江戸糸あやつり人形結城座が、『変身』(原作カフカ)を再演!
江戸時代の寛永12年(1635年)、初代結城孫三郎が江戸の葺屋町(現在の日本橋人形町付近)にて旗揚げ。以来、現在の十三代目結城孫三郎まで400年近い歴史を持ち、国の「記録選択無形民俗文化財」および東京都の「無形文化財」に指定されている「江戸糸あやつり人形」劇団の「結城座」。
近年は古典のみならず、新作や国際共同制作などのコラボレーションにも積極的に取り組んでいる。
その結城座が2022年、劇団温泉ドラゴンのシライケイタを脚本・演出、若手油絵画家・谷原菜摘子(2021年にえんぶ本誌で、彼女の半生を聞いたインタビューをこちらでご覧いただけます。)を人形美術に迎え、好評を博したフランツ・カフカの『変身』。
今回は前作よりも抽象化した舞台で、人形と人形遣いの関係に焦点を絞り、より主人公の孤独や絶望に迫る演出になるという。
1972年に写し絵家元三代目両川船遊を襲名。1993年より2021年まで十二代目結城孫三郎として結城座を牽引。現在も精力的に活動を続ける三代目両川船遊より、今作に向けたメッセージが届いた。
唐十郎さんの書いた『少女仮面』の中に、腹話術師と腹話術人形の役が出てくるのですが、腹話術師が人形に向かって「いつもお前ばかりが事件に遭って、自分には何にも起こらない」と言うセリフがあり、当時三十代の私は「そうだよなあ」とすごく共感を覚えたものです。
しかし現在八十歳にもなると、抱えきれない問題に直面しているのは自分ばかりで、人形の方は以前と変わらない表情をしている。人形遣いと人形の時間の過ごし方が違うのに愕然とするのです。そもそも、モノとしての人形自体、出来上がった瞬間から得も言われぬ表現をしているのに、人形遣いが遣うことで人形の持つエネルギーを削ぎ落としているのではないだろうか……舞台をやるたびに頭の中でくるくると繰り返されるのです。
今回の『変身』では、人形と人形遣いを引きはがす作業をしてみるかなと思っています。メチャクチャに不安で仕方がありませんが、この何十年間も抱えていることに、そろそろ決着をつけなければならない時が来ているのかも知れません。
【あらすじ】
ある日突然虫に変身し、姿形だけでなく、味覚や聴覚、視覚までも変化していくグレゴール・ザムザ。虫へと変身しても人間性を保ち続けようとするグレゴールは、ある夜、幻想的な夢の中で、理想の家族像・母親像を見出す。
一方、両親と妹のグレーテは、「家族としてのグレゴール」と「異形と化していくグレゴール」の間で葛藤を繰り返しながらも、変化していく生活の中で懸命に日々を送っている。しかしある日、ザムザ家の間借人がグレゴールと鉢合わせ、大混乱が生まれるに至って、グレゴールを接点にかろうじて保たれていたバランスは崩壊し、一家は「排除」へと傾斜していく・・・。
【公演情報】
江戸糸あやつり人形結城座
『変身』
原作◇フランツ・カフカ
脚本・演出◇シライケイタ
人形美術・宣伝作画◇谷原菜摘子
出演◇両川船遊、結城孫三郎 他結城座
日程◇2024年5月29日(水)〜6月2日(日)
会場◇下北沢ザ・スズナリ
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