マリー・アントワネットが処刑された。

記録的な暑さが続く今年の7月。
私には、1840年7月28日、フランスを代表する作曲家ベルリオーズが
Concorde(コンコルド)からBastille(バスティーユ)まで続く約4kmの道を歩く姿が重なりました。

1789年7月14日。

Bastille(バスティーユ)牢獄襲撃をきっかけに、フランス革命は大きく動き始めました。

1793年。

Concorde(当時・革命広場)では、ルイ16世、
そしてマリー・アントワネットがギロチンによってその生涯を終えました。

1830年7月27日、28日、29日。

「栄光の三日間」と呼ばれる七月革命です。

そして1840年7月28日。

七月革命から10年。

七月革命で亡くなった504人の犠牲者が、完成した七月柱の地下納骨堂へ埋葬される国家式典が行われました。

ConcordeからBastilleまでの大行進。

その音楽を託されたのが、ベルリオーズでした。

その日のために彼が作曲したのは、

《Grande Symphonie funèbre et triomphale》
《大葬送行進曲と勝利の大交響曲》。

フランス語版の作品解説には、大行進の葬送行列は、

Concorde、
Madeleine、
Grands Boulevardsを経て、
Bastilleへ向かったと記されています。

さらに、《Marche funèbre(葬送行進曲)》は、この大行進に合わせ、
およそ6回繰り返し演奏されるよう作曲されました。

約4km。
約200人の軍楽隊。
真夏のParis。
汗。

重い楽器を抱えた演奏者たちは、汗を流しながら歩き続けます。

ベルリオーズ自身も、歩き続ける軍楽隊へ合図を送り続けるため、後ろ向きに歩きながら指揮を執りました。

後年の『回想録』には、沿道を埋め尽くした群衆の歓声があまりにも大きく、
ベルリオーズが率いる軍楽隊の演奏がほとんど聞こえなかったと記しています。

それでも音楽は止まりませんでした。

七月革命で亡くなった人々への思いとともに、ConcordeからBastilleまで、Parisの街を歩き続けたのです。

1840年。

ベルリオーズが歩いた頃、この街にはすでに、

Comédie-Française。
Odéon。
Opéra-Comique。
Opéra de Paris。

がありました。

そして約200年。

Palais Garnier。
Théâtre du Châtelet。
Théâtre de la Ville。
Opéra Bastille。

この街は、新しい劇場を生み続けてきました。

Parisでは、
モリエールも。
シェイクスピアも。
一つの劇場だけにとどまりません。

Comédie-Françaiseでも。
Odéonでも。
そして、Parisのさまざまな劇場で。

オペラ・バスティーユでは、幕間(アントラクト)になると、お天気ならいつも、ガラス張りのホワイエから外へ出ます。
夏のParisは、夜10時を過ぎても、まだ明るいのです。目の前に広がるのは、
バスティーユ広場の七月柱(Colonne de Juillet)。
劇場の中にも、劇場の外にも、歩き続けてきた人々の時間が流れています。

時代ごとに目を見張るような新しい演出によって、今日も舞台の上で生き続けています。

何世紀もの時間を越え、
今日のParisを生きています。

346年の歴史を持つComédie-Françaiseも、現在は本拠地が改修工事中です。

それでも劇団は歩みを止めることなく、Parisの街で公演を続けています。

東京宝塚劇場も2000年の建て替えの時には、1000DAYS劇場で幕を上げ続けました。

建物は姿を変えても。
修復されても。
芸術は、人から人へ受け継がれていきます。

私は、この道を毎日歩いています。

ベルリオーズが歩いた道。
劇場が生まれ続けてきた道。
そして今日も、新しい舞台が生まれている道です。

Parisは、街が舞台。

ベルリオーズのこの作品は、
「葬送」だけではありません。
「勝利」もあるのです。

「葬送」と「勝利」という言葉を見つめていた頃、日本から一つの訃報が届きました。

日本の演劇界に、シェイクスピアの言葉を生き続けさせてくださった、演劇評論家・翻訳家の小田島雄志先生。

ふと私は、1999年に主演した
『十二夜 ― またはお望みのもの ―』
Twelfth Night, or What You Will

を思い出しました。

あの日から、小田島先生は折に触れて、お便りをくださいました。

あの日、私が舞台で紡いだ言葉の奥には、いつも小田島先生がいらっしゃいました。

つづく。

大和悠河
YUGA YAMATO

文◇大和悠河 写真提供:(株)GOOGA

大和悠河のパリから贈るエトワール紀行 ~ロマンチックに紡ぐ魔法~

宝塚トップスター・女優・大和悠河 が紡ぐ、伝説の都からの最新アートのトキメキとカンゲキのクロニクル。
『えんぶ☆TOWN』連載では、大和悠河が石畳のパリで感じた街の鼓動や、心温まる出会いから得た感動、その感動から生まれるインスピレーションで、あなたの日常に新たな光を注ぐことでしょう。
大和悠河の感性と情熱が生み出す独自の美学―既成概念を超える『C調と遊び心』―が、未知なる芸術の航路へとあなたをご招待します。