彩風咲奈の“いま”を届ける1st Concert『no man’s land』東京公演開幕!

宝塚歌劇団雪組トップスターとして活躍し、昨年10月惜しまれつつ卒業した彩風咲奈が、退団後はじめて開催した1st Concert『no man’s land』が、5月2日大阪・梅田芸術劇場メインホールでの上演を大盛況のうちに終え、5月10日~12日まで東京・東京国際フォーラムホールCで東京公演の幕を開ける。

2007年宝塚歌劇団に入団後、もっと言えば宝塚音楽学校の本科生だった、つまりはまだ「彩風咲奈」ではなかった頃から、入学案内ポスターを異例のソロ写真で飾るなど、期待の新星として注目の的だった彩風は、その抜群のプロポーションと確かなダンス力でいち早く頭角を現し、新人公演で5度の主演を務め、文字通りの雪組の御曹司として躍進。2021年に雪組トップスターに就任後は『CITY HUNTER』『蒼穹の昴』『ボイルド・ドイル・オンザ・トイル・トレイル』など、多彩な作品で様々な魅力を魅せただけでなく、得意のダンスを活かしショーシーンで名場面を数多く創り上げた。
今回のコンサートはそんな彩風が宝塚歌劇団を目指す決め手になったという、宝塚歌劇の代表作のひとつ『ベルサイユのばら─フェルゼン編─』で、2024年惜しまれつつ宝塚を飛び立って以来の、初となる本格的なステージ。中間地点、誰にも支配されていない場所などの意味を持つ、タイトルの『no man’s land』が示す通りの、「いま」の彩風咲奈を舞台上に横溢させた舞台が展開されていく。

螺旋階段が舞台面へと続くセットを用いて、二階にも人が立てる構造はこうしたコンサートではこれまでにも使われてきたものだが、そこは「荻田ワールド」と呼ばれるどこか幻想性のある舞台創りに特段の魅力を発揮する荻田浩一の構成・演出の作品だけに、ボーカルの竹内將人、菜々香、ダンサーの鈴木凌平、天野朋子、酒井比那、井上弥子、澤村亮、感音のよくぞ揃えたなという実力派の共演者たちの登場、退場も一つひとつが非常に凝っている。特に竹内はミュージカル界でもメインキャストとして活躍している人だけに、求心力の桁が違う。

そんななかに、ふわりと降り立った彩風は「男役」という様式美であり、ある意味の鎧を脱ぎ捨てたどこか少女のようであり、少年のようであり、更に妖精のようでもあるという、不思議なまでの透明感を醸し出して、瑞々しい。


全体の構成は、本人自ら「踊ります!」と宣言していた通り、ダンス中心で進んでいき、もちろんキリっとカッコいい場面もあれば、やんちゃな可愛らしさを覗かせる面もあるのだが、何よりも「生まれたて」という感覚が強いのに目を瞠る。これは近年宝塚のトップスターが開いてきたファーストコンサートのどれとも違う、彩風が見せた新たなカラーで、『no man’s land』とはよく言ったものだと、感心しきりという気持ちになった。

特に、大阪初日、二日目の3ステージに登場したSPECIAL GUESTの水夏希を迎えてのコーナーの尺がボリュームたっぷりで、彩風が研3にして新人公演で初主演を飾った折のトップスターだった水との邂逅は、憧れの大先輩を前にした本人の素直なときめきが伝わってくるかのよう。なかでも「灰色の水曜日」は彩風がオーディションで影ソロを勝ち取った水との思い出深い楽曲だそうで、大きく育った水が彩風を見つめる瞳にも優しさがあふれ、人と人が繋いで紡ぎ続けている宝塚の美しさが自然にこぼれ出てくる。退団後得意のダンスはもちろんのこと、歌唱力が飛躍的に伸びた水の着実な歩みを重ねる姿との共演は、彩風にとっても大きな指針になったに違いない。

東京では同じSPECIAL GUEST に雪組のトップ、二番手として色濃い時間を過ごした望海風斗が登場するだけに、このコーナーがどんな展開を見せるのかにも期待が高まる。幸いにして望海の出演回(11日13時&17時)は2ステージ共に全国映画館でのライブ・ビューイング、またスマートフォンやPCでどこにいても鑑賞できるライブ配信も行われるので、より多くの人が再びのタッグを観る機会に恵まれていることも嬉しい。
また前述したように全体のなかでこのコーナーの配分がたっぷりとってある分、GUESTなし回には彩風大活躍のビッグサプライズも用意されていて、ファン必見のステージになっているのも構成の妙。

更に後半に入っての「CAT’S EYE」は、彩風が演じているのが観たい!と思わせるキュートさを発揮するし、『ODYSSEY(オデッセイ)-The Age of Discovery-』の「どっせいオデッセイ」や、『ベルサイユのばら』─フェルゼン編─の「駈けろペガサスの如く」などの宝塚メドレーでは、彩風が1階、2階、3階すべての客席に登場する、どの階にいても「いまの彩風咲奈」を近くに感じられる演出も。移動時間が長い分、舞台にも諸々の仕掛けがあり、共演者たちの活躍だけでなく、映像とのコラボも見どころ満載。彩風不在の時間も様々に楽しめる趣向が盛りだくさんななか、会場のボルテージもどんどんあがっていく。

だからラストまでの展開はもう一気呵成。新たな魅力を感じさせる歌唱もあり、まさに『no man’s land』にいる、彩風が今後どんな舞台で輝く姿を見せてくれるのかに、大きな期待が膨らむコンサートだった。この緩やかな自然体で変化していく彩風の“いま”を、是非多くの人に体感して欲しい。
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【公演情報】
彩風咲奈1st Concert『no man’s land』
出演:彩風咲奈
竹内將人 菜々香 鈴木凌平
天野朋子 酒井比那 井上弥子 澤村 亮 感音
構成・演出:荻田浩一
SPECIAL GUEST:
水夏希(大阪・5月2日13時&17時、5月3日13時※公演終了)
望海風斗(東京・5月11日13時&17時)
アフタートークショー出演:
彩凪翔・愛月ひかる(大阪・5月3日17時※公演終了)
舞羽美海・愛月ひかる(東京・5月10日17時)
●5/2〜4◎【大阪】梅田芸術劇場メインホール(※公演終了)
●5/10〜12◎【東京】東京国際フォーラムホールC
〈料金〉S席12,500円 A席8,000円 B席5,500円(全席指定・税込)
〈お問合せ〉梅田芸術劇場(東京)0570-077-039 (10:00~18:00)
〈公式HP〉https://www.umegei.com/nml2025/
〈公式X〉@t_stage_umegei
【ライブ配信&ライブ・ビューイング実施】
◆ライブ配信
[1] 5月11日(日)13:00 公演 《SPECIAL GUEST:望海風斗》
[2] 5月11日(日)17:00 公演 《SPECIAL GUEST:望海風斗》
ライブ配信視聴券:各4,500円 公演プログラム郵送サービス付き各7,000円 (※送料別途必要)
販売期間:4月23日~各回の開演30分後まで購入可能
※両日程アーカイブ配信なし
◆ライブ・ビューイング
会場:全国各地の映画館
〈料金〉各5,200円(全席指定・税込)
※3歳以上有料/3歳未満で座席が必要な場合は有料。
詳細は公演サイト参照:https://www.umegei.com/nml2025/special.html#live
【取材・文/橘涼香 撮影/岩村美佳】

