
僕たちなりの良い家族関係を表現したい
朗読劇『紫苑のもみじ』は、「READING WORLD」と「VISIONARY READING」というふたつの朗読劇プロジェクトがタッグを組んで贈る意欲作。上演会場などの「場」の魅力に着目する演出と、映像や生演奏による没入感あふれる表現が交差することで、その化学反応にも期待が高まります。今回は、物語の中核を担う山根綺、山口勝平、中井和哉による鼎談をお届け。作品への印象や共演の楽しみ、演じるキャラクターなどについて語っていただきました。お三方が演じるのは、ちょっと風変わりな、一筋縄ではいかない「家族」。その関係性にもご注目ください。
Q 配役について教えて!
山口 ネタバレに配慮しながら喋りますが……、主人公・もみじの既に亡くなっているお父さんが僕で、いま育ててくれているお父さんが中井くん。
山根 はい。
山口 ここまでは話して大丈夫みたい。
中井 僕は不思議な関わり方をさせてもらっていて、台本を読んで「これは面白い」と思ったし、意欲が湧きました。この『紫苑のもみじ』は、以前READING WORLD で上演した『浅黄の桜 -あさぎのさくら-』と強い関係性がありまして、前作に出演した僕は、間を繋ぐ立場のキャラクターを演じます。
山口 それは同じキャラクターなの?
中井 同じではないです。
山口 なるほどねぇ。
中井 前作の亡くなったお父さんが銀河(万丈)さん。そういう繋がりも楽しめそう。つまり……。
(※ ネタバレタイム中)
山口 そっかー!
山根 繋がりがあるんですね〜!
山口 だからタイトルが……って、これはネタバレになっちゃう(笑)。
Q 配役の話の続きを!
中井 役柄についてリアルに考えると、僕の中へ落とし込む余地がないんですよ。(山根さん演じる)娘もそうですし、やはり(三石琴乃さん演じる)妻ですよね。(山口さん演じる)亡くなった文吾さんのことが大好きなのはよく分かるのですが、だからと言って(再婚して夫・義父となり)これから一生尽くせるのか? みたいな。
山根 確かに……。
山口 山根さんはもみじと同い年、僕と中井くんも年齢が近く、人の死を実感できる年齢ですから、配役の妙を感じます。愛する妻と娘を、一番信頼していたであろう(中井さん演じる)洋一郎に託す。それは自分のエゴかもしれない。けれど、文吾自身は安心できただろうし。
中井 いま勝平さんから「安心」という言葉が出ました。こういう発言も(役作りに向けた)ひとつの材料になりそう。
山根 (頷く)。
中井 文吾の気持ちがダイレクトに託されている、と捉えられれば、これから少しずつ地に足がついていくはず。
山根 もみじは洋一郎さんに絶対感謝していると思いますし、文吾さんとは直接話すことはできないけれど、ずっと心の声が聞こえていた状態なので、コミュニケーションは取れていたんですよね。だから、どちらもお父さんだけど、全く別の存在、別の関係性と言いますか。
山口 いま話を聞いていて「なるほど」と思う部分もあるし、僕ら三人とも、役と向き合える楽しい時間を過ごしている最中なのかも。台本に書かれた言葉の裏側にある、ちょっとしたヒントを見つけつつ、僕たちなりの良い家族関係を表現できるよう頑張ります。
Q 上演台本の雑感を聞かせて!
山口 (台本をめくりながら)途中に歌うシーンがあって。
山根 カラオケのシーンですよね。
山口 こんな歌詞なんだね。有名な歌なのに意外と知らなかった。
中井 カラオケとか、もみじが会社の先輩と喋るシーンとか、日常会話の延長線上にある自然なやり取りが多くて。
山口 良いよね、何でもない会話が。
山根 分かります。
山口 この台本、その辺わりとミソだよ。
中井 キャラそれぞれの関係性や空気が醸し出される言葉遣いになっていて、それが上手く表現できると楽しい朗読劇になりそう。
山口 文吾と洋一郎とえりが浅草のホッピー通りで飲むシーンとかめちゃくちゃ好き。もろ俺か〜? みたいな。
中井 そこが VISIONARY READINGさんの真骨頂。
山口 見どころだね。
山根 私は、外苑前やこの地域のことをあまり知らないので、稽古前に絶対回らないとなと思っていて。神宮球場にも行ってみたいです。
山口 神宮球場って、今も外野席はタダで入れるの?
中井 入れません。
山根 昔は入れたんですか?(笑)。
山口 わかんない(笑)。でもそういうのあるよね。僕は豊臣秀吉が好きで、滋賀県長浜市の長浜市PR大使もやらせてもらっているのですが、長浜城の天守閣で琵琶湖を眺めていると2時間位平気でいられる。
山根 すごいですね!
