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情報☆キック
株式会社えんぶ が隔月で発行している演劇専門誌「えんぶ」から飛び出した新鮮な情報をお届け。
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(雑誌『演劇ぶっく』は2016年9月より改題し、『えんぶ』となりました。)
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【粟根まことの「未確認ヒコー舞台:UFB」】第147回「稽古動画」

現在私は9/14(木)に開幕する劇団☆新感線「天號星」の稽古中です。稽古は大詰めも大詰め、すでに劇場では仕込みが始まっております。池波正太郎のような渋めの時代劇なのに、おじさんと若者の人格交代がドタバタと描かれます。悪だくみが交錯しながら殺陣満載でお送りいたしますのでどうぞお楽しみに。

でね、最近の演劇稽古場ではちょっとした技術革新が行われているって話を書きたいんですけどね。それは「稽古場の様子を映像で録画して、しかもそれが関係者間で共有されている」って話なんです。もちろん全ての演劇の現場で採用されているってワケではないのですが、そこそこ大きい規模の公演ならばそうである場合が増えてきました。
稽古動画といっても稽古時間の全てではなく、ある一つのシーンの通し稽古とか、振り付けやアクションのまとめなどの、ある程度稽古が進んだ仕上げの部分などが残されます。その映像を演出助手がまとめて、制作部が管理してクラウドサーバにアップロードされて、関係者に共有されるというワケです。
クラウドサーバにアップされていれば自宅のPCや手元のスマホで見るコトができるので、いつでもどこでも稽古を振り返ることができるというワケです。

この稽古動画というのが実に重宝するんですよ。ホントに様々な恩恵を施します。まず、演出家や演出助手が動きを確認するのに役立ちます。また、そのシーンに合った音楽を探したりする時でも、動画に合わせて試行錯誤したりもできます。同様に、作曲者に音楽を発注する時にも曲の長さや構成を決めるのに役立ちます。
もちろん照明さんや美術さんなど、全てのスタッフさんにとっても有用な動画なのです。

また、俳優部にとっても大変便利です。今までは自分の演技を見ることができませんでしたが、稽古動画があれば客観的に見るコトができます。ちょっとバランスが悪いからもうちょっと上手(かみて)に寄ろうとか、もっと重い感じで喋ってみようとか、客観的に見るコトで様々な演技プランを練ることもできます。
また、別の仕事で稽古に参加できないとか、体調不良で稽古に出られない時などには代役の人で稽古を進めたりする場合もあるのですが、そんな時でも自宅で稽古動画を見ておけば引き継ぎがスムースに進みます。
アクションを作る場合でも、手の込んだややこしい動きを作る場合にはアクションチームだけで組み上げる場合があります。その動画も自宅で見ておけばアクションを本人に移すのが早くなります。
同様に、ダンスの振り付けも動画を撮っておけば振りを確認することができますし、自分が他のみんなと合っているかどうかも確かめることができます。

新感線の場合は稽古場前室にもこの稽古動画を見るための専用iPadが置いてあって、稽古の合間には俳優部が入れ替わり立ち替わり見ています。次のシーンの動きを思い出したり、先日作った動きを確認したり。特にアクションチームは数人で殺陣稽古の映像を見ながら「ここはもっと詰めた方がいいよね」など修正点を探していたりします。

ことほど左様に稽古動画というのは様々に役に立っているのです。小型で高性能のカメラやクラウドサーバなどのインフラが整ってきた昨今だからこその変化だということだと思います。
実は劇団☆新感線では10年以上前から稽古動画を採り入れていました。ただその頃はまだサーバシステムを採用しておらず、HDDレコーダーに収録してチャプターに分けて管理していました。つまり、そのモニターテレビの前に行かないと見ることができなかったのです。
大人数が動き回るようなややこしいシーンがあったとしますよね。で、久しぶりにそのシーンを稽古したりすると、以前につけた動きが判らなくなったりする場合もあったりするのですよ。そうなると「よし動画見よう」なんつって、みんなしてモニターテレビの前に集まって一斉に鑑賞したもんでした。あの頃に比べると技術も進歩したもんですねえ。

もちろん「天號星」の稽古場でも稽古動画が大活躍です。全スタッフ・キャストがこの動画を頼りにしております。動画を管理する演出助手さんや制作さんは色々と大変かと思われますが、みんな感謝しながら利用しておりますよ。今後ともよろしくお願いいたします。

本文とは関係ありませんが、この夏、数十年振りに木に止まって鳴いている蝉を間近で見ましたよ。

プロフィール

粟根まこと
あわねまこと○64年生まれ、大阪府出身。85年から劇団☆新感線へ参加し、以降ほとんどの公演に出演。劇団外でも、ミュージカル、コメディ、時代劇など、多様な作品への客演歴を誇る。えんぶコラム「粟根まことの人物ウォッチング」でもお馴染み

【出演予定】
2023年劇団☆新感線43周年興行・秋公演
いのうえ歌舞伎『天號星』
9/14〜10/21◎THEATER MILANO-Za(東京)
11/1〜20◎COOL JAPAN PARK OSAKA WWホール(大阪)

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