熱海五郎一座『黄昏のリストランテ』間もなく開幕! 三宅裕司・羽田美智子 インタビュー

役者がきちっと演じれば面白くなるのが東京喜劇
三宅裕司を座長として実力派喜劇人たちが集結した熱海五郎一座が、新橋演舞場シリーズ第11弾『黄昏のリストランテ~復讐はラストオーダーのあとで~』を、6月2日から27日まで上演する。
2004年に旗揚げした「伊東四朗一座」の流れをくむ熱海五郎一座は、東京の喜劇〝軽演劇〟を継承しようと公演を重ね、今回はゲストに羽田美智子と剛力彩芽を迎え、「食」がテーマの喜劇を繰り広げる。
構成・演出を手掛けて出演もする三宅裕司と今回初参加となる羽田美智子に本作への意気込みを聞いた「えんぶ4月号」でのインタビューをご紹介する。
笑いというのは表現の中で一番難しい
──熱海五郎一座は昨年、新橋演舞場シリーズ10回目という節目を迎えました。
三宅 去年は10回記念ということで、ゲストに伊東四朗さんと松下由樹さんに来ていただきました。本当に大盛況で、いい作品にできたと思います。そんな公演の次、ということでどうしようかなと悩みましたが、この一座で今までやったことのない「食」というテーマで、これまでとはまた全然違う笑いになるかな、と思っています。日本人は美味しいものを食べることを生き甲斐にしてる人が多いですから、そういう意味では、もしかしたら今までの中で一番お客さんの興味を引くようなテーマになりうるので、昨年を超える作品を目指して頑張るつもりです。
──今回、羽田さんにオファーすることになった理由を教えてください。
三宅 作家が「料理」「悲しい過去」「復讐」という3つのテーマを出してきたので、どういう人に来てもらったらいいかな、と考えたときに、笑顔の素敵な女優さんがいいな、と思ったんです。笑顔の素敵な人が裏では悲しい過去を持っていて復讐を考えている、というのがドラマになりますよね。羽田さんは嘘のない笑顔だと思うんですよ。一方で剛力さんはファッションモデルでもあるので、気持ちとは関係なくモデル笑いみたいなものを作れるんじゃないかという気がしていて、そんな対照的な2人というのも面白いかな、と思っています。
──羽田さんは、本作のお話が来たときの率直な思いはいかがでしたか。
羽田 私は一座の大ファンなので、ずっと客席から拝見してきました。今回初めて出演のお誘いをいただいて、「どうしよう、私にできるかな」という自信のなさもあったのですが、伊東四朗さんにご相談したら「俺はこの日を待ってたよ」と言ってくださって。「三宅ちゃんは俺が絶大な信頼を寄せている人だから、彼に委ねれば大丈夫」というお言葉もいただいたので、思い切ってやらせていただこうと思いました。伊東さんからも三宅さんからも喜劇の楽しさと難しさ、笑いというのは表現の中では一番難しい、というお話しを常々聞いています。喜劇というのはエンターテイメントの一番上に君臨するものだと思っているので、そこのプロフェッショナルの三宅さんについていって、喜劇役者のエッセンスをいただきながらどこまでできるのか、自分のハードルを越えたいなと思っています。
──三宅さんはご自身の劇団でも喜劇を追及して来られていますが、難しさについてどのように感じていらっしゃいますか。
三宅 舞台の場合、笑いはその場で結果が出ちゃうんですよ。客席から笑い声があれば成功だし、笑わせようとしているところでシーンとなったら失敗ですよね。泣けるシーンとか感動するシーンは、舞台上からは客席の反応があまりわからないから、自分で「うまくいったな」と思っていればいいわけですよ。だから喜劇は一番難しいとは思いますね。