山口 あまり人の手が入っていない自然の景色を見ていると「秀吉が見ていた風景と大して変わらないんじゃないか?」とか。それこそ「オラ、ワクワクすっぞ!」みたいな。
中井 秀吉の話なのに別のキャラになってますよ。
山口 (笑)。実際に体験することで得られる実感ってあると思います。
Q 世代間についてどう思う?
(※ 劇中で描かれる「世代間の絆・継承」に関する質問をすると……。)
中井 僕らの世代って、アニメ黎明期から頑張って下さった先輩方から受け継いだものを、ちゃんと下の世代へ渡せているか? という不安がありません?
山口 確かにその自信はないけれど、先輩方も使命感で教えて下さった訳じゃないのかも。
中井 あ〜〜!
山口 だから下の子たちも、俺らを見て自由に受け取ってくれるかな? なんて無責任に思う。
中井 そうなんです。若い人たちが頑張っている様子を見ると、その世代独自の面白さもあるけれど、僕たちが若い頃に受け取ったエッセンスも見受けられて。
山口 デジタル化でガラッと世の中が変わり、俺らデジタルにあまりついて行けてないじゃん? 逆に若い子から受け取ることが多くて。
中井 確かに。
山口 上からも下からも貰えてラッキーな世代だなぁ。
中井 そう思えば良いのか〜。前向き!!
山根 なんて素敵なお話を聞いているのでしょう、私は。
山口 山根さんはどう?
山根 うーーーん(熟考中)。
中井 ……受け取るほどのものがない?
山根 いや、そんなことはまったくないです!!(笑) 先輩方の背中を見ていると、ずっと現役で活躍されている方はびっくりするほど良い方ばかり。あまりにも人柄が良すぎて、「私も将来こうなりたい!」と思う反面、「こんな良い人になれるかな?」 という不安も……。
中井 そんなに悪い人なんですか?
一同 (爆笑)。
山根 いやいやいや!! そんなことない! と思いたいのですが!!
中井 これからお稽古とかあるから、ちょっと不安になっちゃった。
山口 あははは。
山根 当然お芝居はスポンジのように吸収しなきゃいけないんですけど、吸収するまでもなく、浴びる感覚に近いじゃないですか。ずっと第一線で活躍されている方々は本当にすごいですし、それ以外のお人柄や人間性の部分も素晴らしいんですよ。
Q いま期待していることは!?
山根 映像演出がつくそうです!
山口 期待したいよねぇ。
山根 何気ない会話が多いので、そこに映像がついたらどうなるんだろう? という楽しみが大きいですね。あと生演奏もあるそうです。
山口 そうそう。
山根 それを知ってすごくテンションが上がりました。
中井 佐藤流司さんなど初めてご一緒する方もいらっしゃるので、どういう掛け合いになるのだろう? という期待があります。
山口 朗読劇はお客さまへ生でお届けするもの。役者同士のやりとりをどれだけ新鮮に楽しめるか? が大きなポイントになります。限られた稽古スケジュールの中で、台本からどう読み取るか? が自分の課題だと思っていて、どこまで深掘りできるか、すごく楽しみです。
プロフィール
やまぐちかっぺい◯福岡県出身。声優、俳優。主な出演作は、『犬夜叉』(犬夜叉)、『名探偵コナン』(工藤新一/怪盗キッド)、『ONE PIECE』(ウソップ)など。『紫苑のもみじ』では、もみじの亡き父親「真島文吾」を演じる。
やまねあや◯神奈川県出身。声優、歌手。主な出演作は、『花ざかりの君たちへ』(芦屋瑞稀)、『るろうに剣心 -明治刺客浪漫譚-』(巻町操)、『薫る花は凛と咲く』(保科昴)など。『紫苑のもみじ』では、主人公「雨宮もみじ」を演じる。
なかいかずや◯兵庫県出身。声優、ナレーター。主な出演作は、『ONE PIECE』(ロロノア・ゾロ)、『銀魂』シリーズ(土方十四郎)『呪術廻戦』(秤金次)など。『紫苑のもみじ』では、もみじの義父「雨宮洋一郎」を演じる。
(このインタビューは雑誌「えんぶ」2026年6月号より転載)
公演情報

READING WORLD×VISIONARY READING
朗読劇『紫苑のもみじ』
脚本◇灯敦生
演出◇岡本昌也(AOI MANAGEMENT)
出演◇山根綺 佐藤流司
山口勝平 中井和哉 三石琴乃
伊藤かな恵 重松千晴 熊谷健太郎
7/17〜19◎日本青年館ホール
https://www.thxgive.com/readingworld/shionnomomiji/
インタビュー◇園田喬し 撮影◇安斎しのぶ





