【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第160回「旅公演での長期ホテル生活」

 いよいよ劇団☆新感線「バサラオ」も最後の地である大阪・フェスティバルホールの幕が上がります。福岡・東京と既に80ステージを終え、最終的には97ステージとなり私にとって最大のステージ数となるはずです。

 さて、その大阪公演は2週間足らずですが、舞台稽古も含めると約2週間半の大阪滞在となります。7月に行われた博多座公演なんて我々俳優部でも一ヶ月以上の滞在でした。もちろんスタッフさんはもっと長いんですけど。
 このように、大きめのカンパニーの旅公演となると結構な滞在期間となります。基本的にはカンパニーがホテルを用意して下さいますのでありがたい話です。ありがたい話ではあるのですが、大変なのも確かなのです。二、三日の連泊ならどうというコトはありませんが、これが一ヶ月とかになると色々と大変なんですよって話を書きますよ。

 ホテルというのは素晴らしいですよね。毎日キチンと掃除してくれますし、お風呂や冷蔵庫やエアコンも完備されていますし、ベッドも大きくて清潔ですし、足りないモノは色々と借りられますし、宅配便も受け取ってくれます。朝食が付いてきたりする場合もあったりね。あと、その土地のテレビ局が製作したローカル番組とか見るのも楽しかったりね。たまに妙なお菓子が置いてあったりね。まあ至れり尽くせりですよ。生活するだけなら何の不自由もありません。
 このように、実に快適で便利なホテルなのですけれども、一ヶ月を超す長期滞在となりますとちょっと困るような事態も起こるのです。

 まずは洗濯に困ります。もちろんランドリーサービスはあるのですが、我々は毎日汗まみれの洗濯物が大量に出るのですよ。それを毎日ランドリーサービスに出すのは気がひけます。
 最近のホテルでは小さなコインランドリーが付いている所もありまして、大変便利だったりするのですが、宿泊客数に比較すると台数が少ないのでいつも使用中だったりするのが困りものです。以前に泊まったホテルでは部屋のテレビで洗濯機の使用状況や残り時間が見られたりするのが便利でしたね。
 また、劇場で衣裳さんの洗濯機を借りることもあります。ただ、本来は衣裳用ですから使える時間帯が短いことも多く、こちらも取り合いになりがちです。
 どうしようもなかったら街中のコインランドリーを利用します。立地によっては10分くらい歩かなくてはならなかったりして、これがまた大変なんですよ。まあ、私は街歩きが好きなのでそれほど苦ではありませんけどね。

 そして食事にも困ります。当然ながら大抵のホテルでは自炊ができません。人によっては炊飯器だけ持ち込んで、買ってきたおかずと共にご飯を食べる人もいますけどね。まあ、私の場合は普段から自炊はしていないので正直に言いまして、いつもの生活とあまり変わりがありません。コンビニ頼りです。コンビニがあればいつも通りの生活ができます。
 だけどさ、電子レンジがないんですよ。私は普段からレンジにお世話になりっぱなしの生活をしていますので、これには困っています。ホテルによっては共用のレンジがあったりもするのですが、そこまでするほどでもないんですよね。
 もちろんお昼にはお弁当が出ますし、私は夜はあまり外に食べに行きませんがお酒がてら外に食べに行く人も多いので、困っているのは私だけかもしれませんけどもね。

 それと意外と困るのが清掃時間です。ホテルによっては何時までに出てくれないと清掃ができない、なんて言われたりします。ノンビリしていると朝10時くらいにノックされて出る時間を聞かれたりね。
 我々は朝が遅かったり夕方から仕事の場合もありますので、清掃時間はなかなかに難しい問題なのです。わざわざ時間を掛けてゆっくりお昼ご飯を食べに行ったりとか買い物に行ったりとかね。

 あとはまあ、飽きちゃうんですよね。いや、自宅だって同じなのですが、自宅ならば必要なモノが全て揃っていますし、ゲームや本、CD、DVDといった娯楽もいっぱいあります。それが無いというのは結構不便なのですよ。
 ただ、最近では色んなサブスクがありますから音楽や映画はほぼ不自由しなくなりました。便利になったモノです。ゲーム機も小さくなりましたしね。本はまあ、文庫本なら大した荷物にはなりませんしね。
 人によっては何でもかんでもホテルに持ち込んで大改造しちゃう人もいますが、私はそれほどでもありません。

 それから、意外とストレスになるのが机とかテレビとかの位置。自分好みじゃなくても据え付けだから動かせないんですよね。自分の好きなポジションでゲームができないんですよ。
 あとはまあ、部屋が暗めで不便だとか、ベッドで本を読む時の灯りが適切じゃないとか、シャワーの水圧が弱いとか、Wi-Fiに繋がるのがワンテンポ遅いとか、窓が少ししか開かなくて気持ち悪いとか、室温の調整が難しいとか、氷を取りに行くのが面倒くさいとか、まあ色々と不便に感じる事柄があるんですよね。
 かつて、まだ大阪時代の新感線では東京公演で移動費も宿泊費も出なくて、深夜の鈍行電車で行ったり友人宅に泊めてもらったりしていたのですが、その頃に比べればなんとも贅沢な話ですよ。贅沢な話ではあるのですが、これだけ長期滞在になりますと色々と不満も感じちゃったりしちゃうものなのです。まあ、なんとか慣れていくしかないんですけれども。

 なお、人によってはホテルの費用を現金で貰って(これを引雑(ひきぞう)といいます)、自分でウィークリーマンションを手配する人もいます。ウィークリーマンションならば、これはもう普通のマンションとほぼ同じですから、洗濯機や電子レンジなども付いていてかなり普段の生活と同じようになります。ただ、掃除やゴミ出しは自分でやらなければなりませんし、室温・湿度も外気に大きく左右されます。ホテルって全館冷暖房である程度は緩和されているんだよね。でも、自炊好きな方にはオススメです。
 ただまあ、部屋探しから手配、引き渡し、退出まで全部自分でやらなければならないのが大変なところ。面倒を取るか不自由を取るか。難しいところです。

 という訳で、舞台も大変だけどホテルも意外と大変なんだよというお話でした。さあ、これから二週間半の大阪暮らし。舞台も重めなスケジュールですからノンビリする間もなくバタバタと終わっていくんだとは思いますが、なんとか体調などを崩さずに気をつけながらホテルライフを満喫したいと思います。

 あっ、あと、私は普段リンスインシャンプーなのですが、ホテルのシャンプーとコンディショナーを使うと髪がサラサラになって驚くよね。

今回、大阪に行く時に見えた富士市辺りの富士山。さっきまで雲が少なかったのになあ。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
劇団☆新感線「バサラオ」
10/5(土)〜17(木)フェスティバルホール
http://www.vi-shinkansen.co.jp/basarao/

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