羽田さんにはボケの設定をいっぱい作りたい
──熱海五郎一座は東京喜劇・軽演劇にこだわってずっとやって来られました。
三宅 最初の頃は、浅草にあった軽演劇をやろうとしていました。これはストーリーがあって役があるけれど、その役から外れて素に戻ってお客さんをいじったりしてもOKで、とにかくどんな技を使ってもいいから笑わす、というのが軽演劇です。でも最近は笑いが多様化していることもあって、熱海五郎一座では役から素に戻るようなことはやらないで、役者さんがきちっと演じれば面白くなるものを作ろうというふうに、僕の中ではちょっと変わってきたんです。だから今は、軽演劇よりも東京喜劇という言葉を使うようにしています。東京喜劇には何も定義がないんです。萩本欽一さんとお話ししたときに、「三宅ちゃんが『これが東京喜劇です』と言えばそれが定義になるから、そう言って続けていけばいいよ」と背中を押してくださったので、これを極めようと思っています。
──羽田さんは熱海五郎一座をご覧になってきて、どんなところに魅力や面白さを感じていますか。
羽田 歌舞伎とか落語とか、日本の伝統芸能の要素を上手に取り入れながら、そこにレベルの高いダンスや歌があって、コントもあって、芝居もあって、「これはちょっとおかしいだろう」と誰もが思っているけど言えない時事問題を笑いに変えて言ってくれて、最後は感動に持って行く。それらをサラッとこなして、全体的には軽めのテイストにしているというのが、熱海五郎一座の魅力だと思っています。
三宅 喜劇って、面白い台本ができたら80%成功したと同じなんです。だから作家は大変で、台本ができるまでは僕も思いついたことをすぐに電話したり、たくさん話をします。今日も帰ったら作家に電話しようと思います。「羽田さん、ボケれるよ、大丈夫」って。
羽田 大丈夫ってどういう意味ですか(笑)。
三宅 羽田さんの「もしかしたら天然じゃないかな?」と思うようなニュアンスの要素を生かして、ものすごい緊張感の中で「あ、間違えちゃった!」みたいな失敗をさせたら、めちゃくちゃ面白くなる感じがするんですよ。いっぱいボケの設定を作って、俺に突っ込ませてくれ、と作家に伝えます。
羽田 それは、喜んでいいことなんでしょうか(笑)。
──お客様へのメッセージをお願いします!
三宅 去年よりも面白いものを作らなきゃ駄目だ、と自分に課してるんです。去年が大好評だったので……って、どんどん自分の首を絞めてる気がしてきました(笑)。でも、去年を超えなきゃいけないと思っていますので、ぜひそれを確かめに劇場に来ていただきたいなと思います。
羽田 去年、客席から見ていた劇場の興奮や感動がまだ脳裏に焼き付いてるんです。あのときのお客さんたちの笑顔が忘れられなくて、今年も同じような笑顔を届けられるように、一生懸命食らいついて頑張っていきたいと思いますので、新しい私も含めてぜひ見に来てください。
【プロフィール】
みやけゆうじ○東京都出身。俳優、タレント、司会者。「劇団スーパー・エキセントリック・シアター(エスイーティSET)」主宰。ラジオ『三宅裕司のヤングパラダイス』や、『三宅裕司のいかすバンド天国』(TBS)、『THE夜もヒッパレ』、『どっちの料理ショー』などで絶大な人気を得てマルチエンターテイナーとして活躍中。2006年に熱海五郎一座を座長として旗揚げ。14年に新橋演舞場に進出、毎年公演を行っている。
はだみちこ○茨城県出身。1988年デビュー。1994年公開の映画『RAMPO』でヒロイン役に抜擢され、「日本アカデミー賞」で新人俳優賞を受賞。以降、多数の映画やテレビドラマで活躍中。主なTV出演作として『特捜9』シリーズ、『おかしな刑事』シリーズ、NHK連続テレビ小説『ひよっこ』、『花嫁のれん』シリーズ、『隕石家族』など。舞台出演は『グレーのこと』『不機嫌な女神たちプラス1』『沼の中の淑女たち』。

【公演情報】
熱海五郎一座・新橋演舞場シリーズ第11弾
東京喜劇『黄昏のリストランテ〜復讐はラストオーダーのあとで〜』
作:吉髙寿男
出演・構成・演出:三宅裕司
出演:渡辺正行 ラサール石井 小倉久寛 春風亭昇太 東貴博(交互出演) 深沢邦之(交互出演) /劇団スーパー・エキセントリック・シアター
ゲスト出演:羽田美智子 剛力彩芽
●6/2〜27◎新橋演舞場
〈チケットに関するお問い合わせ〉チケットホン松竹 0570-000-489または、03-6745-0888(10:00〜17:00)
〈公式サイト〉https://www.shochiku.co.jp/play/schedules/detail/202506_atamigoro2025/
【インタビュー◇久田絢子 撮影◇中田智章 ヘアメイク◇森上マリコ スタイリング◇梶原寛子 衣裳提供◇ドレス/WaCCa(@wacca_official)(@dressunreve) イヤリング・リング/1DK Jewelry works(@1dk_jewelryworks)問い合わせ先:DRESSUNREVE Co.Ltd. 03-5468-2118】

