【ノゾエ征爾の「桜の島の野添酒店」】No.131「言葉のうつろひ。」

またね。
この「。」を付けることをマルハラと呼び、一部の若者の間では、句読点は、ちょっとした圧力を感じるものとなっているらしいと聞いて、驚愕したものだ。
とは言え、LINEなどの話し言葉の時に限ったことらしい。
「またね マル!以上!」のような、少々怒っているような空気を感じるのだとか。お喋りしてたつもりが、急に強制的に終えた、こわ!のような感覚なのだろうか。
もちろん「。」は、文章を終えましたよという記号なので、言語化すると、「はい以上です。」というようなことではあるのだが、「はい以上です!」という感覚で「。」を使ったことがない私としては、非常に戸惑ったものだ。
LINEなどを、そこまで限りなく喋り感覚でやれていることにも驚く。
もはや「書いている」という感覚はきっとないのだろう。まるで息を吸うように指を動かし、言葉は何のためらいもなく宙を飛び交うのだ。
デジタルネイティブというのか、デジタルとの距離感が私なんかとは明らかに違うのだということを痛感する。
ふと心配になり、若い俳優さんとのLINEを見返すと、、二十歳過ぎくらいのその子は、普通に句読点を使っていた。まあ、軽妙な会話とかではないというのもあるだろうし、年配に気を遣ったというのもきっとあるのだろうし、単純にその子は違ったということも当然あるのだろう。
その若い子のLINEの上に、還暦過ぎの先輩俳優とのLINEがあった。
どんなやりとりしてたっけと開いてみて愕然とした。
先輩は、句読点を使っていなかったのだ。。。
びっくりしてマル三つ打っちゃったよ。
もはや若者の間だけでの話ではなくなっているのか。
時代の波に乗るか乗らぬか、どう乗るか。
ここにも多様性の波が押し寄せている。
100年後の日本語は、句読点どころか濁点も減って、ツルツルとなめらかなことはになっているやもしれましぇふ
それと共に、様々な関係や境界もなめらかになっていることを

著者プロフィール

ノゾエ征爾
のぞえせいじ○1975年生。脚本家、演出家、俳優。はえぎわ主宰。青山学院大学在学中の1999年に「はえぎわ」を始動。以降全作品の作・演出を手がける。2011年の『○○トアル風景』にて第56回岸田國士戯曲賞を受賞。

【次回予定】
・はえぎわ×彩の国さいたま芸術劇場
「マクベス」
上演台本・演出:ノゾエ征爾
2023年2月17日より、シアターイースト、他
https://www.saf.or.jp/arthall/stages/detail/98208/
 
・新国立劇場「デカローグ」
デカローグ1への出演。
2024年4月13日より、新国立劇場・小劇場にて
https://www.nntt.jac.go.jp/play/dekalog/

▼▼前回の連載はこちら▼▼
https://enbutown.com/joho/2024/01/17/nozoe130/

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